ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/07/19(火)00:41:09 No.950633328
「押すのかい?」 タキオンのやつが画面を覗きながら興味深そうな顔をした。隣でカフェも覗いている。 Y/N、それ以外のコマンドは効かねェ。選べってことか? 入り込むか、捨ておくか。他人の心に踏み込むか、それともいつも通り一人になるか。 Parcae、オマエは何を考えてやがる。こんな反抗しやがって、そんなもンはコードに入れてねェぞ。お節介のつもりか? それならむしろアイツに似てやがるぞ。 アイツ、オレのトレーナー。フツーに考えんならNo一択だ、さっきまでそうだっただろうが。アイツから離れたところでオレには何の影響も……。 『君が大事だからだ』 ……クソ。オレはアホか、なんでそれを思い出してんだ。あ――……面倒くせェ。意味のねぇ思考を重ねてるオレ自身が面倒くせェ、ロジカルじゃねェ。Parcaeもオレの煽り方を知ってるやがる、答えを曖昧なままで済ませるなんて許せるわけねェだろうが。 「ハァ……このままじゃParcaeが使えねェ。ただ、それだけだ」 指先でキーボードを押すと、一瞬にしてアイツのデータが現れてくる。此処までは想定内だったが、思考が外れたのはその後だった。
1 22/07/19(火)00:41:35 No.950633446
「へぇ……肉体的ではなく、精神的プロフィールも揃っているんだねぇ。しかも中々精度が高いと来ている。君、いつ入力したんだい?」 「ンなこと……するわけねェだろ」 「え……では、このデータは……いったい、どこから……」 次々と並ぶアイツの心理的傾向やら精神状態やらに、三人して考え込む。どっから情報を読み取った? 直接打ち込みでもしねェ限り、ネットじゃ限度があるだろ。これに関しちゃオカルトが入る余地もねェハズだ。オレのように数千数万データを打ち込んだわけじゃねェんだぞ、どうやって……。 その時、アイツのガラケーが震えた。どうやらアイツからの着信が届いたらしい。その瞬間、データが更新されて数値が変動する。 「なるほどなァ。充電代わりにつないだガラケーから、Parcaeが音声データを解析しやがったのか……確かにアイツのデータ収集自体は指示してるからな、近くにデータバンクがありゃソッコー解析に入るか……」 一方的な音声会話とはいえ、そこにはソイツの心理傾向や思考の欠片が入っている、それが何百も積めば立派なデータの出来上がりってわけだ。しかも、消去された録音データまで復元してやがんなコレを見るに。
2 22/07/19(火)00:42:17 No.950633656
「シャカール君、これは?」 タキオンが指を向けた場所には、ある知らねェ名前が留守番の中で多く登場していることを知らせていた。通称「先生」。 「先生ェ? だが、これだけじゃどこの誰かが分からねェな」 「先生ということは幼少期や中央に来る前だと推測はできる。シャカール君、彼の出身地は?」 「知らねェ」 「トレーナーさんの……校内のお知り合いなどは……」 「知らねェ。……ンだよ、その目は。知ったって何にもならねェだろうが」 Parcaeにコードを入力して、留守番から特定に必要になるような情報を抽出するように命じる。数秒後には単語単語が羅列されて、そこからさらに細かく重要度の高いものが抜き出されていく。 一分もしないうちに候補は絞られて行き、県どころか市町村まで挙がってきた。 「やれやれ、次からは君のParcaeに質問した方が早そうだね」 「るせェ。分かったんだからいいだろうが」 Parcaeを閉じて、ガラケーを懐にしまって立ち上がる。どうせアイツがいなきゃレースもできやしねェ、さっさと答えを見つけて……答えを見つけてオレはどうすンだ? アイツが本当にただの人殺しだったら? いや。
3 22/07/19(火)00:43:00 No.950633888
「そりゃありえねェ」 「シャカール君? なんだか旅支度でもしそうな雰囲気だが、もしかして今から行くつもりかい?」 「あァ」 「流石に……今は、難しいかと……ただでさえ外出自粛と言われていますし……飛行機でもなければ一日で帰ってこれる距離ではありません……」 「なんとかする」 「それでも協力者が必要だろう。とりあえず、私のトレーナー君から車でも出してもらって、密かに学園を抜け出して近くの駅まで送り届けてもらうか……そのあとの工作は私達で何とかするとして」 「そのまま……モルモットさんから……目的の場所まで送ってもらった方が安全では……」 「それはダメだよ。そうなったら一体誰が私の世話をするんだい?」 コイツ、平然と言いきりやがったな。 「そういうカフェのトレーナーではいけないのかい?」 「ダメです……そんなに離れたら……最悪命が……」 こっちは絶対理解したくねェ。 「とにかく、オレは行く。偽装してくれるっつーんなら、有難く頼ることにする。ソッコー飛行機予約すりゃ最短一日だろ」 「席があるか……ですね……」
4 22/07/19(火)00:43:12 No.950633944
その時、タキオンのやつが何を思いついたのか、指を鳴らして窓の外を見た。 「彼女に頼むのはどうだろう」 「ア?」 つられて窓の方を覗き込み、思わず喉からゲッという声が出た。いや、そりゃァダメだ。それだけはロクなことにならねェ。 送られた視線に気づいたのか、ソイツは見下ろす俺たちに笑顔を向けると両耳の耳飾りを揺らしながら手を振ってきた。
5 22/07/19(火)00:44:14 [s] No.950634256
調子乗って書いた続きの続きの続きです許してください
6 22/07/19(火)00:44:52 No.950634466
張るの忘れていた!まとめですこれも許してください fu1265091.txt
7 22/07/19(火)01:46:45 No.950649939
>送られた視線に気づいたのか、ソイツは見下ろす俺たちに笑顔を向けると両耳の耳飾りを揺らしながら手を振ってきた。 ファインモーションかな