22/07/17(日)23:58:40 先日ポ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1658069920274.jpg 22/07/17(日)23:58:40 No.950239148
先日ポケスペ純愛健全ゾロ目スレでのレブルとヤナギとウリムーの話を書かせていただきました このスレ自体はダイススレではありません 思いっきり三次創作ですのでご了承下さい あらすじ レッドはヤナギからチルドレン氷像の写真を渡されて…
1 22/07/17(日)23:58:54 No.950239246
彼女は強い。 どんなに傷ついても立ち上がり、また戦いに戻ってきた。 単に実力があるだけでなく心が強い。 そういうところを尊敬できる。 だけど、傷つきもする。 結果的に克服はしているけど、その前に心を痛めているのも確かだ。 そんな彼女を傷つけるような真実を言っていいのか。 それを自分が知った場合、伝えるべきことなのだろうか。
2 22/07/17(日)23:59:26 No.950239457
「っし、いいバトルだったなぁ」 ジョウト地方のチョウジタウン。 レッドはその街道を1人、歩く。 バトルの申し込みがあったので挑戦者のいるこの街まで来たのだ。 カントーに来てもらってもよかったかもしれないが、 たまには自分もカントー以外の地方に行きたかった。 チョウジタウンも今まで来たことがなかった。 なので良い機会だと思ってここまで来たのだ。
3 22/07/17(日)23:59:46 No.950239599
「でも、チョウジタウンか…」 嫌なことを思い出す。 ここのジムリーダーはヤナギだ。 ブルーやシルバーたちを拉致し、自分の手駒にしようとしていた者。 ロケット団を乗っ取り、人々を混乱に陥れた者。 自分たちと対立し、戦った者。 そんな男がこの街にいる。 彼がまたジムリーダーに復帰しているのは納得がいかないが今更仕方がない。 ゴールドから彼が改心したとも聞いている。 だけどそれで素直に受け入れられるほどレッドは割り切れていなかった。
4 22/07/18(月)00:00:03 No.950239746
「…いや、今は考えててもしょうがないか」 今になって自分がなにかをしたところで変わるわけでもない。 何かあれば差し違えてでも止めようとは覚悟しているが、 さすがに大人しくしているのにこちらから仕掛けるのは筋が通らない。 そう思い直し、付近の喫茶店に行くことにした。 とりあえず、紅茶でも飲んで一息つこう。 レッドは頭の中で呟き、足を少し早めた。
5 22/07/18(月)00:00:25 No.950239894
「ふぅ、紅茶美味しかったな」 上機嫌で喫茶店を出る、 と、そこで風が吹いた。 それだけならいいが、顔に何かが貼り付いた。 「おわっ!?」 視界が急に遮られて驚く。 すぐに剥がして視界を戻す。 そして手元にある飛んできたものを見る。 「…え?」 それは写真だった。 氷像が複数写っている。 どれもまだ小さい少年少女のようだった。 その中の二つに、レッドは思い至るものがあった。 「これって、ブルーとシルバーか…?」
6 22/07/18(月)00:01:10 No.950240304
記憶にある最も古い姿よりも小さい。 ならば自分に会うよりも前の時期のものか。 「前…!?」 チョウジタウン。 そのジムリーダーはヤナギ。 彼が昔なにをしていたか。 何を得意としているか。 そしてブルーとシルバーの過去に何があったか。 それらを考えると答えは一つだった。 「…行くしかないか」 覚悟を決め、レッドはチョウジジムへと向かった。
7 22/07/18(月)00:01:36 No.950240490
「確かに、これはわしのものだ。 写真も、氷の像もな」 チョウジジムの中。 そこでのヤナギの返答は、レッドの予想と合致していた。 「お前、なんでこんなものを…」 なぜ、こんな氷像を作ったのか。 なぜ、こんな写真を持っているのか。 「家族、を欲していたのかもしれん」 そのどちらか、あるいは両方ともか。 ヤナギはそう簡潔に答えた。 「…ブルーたちを親から引き離しておいて!」 「そうだな。それはわしが言う資格はない。 ましてやそれをあの子たちに求めるのもな」 「…!!」
8 22/07/18(月)00:01:54 No.950240623
レッドの頭の中にはさまざまな感情が渦巻いていた。 身勝手な言い分への怒り。 それをせざるを得なかったことへの憐憫。 激情を抑える自制心。 それらがレッドの中でせめぎ合っていた。 「どうした?わしに怒るか?」 氷のように冷たい視線。 感情の読み取れない目でこちらを見つめてくる。 「…それを判断するのは、ブルーたちだ」 心の中の争いは、自制心が勝利を収めた。
9 22/07/18(月)00:02:11 No.950240730
「確かにお前のしたことは許せない。 だけど、1番の被害者のブルーたちが決めることだ。 オレが言うことはない」 「そうか…」 ヤナギは肩を落とした。 と、写真を突き出してきた。 「これはお前に渡す」 「…どういうことだ」 「好きにしろということだ。 その写真も、わしがその像を作ったという話もな」 彼は膝の上のウリムーを撫でる。
10 22/07/18(月)00:02:40 No.950240937
「そんな勝手な…」 「そうだな。 だが過去の罪に今更言い訳もできん。 それをどう言われようとわしには反論もできんしどう扱われようとも拒絶する資格もない」 そう言ったヤナギの顔。 そこに罪の意識があったようにレッドは思えた。
11 22/07/18(月)00:02:59 No.950241075
「とはいえ、どうしようか…」 カントーのマサラタウンに戻って。 レッドはため息をついた。 結局、写真を受け取ったまま帰ってしまった。 あの時、ヤナギを糾弾したり倒そうとは思えなかった。 あそこにいたのはただの老人だ。 過去の自らの所業に苦しむ、哀れな男。 それを責める気にはならなかった。 「あ、レッド」 「ぶ、ブルー!?」 ブルーに声をかけられ、レッドは驚く。 「なにびっくりしてるのよ。 マサラなんだからアタシがいるに決まってるでしょ」
12 22/07/18(月)00:03:16 No.950241194
呆れた口調でブルーが言う。 「ご、ごめん。ちょっと考えごとしててさ」 「ふぅん」 ブルーが軽く返す。 それを見てレッドは少しほっとした。 先程の写真の話。 それをブルーにしていいのか。 結論が出る前に彼女と会ってしまった。 少なくとも、それを決めるまでは彼女に悟られたくない。 「これから時間ある?」 「え?ああ、特に予定もないし」 「じゃ、ちょっとお茶しましょう。 遠征に行った話も聞きたいし」 「あ、ああ」
13 22/07/18(月)00:03:34 No.950241332
頷いてから、後悔した。 なにか理由をつけて帰ればよかった。 勘のいい彼女のことだ。 隠し事を察して、突き詰めてくるかもしれない。 「じゃ、行きましょ」 こちらの葛藤を知らないと思われるブルーが、腕を組んできた。 急にそんなことをされた驚きより、 腕に触れる柔らかな感触の衝撃の方が上回った。 彼女に連れられても、レッドにはもはや抵抗もできなかった。
14 22/07/18(月)00:03:50 No.950241480
連れられた先は、レッドの自宅だった。 「あれ?ここなのか」 「遠くから帰ってきたばっかりだしね。 落ち着く我が家の方がいいでしょ?」 「それはそうだけどさ」 いくら親しいと言えども、男の家だ。 女が1人で来るのは無防備な気もする。 「心配しなくても大丈夫よ。でもレッドなら襲ってきてもいいかも♡」 より一層、自分の腕がブルーに絡みつかれる。 また彼女の感触にレッドの思考力が奪われた。
15 22/07/18(月)00:04:23 No.950241739
「美味しい?」 「ああ、ありがとう」 彼女の入れてくれた紅茶を飲む。 チョウジタウンでの喫茶店に匹敵するくらいに美味しいとレッドは感じた。 「よかった」 嬉しそうにブルーが笑う。 それを見てレッドは思う。 この笑顔を曇らせていいのか。 彼女を傷つけていいのか。 自分ですら複雑な思いを抱いたのだ。 ブルーも、いやそれ以上に色んな気持ちになってしまうかもしれない。
16 22/07/18(月)00:04:43 No.950241893
「ねぇレッド」 「ん?」 「なにか隠してる?」 レッドは動きを止めた。 「…気づいてたのか」 「うん。だから、他に誰もいないあなたの家に来たの。 騙したみたいでごめんね」 「いや、隠してることがあるオレも悪いよ」 やはり、彼女は勘が鋭い。 そして話のペースを掴むのもうまい。 「言いたくないなら、それでもいい。 けど抱え込んで辛いなら、アタシでよかったら話聞くよ。 それでレッドの気が楽になるなら」
17 22/07/18(月)00:05:04 No.950242041
「…」 レッドは迷った。 言うか、言わないか。 「ブルー」 「うん」 彼女の目が優しくなる。 単純にこちらを気づかう。 それだけの、慈愛に満ちた目だった。 「これから言うことは、ブルーを嫌な気持ちにさせるかもしれない」 「うん」 「それでも、聞くか?」 「聞くわ」 と、彼女が何かを取り出した。 それは、レッドがヤナギから渡されたはずの写真だった。
18 22/07/18(月)00:05:22 No.950242172
「それは…」 「レッドの様子がおかしかったから、 さっきスってみたの。 それもごめん」 「…ああ」 「それと、ありがとう。アタシを気づかってくれて」 柔らかな微笑み。 それをレッドに向けてきた。 そこに怒りも悲しみもない。 こちらへの感謝の気持ちに溢れていた。
19 22/07/18(月)00:05:38 No.950242268
「…そんなことがあったのね」 「ああ。言おうかどうか迷ったんだけど。 やっぱりブルーに隠し事はできないな」 ため息をつくと、ブルーに頭を撫でられた。 「で、どうするんだ? 何をするにしても協力するよ」 「一緒に戦って、って言ったとしても?」 「ああ」 そこは迷わなかった。 あの時より強くはなったつもりだ。 だけどヤナギに勝てると自信を持てるほどではない。 それでも、闘うなら恐れない。 叶わないとしても、彼女のためなら闘う覚悟はあった。
20 22/07/18(月)00:05:53 No.950242409
「アタシ、決めた」 彼女が、その方針をレッドに言ってきた。 レッドはそれに反対しなかった。
21 22/07/18(月)00:06:12 No.950242543
後日、ブルーがレッドの家に来た。 「どうだった?」 「うん、伝えてきたわ。 あんたのことは許さない。 だけど、感謝もしてるって」 そうか、とレッドは頷いた。 「よく、そう言ったな」 「アタシだって迷ったわ。 だけど、今になって恨むのも違う。 もうアタシは過去の因縁に決着はつけたから」 「…やっぱりブルーは強いよ」 「だからといって、傷つかないわけじゃないんだけどー?」 こちらを覗き込むように、ブルーが屈んで言ってきた。
22 22/07/18(月)00:09:40 No.950244081
その顔にはからかいの色があった。 いつも通りだ、とレッドは安堵した。 「でね、レッド」 「なんだ?」 「ちょっとだけ、仕返しさせてね」 何を、と言う前に。 ブルーに唇を奪われた。 軽く、触れただけですぐに離れた。 だけど、レッドの正気を奪うには充分すぎた。 「アタシを気づかってくれてありがとう。 それと、ショックなこと持ち込んできた仕返し。 これでチャラね」 オーホッホッホ、と高笑いしながらブルーが去っていった。 少しその顔が赤くなっていた気がするのは、レッドの見間違いだろうか。
23 22/07/18(月)00:10:55 No.950244635
こんなイタズラをしても、憎めない。 彼女が辛いことも乗り越えられる尊敬できる人だからか。 それとも、別の何かか。 まだレッドには結論が出なかった。
24 22/07/18(月)00:11:09 No.950244722
以上です 閲覧ありがとうございました
25 22/07/18(月)00:14:12 No.950245975
>オーホッホッホ、と高笑いしながらブルーが去っていった。 >少しその顔が赤くなっていた気がするのは、レッドの見間違いだろうか。 ここ好き…
26 22/07/18(月)00:23:21 No.950249462
ヤナギの氷像の件を知ったらどうなるかを自分なりに考えて今回の話としました 自分解釈でレッドはブルーのことを強い女だと認識してるけどそれはそれとして心を傷つけるやつは許せないというスタンスだと思って そのレッド自身がブルーを傷つけかねない情報を持ってどうするかを考えてましたが ブルーなら大丈夫かもという信頼とそもそもブルーは隠しててもある程度は察するだろうと思ってこうなりました