22/07/17(日)23:53:23 きっと... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1658069603442.png 22/07/17(日)23:53:23 No.950236642
きっと、もう無理だろうな………… そう思ったのは怪我のリハビリを始めてから2ヶ月ほど立った頃だった。あの時、宝塚記念を走り終えた後、燻ってた私にもう一度走りたいと思わせてくれたトレーナーさんの言葉を聞いた時、"諦める"なんてこと、忘れられたと思ってたのにな。 それでも現実は残酷で、身体は世界のどんな名医よりも説得力を持って私に訴えかけてくる。再びウマ娘としてレースを走るのはまず、無理だ。 トレーナーさんに、なんて言おうかなぁ………そもそも、私の担当医も無理にレースに出ようとすれば、歩けなくなることを覚悟しなきゃいけないなんて脅してたし、向こうもなんとなく覚悟を決めてるのかな。 いや、あの人はそれでも諦めてないだろうな。現に、新しい担当も持たずに毎日私のリハビリを見に来ているのだから。律儀というか、真面目というか、頑固というか………… なんて伝えればいいだろう、私はもう走れなくなりました。それで彼は納得してくれるだろうか。
1 22/07/17(日)23:54:47 No.950237271
しないだろうな、それでも彼はなんとかしようと色々考えてくるんだろう。走っているときは恥ずかしくも嬉しかった彼の熱意が、今では私を縛る鎖になっていた。 「スカイさん、結局まだ伝えられてないのね」 不思議なことに、このことを話せたのは、トレーナーさんでも、家族でもなく、キングだった。むしろ、必然かもしれないけど。 「にゃはは……あの人、諦めが悪いもんですから。変に気合い入れ直されてもめんどくさいな～って」 「諦めが悪いのはあなたも同じでしょうに……それに、いつまでも黙ってるわけにはいかないわよ。彼だって、いつまでも担当がいない状態を続けるわけにはいかないもの」 「分かってますよ～ハッキリ言っときますよ、セイちゃんもう走れませーんって」 「……スカイさん、トレーナーにはちゃんと誤魔化さずにあなたの気持ちを伝えなさい。じゃないと、ずっと後悔するわよ、あなた」 そう言うとキングは病室を後にする。なんだかんだ彼女には心を見透かされてしまう。癪だけど、彼女の言っていることは正しい。走れない私にいつまでもトレーナーさんを付き合わせるわけにはいかない。
2 22/07/17(日)23:56:33 No.950238120
「スカイ、脚の調子はどうだ？」 今日もまた、トレーナーさんはお見舞いに来る。彼だって学園でやらなければいけないことがたくさんあるだろうに。治るかもわからない私のために毎日やってくる。でも、それも今日で終わりだ。 「いやー……もう駄目ですね。どうすれば走れるかとか、色々考えたけど……私の身体はもう無理だって言ってます。お医者さんもやめとけって言ってるし、そろそろ田舎にでも帰ってゆっくり釣りでも楽しもうかなーなーんて」 「……そうか。今まで無理させて、すまなかったな」 「あれれ、熱血漢なトレーナーさんなら、まだ諦めるな！とか言うと思ってたんですけど」 「なに言ってるんだ。そもそもその怪我だって俺の力不足が招いたことなんだ。これ以上、わがままは言えないさ。それに、スカイの身体が何より大事だしな」 「なんですかそれ………それじゃあ悩んでた私がバ鹿みたいじゃないですか！どうすれば諦めないで済むか……どうすればトレーナーさんを困らせないで済むかってずっと考えてたのに！」 「俺がスカイの決めたことで困ることはないよ。どういう選択だろうと、全力で支えるよ」
3 22/07/17(日)23:57:07 No.950238399
なんだか全身の力が抜けていくのがわかる。どうしてこの人は恥ずかしげもなくそんなことを言えてしまうのだろう。私が一人だけ深刻に考えてたのがアホらしくなってきちゃうじゃん。 「それは……トレーナーとしてですか？それともトレーナーさん個人として……？」 我ながら、なんてめんどくさいことを言うんだろう。それでも、聞いておきたい。私は、トレーナーさんにとってどんな存在なんだろう。走るのを辞めたあとは、どういう関係でいるのだろう。 「きっかけはトレーナーとして……だけど今は、そしてこれからは……そうだな、大ファンの一人として……って感じかな。君の走る姿だけじゃなく、生き方とかも好きになってるっていうか……」 なんとも私のトレーナーさんらしいふわふわとした答えだ。ちょっぴり期待していた情熱的でロマンチックな答えからは程遠い。だけど、トレーナーと担当という関係、ただそれだけだと言われるよりは全然いい。 「ファンなら私が走らなくなった後も、ちゃんと追いかけてくれます？」 「もちろん！トレーナーとしての仕事はあるけどな……」
4 22/07/17(日)23:57:52 No.950238745
この後も関係は続く、それが聞けただけで心にかかっていた雲が晴れていくような気持ちになる。 「その………ワガママなのは承知なんですけど、もう少しだけこのまま………私のリハビリ、付き合ってくれませんか？」 みんなが羨むエリートである中央のトレーナーをレースに復帰する気のないウマ娘のリハビリに付き合わせるなんて、なんて暴挙だろう。それでも、もう少しこのまま……ふわふわした関係だけど、一緒にいたい。その先のことはその時考えればいいのだ。 「もちろん！どうせ新学期までは暇だしな」 「じゃあじゃあ早速、おんぶでもしてお昼寝できそうな木陰にでも連れてってくださーい」 「リハビリするんじゃないのか？……まぁいいけどさ」 「やっぱり、変に真面目で律儀ですよね、トレーナーさん」 大ファンとウマ娘、そんなあやふやで雲のようにハッキリしない関係はずっと続くわけではない。きっとこの先、この関係は風に流され消えてしまうか、それともまた別の形になるのか。
5 22/07/17(日)23:58:09 No.950238889
トレーナーさんの背中に揺られながら、のんびり考えようと決意する。私達にそんな急激な変化は必要じゃない。いつか、この関係に終わりが来ると分かっていても。それまではまだまだゆるりと一緒にいよう。 「ちょうどいい温かさですね、トレーナーさん。セイちゃんの抱きまくらに転職しません？」 「まぁ、ゆくゆくはね」 「……………………え？」
6 22/07/17(日)23:59:09 No.950239343
いけー！！そこよー！！抱き枕にしなさーい！！！！
7 22/07/18(月)00:00:19 No.950239855
いけー！
8 22/07/18(月)00:00:50 No.950240114
抱けー！！
9 22/07/18(月)00:06:19 No.950242606
黄金世代全員こっそり見てるのは間違いない
10 22/07/18(月)00:10:20 No.950244378
あと一歩よー！
11 22/07/18(月)00:10:40 No.950244521
トレーナーには責任をとって二足のわらじを履いてもらわなくちゃな…
12 22/07/18(月)00:14:23 No.950246044
つるちゃんは見てないだろうな 見てたらきっと騒ぐ
13 22/07/18(月)00:18:43 No.950247644
ここで無理に発破かけても効かない、ってのはキングもよく分かってるというか 良い意味でセイちゃんの操縦方法は案外よく知られてる
14 22/07/18(月)01:04:07 No.950263694
セイちゃんとトレーナーの認識の違いが素晴らしいですね お互い今はまだふわふわの関係を望んでいるけどセイちゃんは先がどうなるかわからない変わることは確信しているけどセイちゃん自身の性格もあり雲の拡散も予想の範疇にいれている 対してトレーナーはすでに変わることも雲を掴むことも決意しているように察せられるのが素晴らしいと思います ところで今ふわふわの話をしたかしら