22/07/01(金)23:21:53 ガラリ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1656685313615.png 22/07/01(金)23:21:53 No.944623389
ガラリとその開け慣れた引き戸を引くと、いつもとは違った雰囲気のトレーナー室が目に映る。 日が落ち暗くなった部屋の真ん中には、白いテーブルクロスの敷かれた机が設置され…。 その卓上では赤いキャンドルが数本灯り、電気が消された薄暗い室内を静かに照らしている。 そんな普段の姿からは考えられないような、食事を楽しむ為の幻想的な空間が作り出されていた。 「凄いな…フラッシュが用意したのか?」 「はい、少々大袈裟だったかもしれませんが…今、食事をお持ちしますね」 フラッシュはそう言うと、隅の暗がりへと消える。
1 22/07/01(金)23:22:05 No.944623459
なんでも…学園の生徒間で流行っているという、ある調理法で作った手料理を食べてもらいたいとの事だったが…。 その調理法というのが、得意な料理に自分の「魂」を込めるようにして作るという、ある種のおまじないに近い物らしく…それを食べてもらう事で、相手との距離が近づき互いにより親密になれると評判なんだとか。 正直な所、彼女がその類の話を信じるとは思わなかったし、そんなものに頼らずともフラッシュの作るお菓子はいつだって美味しいと思っているが…。 まぁ理由はどうあれ、こんな席まで設けられて彼女の料理を堪能できるのだ。せっかくなのでここはご厚意に甘えて存分に楽しむ事にしよう。
2 22/07/01(金)23:22:22 No.944623562
そう心を躍らせながら待っていると、フラッシュが料理を載せたワゴンを引いて戻ってくる。 「おっ…良い匂いだ」 香ばしい食欲を刺激する香りと共に、彼女の母国由来の品だと思われる肉を中心とした料理が現れ、目の前に丁寧に並べられていく。 「今日の為に腕によりをかけて作らせて頂きました。どうぞお召し上がりください」 「あぁ…それじゃ、いただきます」 俺はそう言って両手を合わせてからフォークを手に取り、まずはメインの肉を一つ刺して口に運ぶ。 するとジューシーな肉汁の旨味が噛んだ瞬間口に広がり…。 「ふむ…うまいな……」
3 22/07/01(金)23:22:40 No.944623677
味付け自体はシンプルのように感じるが、素材の良さと調理方法によるものなのか、その美味な仕上がりに驚き感心してしまう。 ゆっくりと咀嚼する度に染み出るその味を堪能しつつ、飲み込んだ肉が起伏の無い喉を通って胃袋へと落ちていく。 「これは止まらない……」 皿に盛られた他の肉やキャベツも次々と口に放り込んでいき、ぷるんとした唇をぺろりと舐める。 そのままスプーンを手に取り、垂れる艶めいた黒髪を除けながら次は熱々のスープを啜る。 こちらは野菜の甘みを活かしたまろやかな味わいであり、先程の肉とはガラリと変わったテイストで舌を飽きさせない。 「はぁ…おいしい……ふぅ……」 熱いスープを飲んでいる内に体が火照ってしまい、少しキツい胸元のボタンに手を掛け…。
4 22/07/01(金)23:22:56 No.944623760
「んしょっ…これで少し楽かな……」 しっとりと汗ばむ、膨らんだ胸部をパタパタと手で扇ぐ。 そうして一息つくと、今度は小さなお皿に並べられたプレッツェルに手を伸ばす。 ポリッという軽快な音を立てて齧ってみれば、香ばしい香りと共に塩の効いた甘辛な味わいが口に広がる。 「こちらもなかなか……」 サクサクした食感は小気味よく、このままいくつでも食べられてしまいそうだ。 そのどこか懐かしさすら覚える味を楽しみながら、飲み物が欲しいなとぼんやり思っていると…。 「ふふっ…今にんじんワインを注ぎますね…」
5 22/07/01(金)23:23:12 No.944623865
聞こえた声に耳をぴこっと立てて、慌ててフラッシュの方を見る。 「あぁごめん、一人で夢中になって食べちゃって……」 「いえいえ、お気になさらず…おいしそうに食べてもらえてなによりです」 そう言いながら、用意されたグラスに透明なオレンジ色の液体を注いでいく。 「ありがとう…うん、いい香り……」 お礼を言ってそのワイングラスを持ち上げてみれば、黒く切り揃えた髪に青い瞳の…反射したフラッシュそっくりな自分の顔が映りこむ。 ……まぁ、まだ成人してない故にアルコールの入ってない見た目だけのジュースなのだが…。 ごくっごくっと喉を鳴らして飲んでみれば、心なしか普段より美味しく感じるにんじんの風味につい舌を鳴らす。
6 22/07/01(金)23:23:24 No.944623928
そうしてワインを片手に料理を一つ一つ食べ終えていき、最後に残った大きなヴルストを頬張る。 「んんっ…この焼き加減がとっても……」 カリッカリの表面と中の柔らかい歯応えの差が程よく、お肉と同様に噛めば噛むほど染みだすその味を存分に楽しみ…。 ごくんと飲み込んでナプキンで口周りを拭くと、スカートの上にそっと手を重ねる。 「……それでは最後に、デザートを用意しましょう」 フラッシュはそう言うと、食べ終わったお皿をワゴンに戻していく。
7 22/07/01(金)23:23:37 No.944624018
…メインの料理も大変美味しかったけれども、得意のスイーツは一体どんな物が出るのだろうか? シュトレン?ザッハトルテ?それとも…クリームをたっぷり使ったクーヘン? 尻尾を静かに揺らしながらそんな想像をしていると、目の前にことりと黒い角皿が置かれる。 そしてその上に載っていたのは…色とりどりの花や葉っぱ、果物などを模したお菓子のような物だった。 「これは…かわいい……」 マジパン細工にも似ているけど、それとも少し趣が違うような…。 「――――。―――――、―――?」
8 22/07/01(金)23:23:51 No.944624124
「……んん?」 ふと彼女の喋っている言葉がよく聞き取れず、頭に?を浮かべていると…。 「あぁ…すみません、つい癖で……」 ぼそりと何かを呟くとコホンと息を整え…。 『お待たせしました。今回は日本の和菓子を作ってみましたが、どうでしょうか?』 そう、目の前に出されたスイーツの説明をされる。
9 22/07/01(金)23:24:03 No.944624192
……なるほど!これがこの国の伝統的なお菓子…! 初めて見るそれをまじまじと観察しながら、そのかわいらしい姿に目を輝かせる。 「よくできてますね、食べるのが少し惜しいくらいに…」 シンプルながらも華やかな造形に、ほぅとため息をつく。 しかしいつまでも見惚れていては、せっかく作ってくれた彼女に失礼だ。 私は気持ちを切り替えると専用のフォークを手に取り、その一つを口に運んでみる。 「……んっ!おいしい……!」 瞬間、イメージよりも柔らかで優しい甘みが口に広がり、幸せが体中に広がっていく。
10 22/07/01(金)23:24:15 No.944624256
「これは"練り切り"と言いまして、白餡と砂糖をこねた物を使って形を整えています。私も実際に作るのは初めてで少々苦労しましたが…」 そう言って彼女は苦笑するが、その表情には確かな満足感が浮かんでいるように見えた。 なるほど…今度の休みにでも、私も作ってみようかな…。 そう…昔は……フラッシュ姉さんと一緒に、実家の手伝いで様々なケーキやお菓子を作っていたものだ。 そして姉さんがレースの競技者としての道を志すのを見て、それなら私はトレーナーとしてそのフォローをしたいなと思って…。 この年でトレーナー試験に合格するのは大変だったし、そのおかげで日本語の勉強はまだまだ足りていないけど…。 とにかく、姉さんの本格化には間に合って本当に良かった……。
11 22/07/01(金)23:24:28 No.944624326
なんて過去の思い出に浸りながらデザートも食べ終え…。 「ふぅ……ええと、ごちソウさまデシタ…」 この国の言葉で食後の挨拶をして、感謝の気持ちを示す。 「お粗末様でした。喜んで頂けたようでなによりです」 「ふふっ、ありがとう姉さん。とってもおいしかったですよ」 そう言って微笑んでみれば、姉さんもまた嬉しげに笑う。 彼女は私のお皿を持ってワゴンまで持っていき、そのまま片付けを始め…。 その背中を見ながら、ふと思う。
12 22/07/01(金)23:24:40 No.944624397
「あの、フラッシュ姉さん……」 「なんでしょう?」 「今回の食事会は確か…噂のまじないを掛けた料理を食べて欲しい、というのが発端だったと記憶していますが…その、効果はあったんでしょうか?」 あまりこういった、非科学的な迷信事を信じない…というのは私も同じだけれど……そんな性格の姉さんだ、きっと今回も何か考えがあって…。 「? いえ、今回はあなたがこの国に来てからようやく環境も落ち着いて来たので、改めて歓迎の意味を込めて料理を振る舞うという趣旨でしたが…」 あ、あれ?そうでしたっけ? 急いで自分のスケジュール帳を開くも、確かにそこには今日までの経緯がびっしりと書き込まれており…。 そうして内容を眺めていると、色々と忘れてしまっていた細かな出来事まで思い出してくる。
13 22/07/01(金)23:24:50 No.944624453
「ご、ごめんなさい…予定にもちゃんと書いてあるのに、私とした事が変な勘違いを…」 少し気が抜けてしまっているのだろうか…姉さんのトレーナーとして私がしっかりしなければいけないのに…。 「ふむ、そのおまじないというのは掛けた記憶はありませんが…」 申し訳なさそうに耳をぺたんと垂らしていると、姉さんの手がこちらの頭に伸び…。 「少なくとも私は、料理を通してかわいい妹とより親密になれたと思っていますよ♥」 「…っ♥」 そうして優しく頭を撫でられながら、祖国から遠く離れたこの地でも姉さんをしっかり支え続けていこうと、心に誓うのであった。
14 <a href="mailto:s">22/07/01(金)23:25:04</a> [s] No.944624561
フラッシュにフラッシュにされたい
15 22/07/01(金)23:28:50 No.944625922
だんだん変わっていって…いい…
16 22/07/01(金)23:30:49 No.944626642
産まれ育ちも変わってる…
17 22/07/01(金)23:35:00 No.944628220
キタサトしかりこの世界のトレーナーは簡単に変えられるな…
18 22/07/01(金)23:43:56 No.944631421
スケジュール帳びっちりになってるから姉みたいな管理魔になってるなこれ
19 22/07/01(金)23:46:43 No.944632409
姉に憧れを抱いていて同じようになりたいからスケージュール管理真似してるとかだったらいいな
20 22/07/02(土)00:30:02 No.944646686
同族化TS好き