虹裏img歴史資料館

画像ファイル名:1656367738954.png 22/06/28(火)07:08:58 No.943374873

掲げ、振り下ろし、土を結う。 掲げ、振り下ろし、淡々と。 幾千もの破壊を一息に巻き起こせる英霊の身であろうとも、大地と種を前に出来ることは変わらない。 それほどまでに繊細で途方も無い難業。いくつもの生命をヒトの手で芽吹かせようと試みる無謀。 ──即ち、農作業。無限の一の繰り返し。 単純に見える動きには底知れぬ奥深さが潜み、広大無辺の大自然にヒトの足跡が増えていく。 「マスター、ガネーシャ、少し休憩を入れた方がいい。水を冷やしてある」 木陰に入り冷水を口に含めば、なめらかな涼が芯から四肢に染み渡る。 過酷なアルバイトの最中でも無邪気に綻ぶ二人の表情を眺めていると、巷で動物の動画が流行る理由が少しわかったような気がした。 すっかり激しくなった日差しの眩さに父の面影を感じ取りながら、もう一度深く息を吸って立ち上がり鍬を取る。 「さぁ。やろう」 畑に込められたエリセの願いが、いつか立派な唐辛子になる事を信じながら。