虹裏img歴史資料館

1 22/06/27(月)22:04:29 No.943262902

お世辞にも担当ウマ娘であるトーセンジョーダンは学力に問題があり、また爪の問題もあってそこのケアも彼がやっている。そして他のウマ娘であれば一緒にトレーニングメニューやレースの作戦を考えたりもするだろうが、彼女はそれが出来ない。無論、出来ないウマ娘が圧倒的多数なのだが、レース中は不測の事態もある。その時は各ウマ娘が自分で自分の適性や能力を判断して臨機応変に対応するのだが、彼女はそれも出来ない。 それに、いくらあらゆる事態を想定してそれを教えようとも、覚えきる事も難しいだろうし、かえって考え方をこんがらせて邪魔になってしまう可能性も。故に、トレーナーはどんな事態になっても彼女が迷わず走れるようにレースプランニングする。 優秀故に色々出来てしまうが故のことであった。 (その結果がこれか。ジョーダンには知られるわけにはいかないな) 「あ、そうだ。……これチケゾーさんに誘われて皆で作ったんだけど、食う？」 「おー。クッキーじゃないか。頂くよ」 (結構失敗しちゃったし、材料少なかったから味見してないけど、大丈夫だよね……？)

2 22/06/27(月)22:05:19 No.943263311

「いただきま。お、サクサクで美味しい」 「まじ？ やったじゃああたしも食べる～」 トーセンジョーダンが作れたクッキーは3枚。トレーナーの為に作ったので味見をする余裕はなかった彼女だが、それを言われて安心する。残る2枚の内1枚を半分に割ってそれを口に入れる。……が。 (ウソ……マズイ何これ) 「トレーナー、ごめんこれ──」 「これも美味しいよジョーダン。うまく作れたもんだね」 「え」 「折角だからこれも半分にしよう。……っと、はい」 「あ、ありがと……」 トレーナーが割ったそれを口に。しかしそれもマズイ。とても人に、それも仄かな恋心を抱く相手に渡すものではない。なのにトレーナーはそれも美味しいと言いながら完食。 味こそ分からないが、わざわざ自分に作ってくれた感謝を込めて礼を述べる彼に悪気は無い。 その作らない、自然の笑顔が逆に良くなかった。

3 22/06/27(月)22:06:20 No.943263811

「……なんで。正直に言ってくれないの？」 「え？」 「わざわざマズイの分かっててあたしにも食べさせるとかさ……ひどくない？」 (しまった！) 「い、いや、待ってくれジョーダン！ そうじゃないんだ！ 君にそんなことするつもりは……！」 「ウソつき！！ あたしの為なら正直に言ってよ！ 恥……赤っ恥だよこんなの！」 「あ！ 待ってくれジョーダン！」 涙を浮かべ、トレーナー室から飛び出していくトーセンジョーダン。急いで追いかけるも、ウマ娘の走りにただの人が追い付くはずもない。ましてや彼の体は疲労で限界だ。味覚障害がその証左だ。 ウマ娘寮に向かう彼女を追いかけるトレーナー。まだ屋内だからスピードを出せず、背中は見えている。 10m先で彼女が階段をかけ降りていった。トレーナーもその後に続いて階段を駆け下りる。その時だ。 「──あっ」

4 22/06/27(月)22:06:55 No.943264080

体が限界を超えた。 脚が縺れ、スピードのついた体は階段を踏み外しても勢いはそのまま空中に投げ出される。しかしすぐ階段へ落下し、転げ落ちて踊り場に。 踊り場はさして広くなく、手摺付きの壁に額を強打してついにトレーナー動かなくなった。 「キャアアアアアッ！！」 額も避けて血の海を形成しつつあるトレーナーを見てしまったウマ娘の悲鳴が響き渡った。 ◆ あたしのトレーナーが階段で事故って3日。ついさっき目を覚ましたと連絡を受けて、授業もほっぽって病院へ。 さっさと受付を済ませて病室へ行くと、窓の外をぼーっと眺めるトレーナーが体を起こしていた。 「トレーナーっ！ 良かった起きたんだ！」 「っ、お、驚いた……」

5 22/06/27(月)22:07:20 No.943264274

「あ、あたしその……！ あたしのせいでアンタはこんな事になって、謝りたくて……」 「……そのー、済まない。君は俺の知り合い……と言うか、その口振りは担当ウマ娘なのか？」 「──は」 トレーナーは続けた。看護師から色々聞いたけど、最後の記憶はトレセンに向かう途中までで、これまでの、あたしと居た記憶は全く無いとのこと。 悪いジョーダンかと何度も疑ったけど、むしろ謝罪をし始めた辺りから追及するのは止めた。 気分悪くなってきて、あたしは1度病室を後にしてジュースを買いにいく。 ……そうだ。トレーナーが大好きなココア飲めば意外と思い出したりするかも知れない。良いアイディアを閃いてあたしとトレーナー用に温かい缶ココアを2つもってまた病室へ。 今度は驚かなかったトレーナーだけど、あたしに向ける「どうすれば良いか分からない」顔がスゴくイヤだ。でもこれできっと……。 「ココア飲んで。トレーナー好きだったでしょ」 「まぁ……はい。済まないけど頂くよ。ありがとうトーセンジョーダン」 「……」

6 22/06/27(月)22:08:51 No.943265069

フルネームで呼ばれる事がこんなに辛いなんて思わなかった。あたしのトレーナーと同じ見た目してる、別人みたいだ。 「……っ！？」 「！ どう！？ 何か思い出した！？」 「……味がしないんだけど、これ本当にココアかい？」 「…………うそ……」 また自販機に行って、今度は明らかに不味そうな変なジュースを買ってきてトレーナーに飲ませる。でもそれも味がしないとトレーナーは飲むのを止めてしまった。 「俺……味覚障害持ちだったのか……」 ふと、この間のトレーナーの事を思い出す。 マズイクッキーをあげた時、トレーナーはマズイ筈のそれを美味しそうに食べてて、その直前もココアが甘いか聞いてきて……合点がいった。 もうあの時からトレーナーは味が分からなかったんだ。あたしに知られたくなかったのか、それを隠してクッキーを美味しそうに食べたんだ。 あたしがメシマズって疑ってなかったんだ……。それを知らずにあたしは酷いこと言って……わめいて逃げて……それでトレーナーは……。

7 22/06/27(月)22:09:12 No.943265245

「……ごめ……ごめんトレーナー……あたしのせいで……」 「！ わわ、どうして泣くんだい！？ 階段から転げ落ちたらしい俺が悪いんだから、君が気にすることでは……」 「うっ、うぅ……」 キモチワルイ……あたしがバカなせいで……あたしのせいでアンタに怪我をさせてしまって、あたしのせいで味も……キモチわる、い…………何かに押しつぶ、されそうで……トレーナーの顔を見れない……。 「あたしは……」 あたしは罪人だ。アンタみたいな男を好きになった分不相応な高望みの罰は──これなんだ。 トレーナーも巻き込んで人生メチャクチャにする、最低な女……。 何だよ。あの時階段から転げ落ちたのが、アンタの代わりにあたしだったら良かったのに……。

8 22/06/27(月)22:10:59 No.943266131

記憶がとんだトレーナーはもう別人のようなものなので、謝りたくても謝れない。そんなジョーダン

9 22/06/27(月)22:12:37 No.943266935

ジョーダンがなにしたってんだ なにもしなかったからだ

10 22/06/27(月)22:12:46 No.943267019

救いは…

11 22/06/27(月)22:13:58 No.943267667

救いはないのですかぁ〜

12 22/06/27(月)22:14:11 No.943267765

救いはないのですか…？？

13 22/06/27(月)22:19:35 No.943270639

ジョーダンは自分が頭悪いせいで自分が不幸になってもしょーがねーし…って内に責めるんだが 自分のせいでトレーナーがバカにされたりトレーナーが不幸になったりするとすごく曇る

14 22/06/27(月)22:19:54 No.943270778

謝罪の逆ぴょいで解決や！

15 22/06/27(月)22:32:36 No.943276984

ジョーダンみたいなタイプは自分より自分を好きな人が苦しめられると曇るからな…

16 22/06/27(月)22:34:11 No.943277810

>謝罪の逆ぴょいで解決や！ いいですよね世話を焼くジョーダンと触れ合ってふとトレーナーのがおっきくなったの気付いて申し訳無さそうにするトレーナーにいいよ……とか言って脱ぎ出すジョーダン

17 22/06/27(月)22:43:51 No.943282655

曇りジョーダンは健康に…

18 22/06/27(月)22:48:36 No.943284974

でも僕はジョーダンには幸せになって欲しい

19 22/06/27(月)22:52:14 No.943286658

久しぶりのお休みで身体的疲労は全てなくなってあとは記憶喪失だけって状態になったら 戻った味覚でクッキーを味わって全てを思い出してほしい

20 22/06/27(月)22:54:56 No.943287905

クッキーのマズさのショックで全部思い出してほしい…

21 22/06/27(月)22:55:54 No.943288347

>クッキーのマズさのショックで全部思い出してほしい… オトナ帝国かな？

22 22/06/27(月)23:03:08 No.943291659

ジョーダンの怪文書オールウェイズレベル高い