22/06/21(火)22:12:43 「ああ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1655817163565.png 22/06/21(火)22:12:43 No.941114785
「ああ、もうこの時期か。」 まわりが皆が紅くなる季節、駅勤めのシカりんも例外ではなく身体の一部が紅くなる 比喩ではなく物理的にだ 彼は頭の林檎に悩まされていた、日に日に大きくなっていく紅い珠は、少年時代にタンコブみたいと揶揄われ、ずっと隠していたからだ 駅勤になったのは鉄道が好きだからという理由ではなく、型崩れしにくい制帽を着用する職業ならなんでもよかった 業務がひと段落し休憩の時間になった、彼はいつものように制帽を被ったまま休憩室の机で突っ伏している するといつの間にか制帽が取れ、頭の林檎があらわになっていたのだ ガラッ 「シカりん、お疲れ様です」 扉の音と共に声がした、彼にとって最悪のタイミングで同僚がやってきてしまった
1 22/06/21(火)22:13:10 No.941114957
声の主は同期のながもくん、同期と言っても入社時期が同じだかで年齢も最初の配属も違った。一緒に働くのはここが初めてだ 半分寝惚けたまま返事をしようとするシカりん、それと同時に制帽が無いのに気づく 「シカりん、頭の上のそれはなんです?装飾品か何かですか?」 「!!!!!!!!!!??」 トラウマが蘇った、またここも自分の居場所ではなくなる、彼の口を塞ぎ、ここを辞めて家業を継ぐ事も脳裏に過った しかしながつねさんが微笑みながら 「ふふっ、顔も真っ赤ですよ、よく熟れた果実みたいじゃないですか」 杞憂だった、少年時代に揶揄われたのとはまるで違う反応。しかしそれだけで動揺が治るわけでなく普段なら言わない事をつい口走ってしまう
2 22/06/21(火)22:13:27 No.941115075
「…食べてみますか??頭の林檎。」 一歩踏み込んでみようと計算したわけではない、醜態だと思っていたものを受け入れてくれる彼に興味がある、もっと会話がしたい、この場を繋ぎたいという感情が溢れてしまった 「えっ?食べてもいいんですか?というか食べられるんですか!?」 彼の反応に少し落ち着きを取り戻すシカりん 「ええ、一般的な林檎ですよ。ただ、今の私の感情のせいでどんな味になっているか分かりませんが」 「それでは遠慮なく御馳走になります、まずは前菜から…」
3 22/06/21(火)22:13:49 No.941115216
そう言ってながつねさんは、頭の上の林檎をもぎるように見せかけ顔を近づけ___ 「ふふっ、クチビルはりんご味じゃないんですね」 もっと動揺して一歩後退し距離を取るシカりん、いつものマイペースな姿とはまるで違う 「ななな、なにをするんだながつねさん!!。」 「ふふっ、先にシカりんの味を確かめたかったんですよ」 「おおおお互い落ち着こう!!!ちょっと寝惚けてるようだから頭冷やしてきますね!!!??。」 「わかりました、りんごは後日いただきにあがりますね」
4 22/06/21(火)22:14:01 No.941115319
そう言ってながつねさんは椅子に座り、いつもの顔でスギの葉をくるくると回しているように見えるが頬は微かに色づいていた 完