虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    22/06/15(水)01:13:41 No.938741873

    上も下さえもわからない闇の海の中を無我夢中で進んで、勢いのまま彼の手を掴むと二人で回転するように沈んでいく。まるで互いに何もない宇宙の中を、繋いだ手だけを頼りにして落ちる流れ星のように。 光もない世界に沈んで狂乱していた彼の手が、私の手と私の顔に触りその動きが落ち着いていく。一緒にいるのが誰か気づいたようだった。 急いで海面に上がらなくてはと思うけれど、上手く体が動かない。真っ暗闇の中で今自分が何処を向いているのかさえ、沈んでいるのか浮いているのか。いや沈んでいるのには違いない、二人でこうやっているのだから。 このままでは二人とも死んでしまうというのに、不思議とその恐怖は身を強張らせない。トレーナーさんと一緒なのだろうか、この人もそう思ってくれているのだろうか。 そっと彼の手から引き寄せられて、胸の中に私の身体が収まる。彼の手が私の頭をそっと撫でる。 ”どうして” 声も何も聞こえないのに、彼からそう言われたような気がした。ただ祈るように耳を彼の胸に当てる、心音が弱弱しくでも確かに聞こえた。

    1 22/06/15(水)01:16:01 No.938742464

    ”私と貴方は同じだから。未来のためにあったはずの亡き人の願いを罪にしていた” ”赦されたかっただけだ、君は赦された” ”妹さんは最初から貴方の罪じゃないの。心のどこかでそう感じたんでしょう、譲られた、と。だから赦されたかった会いたかった、それを確かめたかったから” ”違う、俺は……俺はあの子を見殺しにしたんだ。償うためなら、命だって……” ”じゃあどうして、貴方はためらったの” 彼の心音が少しだけ強くなった。それは一つの答えだった。死に対する恐怖と後悔、生きたいという純粋な欲望。でも、それはまだ自分が未来へと顔を向いている証拠。 ”なんで、そこまで……” ”あなたと同じよ、勝手に付いてきただけ。なにか悪い?” 暗闇の中で、トレーナーさんがふと笑ったような気がした。そして私の胸に手を置く。その瞬間、彼が何をしようとしているのか分かって体のどこでもいいから掴もうとする。

    2 22/06/15(水)01:16:34 No.938742586

    「ありがとう」 「ダメ! トレーナーさん!」 遅かった。彼は私を突き飛ばすようにしてさらに潜っていった。私を海面へと上げるために。あの人は妹さんと同じことをしたのだ。彼はこの時になって死を克服した、私がいるから、私を自分の命よりも大事だと思ってしまった。次は妹さんのように譲られないために、私を守ってしまった! 必死に手を伸ばす、だけど届かない。遠く彼が黒と同化していく。 だめ、行かせない。貴方を一人になんか絶対にさせない。息が続くかわからない、それでも私は浮き上がっていく体に抵抗するようにまた海底へと戻るようにもがいた。 二人で、絶対に二人で帰る。もう、誰かの犠牲で助かるなんて御免よ。 その時、私達を光が包んだ。いきなり満月が空に来たのかと思ったが違う、水面から鋭い光がこちらに向けて降りてきているのだ。同時に人影が写って、大きな音が響いた。 最初に見えたのはオペラオーやドトウでもない、カレンさんだった。大きな岩を抱えてダイブしてきて一気に私を追い抜いたとおもうと、岩を放して代わりに彼を掴んだ。それにカレンさんのトレーナーさんが続くようにダイブしてきて私を掴んだ。

    3 22/06/15(水)01:17:07 No.938742725

    そうして一気に体が何かに引っ張られるように浮上していく。世界が流転するような錯覚と共に、重力と新鮮な空気を感じ取って思いっきり呼吸をする。 眼の焦点が合うと、私達は宙に浮いていた。上を見るとヘリが飛んでいてそこにはオペラオーたちが必死の形相で繋がれたロープを引っ張り支えている。かなりギリギリの長さだったみたいで、ヘリの足にぶら下がる格好のオペラオーをドトウとトップロードさんがなんとか掴んでいる状況だ。 「意識はあるか!」 私を抱えているカレンさんのトレーナーさんが叫ぶようにして声をかけた。 「え……えぇ……どうして……ここに……」 「オペラオーのトレーナーからアイツが何処にいるか知らないかって聞かれてな。探しに来たら、アイツとアヤベさんが崖が落ちるところを見たんだ。危なかった、本当に……」 私の隣を見ると二本目のロープにはカレンさんとあの人がいて、思わず安堵のため息を吐く。 「す、すまない! もうそろそろ限界だ! はやくトレーナー君! 砂浜に!」

    4 22/06/15(水)01:18:20 No.938742981

    そうしていると、オペラオーの方に限界が来たのか砂浜に着いたとたん私達は転がるようにして着地した。砂がクッションになって痛みはないが、振り回されたせいか頭がくらくらとする。同時にオペラオーたちも少し離れた海に着水してトップロードさんが二人を抱えるようにして泳いでくる。 「アヤベさん! お兄ちゃん! トレーナーさんが!」 砂まみれになった身体を起こしていると、カレンさんの悲鳴に近い声が私を呼んだ。すぐに駆け寄ると、彼女はあの人を揺すりながらこちらを潤んだ瞳で見た。 「息をしてない、息をしてないよ……!」

    5 22/06/15(水)01:18:43 [s] No.938743070

    調子に乗って書いた続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きですすべて許してください

    6 22/06/15(水)01:40:13 No.938747471

    許すかどうかはこの先にかかってるかな…

    7 22/06/15(水)01:46:43 No.938748609

    とんでもない所で引きやがって...

    8 22/06/15(水)01:50:10 No.938749218

    ようやく妹と話せる時が来たか…

    9 22/06/15(水)01:51:17 No.938749389

    幸せになってほしい…

    10 22/06/15(水)02:13:33 No.938752986

    なんで凄い気になるところで終わってしまうんだ…

    11 22/06/15(水)02:16:24 No.938753449

    気になって寝れないよ!!!!今日も良かった...

    12 22/06/15(水)02:16:42 No.938753494

    はやく人工呼吸しろアヤベー!思いっきりちゅーしろー!

    13 22/06/15(水)05:20:14 No.938767457

    生きてきた足跡がその人を救うんだ

    14 22/06/15(水)05:54:54 No.938768758

    いつもいつもいいものを読ませてもらえてありがたい