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22/06/12(日)21:54:26 扉を開... のスレッド詳細

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22/06/12(日)21:54:26 No.937991946

扉を開けると、そこはまだあたしが生まれる前の時代だった。 ウソだと思うかもしんないけど、間違いない。そーいうマンガとかでお決まりの、新聞とかで確認した。 今から18年前のどこかの田舎。じわじわとセミが大合唱して、ヒリヒリと日の光が肌を焼くような暑さを和らげてくれるのはお店のクーラーの冷気じゃなくて、そこらに生えた木の陰だけ。 「あちぃー……」 そもそも何でここに来たのか分からない。 トレセン学園の校舎の屋上に行こうとしてドアを開けたら、気付けばどこかの田舎のバス停(屋根付き)の中。財布は持ってきたけど、時代がちょい違うから色々と心配で買い物はムリ。 そんなんだから喉もかわいて汗もびちゃびちゃだし、今はどっか涼しい所を探して川を探し中。 丁度この間トレーナーが昔の頃よく遊んだっていう森の中の小川の話をしてくれたから、似たような所があるかもしんないしね。なんでも、トレーナーがよく遊んでたそこは人も滅多に来なくて、水もキレイだから裸で遊べたんだって。 場所を探すコツも教えてもらったし、それを思い出しながら森を歩いてるとあたしのユーシューなウマ耳が水の流れる音を拾った。

1 22/06/12(日)21:55:41 No.937992692

「やった……! 水で足冷やしてー!」 音さえ拾えればこっちのもん。走って走って、明かりの方へ抜けていくとそこには──! 「水ー!」 「うわぁっ!」 「え!?」 木と木の間から飛び出して大きめの石ころの河原に着地すると短い悲鳴が。振り替えってみると、服を脱ぎかけてた所にあたしが出て来てビックリしたのか、ひっくり返っている男の子が居た。大体6歳位の男の子。こんな森の中でなにやってんだろ。 「びっくりしたぁー。おねえちゃんウマむすめ?」 「え? そうだけど」 「すげー。はじめてほんもの見た」 「へー」

2 22/06/12(日)21:56:08 No.937992963

こう言う子供のキョーミの切り替えの早さは時々こっちが付いていけなくなる。 「ここら辺ウマ娘居ないの?」 「うん。テレビでしか見たことない。でもレースしてるのすごいかっこよかったよ」 「あたしもレースやってるよ。あ、やるかな?」 「おー。テレビでてるひと?」 「出る予定」 「すげー。ねーねー。かわであそびながらおはなししてよ」 「おけ~」 どうせ涼む予定だったし、ガキんちょにあたしの出たレースの話をする。子供だから細かい時代のズレとか分からんでしょ。 満足いくまで話をして、一緒に遊んであげて、自分がホントに帰れるかなんてことも忘れて、結局最後は子供を家までおぶっていってあげる始末。マジでこれくらいの頃の子供って全力で遊んであとでだるそーにするのはデフォなんかな。 にしても、教えてもらった家の名字書いてあるやつがあたしのトレーナーと同じでビックリした。偶然ってあんだねー。

3 22/06/12(日)21:56:36 No.937993315

「わざわざ送っていただいてありがとうございました」 「おねえちゃんありがとう!」 「どいたま~☆ てか、ガキんちょなんだからあまり危ない所で遊ぶなよー」 「本当にありがとうございます。もしお時間よければ上がっていきませんか?」 「いや、大丈夫です。あたしもそろそろ帰らないとなんで」 (まぁ、帰り道が分かるかも知らねーけど) 「おねえちゃん! こんど『はるてん』見ておうえんするよ! あ! おねえちゃん名前なんていうの? おれは〇〇!」 家に帰れば元気なもんで、会った時みたいにフルネームで自分の名前を告げる。 その名前はあたしのトレーナーと全く同じで驚いた。会ったときから何となくあった変な感じ。見たことあるよーな、無いよーな感覚はこれだったんだ……まさか過去にタイムスリップしてまだまだガキんちょのトレーナーと会うなんて。 「? おねえちゃん?」

4 22/06/12(日)21:56:52 No.937993480

「──ぁ、あぁ、ごめんごめん。あたしが走るのはまだずっと先の話だけどね。あたしの名前はトーセンジョーダン。…………絶対覚えててよね。また会えるからさ」 「うん! またね!」 よく見ればトレーナーの面影が残るその子は母親に手を引かれて家の中へ。 「ただいま」とか「優しいお姉ちゃんに遊んでもらった」とか、家族ダンランの音を背にしてあたしはトレーナーの実家を離れていく。 暗くなってきた畑道にはマトモな街頭も無くて、このままだと頼りになるのはあたしの残り少ないバッテリーのスマホだけ。ガキんちょトレーナーと遊んでるときに色々使ったからヤバイかも……。 なんて思ってると、いつの間にかあたしはこの時代に来た時のバス停に居た。1日に数回しか来ないバスの時刻表が壁についた、汚いバス停。 「……何か変な夢」 何をすれば帰れるのか何のヒントも無い。また汚い椅子に座って、ガキんちょトレーナーと遊びながら撮った写真を眺めてると、そろそろバッテリーはマジでヤバい。 残り1パーだし、これが死んだらあたし死ぬかも。

5 22/06/12(日)21:57:41 No.937994034

「……なんかトレーナーに会いてーわ」 寂しくなって、目をつむると一番頼れる大人が思い浮かんだ。アイツならこんな時でも何とかしてくれる気がして……何よりあの話を聞いていたガキんちょトレーナーのキラキラとした目を思い出すと、疲れててもいつも優しい目を思い出すから。 「トレーナー……」 会いたい。 「トレーナー……っ」 「何だいジョーダン」 「──え?」 聞き慣れた声。目を開くと、今度は間違いなくトレセン学園の屋上に居た。開けっぱなしの扉の前で棒立ちしてたのか、すぐ近くでパンを食べてるトレーナーが返事をして来たらしい。 ……そっか。帰ってこれたんだあたし。

6 22/06/12(日)21:58:07 No.937994289

「ドアを開けて急に俺を呼ぶからビックリしたぞ。俺を探してたのか?」 「あー………………まぁ、そう。ちょい聞きたいことがあってさ」 「良いよ。勉強の事なら、トレーナー室の方が良いかな?」 「いや。そんなんじゃなくて、アンタがトレーナー目指した理由とかあんのかなって」 「俺の? そんな面白い話じゃないが良いかな?」 「いいよ」 「分かった。取り敢えず隣に座りなよ」 こんな所でもノートパソコン持ち歩いてるトレーナーがそれをどかしてあたしが座るスペースを空けてくれる。 さっきのバス停の汚い椅子とは違う、綺麗な椅子に座るとどこか遠くを見て、思い出すように話始めた。 「そうだね。これは俺がまだ小学校1年の頃に遊び場であったウマ娘のお姉さんとの出会いから始まる」 その語り始めに、あたしは自分の昔の頃を親に発表されるようなムズムズする感覚を覚えてうつむき気味にやったけど、耳だけは話を逃さないとしっかりと立てていた。

7 22/06/12(日)21:59:25 No.937995175

トレセンなら超常現象みたいの起きそうだなーと 幼いトレーナーの性癖曲げるみたいな話じゃなくて申し訳ない

8 22/06/12(日)22:00:43 No.937996013

ありがとうございます… ありがとうございます…

9 22/06/12(日)22:09:20 No.938000958

運命の相手いい

10 22/06/12(日)22:09:46 No.938001213

いいよね…

11 22/06/12(日)22:10:59 No.938001892

普通に全部わかった上で受け持ってますね?

12 22/06/12(日)22:24:16 No.938008367

>幼いトレーナーの性癖曲げるみたいな話じゃなくて申し訳ない いやこれぐらいの空気感が良いんだ

13 22/06/12(日)22:51:00 No.938021684

ジョーダンの怪文書はいい空気感のが多くて好き

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