虹裏img歴史資料館

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

22/06/12(日)03:15:02 「あの... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

画像ファイル名:1654971302585.jpg 22/06/12(日)03:15:02 No.937662138

「あの、あなた」 「何……?!」 「めっちゃキスしたくありません?」  担当と共に走り抜けた流れ星の舞台から起算して、おおよそ五年。ああ、きっと。俺たちは色々と変わったんだろう。寮から抜け出て借り出した素敵な駅チカの都。越した当初は凄まじい新品感に包まれていたが、そんな部屋も二年と住めば当たり前のように様変わりする。日々繰り返す生活やら、なんか、こうマジで色々なものたちがクロスや家具に染み込んで、結果。哀しき変化は齎された。  クッソ雨降ってるマジで憂鬱な休日の昼下がり。リビングのソファーに腰掛けて、震えを抑えるためにクッションを抱えながら、一人ひやひや二人でびくびく映画を見ていたとき。横合いから突如降り注いだ意味不明なワードによって。景色と湿度に違わぬ、いや結構違う気もする溜め息が、俺の肺から絞り出されるようになってしまった。 「……はあ?!」 「いやあ、だからあ、そのお……ここでキス、したら運気が上がりそうな感じがあ~……」 「いきなり……」 「はあい……!」 「サカんなよ……!」 「ちょっ、言い方アアアッ!」

1 22/06/12(日)03:15:52 No.937662271

 だらしない部屋着姿で一体何を宣ってるのか。まあいい、バカな提案にはほぼほぼ同レベルの回答を返すのが礼儀だろう。クチビルとクチビルが織りなすだろうウィンナ・ワルツ、そんなものウチにはないよ。フクの戯言を鎧袖一触で切り捨て、開運印のクッションをより強く抱き締める。 「てかこれ誰からおすすめされたの」 「はあ?! 今はそんなことどうでもいいでしょお~っ!?」 「良くない」 「はあああ!? タイキさんですう!!!」 「え、ホントに……?」 「ホントですよお。ええと、なんかニホンのホラーはウエットで良いデスヨネーってニコニコしながらおすすめしてくれたんですよ、意外なシュミですよねえ」 「……なるほど、タイキのおすすめなのね、はい……」  視界の果てに映るのは、四十五インチのテレビモニター。そしてそこに映りしは、私の友人おすすめとか抜かしたホラー映画。もちろんロマンスを想起させるポイントなんて存在しないし、そもそも俺はそれどころではない。目が離せないレベルで怖いんだよ、コレ。こんな映画どっから引っ張り出してきたんだ、タイキシャトルは。

2 22/06/12(日)03:16:27 No.937662367

「で、答えたのであなたも答えてくださいっ、さあどうですかっ?! キス、したくありませんか!」 「ブチギレテンション戻しながら言われても困るんだけどォッ……」 「せめてこっち見ながら言ってくださいよ!」  目線は、すまないが動かせない。だって…… 「無理、怖いもん」 「なーんで私が怖いんですかあ!」 「映画が怖いっつってんだよ!」 「じゃあ私は?!」 「か、あ……いや映画に集中しろよ……って痛ってえ!」  常識の範囲内な返しをしたはずなのに。かなり強めの肘バズーカがみぞおち辺りに撃ち込まれる。痛みに恐怖、怒りに恐怖。様々な感情が心のなかで七分咲き、悲しくもないのに涙がこぼれる。俺を泣かせた下手人の方を、歯ぎしりしながら霞む瞳でもって見やれば。あちらはあちらで顔を真っ赤にしながらぎりぎりぎりと歯ぎしりしていた。なんでだよ。理不尽さにこめかみは筋張り、拳に苛立ちが内包されていく。 「なんで殴られなきゃいけないんだよ……!」 「だから私はどうですかって聞いてるんです!」 「だからあ! こっちもフクが見たいって言うから見てんじゃ……!」 「ああじゃあもういいですよおっ!」

3 22/06/12(日)03:17:09 No.937662472

 ふーん、とか口にしながらフクはもの凄い勢いでソファーから立ち上がり、ズカズカ足音を鳴らしてリビングを去っていく、いや去っていこうとする―― 「いやいやいやいや待て待て待て待て! 俺を一人にする気かおいフク!」 「そうですよ、何が悪いんです?!」 「悪いに決まってんだろ、ふざけんなよフク!」 「あなたなんて一人寂しく怖い映画見ちゃえばいいんですっ」 「寂しくないけどここには居ろよ、留まれ、留まれってもお!!!」 「ぎゃああああああっ! おニューのお洋服伸びちゃいますって! 手ぇ離して下さいよぉ!」 「それ越したときから着てるスウェットだろ何嘘こいてんだよ!!!」 『ウォオオオオオ……』 「うわあああああああああああああ!!!」 「ふぎゃああああああああああああ!!!」

4 22/06/12(日)03:17:50 No.937662595

 スピーカーから流れる恐怖の嘆きが、俺たちの下らない喧嘩の意気を挫く。ああ、ありがとう、世界。ここが俺の部屋で、このザマを誰かに見られていなくて本当に良かった、二人して床に這いつくばり、荒く息を吐いてる様子なんて。一目見られた瞬間、俺の世界が変転してしまう。口さがない者たちのする虚の言が、紛うことなき真の言へと即座に変わり、次の日から俺の肩身がアホほど狭くなるのは確定だ。フクはきっとその限りではないだろうが。 「フク、待って、座り直せ、俺も座るから」  あんなに怖かった、目すらも離せなかったはずの映画そっちのけで、俺はフクを引き留める。しかし相手はフク、一度ヘソを曲げると一筋縄ではいかない。 「知りませんっ、私は怒ってるんですから……!」 「じゃあ、もうするか、今、キスを」 「えっ……!」  深紅と薄桃の花弁がそこそこ広いリビングに舞い、なんかフローラルでロマンチックなフィールドが形成されようとする。いつもなら勢いよく振った手で謎のしっとり感を払いのけるのだが、そんな余裕はなどない。必死なのだフクを引き留めることに。

5 <a href="mailto:おわり">22/06/12(日)03:18:19</a> [おわり] No.937662668

「ひゃあ~……キュンってしちゃいましたあ……」 「キュン……じゃねえよ、ムードもへったくれもないだろこれ」 「いやあ、そこは惚れた弱みというかですねえ……」 「というかキスしたきゃ好きにすりゃ良くね……?」 「こう同意というか合意というか、シチュエーションが大事なんですよ、キスって……」 「ならもうちょっとさあ、吊り橋効果とかもう関係ないんだからさあ……」 『ウォオオオオオ……』 「「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!」」  吼えようが叫ぼうが特段何も変わらず、休日は当然のように過ぎていく。なし崩し的にされようとしたキスは、これまた恐怖の嘆きによって制され、俺たちはまた映画へと視線たちを集中させた。窓の外には先程と変わらず雨が降り、やや薄暗い室内には汚い悲鳴が響き渡る。季節は巡る、多分来年も同じように。来年はフクに何言われてもホラーは絶対見ないけど。  あ、最終的にキスはした。まあ映画が全部終わってから。飯何食うとか明日どこ行くとか色々話したあとに。割と長めのやつを。はい。

6 <a href="mailto:オチなんてねえよ。">22/06/12(日)03:19:23</a> [オチなんてねえよ。] No.937662820

夏入り近いし深夜なので一口フクです 受け取って下さいな

7 22/06/12(日)03:19:49 No.937662903

ありがたい…

8 22/06/12(日)03:21:09 No.937663119

何でフクちゃんそんな事言うの…?

9 22/06/12(日)03:21:27 No.937663170

一口がでけえよ

10 22/06/12(日)03:26:49 No.937663918

夜更かししててよかった!

11 <a href="mailto:s">22/06/12(日)03:27:58</a> [s] No.937664084

>一口がでけえよ 知らねえ 俺だって短くしようとしたんだ そしたらこのザマだもっとおっきく口開けろ

12 <a href="mailto:おまけ1/2">22/06/12(日)03:42:55</a> [おまけ1/2] No.937665948

 好きな人とのキスからは、かわいいリンゴのあじがする。 「これで……その、満足か?」 「照れながら言わないでくださいよ」 「……うるさいな」  あんな誘い方しておいてだけど、私自身は別にシチュエーションにこだわりとかはない。キスしたかったのは本心だけど、映画については悪戯してみたくなっただけだ。まあ普段飄々としているあのひとの珍しい顔を見れたから、タイキさんには今度何かお返しをせねばいけない。  じゃあシチュ度外視で良いのって問われたら、まあそりゃあ私も女の子だから、様々なところに運命とトキメキを感じたい。当たり前でしょう、建前と本音は違うのは。ただ、でもそれ以上に。私はずっと、ずっと…… 「好き、ですよ。ずっと」 「ずっと、なあ……」 「ずっとって言ったらずっとなんです」  ずっとずっとと呟けば、もう一度、触れ合えて。またリンゴのあじがした。いつの間にか辿り着いていたベッドの上で、とわとあいだけのやりとりをすれば。棚に飾っているにゃーさんと目が合っていた。幸運の具現化たるにゃーさんは、いつものように頑張れと応援してくれている、気がした。

13 <a href="mailto:おまけ2/2">22/06/12(日)03:43:26</a> [おまけ2/2] No.937666004

「好きだぞ」  でも、私の視線が周りのものに行くときは大体、余裕がなくなりつつあるときだから。たぶん、これから、色々始まってしまうんだろう。 「ひゃっ……」  耳に、頬に、腕に、鎖骨に。リンゴの香りが伝播する。こういう時でもないとこのひとは、自分の香りを私に付けるのをひどくためらう。でも一回スイッチが入っちゃうといつもこうだ。私をリンゴ色に染め上げて、その姿を見てゆるやかに微笑んで満足するんだ。 「ねえ、早く……」 「もう少し……」 「やあ……じらさないで下さいよお……」  勇気の一歩を踏み出せば、雨の昼間は顔色を変えて桃色の世界へと移り変わる。三年と二年間、一緒に居て。それでもなお好きの総量は増え続けている。一歩も二歩も踏み出したのだし、恐らくきっとこれから先の時間において、二人だけの関係に劇的な変化なんて訪れようもないんだろう。だけど、その。三人、四人と加われば、その限りではないのかも知れない。でも、まあ。それに関してはちょっと気が早いかも知れませんね。えへへ。

14 <a href="mailto:s">22/06/12(日)03:44:05</a> [s] No.937666072

おまけ投げれて満足したので寝ます 良い夢を…

15 22/06/12(日)03:46:23 No.937666359

成せーっ!!成せーっ!!

16 22/06/12(日)03:55:43 No.937667245

もっと粘膜占いしろ

17 22/06/12(日)04:00:17 No.937667646

なにが一口だ トレーナーさんに一晩中いっぱい味わわれちゃってるくせに

18 22/06/12(日)04:38:54 No.937670962

二口目が来た…

19 22/06/12(日)05:34:26 No.937674506

いいぞもっとやれ

20 22/06/12(日)05:37:15 No.937674681

おまけが来てた…ありがたい

21 22/06/12(日)05:42:15 No.937675016

朝のフクは

22 22/06/12(日)05:45:20 No.937675233

健康にいい

23 22/06/12(日)05:52:28 No.937675644

こいつらいっつもいちゃいちゃしてるな

24 22/06/12(日)05:57:51 No.937675980

だってフクとフクトレだぜ?

25 22/06/12(日)06:05:25 No.937676455

子作りぴょいしろ

26 22/06/12(日)06:08:05 No.937676630

あなた呼びいいよね…

27 22/06/12(日)06:10:53 No.937676811

この2人はどれだけイチャイチャさせてもいいとされる

28 22/06/12(日)06:19:39 No.937677479

>こうマジで色々なものたちがクロスや家具に染み込んで えっちな意味にしか考えられなくてごめん

29 22/06/12(日)08:03:04 No.937688099

>あんな誘い方しておいてだけど、私自身は別にシチュエーションにこだわりとかはない。 あのフンギャロ娘が大人になったんだな…ってわかる心中のモノローグが好き

30 22/06/12(日)08:07:35 No.937688776

タイキもデートムービーにはホラーが効くと分かって渡してると思われる

↑Top