22/06/12(日)00:10:49 「みん... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1654960249846.png 22/06/12(日)00:10:49 No.937615360
「みんなびしょ濡れでヘリに乗ってくるんだもんなぁ……」 「ハーッハッハ! すまないねトレーナー君、折角シートをふかふか王座風にしてくれていたのに!」 「それは別にいいけど、風邪をひかないでくれよ」 「ご、ごめんなさぃ……」 「はい! 服も流石に乾きましたしね!」 もうすぐ元の合宿所が見えてくるだろうヘリの中で、友人たちの御喋りを聞きながら私は窓から外を見ていた。空は赤く日はもうすぐ海の中に沈んでいき、光と真逆の方向にはすでに星が見えかけている、月も。 最初は、ヘリに乗って彼に近づくほどにまた勇気が無くなっていくのではないかと考えていたけれど、実際乗ってみれば彼と会って話したいという感情が目的地に近づくほどに増してきている。 前のようにもう一度笑い合う日はもう来ないかもしれない。それでもあの人に伝えたい。もう苦しまなくていい、貴方も空っぽじゃないと。
1 22/06/12(日)00:11:01 No.937615438
「カレンチャンのトレーナーに連絡してみたけど、アヤベさんのトレーナーは殆ど合宿所の方には姿を見せていないらしい。まさかとは思ってはいないけど見つけるには苦労しそうだぞ」 「それなら大丈夫、あの人なら海の近くにいるはずだから……海辺を歩いて探せば見つかるはずよ」 「それでも結構な距離がありそうですねぇ……もう日も落ちてしまいますし」 「ならばボクが夜を照らそう! この太陽のごとき笑顔で!」 「あ、あのぅ……せっかくヘリコプターに乗っていますから……空から探してみるのは……」 全員がドトウの方を向いて、そういえばそうだと口にする。あまりにも今の状況が奇抜すぎて当たり前なことを忘れていた。帰ってきたら恐らく大目玉ということも。 やがて合宿所が見えてきた。まさかヘリを使って合宿所から脱走する生徒なんて歴史上初めてだろう。後世の生徒達はくれぐれもヘリなどで合宿所を抜け出さないように、なんて注意を受けることになるのだろうか、そう思うとなんだか申し訳なく思えてくる。
2 22/06/12(日)00:11:12 No.937615510
「完全に日が落ちる前に海辺を見てみるか」 「えぇ、お願い」 ヘリはそのまま合宿所の真上を通り過ぎて海沿いを走って行く。暗くなってきている海辺には辛うじて日の光が差して赤く染まっているようにも見えた。全員が窓に張り付くようにして目を凝らす。 しかし、合宿所から遠く離れていっても彼の姿は見つからない。海辺にいると思ったのに、もしかしてカレンさんのトレーナーが連れ戻した? それとも、違う海に? 「トレーナー君、宿の方に電話をしてくれたまえ。誰かが連れ戻しているのかもしれない」 「もう日が落ちてしまいます! ライトでもないと探すのは無理ですよ!」 「ひゃあああ!?」 その時、ドトウが真っ青になりながら大声を上げたのでみんながそっちに寄っていく。 「どうしたの!」 「い、い、いましたぁ! が、が、崖にぃ!」 思わず背中に冷たいものが走って、窓から目を凝らす。いた、あの人だ。崖の端に立って見下ろしている、その先は海しかないというのに。
3 22/06/12(日)00:12:19 No.937615959
「彼は何をしている!? 飛び降りる気か! トレーナー君急降下!」 「海辺は風が強い! 急降下なんかしたら墜落するぞ!」 「少しでも低く飛んでください! そしたら私たちが飛び降りられます!」 ぐぐっと重力が下から押し上げてくるような感触共に、ヘリが揺れながら降りていく。だが間に合いそうにない、彼は完全に飛び降りる気だ。 まって、行っちゃだめ、行かないで。まだ、私は貴方と進みたい、貴方がゴールで待つレースで走りたい。まだ、まだ歩き始めたばかりなのよ。私も貴方も。 「トレーナーさん……」 喉奥から絞り出すように声を放つ。祈るように、願うように、小さく、ヘリコプターの音にもかき消されるであろう届かない声。だけど、あの人は確かに上を向いて、そのままへたり込むようにして地面の方へと戻った。
4 22/06/12(日)00:12:33 No.937616046
「うずくまりました……恐くなったのでしょうか!」 「なんにせよ、説得するには今しかない! トレーナー君!」 「今やってる……!」 徐々にヘリが崖の近くまで降りていく。早くあの人の所へ行かなくちゃいけない。今を逃せば次はきっとない。 そうしてギリギリまで地面に近づいたヘリから私達が飛び降りて、顔を上げた時私は確かに見た。 崖の向こう、何もない虚空に葦毛のウマ娘が立っている。その子は私達を見るとしばらくして、まるで落ちるように崖の下へと姿を消した。その時、あの人が座っている崖の先端が崩れた。 あの人の姿が一瞬で消える。 「トレーナーさんっ!!」 走り、飛ぶ。海に沈む音が数秒してもう一つ増えた。
5 <a href="mailto:s">22/06/12(日)00:13:01</a> [s] No.937616281
調子に乗って書いた続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きですすべて許してください あと今までのまとめも許してください fu1155120.txt
6 22/06/12(日)00:30:30 No.937622911
続き来たのか!
7 22/06/12(日)00:31:52 No.937623418
そろそろクライマックスかな ここまで続けられるのはすごいよ…
8 22/06/12(日)00:40:11 No.937626289
>「海辺は風が強い! 急降下なんかしたら墜落するぞ!」 >「少しでも低く飛んでください! そしたら私たちが飛び降りられます!」 一瞬固有再現するのかと思った
9 22/06/12(日)00:43:21 No.937627428
>「トレーナーさん……」 >喉奥から絞り出すように声を放つ。祈るように、願うように、小さく、ヘリコプターの音にもかき消されるであろう届かない声。だけど、あの人は確かに上を向いて、そのままへたり込むようにして地面の方へと戻った。 これが >海の方を向いて、そっと崖の縁に立つ。これで全て赦されるならそれでいいのかもしれない。どうせ生きても何もありはしないのは確かなのだ。足を一歩前に出す。 >「トレーナーさん」 >優しい声色が、自分を呼ぶ声が静かに遠く空の向こうから聞こえた気がした。思わずしりもちをつくように、地面の方へと戻った。心臓が痛いぐらいに動いて、息が荒くなる。 こう繋がるのか...!
10 22/06/12(日)00:43:33 No.937627490
とんでもない曲芸だけどまぁオペトレだからな…で済む
11 22/06/12(日)00:44:08 No.937627657
あー幻聴では無かったのか…
12 22/06/12(日)00:50:07 No.937629793
話の作りが上手いなぁ…
13 22/06/12(日)00:59:30 No.937632812
そうか…遠く空の向こうから聞こえるなんて幻聴か都合のいい妄想だと思ってたから アヤベさんたちが飛んでたことと結びつかなかった…
14 22/06/12(日)01:20:39 No.937638749
引きが上手い続き気になる
15 22/06/12(日)01:40:32 No.937643789
声が届くのいい…