虹裏img歴史資料館

1 22/06/05(日)13:58:09 No.935262739

予報とは裏腹に午後のトレーニング時間は何とか保ってくれた空模様も 夕焼け小焼けの放送が鳴り始めると共に、ぽつりぽつりと限界を伝え始め 十数分もするとざあざあと音を立て、視界の端から端まで天からの雫が地面へと身を投げ続ける 「…うっし！」 間一髪で後片付けを終え、本降りの直前にトレピッピと共に校舎の中に退避したゴールドシップの内心は 学園の皆々の前で噂の怪異をとっちめて魚拓を取る、おもしれー自身の姿で一杯であった 残念なことに、連れ出す予定だった彼女のトレーナーは会議に向かってしまったので ひとりで捕獲用の虫取り網を寮へと取りに向かいつつ、相部屋に住まう大切な友を拉致に向かった しかし、いつもならば同じようにトレーニングを終え シップの戻りを待ちながら暇潰しに労働意欲の失せそうな謎のプラモデルを組み立てている彼女は 部屋に戻った気配すら無かった。…おそらくは趣味の芦毛ウォッチングに向かったのだろう

2 22/06/05(日)13:58:35 No.935262865

ウォッチング中は妨害対策のためかスマホを機内モードに設定されている 長年の付き合いに基づいたヤマカンを土台にした推理力が無ければ居場所には辿り着けない 今も、努力すればルームメイト―――ジャスタウェイの隠れ場所を暴き 怪異退治の道連れにすることは容易であっただろう しかし、今回ばかりは時間が惜しい。目当ての怪異の出現時間はごく短いのだ 何事にも怖じ気つかずマイペースを保つルームメイトはこんな時、何かと頼りになる 一瞬だけどうしようかと逡巡したゴールドシップであったが この拳が怪異に通用するなら物理で倒せるだろうと、単独での調査を決心し ジャージ姿のままで校庭の一角へと足早に向かったのであった

3 22/06/05(日)14:01:29 No.935263757

校庭に立つ大きな木の下。噂通りにぽつんと立っていたそれは 明るめの鹿毛、前髪の中央には大きな流星、そしてハイライトの無い大きく見開かれた両眼 …どこからどう見ても、ルームメイトでマブダチなジャスタウェイの姿であった 「ごん、お前だったのか。いつも、お化けと思われてたのは」 両手でエアトンプソン機関銃をぶっ放すポーズを取りながらゴールドシップは呟いた しかし、何かがおかしい。アイツが奇行に走るのは決まって芦毛ウォッチ絡みと決まっている おはようからおやすみまで暮らしを見つめられ続けているアタシが言うんだから間違いない ちらと背後を伺うが、特段校舎の窓に目立つような芦毛のウマ娘はいない アイツ、一体何を見てるっていうんだ…？

4 22/06/05(日)14:01:57 No.935263895

あの眼、視点の先はどうも曖昧だが、芦毛ウォッチをしている最中のそれだ 何かを視ているのは間違いない。だが、もし。これが本人の意志に反したものだったら…？ 脳裏によぎる良くない展開。怪異に取り憑かれ、視えざる者を視て生命力を奪われ続ける友の姿 そんなケースを振り払うかのように、シップは虚空を見つめるジャスタウェイの両肩をむんずと掴むと ぶんぶんと振りながら必死に呼びかけた 「おい！ジャス、しっかりしろ！お前いったいどうしちまったんだ！！」 数秒すると、ようやくゆっくりと反応したジャスタウェイは ぱちくりと瞬きをしてから、無気力なままの視線を眼前で視界を遮る友の両眼にそれを合わせた

5 22/06/05(日)14:02:15 No.935263991

「あぁ…何かと思えば。我が友、シップではありませんか」 「ジャス、いつもとは斜め上におかしいぞ！一体何があった！？悩み事ならアタシに言ってみな！？」 そう言うゴールドシップの表情には傍目にも悲壮な気配が漂っていたが 対するジャスタウェイは、意に止めていないのか気付いていないのか 数秒間、孤独な思考を巡らせた後、だらりと垂れ下がっていた両手のうち その右手だけをゆっくりと持ち上げ、指先を校舎に向けて指す そして、さらに数十秒にも何分にも感じられる瞬間の後、淡々と告げ始めた

6 22/06/05(日)14:02:49 No.935264169

「校舎の外壁を見てください、我が友」 この異様な雰囲気にそぐわない、普段通り過ぎて一層異様に感じられる声色に シップは促されるまま、背後にそびえる校舎へとさっと振り向いた そこには―――特に何も妙な風景は何もなかった。ただ、雨に濡れて低いところから徐々に 白色から濃灰色へと移り変わりつつある校舎の姿だけであった すうっ、と。シップの友は、深く息を吸ったかと思うとふふっと吐き出し 先程までの死んだ目の無表情とはうってかわったドヤ顔で告げ始める 「あれは逆再生なんですよ。芦毛の」 「……はぁ？？？」 その瞬間まで、割とシリアス成分が多めだったゴールドシップの脳内には その意味不明なワードの意図がフィードバックされるまでかなりの時間を要した

7 22/06/05(日)14:03:18 No.935264313

「我が友。貴女が幼き頃からそうであったように、芦毛とは日々シルクの如く純白へと移り変わる 変化の様も、かけがえのない素晴らしき美しさの１要素なのです」 うっとりと、自身の世界にどっぷりと浸ってしまってしまったかのように ジャスタウェイは両手を掲げながら続けた 「見てご覧なさい、我が友。雨に濡れる校舎を。ミルキーホワイトからダークグレーに変化しているでしょう？ 順序は本来のそれと真逆ですが、美しいではありませんか素晴らしいではありませんか！！！」 ここで、ようやくゴールドシップは理解した 怪異として噂されたウマ娘の正体はジャスタウェイであること しかし彼女は全くの正気で普段通りであること そして、ジャスタウェイが何をやっていたかといえば 雨に濡れて濃い色へ変化する校舎の外壁を、芦毛のそれの逆再生に見立てて ウォッチングしていただけというよく分からない事実を

8 22/06/05(日)14:03:39 No.935264425

このような場合、ジャスタウェイと同室かつ互いを小さい頃から知り尽くしているシップであっても 取れる行動はかなり限られていた 「あぁ、そうかそうか。それは何よりだよ、ジャス」 安心から溜息をついてクネクネと降参のポーズを取ったシップは白状して、しかし次の瞬間 こ　げ つ　ん 友の脳天にグーパンの一撃を突き落とし、彼女の頭部と同じくらいの大きさのたんこぶを生じさせ 「オメェよぉ、他人を怖がらせるのはマナー違反だぜ？」 気を失っている友に説教を垂れつつ、それをズルズルと引き摺って彼女達の部屋へと戻っていった

9 22/06/05(日)14:04:57 No.935264805

怪異は無事に退治された。雨が降っても学園の木陰に鹿毛の生徒が立つ姿は目撃されなくなった ゴールドシップはその前後で自身の行動によるものと軽く喧伝はしたが 証拠物件、この場合は正体がジャスタウェイであったこと―――は一切話さなかったため はいはいと受け流され、原因は梅雨明けによるものとされて怪異ブームも収束していった ジャスタウェイはというと、一応は反省したのか 学園の監視カメラをジャックして雨模様を鑑賞する方式にシフトしたのである 「…あれ、我が友。こんな雨の中、傘も差さず木陰に立っている生徒がいますよ？」 「あー？んな事するのはオメー以外いねーだろうが。ジャスの残像か何かだろ」 「うーん、多重影分身の術は習得した覚えがないんですがねぇ」 秋雨の頃、その怪異はジャスタウェイに関係なく再び現れプチブームとなったが 特に害も無かったこともあってか徐々に注目は薄れ 雨の降り始めに見られる不思議な現象として定着したという

10 22/06/05(日)14:07:07 No.935265476

ウワーッ！怪異が定着してる！

11 <a href="mailto:怪異">22/06/05(日)14:10:20</a> [怪異] No.935266447

ねえちょっと？なんで誰も怖がらないの？

12 22/06/05(日)14:21:50 No.935269922

こんなお昼にジャスタウェイ怪文書だと！？ ありがたい…

13 22/06/05(日)14:30:25 No.935272760

怪異より怪異な思考回路しやがって…

14 22/06/05(日)14:36:08 No.935274879

怪異よりも生きてるヤツの方が怖い定番パターンですよ

15 画像ファイル名:1654407470621.png 22/06/05(日)14:37:50 No.935275540

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

16 22/06/05(日)14:38:30 No.935275775

>1654407470621.png これは怪異

17 22/06/05(日)14:39:44 No.935276209

誰がどう見ても怪異

18 画像ファイル名:1654407841531.png 22/06/05(日)14:44:01 No.935277676

>No.935275540

19 22/06/05(日)14:56:45 No.935281743

まともになりやがって…

20 画像ファイル名:1654408657410.png 22/06/05(日)14:57:37 No.935282029

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

21 22/06/05(日)14:57:45 No.935282076

世界一位に戻ったな…