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22/06/01(水)13:51:51 しとし... のスレッド詳細

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22/06/01(水)13:51:51 No.933821823

しとしと。つめたい。 少しでも私達ウマ娘が走りやすくと汗血流し整備されたターフに雨が降り注ぐ。 それは、私の胸にぽっかりと空いた穴。そこから流れ出る、取り返しの付かないものを洗い流す。 トレーナーの類まれなる槍術。日々の手合わせでは伺い知れぬ、技の応酬。力の底。 剣道三倍段だったか? 人が槍、ウマが簪。 公平を説くにはばかばかしい死合いを終えた後。 雨はふしぎと心地よく。 例えばそれは、彼と勝利を分かち合った後の、汗を流すシャワーに似ていた。 そうだ。あの人。弱い私を支えた人。 私が死ぬというのなら、共に征く道の果てまでと誓ってくれたあの人はどうなった? なんとか霞む目を起こし、愛する人を探すと。 一足。一息に私の首を掻き取れるところに佇んでいた。

1 22/06/01(水)13:52:04 No.933821869

私は夢に届かなかった。折れた。 この傷つきやすい足の話ではない。 折れたのは心だ。 あるとき君は理不尽に打ち勝つ強さを持っていると言ってくれた。 またあるときは底を感じさせぬような遊びある走りに惚れ込んだと。 違う。違う! あの人が美しいと言ってくれた私。それはたしかに強い私ではあった。 同時に、弱い私は悲鳴を上げていたのだ。 あの化け物共。時代が悪かったのだろうか? この弱い足を休めている間にライバル達は一足飛びに追い抜いていく。 潮時だ。私は夢に追いつけないのだといつかの日悟った。

2 22/06/01(水)13:52:17 No.933821920

しかし、伝えられない。 彼の期待を裏切るためか?違う。 私のささやかな虚栄心のためか?違う。 あの人を他のウマ娘に渡したくない。 私の道が閉ざされようと彼のキャリアは続く。 あるいは彼が私と共に終わる道を選んでくれようとも、周りが許さないだろう。 生涯ひとつの花しか育てぬ植木屋が居るだろうか。 彼は新しい花を見つけ、育てるだろう。 それが許せなかった。 独占力。 毒々しく、他を絡め取る花。 彼が植えた種は、私の内でぬくぬくと育ち。ついに大輪を咲かせた。

3 22/06/01(水)13:52:28 No.933821962

しとしとと雨が降る。 うるさい。 どくどくと血が、心臓が私の終わりを告げる うるさい。 聞きたいのはそれじゃない。 しゃらり。聞き馴染んだ音が耳に届く。 探し求めた私の簪の音。 それはいつもと違い彼の首筋から。 彼の血を吸い、瑞々しく咲く。 みつけた。私の花。 届いた。私の最後のわがままに。

4 22/06/01(水)13:52:39 No.933822004

ちん。と。鯉口を切る金属音。 ああ。そうだった。 私の花をきれいと言ってくれた人がもうひとり。 雨だろう。愛する後輩ウマ娘の切れ長の目尻からは雫が垂れ。 「お願いします」 言葉を放ったのは私だったか彼だったか。 一閃。 それを最後に、花弁がふたつ。地に落ちた。

5 <a href="mailto:s">22/06/01(水)13:52:53</a> [s] No.933822062

むらっとして書いた 独占力いいよね 一応続き物だから前のやつ fu1122441.txt

6 22/06/01(水)14:35:16 No.933831523

なに…なに?

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