22/05/27(金)01:02:09 夢を見... のスレッド詳細
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22/05/27(金)01:02:09 No.931857687
夢を見た。星になる夢だ。 私は遥か天空から地上を見渡していて、その先にふとトレーナーさんを見つける。あの人はただその場に立って海を見つめていて、朝になっても夜になっても動くことなく視線を海から戻さない。やがて海の潮が満ちてきて、彼の足まで波がやってくる。それでも彼は動かない。やがて腰にまでやってきても、それでも動かない。 このままでは溺れてしまう、でも声をかけようとしても手を伸ばそうとしても遠すぎる。助けるためには堕ちるしかない。 だが勇気が出ない、宇宙の闇よりも暗い青色へと向かう意思が私にはなかった。だからもっと明るい星々達へと逃げるように昇っていく。海は波を立ててさらに満ちていった。 「アヤベさん?」 ふとカレンさんの声で意識が覚醒する。眼を開けると布団の横で心配そうにのぞき込んでいる彼女の姿が見えた。またうなされていたのだろう。 「ごめんなさい、起こしてしまったわね」 時計を見ればまだ五時前、日も登ったばかりで薄暗い外が見える。安心させるようにカレンさんの頭を撫でながら、そっと微笑む。
1 22/05/27(金)01:02:52 No.931857906
「少し夢を見てしまったみたい。寝直すにはもう遅いかしら」 「アヤベさん……本当に大丈夫なんですか? その……トレーナーさんとは……」 「……大丈夫。どう、一緒に散歩でもいかない? 起こしてしまったお詫びに、缶ジュースでも奢るわ」 「……はい! わーい、どれにしちゃおうかなー?」 少しだけ不安げな顔を誤魔化すように甘えてくる彼女に、また気を遣わせてしまったと申し訳なく思う。 あれから一か月半が経った。トレセン学園の長い夏合宿ももう少しとなり、海の温度が少しだけ冷たくなった気がする。 あの日、カレンさんのトレーナーさんはあの人との出来事を聞いて、安堵と罪悪感のため息を吐いた。 「そうか、死ぬつもりじゃなかったんだな」 「えぇ……でも、ごめんなさい。私は……」 「いや、謝ることはない。アヤベさんは一つも悪くない、悪いのは逃げた俺だよ」 視線を下げる自分の袖をそっと摘まむカレンさんの頭を撫でながら彼は続けた。 「でも、もう戻る気はない。俺はもう選んでしまった」
2 22/05/27(金)01:03:27 No.931858080
それは、これからの人生どんなに幸せな時間が来ようとも、心の隅から浮かび上がってくる罪悪感に苛まれるということであり、それを受け入れたカレンさんもまた例外ではない。 カレンさん達は愛という名の重力によって引き合う2つの銀河になったのだ。いずれ時間がどちらかを弾き飛ばすか、すれ違わせてさらに離れるか、それか混ざり合って一つの新しい銀河を生み出すか。それは彼女達にしかわからない。 確実に分かったのは、あの人を孤独にしてしまったということだ。もはや寄り添う友も離れ、彼のことを知ることができただろう私も拒絶した。 だが彼は、最初から孤独だったのではないか? とも思う。彼には理解者なんて必要なく、寄り添う者も必要ない。海だけが唯一の心の在処なのだ。 でもそれは、間違いなく私の心を誤魔化すための間違った仮説なのだ。けれど私はそれを信じることにした。信じるたびに罪悪感と謝罪の言葉が私の心を埋め尽くすのが、証拠なのに。 「わ、もう海にはクラゲがちょくちょく浮いてる~アヤベさんほら、ふわふわですよ」 「カレンさん、それはぶよぶよというのよ。外見はふわふわしているけど」 「ふふっ、触ったことがあるんですね」
3 22/05/27(金)01:03:50 No.931858197
少しずつ姿を現してきた太陽を、海沿いを歩きながら眺めていく。爽やかな海風が高い気温を冷ましてくれるようで、気持ちがいい。 「カレンさん、今日のお祭り行くんですか?」 「えぇ、トップロードさん達に誘われて……きっといつものメンバーでうるさくなってしまうのだろうけど、それがお祭りだというものでしょうし」 私が微笑むと、カレンさんも満面の笑みを返してくれた。私はあの日からいつも以上に、周りと関わるようになったと思う。この頃よく笑ってくれるとトップロードさんも言ってくれたし、色んなイベントにも顔を出して顔見知りだった人たちと仲を深めることができた。楽しむ、というのはこういうことを言うのだろう。 「……」 「アヤベさん?」 ふと、砂浜を見て脚を止める。波打ち際のギリギリの所にたった1つだけ私達の者ではない足跡が残っていた。すぐに誰のものだかわかる。わざと海で足跡が消えるように歩く人が残した、私だけが気づくような目印。 「……もうそろそろ、みんなも起きてくるわ。部屋に戻りましょうか」 「えっ……は、はい。そうですね! あっ、缶ジュース忘れてませんからね」 「私も忘れてないわ」
4 22/05/27(金)01:04:17 No.931858316
逃げたあの日から一晩明けた後、私の靴箱に1つの用紙と紺色の万年筆が入れられていた。用紙は担当契約解消の手続きのためのもので、トレーナー記入欄の方にはすでにサインがされていた。私はそれを部屋に持ち帰り、誰にも見られないようにそれにサインをした。勝手に付いてくるといった、去るのも勝手なのだろう、当然だ、文句はない。 けど、少し色があせた万年筆はインクが切れかかっていて、たった7文字を書くだけなのに何度もなぞらなければならなくて。それが何故だか悲しくて哀しくて、1文字を書けるたびに涙が出てきて用紙を汚した。そしてあの人とはもう一か月半、顔を合わせていない。 しかし、そう、あの人がいなくなってから私は人並みに笑い、繋がりを求めることができたというのが可笑しい所だ。彼は私の人生の歯車に挟まっていた小さな砂粒だったのだろうか? そうだ、彼は私にとって一歩踏み出すためへの、足かせ、手かせ、邪魔な……。 「アヤベさん……」 少し考え込んでしまって、先に歩いていたカレンさんが振り返って声をかけてくる。大丈夫よ、と言おうとして代わりに嗚咽が喉から絞り出された。
5 22/05/27(金)01:04:59 No.931858520
涙の粒が砂を濡らす前に、寄ってきた波によって海へと帰る。大丈夫、五分もすれば元に戻るから、カレンさんもそんな泣きそうな眼をしないで。 大丈夫、私は大丈夫だから、すぐにこの痛みにも慣れるはずだから。きっとあの子の時のように。きっと。
6 <a href="mailto:s">22/05/27(金)01:05:37</a> [s] No.931858704
調子に乗って書いた続きの続きの続きの続きですどうか許してください
7 22/05/27(金)01:05:54 No.931858773
許さん 胃が痛い
8 22/05/27(金)01:06:57 No.931859111
許せねぇ トレーナーもアヤベさんも幸せにしろ
9 22/05/27(金)01:08:17 No.931859509
許して欲しくば続きを書け
10 22/05/27(金)01:10:07 No.931860050
万年筆ってアヤベさんがクリスマスにプレゼントしたやつじゃん…色褪せてインクも切れかけてたってことはずっと大事に使ってたんじゃん…
11 22/05/27(金)01:13:06 No.931860828
トレーナーにむけていた分を誰かとの繋がりで埋めようとしている…
12 22/05/27(金)01:13:12 No.931860859
来たか…地獄…
13 22/05/27(金)01:14:09 No.931861131
この地獄すごく…すごく読みやすいです…
14 22/05/27(金)01:15:00 No.931861346
明るい曲調だけど歌詞が重い曲が似合いそうな怪文書
15 22/05/27(金)01:15:22 No.931861461
とてつもなく悲しいのに 秋の近づいてる海岸の美しさが文章に現れてて すんなり染みてくるんです…
16 22/05/27(金)01:16:37 No.931861778
これが最終回です、って言われたら怒るけど納得もしてしまう
17 22/05/27(金)01:17:09 No.931861902
酒とか薬に逃避しそうになくてふとした時に消えてしまいそうな儚さがある
18 22/05/27(金)01:19:29 No.931862524
トレーナーの方もアヤベさんを遠ざけたのが優しさゆえだったら悲しいね…
19 22/05/27(金)01:21:29 No.931863070
一緒に過ごした かけがえのない日々 思い出そうとして やめて 見逃してしまった いくつもの大事な場面 想像してみようとして やめて
20 22/05/27(金)01:23:26 No.931863579
>それは、これからの人生どんなに幸せな時間が来ようとも、心の隅から浮かび上がってくる罪悪感に苛まれるということであり、それを受け入れたカレンさんもまた例外ではない。 カレトレもこれ辛すぎるでしょ…
21 22/05/27(金)01:25:22 No.931864088
>これが最終回です、って言われたら怒るけど納得もしてしまう アヤべさんはもう救われてるからな…
22 22/05/27(金)01:28:51 No.931864920
覇王世代…頼む…
23 22/05/27(金)01:29:07 No.931864977
アヤベさんは救われてるから余計な重荷になりたくなくて離れたとかだったら良いですね…
24 22/05/27(金)01:30:56 No.931865451
一流の悲劇より三流の喜劇を見せてくれ
25 22/05/27(金)01:35:23 No.931866521
ほらきた!というよりはただただ悲しい…丁寧な曇らせ…
26 22/05/27(金)01:37:19 No.931866967
助けて覇王
27 22/05/27(金)01:37:25 No.931866995
カレンさん達は愛という名の重力によって引き合う2つの銀河になったのだ。いずれ時間がどちらかを弾き飛ばすか、すれ違わせてさらに離れるか、それか混ざり合って一つの新しい銀河を生み出すか。それは彼女達にしかわからない。 ここ凄いアヤベさんらしい凄いロマンチックな語彙で好き 好きなんだけど重過ぎる
28 22/05/27(金)01:40:04 No.931867582
4人が芸術品として完成する前にぶち壊さなきゃ…
29 22/05/27(金)01:44:25 No.931868638
どうして誰も幸せになれないのさぁ!?
30 22/05/27(金)01:46:44 No.931869192
>この地獄すごく…すごく読みやすいです… するするっと読めるの見習いたいんだよね それでこの内容叩きつけてくるのは人の心が無いんだよね
31 22/05/27(金)01:46:50 No.931869210
大団円ルートもノーマルルートも両方みたい……!
32 22/05/27(金)01:48:32 No.931869548
1周目はここまでで終わりのノーマルエンドで タイトルに戻ると夜になってるやつ
33 22/05/27(金)01:51:15 No.931870170
>1周目はここまでで終わりのノーマルエンドで >タイトルに戻ると夜になってるやつ エンディングを見てタイトルに戻ると新しく続きを見るとか諦めないとか星を見るとかが追加されてるやつ!
34 22/05/27(金)01:51:56 No.931870331
>>この地獄すごく…すごく読みやすいです… >するするっと読めるの見習いたいんだよね >それでこの内容叩きつけてくるのは人の心が無いんだよね この「」に遠慮なしのバッドエンドを書かせたら人の心じゃ耐えられない物をお出ししてくると思う
35 22/05/27(金)01:57:25 No.931871479
アヤベトレの人生の中で自分のために何かした時間なさそう