22/05/26(木)00:44:53 夢見が... のスレッド詳細
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22/05/26(木)00:44:53 No.931511685
夢見が悪いのが悩みだった いつの間にか嫌な場面に立ち会っていて、部分的にその顛末を見届けてしまう 目が覚めるといつもの寝室で、じっとりした胸元をはたいてあれが夢だったことをようやく把握する その時ようやく詰まっていた息を吐いて、今を生きている実感を取り戻すのだ だからこれは現実じゃない。夢だ そう思い込んでも、脚の重みはいやにはっきりしていて、目の前から広がる血だまりから抜け出せない アリウス派からの襲撃から一緒に逃げていた 熟知した通路を息も絶え絶えに駆け抜けて、やっとの思いでシェルターの扉を閉めた うかうかしていられないので次の通路の確認をしようとしていたら、嫌な音が背中から響いたのだ 流れ弾か、それとも自分は庇われたのか、倒れた体は血に沈み、慌てて起こした顔から息が吐ききられる瞬間を見た むせかえるほどの鉄の匂いの向こうで何かを乱暴に叩く音が聞こえる 電気もつかぬ真っ暗な部屋の中でも、赤色だけはよく分かった
1 22/05/26(木)00:45:32 No.931511913
「……の………何か……」 「……には異常……せんが、……心の……深刻……」 何か声が聞こえる。また自分は寝ていたのか さっきまで、何を見ていたっけ。そうだ、確か、先生が、死んで───── 「せん、せ……?」 「おはよう、セイア」 変わらぬ笑みがそこにあった。血の通った人物がそこにいた 生きて、そこにいた 「先生っ!」 「わっ、と」 「せんせいっ……先生だ……生きてる……ちゃんと生きてる……っ」 「……私は紅茶を入れてきます」 「お願いするね」
2 22/05/26(木)00:46:09 No.931512116
死の記憶が塗り替わり、今の経緯を思い出す エデン条約、アリウススクワッド、聖園ミカ、ゲマトリア…… それらの事件で消耗しすぎた。予知に頼って夢の境界が曖昧になりすぎたのだ 決まって予知するのは悪い未来。それと現実の区別が付かないのは致命的だ 夢だと分かっていたから絶望から逃れられたのに、夢だから現実という救いに縋れたのに 何回も死んだ、死なせた、死ぬより酷い目にあった 内容はおぼろげでも、得た絶望は心にこびりつく。二度としたくない経験の中の、二度としたくないという思いだけが積み重なる 「あああっ……うう……う、げほっ、げほっ……」 「大丈夫!?ほら、ゆっくり……吸って、吐いて……」 「げほっ、げぇ……ぅひっ……ひくっ、ふ、ふぅっ……すぅ……」 暖かいにおいに包まれて、ゆっくりと平静を取り戻す 何度も失ったものが、今ここに確かにある ……と信じていたい。いなければ、本当に壊れてしまう
3 22/05/26(木)00:46:35 No.931512245
「ま、またっ、せ、せんせいが、しっ、死んで……私の、せっ、せいっ、で……」 「大丈夫、私はここだよ。ちゃんと生きてるから」 「で、でもっ……これも……またっ、夢かもしれなくてっ」 「セイア」 胸にうずめていた顔を上げられる 優しい顔で、まっすぐ見つめられる。その視界が、頬ごと歪む 「むぎゅ……」 「ほら、ちゃんとあったかいでしょ?」 「うん……」 「頼りないかもしれないけど、私はずっと味方だから」
4 22/05/26(木)00:46:46 No.931512303
……そうだ、そうだった 先生は弱い。力は弱いし、撃てば死ぬ それでもこんなに頼りになるから、先生なのだ どれだけ酷い悪夢に追われても、必ずどこかに居てくれる それさえ覚えていれば、怖いものなんて何もないじゃないか 「先生、もう少し、強く……」 「こう?」 「んふ……そう、それでいいよ……」 強く、固く、確かめるように抱きしめる かすかなぬくもりが頬に触れた
5 22/05/26(木)00:46:59 No.931512385
「……めん、ごめん、セイアちゃん……」 「…………ミカ?」 顔を上げた。ミカが私を抱きしめていた その顔は涙で歪んで、絶望と安堵でぐちゃぐちゃになっていた 「これで、私たちだけは助かるから……」 「ま、待ってくれ、何が────」
6 22/05/26(木)00:47:22 No.931512525
どちゃり、 嫌な音がした。中身の詰まったものが地面に落ちて潰れるような音 無意識で頬を拭った袖が真っ赤に染まっていた 「っ……先生っ、先生……ごめんなさいっ……」 ミカがどこかを見ながら泣いている その方向に、ゆっくりと視線が揺れる 「……あ、ああ」 逆光に影だけで、頭の無い胴体が磔になっていた もう少し視線を下げると、”それ”と目が合った 「これで、私たちだけは大丈夫だから……ね、セイアちゃん……」 固く、強く、確かめられるように抱きしめられる かすかなぬくもりが頬に触れた
7 <a href="mailto:おしまい">22/05/26(木)00:47:40</a> [おしまい] No.931512643
「メ、メルちゃん、これは……?」 「前聞かせてくれた先生でのトリニティでの活躍聞いてたらびびっと来ちゃってさ~!夢と現実の境が曖昧になる少女!唯一心の拠り所となる先生の存在すら曖昧になってしまう!それでも必死に縋りつく少女に死という悪夢が現実として───」 (趣味悪いなぁ)
8 22/05/26(木)01:23:32 No.931523058
メル!(バシィ
9 22/05/26(木)01:49:03 No.931529004
良いですね……
10 22/05/26(木)01:51:25 No.931529544
ナマモノ題材な上に内容がアウトすぎるよメル先生!