虹裏img歴史資料館

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22/05/24(火)00:39:36 泥の15分 のスレッド詳細

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画像ファイル名:1653320376320.jpg 22/05/24(火)00:39:36 No.930809064

泥の15分

1 22/05/24(火)00:49:58 No.930812147

「いやぁぁぁぁ!いやぁぁぁぁ!」 大阪市───の郊外。避難指定区域内を高台からなら目視できるような、そんな地域。 アリアの情けない悲鳴が響いていた。彼女の同僚が聞いたならきっと吃驚しただろう。 普段ぼそぼそと小さな声でしか喋らない彼女が必死で泣き叫んでいたからだ。 彼女は自分の足で立ってはいなかった。腋に抱えられていた。 「あはは、これみよがしに転がってた怪しい死体を見つけた時はさてどう判断したものかと思ったんだけどね!  いるじゃない便利なのが!死霊魔術師なら残留思念の読み取りなんて片手間でしょ?いやー我ながらナイスアイデア!」 にこにこ笑いながら褐色銀髪の麗人がアリアを抱えながら夜の街を歩いて行く。 その足取りは舌を巻くほど靭やかだ。四足獣が足音を忍ばせて歩く様に似ていた。 つい5分ほど前まで降りたシャッターが連なる中からやっと見つけた営業中のたこ焼き屋で舌鼓を打っていたはずなのに…。 突然現れた化け物がアリアを拉致するまでかかったのは10秒だ。アリアは恐る恐る聞いた。 「…あの…断るって言ったら…」 笑ったまま無言で固められた拳を見て、アリアは「ぴっ」と小動物のように怯えて鳴いた。

2 22/05/24(火)00:51:11 No.930812454

かわいそかわいい

3 22/05/24(火)00:52:33 No.930812839

おもしれ…いやかわうそ

4 22/05/24(火)00:54:13 No.930813322

ノッた もうちょっとだけ書く

5 22/05/24(火)01:15:10 No.930819339

駄目だった 1レスに収まらなかった

6 22/05/24(火)01:17:59 No.930820072

2レスでも3レスでも深夜だから良いのよ

7 <a href="mailto:1/2">22/05/24(火)01:33:49</a> [1/2] No.930823440

「いや全然気持ち分かるけど?」 ナナがあまりにもあっけらかんと言うので、アリアは膝を抱えてしょんぼりしながら「はぁ」と気のない返事をした。 奢られたものに口をつけない趣味もなく、紙カップの縁に唇を寄せる。日本のコンビニのコーヒーは驚くほど美味しかった。 「要するにさ、キミはキミ自身の中でキミが大事だと思ったことが最優先ってタイプでしょ?  世間や周囲の価値観なんて捨て置いてね。分かる分かる、私もそうだもん」 「…そうかな。だってナナさん、聖堂騎士の人たちと上手くやってるじゃない…」 アリアにはナナは器用に世間を泳ぎ回れる人間のように見えた。 誰に対しても朗らかで友好的だ。そのままに相手のことを殺そうとするのが歪で怖いけれど。 だがナナは笑って首を振った。 「違うって。そう見えるのはね、彼らも私の一部にしたから。  要するに興味が持てるか持てないかよ。あくまで自分本位なのは変わってないの。  だから私とあなたはその点で似てるわ。ほら、私は色んな方向に興味を持つけどキミは興味を持てるものが少ない。それだけの些細な違いよ」 些細というには大きな違いのように思えて…だがアリアは反論しなかった。

8 <a href="mailto:2/2">22/05/24(火)01:34:05</a> [2/2] No.930823496

“この人、本気でそう思ってる”。 それを直感で察した。同族の臭いが香るのを認めざるを得なかったともいえた。 別に気にしているわけではなかったけれど、自分の社会不適合ぶりを『興味がなかったから』の一言で切り捨てるのは少し小気味よかった。 そうとも。社会的な倫理観。価値観。本当にくだらない。ナナも同じなのかもしれない。 ただナナはそれを大事にしている人々を己の世界に取り込んでいるから譲歩し、自分はそういうものがいないから重視しない。 自分にそういう相手が現れるかどうかはともかくとして理屈としては実に合理的だった。だから納得もできた。 アリアのことを諭そうとか改心させようとかそういうつもりが微塵もない、ただ事実を述べるだけのナナの声音だったから頷けた。 「…ナナさんって変わってますね…」 「はは、相槌打ってあげたいんだけれどこの業界じゃ変わった人間しか見かけないのよねぇ」 紙コップに入ったコーヒーを飲み干しながらけらけら笑うナナに対してアリアは薄く微笑んだ。 まったくだ。自分を棚に上げて語るが、変わり者しかいやしない。 それは目の前で欄干に背を預けてコーヒーを煽る人も例外ではないのだけれど。

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