ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/05/21(土)19:21:07 No.929923070
注意:登場人物が旅立つ描写があります あまりショッキングではありませんが一応
1 22/05/21(土)19:22:42 No.929923581
震える手でなんとか窓とカーテンを開ける。看護師からは身体が冷えるから駄目と釘を刺されていたが、きっともうその心配は無い。 空に広がるのは一面の星々、しかも今日は新月で月の灯りが無い分余計に輝いて見える。 「ねえ、私の人生はどうだった?」 一見何も無い所に語りかけているようだが、これは私の習慣だった。私の代わりに生まれる事が出来ず、私の代わりに運命を背負って消えてしまった妹へ。感じられなくなってもそれはずっと続けていた
2 22/05/21(土)19:23:09 No.929923729
あれから沢山の事があった。URAファイナルズを優勝し、さらにドリームトロフィーでも活躍をした。覇王世代と言われてあのうるさいオペラオー達と一緒にされた事もあったけど、不思議と悪い気はしなかった。 走って、走って、走り続けて、誰の為でもなく私のために、貴女に自慢できる姉であるために走り続けたあの日々。しかしその日がずっと続く訳もなく走れなくなってからの引退。今まで自分を支えてきたものが無くなるのは怖かったけれど、後ろを向けばあの人がずっと付いてきてくれていた。
3 22/05/21(土)19:23:32 No.929923864
レースに出なくなってもあの人は私と一緒にいて、最初はよく分からない人だと思っていたけれど、いつしかその気持ちは「好き」というものだと気付いた。 そしてあの人と一緒になって新たな人生が始まった。色々あって私の中に2つの命が宿った時は不安で押しつぶされそうになったけれど、皆がいてくれたお陰で頑張れた。この手に抱いた命は2つとも確かに生きていて、すごく嬉しくて泣いてしまった。 そんな子もいつしか成長して私と同じ道に進んで、ああ走っていた時の自分はあんなに輝いていたんだなって分かった。
4 22/05/21(土)19:23:55 No.929923990
しばらくすればあの子達が大きくなって家を巣立って行って、また家に2人だけの状態に戻った。あの時に戻ったみたいで、その頃は他の4人も落ち着いた時期だったからまたみんなで集まったりもしたな。相変わらずオペラオーはうるさかったけれどね お正月には孫がやって来て家が一段と賑やかになった。抱き上げると、この私の命が受け継がれている事が凄く嬉しく感じた そのまま過ごしていくのかと思いきやまさかあの人があっさり逝ってしまうなんてね。よく考えればあの人の方が歳上だったから当然だったわ。確かに最初は寂しかったけれど、いつかまた会えると思えば寂しさは薄れていった
5 22/05/21(土)19:24:17 No.929924117
そして私にもその時が近付いてきてる。あっちに行ったら何を話そうかな、いっぱい話したい事があるんだけど、でも最初に聞くことは決まってる 「私、いいお姉ちゃんになれてた?」 窓から病室に風が吹く 夜空に一筋、星が流れて消えた
6 22/05/21(土)19:24:39 No.929924257
気がつくと、病室とは違った所に私がいた。視界全てが真っ白で、でもよく見ると色んな建物があって人がいる ウマ娘もヒトも、色んな人がそこにはいた 「あっ!アヤべさん!ようこそあの世へ!」 そう声をかけられて振り返ると、白い服に背中には大きな白い羽根、そして頭の上に輪っかがある所謂天使がそこにいた
7 22/05/21(土)19:25:17 No.929924497
「あの世...ってことは」 「はい!アヤべさんは先程あちらを旅立たれましたよ。いやぁ近年稀に見る安らかな旅立ちで...そこに至るまでの様々な苦難を見てきたからこそのあの最期は本当に幸せそうな顔で私なんかもう昨日から泣きっぱなしで」 「そ、そう...ところであなたやけに私の事気になってるみたいだけど?」 「そりゃあもう!あなたの妹さんがこちらに来た時にお話を聞いて、それからずっと走ってる所を見てましたから!大ファンなんです!後でサインください!」 目を輝かせながら天使はそう言う。その目の輝きがまるで若い頃の自分のファンみたいで、久しぶりにあの時の気分を思い出していた
8 22/05/21(土)19:25:36 No.929924614
「ってちょっと待って!私の妹って...」 「はい?アヤべさんの妹さんならよくお話もしてて仲良しですけどそれが?」 「詳しく聞かせて!どこにいるの!?」
9 22/05/21(土)19:25:59 No.929924757
天使からあの子の居場所を聞いて走り出す。思い返せばこちらに来てから最初にやるべき事だったのに、随分と寄り道をしてしまっていた(悪い気はしなかったけど)。 やっとあの子に会える、あの子と直接話ができる、そう考えたら脚は軽くなり、あの頃のようにいくらでも走ることが出来た。 目的地に近付いて来ると何か声が聞こえ始めてきた。しかも 「~~~~!」 「~~!~~~~~!」 どうやら2人のようだ。片方は私とよく似た声、もう片方は私が人生の中で1番愛したあの人の声、あの2人に会える!そう思って私はスピードを上げて走り続け最後の曲がり角を曲がる
10 22/05/21(土)19:26:37 No.929924992
「2人とも!久しぶr」 「ジャーン!これは小さい頃初めて触ったフワフワのクッションに抱きついたまま離れなくなってお母さんに駄々をこねるお姉ちゃん!」 「グフゥゥゥゥゥ!な、なんて破壊力なんだ....!だがこれならどうだ!結婚式の帰りに眠くなってタクシーで俺の肩にもたれかかって眠るアヤべ!」 「はああああああ!!!凄く可愛い...!じゃあこれはどう!?勝負服を支給されて1度試着したからもういいのについつい気になってしまってこっそり着るお姉ちゃん!」 「うぐううううう!!そんな事やっていたのかアヤべ!だがこれならどうだ!家族で選んだフワフワの布団で皆一緒に寝るアヤべ!」 「うひゃあああああああああ!と、尊すぎるうううううううう!!!!でもこっちだって」 「随分楽しそうね」
11 22/05/21(土)19:27:29 No.929925298
瞬間、その空間の空気が凍る。2人が振り返ると、そこにいたのは最愛の姉(妻)。 「や、やあアヤべ!久しぶりだな~いつ見ても美人だな~アヤべ!好き!」 「お、お姉ちゃん!いや~菊花賞の後ぶりだね~元気してた?あっこれ?実はね~ここでは記憶を写真みたいにして形にできるんだ~」 「...................」 答えは沈黙、夫婦喧嘩の時もあちらに非がある場合はこれで相手は必ず折れる最強の技である 「「........すみませんでしたああああああ!!!!」」
12 22/05/21(土)19:28:02 No.929925482
「まったく...私が1人で生きてた時もそんな事やってたの?」 「まさか!もうじきお姉さんがこちらに来そうですと言われたから待ってたんだよ!そしたらお義兄ちゃんが...」 「待てよ!そっちだってノリノリでやってただろ俺だけ悪いみたいに言うなよ!」 「何よあんな思い出やこんな思い出まで語ってた癖に!」 「そっちこそ!」
13 22/05/21(土)19:29:38 No.929926005
「2人ともそこまで!もう分かったから...あなた達が私の事をその...大好きだって」 「アヤべ...」「お姉ちゃん...」 「だからその...これからは3人で話しましょう?」 「....ああ!もちろん!」「じゃあ何から話そうかお姉ちゃん!」 「任せなさい、いっぱい話したい事があるから楽しみにね」
14 22/05/21(土)19:31:07 [s] No.929926498
この間久々にアヤべさんのシナリオやったら凄く良くて書いた アヤべさんには向こうで妹に会ったあと沢山お話して欲しいよね
15 22/05/21(土)19:32:01 No.929926823
いいですね再会