22/05/06(金)22:31:40 金曜日... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1651843900577.png 22/05/06(金)22:31:40 No.924761793
金曜日、夜。一週間削りに削った睡眠時間の代償はあまりにも重く、心身の疲労はとっくの昔に限界だった。 歩くたびにフラフラするし、貧血は治らないし、割れんばかりに頭は痛む。死んでないのが不思議なくらいだ。 あぁ違う泣き言なんて考えるな。彼女の受けた痛みに比べればこんなもの、蚊に刺されるより生易しい。 自分で決めたんだ、全部。幸運な事に、俺はこうなる事を自分で決める事が出来たんだ。 だから笑え。独りで帰りを待っている彼女を安心させられるくらいの、とびきりの笑顔を作れ。 再び景色が強く揺れ、眉間の奥まで長い針で貫かれるような激痛が襲い来る。 それでも背筋を伸ばして、声を作って、心の全てを彼女に向けて。出来るはずだ、尊敬する283のアイドル達がファンにそうしてきたように。 「……ははっ」 エレベーターの鏡に映る蒼白い幽霊の笑顔は、なんだか笑えるくらいに不気味だった。 鉄のように重いビジネスバッグを引き摺るようにして、無限に延びた廊下を彷徨う。 あと少し。ドアに手を掛けて、開いて、そうだ、ほら彼女が待ってる、泣きそうな顔で待っている。 笑え、笑──
1 22/05/06(金)22:33:03 No.924762485
た、倒れてる…
2 22/05/06(金)22:35:00 No.924763520
倒れていたのか眠っていたのか、微睡む意識ではそれさえ分からない。喜劇の幕が上がるように、重い瞼が独りでに開いていく。 一番先に飛び込んできたのは彼女だった。感じたのは生命の温度だった。 同時にそれをハッキリと感じられるほどに凍え切っていた自分の体温にも気が付いて、それがほんの少し恐ろしくなる。 そうなるのは彼女達を、せめて彼女を羽ばたかせてからにしてほしいと、信じてもいない神にその時だけ祈った。 「霧子」 彼女は言葉を返さなかった。仰向けに寝転がる俺の頭を柔らかな膝にのせて、不器用に動く右手でずっと髪を撫でていた。だらんと垂れ下がった利き腕は所在なさげに床を向いている。 夜空のように大きな瞳からは大きな涙が次々に溢れ出して、夏の雨みたいに暖かく頬を濡らした。 「ごめんな、霧子」 「ごめんなさい……」 何を謝るのか、何故謝られるのかは分からない。ただ彼女を見て、心から謝りたいと感じていた。 「ごめん」 「ごめん、なさい……」 零れ落ち続ける涙を見上げながら、彼女もきっとそうなのだろうと思った。
3 22/05/06(金)22:38:01 No.924765143
静かな時間を掘り砕くように振動するスマートフォンが、上着ポケットの穴底から新たな仕事の到来を告げる。 半ば脊髄反射的にそれを手にしようと伸びた右腕は、しかし彼女の腕に阻まれてその道を断たれた。 「だめ……です……」 あまりにも遅きに失しているが、間抜けな自我はこの瞬間に初めて彼女が心底怒っている事に気付いた。 問答無用。意思のこもった彼女の細腕があんなに震えているのだから、これ以上肉体を酷使する事は許してもらえそうにない。 でもなぁ。緊急の案件だったりしたら結局後ですごく困るんだけどなぁ。 「ダメかぁ。じゃあご飯食べて、お風呂入って……少し話して、もう寝ちゃうか」 思った事は口にせず、あくまでも自由意志の体で彼女の願いを叶え続ける。今の全ては彼女のためにあるのだから。 頷いたのを確認して、そっと涙の伝う頬を撫でる。シャワーで濡れた長い銀髪を丁寧に乾かして、不安になるくらいふんわりしたパジャマに左袖を通す手伝いをする。 買い替えた広いベッドの中でそれでも胸元へ潜り込んでくる彼女をなるべく優しく抱きしめて、あまりに傷ついたこの一日はようやく安楽死させられるのだった。
4 22/05/06(金)22:38:13 No.924765274
美しいです…☺
5 22/05/06(金)22:39:08 No.924765742
^^
6 22/05/06(金)22:39:23 No.924765887
>間抜けな自我はこの瞬間に初めて彼女が心底怒っている事に気付いた。 にぶちんです…
7 22/05/06(金)22:40:57 No.924766716
暗闇の方が居心地が良くなってしまったのは、安らかに眠る貴方の顔をずっと見ていられるからだと思う。 私が傷付けてしまった人、私を傷付けている人。 私を抱きしめてくれる人、私を閉じ込めてしまう人。 私を罰し続けている人、私を赦し続けてくれる人。 眠っているはずなのに、細心の力加減で背に回された腕に包まれた小さな身体はどうしようもなく悦んでいて。 すっかり痛んでしまって邪魔なだけだった長い銀髪も、今ではすっかり貴方の虜。微かなバラの香りまで浅ましく漂わせて、手入れのためにどれだけの時間を貴方に割かせたのかなんて考えもしないで。 「ごめん、なさい……」 何度探してみても、それしか言葉が見つからなかった。 「ごめんなさい……」 誰にも傷ついて欲しくなかった。でも、既に何もかもを傷付けてしまっていた。 許されたくなくて、でも赦してほしくて、精算を迫る過去と未来を振り払いながらパジャマ越しの胸板に顔を埋める。 明日の私へ。どうか、こんな私ではありませんように。
8 22/05/06(金)22:42:35 No.924767560
回復の兆候が見えてきて身構えましたがドロドロで安心しました…
9 22/05/06(金)22:42:53 No.924767714
霧子は可愛いかー!
10 22/05/06(金)22:42:59 No.924767772
霧子さんの身代わりにだんだん腐り落ちていくプロデューサーさん…!!!
11 22/05/06(金)22:43:47 No.924768195
>回復の兆候が見えてきて身構えましたがドロドロで安心しました… 病院行くけん 頭のとよ
12 22/05/06(金)22:44:44 No.924768720
霧子さんに必要なのは病院じゃありません!美しさを縫い留めるための額縁ですーー!!!
13 22/05/06(金)22:45:09 No.924768969
いのちが闇の中のまたたく光だとするなら 光の中に落ちる深い影のようなこの二人の関係は死を連想させます!
14 22/05/06(金)22:45:51 No.924769314
>いのちが闇の中のまたたく光だとするなら 例え方が魔王か何かなんだよ
15 22/05/06(金)22:47:14 No.924770047
霧子さんのせいで傷付いていくプロデューサーさん…霧子さんのおかげで死の淵から呼び戻されるプロデューサーさん… 美です…美しかありません…
16 22/05/06(金)22:51:38 No.924772366
絶対に体を重ねたりしないだろう乾いた信頼感があたしを狂わせます…
17 22/05/06(金)22:53:14 No.924773212
無理を続けてもいずれ来る決定的破局から目を逸らしながら虚飾に満ちた日常を送り続けまーす! お互いを慈しむ愛があるのにかえってそれが二人を傷つけるんでーす!
18 22/05/06(金)22:54:29 No.924773828
お互いがお互いの首を真綿で締めながら口付けで酸素を送り合う関係… 美しいでーす…
19 22/05/06(金)22:56:15 No.924774786
なんつーか、芸術を見つけるとポエマーになるっつーか
20 22/05/06(金)22:56:43 No.924775014
退廃的なのはだめよ…よくないわ…
21 22/05/06(金)22:57:09 No.924775258
>絶対に体を重ねたりしないだろう乾いた信頼感があたしを狂わせます… 強く抱きしめ合いますが……唇を重ねようとするとどちらともなく身を引いてしまうのが……良きものだと存じます……
22 22/05/06(金)22:58:14 No.924775790
>退廃的なのはだめよ…よくないわ… 確かによくはないかもしれません! でもこの美しさだけは誰にも汚せない真実でーす!
23 22/05/06(金)22:58:20 No.924775842
サラットイッショニオフロシテルヨインゼチャン!
24 22/05/06(金)22:59:17 No.924776330
>お互いがお互いの首を真綿で締めながら口付けで酸素を送り合う関係… なんか言い回しに普通に感心してしまった
25 22/05/06(金)23:01:21 No.924777291
>なんつーか、芸術を見つけるとポエマーになるっつーか 芸術は鑑賞者が居てこそ成り立つんですー!
26 22/05/06(金)23:05:57 No.924779529
また放クラが集結してる…
27 22/05/06(金)23:10:11 No.924781825
さっさとセックスして子供でもできれば状況も変わるっすよ
28 22/05/06(金)23:13:55 No.924783803
>さっさとセックスして子供でもできれば状況も変わるっすよ バカねあさひ 今の幽谷霧子に命が背負えるわけないじゃない…美しいわ…
29 22/05/06(金)23:14:50 No.924784273
>今の幽谷霧子に命が背負えるわけないじゃない… そうだね… >美しいわ… お前もか
30 22/05/06(金)23:17:40 No.924785577
幽谷霧子はね いつか終わりが来る優しい御伽噺の中で輝き続けるのよ