ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/05/02(月)20:04:20 No.923214427
微かな浮遊感とともに暗転した視界が戻ってくる。足元に輝く魔法陣を見やりながら、彼は眩暈から立ち直るように膝を伸ばした。半ば強制的な召喚によってこの世界に降り立った以上、彼の体は生身ではない。それに限りなく近い霊体――英雄霊だ 英雄、か。 彼は知れず自嘲した。かつて事実そうであった自分が、今は邪教の走狗に成り下がっている滑稽さ。もし今の自分を知れば人々は笑うだろう。かつて自分達に救われた、あるいは救う事ができなかった民草でさえも。だがそれでいい。つまり自分達に託された、最後の使命を知られていないという事なのだから。 だから好都合だ。そう思われているうちに竜の力に目が眩んだ者たちを力づくでも追い返さなければならない。邪竜の被害に苦しむ者を少しでも減らしたい。 それが騎士団長たちへの、散っていた本物の英雄たちへのせめてもの手向けだ。 そう思い、彼は剣を握る手に力を込めた。この剣と盾、そして鎧はいつだって彼の心に尽きない力を与えてくれた。 共に呼び出された英雄霊は半裸の貴公子だった。