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22/05/01(日)01:02:58 『勝ち... のスレッド詳細

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22/05/01(日)01:02:58 No.922585430

『勝ちなさい』 幼い頃より、繰り返し教えられてきた。 『英雄になりなさい』 勝つこと。歴史に名を残すこと。 『栄光を示しなさい』 それが私の全て。そのために自分を磨き上げてきた。 私という存在を歴史に刻む。そのためなら、どんなに険しい道のりだって踏み越えてみせる。

1 22/05/01(日)01:03:37 No.922585638

──曇り空の下、乙女の雄叫びが木霊する。 「はあぁああああああああああっ!!!」 ピンと聳り立つ耳。跳ねる尻尾。 気合と共に両腕が押し出すものは泥に沈んだ白い車。渾身の力で踏み締める地面はぬかるんでおり、細くしなやかな足は足首まで埋まっている。 「動……けぇええええええっ!!!!!」 泥でスタックした車を数人のウマ娘の力で押し出す。それ自体は稀に見られる光景であるが、今は彼女ただ一人。いくら力が強いウマ娘といえど、1tを超える車体を一人で押し出すのは容易ではない。 「……! 今よ!!」 だが、一念岩をも通す。 華奢な体躯から捻り出されたバ力が、タイヤを泥濘から押し出す。彼女の合図と同時にアクセルが踏まれ、白い車は無事にスタックから抜け出した。

2 22/05/01(日)01:04:50 No.922585979

「本当にありがとう!」 車から降りて彼女に頭を下げる。 理事長に頼まれて荷物の配達を請け負ったはいいが、道の途中で車が泥濘にハマってしまったのだ。 ロードサービスを頼んでも、間違いなく配達は遅れてしまう。 途方に暮れている俺に、偶然近くを通りかかった彼女が力を貸してくれたのだ。 「君のおかげだ。何かお礼を……」 「構わないわ。力を持つものの責務を果たしただけだもの」 息を整え、どうということはないと返す彼女。 彼女が身を包むトレセン学園のジャージは余す所なく泥と汗に塗れていた。 だというのに、その立ち姿にはどこか気品というか──強い芯があるように感じた。

3 22/05/01(日)01:05:24 No.922586132

「それより時間はいいの? 配達を頼まれているのでしょう?」 「あ、確かにそろそろ行かないと……そうだ。君、名前は?」 せめて名前だけでも聞いておきたい。服装からしてトレセン学園の生徒であることは間違いない。名前だけでも知っておけば、何かお礼をする機会もあるかもしれない。 「……ふふっ」 俺の質問に、彼女は胸を張って誇らしげに笑って。 「ジェンティルドンナ。覚えておきなさい。近い将来、ターフを統べる領主の名前よ」 泥にだらけにも関わらず、少しも美しさを損なわない微笑み。 まるで宝石のように綺麗で──真っ直ぐに前を見詰める瞳に、本来の目的も忘れて見惚れたのだった。

4 22/05/01(日)01:05:54 No.922586262

──ジェンティルドンナに恩返しをする機会は、思いの外早く訪れた。 「……大丈夫か?」 「え、ええ……」 彼女の手を取り、その細い腰に抱き寄せるように腕を回す。まるで社交ダンスのようなポーズだが──現状は、残念ながらロマンチックさのかけらも無い。 「離してくれる? もう大丈夫だから」 「あ、ああ……ごめん」 ジェンティルドンナから手を離し、そっと離れる。 彼女の数センチ後ろには不自然に陥没した地面。明らかに人の手で掘られた穴の底にはクッション材らしきスポンジのような白い塊が大量に敷き詰められていた。 ……所謂落とし穴である。それもバラエティ番組でよく見かけるような本格的な作りで、殺風景な校舎裏から酷く浮いているように見えた。

5 22/05/01(日)01:06:22 No.922586406

ほんの小一時間ほど前に遡る。 トレセン学園の廊下でジェンティルドンナと偶然再会した時、彼女は大量の荷物を抱えていた。 「あ、君は」 「あら。また会ったわね」 まるでジェンガのように積み重なった段ボールの塔は見ていてハラハラさせるが、その土台となるジェンティルドンナの腕は小揺るぎもしていない。非常に優れたバランス感覚と強い体幹に感心させられる。 「その荷物は? 凄い量だけど」 「先生方から頼まれたの。本当は私の他にもう一人いたんだけど……急用が入っちゃってね」 「なるほど。手伝うよ」 「必要ないわ。私一人で十分よ」 胸を張って答えるジェンティルドンナ。そのの言葉は強がりではない。力強さに満ち溢れた佇まいには一人でも成し遂げてみせるという説得力に満ちている。 力を持つものの責務──先日の別れ際にジェンティルドンナはそう言ったが、彼女は学園生活においてもその言葉を実践しているようだ。

6 22/05/01(日)01:07:17 No.922586681

しかし── 「いや、手伝うよ。君に力あるものの責務があるのなら、俺には指導者としての責務がある」 「……なに? 私をスカウトしたいの?」 「いや、そうじゃないけど……ダメ?」 「……あなたって、変な人ね。どうしてもと言うなら止めないけど」 先日のこともあり、そのまま行かせることは気が引けた。 こうして彼女の荷物の三分の一程を受け取り、共に先生方から頼まれたおつかいへ。 後は職員室へと戻るだけ──の筈だったのだが。 「ありがとう。後は──きゃっ!?」 職員室への帰路の途中、近道をしようと校舎裏を通った時に、突然ジェンティルドンナが体勢を崩したのだ。

7 22/05/01(日)01:07:40 No.922586777

「──っ!」 反射的に手を伸ばし、ジェンティルドンナを引き寄せた。あと少しでも遅れていたら、彼女はクッション材と共に落とし穴の底に埋もれていただろう。 「驚いたな。誰の仕業だろう」 「無駄に本格的な落とし穴……それにバラエティじみた仕掛け。こんなことをするのは──」 ジェンティルドンナは乱れた髪を整えながら辺りを見渡し──近くに生えている、一際高い木に目を付けた。 そして息を整えながらその根元へと歩み寄り、 「──あなたぐらいでしょうね!」 思いっきり、蹴り上げた!

8 22/05/01(日)01:07:55 No.922586836

グラグラと揺れる木。ハラハラと舞う木の葉。そしてボトリと落ちて来る──1人のウマ娘。 「──ハッ、やるじゃねえか。土の中にも三年。オマエもセミの気持ちがわかるようになったみてーだな」 「そうね。セミのように儚く散りたいならそう言いなさい」 それは破天荒の名で知られるウマ娘、ゴールドシップ。この落とし穴を仕込んだのは彼女のようだ。 五体投地で髪はほつれジャージは薄汚れているにも関わらずキラリと歯を白く光らせるキメ顔。 困惑の二文字しか浮かばない状況だが、ジェンティルドンナにとっては慣れっこらしい。 淡々とゴールドシップに歩み寄っている。 「悪ぃがアタシはまだ生きた証を響かせてねえからな! また来週!」 「あ! 待ちなさい!」 そして次の瞬間、勢い良く起き上がり木々の間を縫うように去って行くゴールドシップと、それを追い掛けるジェンティルドンナ。 ポツンと一人残された俺はさてどうするかと首を傾げていると──

9 22/05/01(日)01:08:18 No.922586935

「あの、トレーナーさん……ですよね?」 「うん?」 そんな風に控えめに声をかけてきたのは、黒いメンコの上から左耳に青いリボンを巻いたウマ娘。 「ありがとうございます。ドンナちゃんを助けてくれて……本当は、私がやらないとだったんですけど」 「ああ……君が、ジェンティルドンナが言っていた」 もう一人いたが急用が入ってしまった、と。 本来いる筈だったもう一人のウマ娘が彼女なのだろう。 「はい。ヴィルシーナといいます」

10 22/05/01(日)01:08:36 No.922587009

穏やかな雰囲気で、どこかジェンティルドンナとは対照的なものを感じる。 ヴィルシーナは柔らかな微笑みを浮かべると、ペコリと頭を下げて。 「あの……お願いがあるのですが……」 「うん?」 「よかったら、ドンナちゃんのことを気にかけてあげてくれませんか? ドンナちゃん、凄く優しくて凄く頼もしいんですけど……凄く、頑張り屋さんなので」 力を持つものの責務を果たしただけだもの──と、思い出すのは先日のジェンティルドンナの言葉。普段かジェンティルドンナは多くの人から頼りにされているのだろう。 「ああ。わかったよ」 責務──ジェンティルドンナの立ち振る舞いは立派なものだが、何が彼女をそうさせているのか。 もっとジェンティルドンナのことを知りたいと思いながら、ヴィルシーナに頷いた。

11 22/05/01(日)01:09:36 No.922587306

──それから数日後。 トレセン学園のグランドを、今日も多くのウマ娘達が駆け抜けていく。 無敗の三冠を成し遂げた皇帝やトリプルティアラを飾った女王。 スターウマ娘が集う中央トレセン学園においては、日常のトレーニング風景ですら多くの注目を集めている。 そして注目を集めるのは、デビュー前のウマ娘も例外ではない。 「は──っ!」 トレーニング用のコースを駆け抜ける一人のウマ娘──ジェンティルドンナ。 未だトレーナーが付いていない身でありながらも、態勢万全と言って差し支えないタイムを残している。

12 22/05/01(日)01:09:50 No.922587372

「来年が楽しみだな……」 「クラシック三冠かトリプルティアラか……」 周りのトレーナー達も口々にジェンティルドンナに期待を寄せている。かく言う俺もその一人だ。 そして、走り終えたジェンティルドンナに一人のトレーナーが歩み寄っていく。 ジェンティルドンナをスカウトするつもりのようで、意気揚々と声をかけに言ったが── 「なぁ、君」 「お生憎様だけど、今の私は誰かと組むつもりは無いの」 ──彼女の一言で、あっさりと肩を下ろして帰っていった。

13 22/05/01(日)01:10:33 No.922587583

『才能ある彼女は己に釣り合うトレーナーが現れるのを待っているのだ』 ジェンティルドンナがスカウトを断っているのは少し有名な話で、そんな噂が流れていた。 確かに彼女と何回か会話をして、常に高い目標を抱いているとは感じたが──果たして、それだけなのだろうか? もう少しジェンティルドンナのことを知りたい。彼女と話をしてみたい。 そう思って、彼女へと歩み寄る。 「お疲れ様。良い走りだった」 「あら、貴方は……ありがとう、でもまだ足りないわ」 「そうか?」 走りもフォームも申し分ない。デビュー前のウマ娘としては十分過ぎる内容に見える。 身体能力も非常に優れている。特にバネには目を見張るものがある。 それでもまだ満足していないというのは……どれほど高い目標を掲げているのだろうか?

14 22/05/01(日)01:11:21 No.922587788

「ええ。私が目指すものは英雄……いえ、英雄を越えた存在よ。一着至上主義のね」 「!……成程」 『英雄』と『一着至上主義』 この二つの言葉が当てはまるウマ娘を知らないレース関係者はいない。 デビューから無敗の快進撃を続け、三冠を勝ち取り深い衝撃を残したウマ娘。 彼女が目指す到達点がそこであるのならば、確かに現段階でどれだけの結果を残しても満足には程遠いだろう。 「そうか。でも、君はどうして……?」 『英雄』を目標に、と言葉を続けようとした瞬間に。

15 22/05/01(日)01:11:32 No.922587832

「……ハっ!」 ジェンティルドンナの右腕が、一瞬ブレて。 次の瞬間、彼女の手には一本の矢が──先端が吸盤になっている、玩具の矢が握られていた。

16 22/05/01(日)01:12:07 No.922587980

「……ちょっと失礼するわね」 振り向き、槍投げの体勢を取るジェンティルドンナ。彼女の目線の先には玩具の弓を持ったまま固まっているゴールドシップ。 「あ、やべぇ」と。そんな風にゴールドシップの唇が動いた時には、既にジェンティルドンナの手から矢が投げ放たれていた。 「なんの! まめちんシールドの術!」 「は?──ふぎゃっ!?」 しかしただではやられぬゴールドシップ。たまたま側にいた艶やかな黒髪のウマ娘──フェノーメノを盾にして、反撃をやり過ごしたゴールドシップ。 額におもちゃの矢がクリーンヒットして、悲鳴を上げるフェノーメノ。 「……あ」 ジェンティルドンナ、ゴールドシップ、フェノーメノ。 三人の間でほんの一瞬訪れる気まずい沈黙。

17 22/05/01(日)01:12:27 No.922588076

そして―― 「待ちなさい!」 「待てえええええっ!!!」 「ヘイヘーイ! そんなんじゃアタシのパトスは止めらんねえぜ!」 次の瞬間には、駆け出したゴールドシップを追って走り出すジェンティルドンナとフェノーメノ。 鬼気迫る表情の二人に対して、ゴールドシップは舌をペロペロ出しておちょくる表情だ。 「ドンナちゃん、楽しそうだな……」 「ふふ……シップ……」 そんな三人を眺めている他のウマ娘達。どうやら彼女達にとって日常茶飯事のようなものらしい。 しかし、真面目とは到底程遠い光景でありながら三人の走りの才能にはトレーナーとして目を惹かれるものがある。 選抜レースの日が楽しみだ。

18 22/05/01(日)01:12:55 No.922588207

そこから数日後に迎えた選抜レースの日で――ジェンティルドンナは二着で終わった。

19 22/05/01(日)01:13:37 No.922588395

『一着は三番! ジェンティルドンナも追い込みましたが二着――!』 ――その日は、雨が降っていた。 バ場状態は不良となり、ジェンティルドンナは後方の外から差を詰めるだけに終わった。彼女が目指すところが『一着至上主義の英雄』であるならば、無敗の三冠への一歩から躓いてしまったわけだが―― 「……ふ!」 ゴール板を駆け抜けた後、立ち止まって雨空を見上げていたジェンティルドンナ。 しかし自分の頬を叩くと、ズンと力強い一歩を踏み出し―― 「貴方!」 「え、俺?」 「ええ。見ていたでしょう、今のレース」 こちらを指さし、歩み寄って来たのだった。

20 22/05/01(日)01:13:52 No.922588455

「私は、敗北したわ」 「……そうだな」 「あなたはどう思った? 今の私の走りについて」 強い、と思った。 全力で駆け抜けての敗北。常に高い目標を抱く彼女にとって、悔しいに違いない。 それでも敗北に挫けることなく、常に前を向いている。 雨に塗れて、泥を被って、それでも輝きを失わない瞳。 それは、初めて出会った時と変わらず気高くて―― 「綺麗だと、思ったな」 ぽかんと、ジェンティルドンナが目を丸くして口を開けた。

21 22/05/01(日)01:14:29 No.922588618

「数バ身の差があっても、周りが諦めていても、最後まで届くと信じて前を向いていた。絶対に勝ちたいと思う気持ちが伝わって来たな」 呆気にとられた表情を浮かべているジェンティルドンナ。 それから彼女は何度か己を頬を軽く叩くと、気を取り直す様に溜息を吐いた。 「……あなた、スカウトじゃなくてナンパしに来たの?」 「まさか。レースの内容で言えば……今日のバ場状態と展開で言えば仕方ない部分が多かったよ。次のレースでは絶対に勝てる」 「ふぅん……?」 「それでも、強いて言うなら――少し、お上品だったかな」 「……は?」 再び、彼女が目を丸くした。

22 22/05/01(日)01:14:52 No.922588705

「繰り返し言うけど、今日のバ場状態であれば仕方がない結果だ。万全であれば君が差し切っていた」 「……もしもの話だけどね」 「ああ。そして今から俺が話すのも、もしもの話だ。君は最終的にバ群の外から差しに行ったけど――君なら或いは、バ群の中に突っ込んでいっても勝てたんじゃないかな」 「前が固まっていたのよ? 壁に塞がれて終わりじゃない」 不良バ場に足を取られて上手く進めないウマ娘たちの中、一着の子は見事に逃げ切って勝利を収めた。それが今日のレースの結果だ。 「どうかな。君の強さと、前を諦めない意志があれば……ほんの一瞬でも道が開けば、そこをこじあけることは出来たと思うよ。  ……でも、また繰り返しになるけど。今日のバ場状態で言えば仕方ない話だ。周りの子達も未デビューでレースに慣れていない。不良状態の足元で無理に仕掛けて事故でも起きたら大変だ」 「……そうね。でも、あなたの言葉は覚えておくわ」 「光栄だ」 それじゃあ、次も期待している。そう言い残して、俺は踵を返すが―― 「……待って」

23 22/05/01(日)01:15:16 No.922588803

「?」 「それで、何か続く言葉は無いの?」 「いや、言いたいことは言い切ったけど……」 「そうでなくて!……その、『自分なら勝たせられる』とか……」 「ああ……」 スカウトしないのか、と暗にそう聞いているのか。 勿論できることならしたい。10年――いや、それ以上に長い時間をかけてもジェンティルドンナに並びうる才能の持ち主が現れることは稀有だろうから。 「そうだね、できるなら勿論したい。でも、それ以上に君のことが知りたい。それに」 「それに?」 「多分だけど――君は、今の自分は相応しくないと考えてるんじゃないかな?」

24 22/05/01(日)01:15:53 No.922588950

あれだけ高い目標を掲げているジェンティルドンナがスカウトを断っている理由。 それは、己に釣り合うトレーナーを探していることなのは間違いない。 でも、それだけじゃない。 そんな素晴らしいトレーナーに見合うだけの自分を――最低でも自分で自分を認められるほどの結果を出さねば、その資格は無いと考えているのではないだろうか? 「っ!……あなたは……」 「……うん。次のレースも楽しみにしてる。身体を冷やさないようにね」 少し話が長くなってしまった。 自分のバッグの中からジェンティルドンナにタオルを渡し、選抜レースの場を後にした。

25 22/05/01(日)01:16:22 No.922589058

――身なりを整えてルームメイトの待つ部屋に戻る。 「ドンナちゃん、お疲れ様! 次は絶対勝てるよ……!」 「ありがとう、シーナ」 慰めの言葉を用意して待っていた同居人に返事を返し、ベッドに腰掛ける。 思い出すのは今日のレース内容と、彼の言葉。 『少し、お上品だったかな』 「……あんなこと言われたの、初めてよ……」 強く、そして気高く勝つ。 今までそう心がけてきた私に、あんな言葉をかけてきたものはいなかった。

26 22/05/01(日)01:16:42 No.922589137

「……シーナ。私はもう寝るわ」 「うん、おやすみなさい」 不良バ場での疲労がまだ残っている。寝巻に着替え、部屋の明りを消す。 『綺麗だと、思ったな』 「……本当に、初めてよ……」 「?……ドンナちゃん、嬉しそう……?」 最後にもう一度彼の言葉を頭に浮かべて――私は、目を閉じた。

27 22/05/01(日)01:17:01 No.922589210

――続く一月後の選抜レースで、ジェンティルドンナは見事に勝利を収めた! 「先頭は抜けたジェンティルドンナ! ゴールイン!」 後続に差を付けての完勝。 高く腕を掲げる彼女に駆け寄る。 「おめでとう! ジェンティルドンナ――!」 「……来なさい」 「へ?」 ジェンティルドンナに腕を掴まれ、グイグイと引っ張られていく。 果たして俺は彼女にどこへ連れて行かれるのだろうか――?

28 22/05/01(日)01:17:25 No.922589318

「どうぞ。パリの老舗の茶葉よ」 「ど、どうも……」 使用人が、執事とメイドが何人もいるようなお屋敷。 まさか、そんな物語の中でしか見たことがない場所が存在していたとは。 そして、そこにジェンティルドンナの来客として招かれるとは……。 「……君は、ここのお嬢様なのか?」 「ええ、そうよ……そんなに硬くならなくても大丈夫よ。楽にしてちょうだい」 「そ、そうか……」 使用人の方から淹れてもらった紅茶に口をつける。 恐らくは良いものなのだろうと思うが――それ以上に、食器やテーブルがいくらするのか気になってしまう……!

29 22/05/01(日)01:17:40 No.922589391

「……ふふ。なんだかスッキリしたわ。アレだけ言ってきた人がこんなに慌てているんだもの」 「うっ……」 先日の選抜レースの後のことを言っているんだろう。気まずさで少し縮こまる。 「すぐに慣れるわよ」 「……だといいけど」 「そうでなくては困るわ……でなければ、私達の悲願は背負いきれないもの」 そう言って彼女は壁に掛かった飾りを指さす。 それは黒地に赤い十字の紋章。それが意味するものは、トレーナーであれば即座にわかる。

30 22/05/01(日)01:18:21 No.922589567

「そうか……君は、あの倶楽部に所属していたんだな」 レース用のトレーニングが幼い頃からできるウマ娘育成倶楽部は幾つか存在している。 その中でも、あの黒と赤十字の紋章を掲げている倶楽部は多くの有力なウマ娘が所属しており、加入条件が非常に厳しいことで知られている。 「ええ、代々ね。私の家は今までレースに多くの貢献をしたきた。あなたもそうありなさいと育てられてきたわ」 「そうか。それで君は……」 レースへの最大の貢献。それはGⅠの勝利。 であれば、目指すところがその頂点に近い存在――『英雄』であるのも頷ける。 「勿論、それだけじゃないけれどね。例え私が他の家で産まれ育ったとしても、勝利への渇望は揺るがなかったでしょう」 「確かに、そんな気がするな」

31 22/05/01(日)01:19:07 No.922589761

ジェンティルドンナの言う通り。きっとどこで生まれて育っても、彼女はその在り方を変えなかっただろう。 「……それで? 何か、言うことはないの?」 「ああ!」 ジェンティルドンナは選抜レースを勝利した。 俺はジェンテイルドンナのことを知った。 だったら、やるべきことは一つだけだ。 「ジェンテイルドンナ! 一緒に、トゥインクル・シリーズを駆け抜けよう!」 「ええ、喜んで。共に、ターフを平定しましょう」 赤十字の紋章の前で。俺達は、硬く握手を交わしたのだった―― 【称号獲得:ジェンティルドンナとの出会い】

32 22/05/01(日)01:20:33 No.922590121

このあとめちゃくちゃ平定した

33 22/05/01(日)01:21:28 No.922590345

すんげー力作きたな…

34 22/05/01(日)01:21:37 No.922590388

こいつぼばだぞ

35 <a href="mailto:s">22/05/01(日)01:21:42</a> [s] No.922590409

みたいな感じで貴婦人と乙女の国を平定したりイチャイチャしたり12世代とバチバチしたりイチャイチャしたり一着至上主義の英雄に挑んだりイチャイチャしたりする話が読みたいんだけど貴様は?

36 22/05/01(日)01:21:45 No.922590418

このあとめちゃくちゃ彩Phantasia

37 22/05/01(日)01:22:30 No.922590609

ウワーッ!力作!

38 22/05/01(日)01:22:36 No.922590637

貴様!? そんなん俺だって読みたいわ!

39 22/05/01(日)01:23:20 No.922590831

イチャイチャしたすぎだろ わかるよ…

40 22/05/01(日)01:23:27 No.922590858

>みたいな感じで貴婦人と乙女の国を平定したりイチャイチャしたり12世代とバチバチしたりイチャイチャしたり一着至上主義の英雄に挑んだりイチャイチャしたりする話が読みたいんだけど貴様は? お 書

41 22/05/01(日)01:23:32 No.922590875

>このあとめちゃくちゃ彩Phantasia 3回もセンターで歌ってる…

42 22/05/01(日)01:23:32 No.922590876

>みたいな感じで貴婦人と乙女の国を平定したりイチャイチャしたり12世代とバチバチしたりイチャイチャしたり一着至上主義の英雄に挑んだりイチャイチャしたりする話が読みたいんだけど貴様は? 貴様!? 拙者トリプルティアラ会が今の所幻覚しかないのがめっちゃ口惜しいので御座るよ!!!!

43 22/05/01(日)01:23:59 No.922590974

>3回もセンターで歌ってる… いいよね

44 22/05/01(日)01:24:08 No.922591025

>おおもう >書いてある

45 22/05/01(日)01:24:22 No.922591074

>>3回もセンターで歌ってる… >いいよね いいよね

46 22/05/01(日)01:24:42 No.922591157

>>このあとめちゃくちゃ彩Phantasia >3回も隣で歌った

47 22/05/01(日)01:24:45 No.922591169

>>おおもう >>書いてある 足りないんだが? もっと欲しいんだが?

48 22/05/01(日)01:25:18 No.922591304

トリプルティアラとってるのに同期にも先輩にも越えるべき壁がいるんだよなこの子

49 22/05/01(日)01:27:14 No.922591802

どこまでもどこまでも高みを目指す貴婦人なんて惚れちゃう もう惚れてた

50 22/05/01(日)01:27:18 No.922591815

>>>3回もセンターで歌ってる… >>いいよね >いいよね いいよね

51 22/05/01(日)01:27:31 No.922591864

貴婦人じゃなくて理不尽の間違いッス

52 22/05/01(日)01:28:07 No.922591996

【メイクデビューに出走】 【シンザン記念で5着以内】 【桜花賞で5着以内】 【オークスで5着以内】 【秋華賞で5着以内】 【ジャパンカップで3着以内】 【宝塚記念で5着以内】 【天皇賞秋で3着以内】 【ジャパンカップで3着以内】

53 22/05/01(日)01:28:51 No.922592155

パワー系プリンセスだからカワカミとの絡みとか見たいかもしれない

54 22/05/01(日)01:29:09 No.922592222

>【メイクデビューに出走】 >【シンザン記念で5着以内】 >【桜花賞で5着以内】 >【オークスで5着以内】 >【秋華賞で5着以内】 >【ジャパンカップで3着以内】 >【宝塚記念で5着以内】 >【天皇賞秋で3着以内】 >【ジャパンカップで3着以内】 最後有馬記念出ると特殊イベント発生するやつだ

55 22/05/01(日)01:29:53 No.922592405

シナリオが濃すぎる

56 22/05/01(日)01:31:22 No.922592731

こうなるとドバイも欲しいな…

57 22/05/01(日)01:31:53 No.922592833

>パワー系プリンセスだからカワカミとの絡みとか見たいかもしれない 生き様が漢気溢れてるだけで見た目は普通に女の子だし…! fu1026914.jpg (左からゴルシ・ドンナ・プイ)

58 22/05/01(日)01:31:59 No.922592865

>パワー系プリンセスだからカワカミとの絡みとか見たいかもしれない ティアラ路線との向き合い方って意味でもいろいろ絡めそう

59 22/05/01(日)01:32:05 No.922592889

シンザン記念→トリプルティアラ→古馬王道 なぜティアラ路線に…?

60 22/05/01(日)01:32:15 No.922592947

無敗でクラシック有馬に出走するとマスクド三冠馬がSS二つ持ちS一つの狂った性能になる

61 22/05/01(日)01:32:26 No.922592986

>【ジャパンカップで3着以内】 ↓ >New! 【有馬記念で1着】

62 22/05/01(日)01:33:23 No.922593202

天秋でジャスタかスピルバーグに負けると特殊イベントが発生するんです?

63 22/05/01(日)01:34:50 No.922593572

エリ女とか出走したりは…

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