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22/04/25(月)21:34:26 タバコ... のスレッド詳細

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22/04/25(月)21:34:26 No.920802774

タバコの煙を口から吐き出すと、それは気怠げに緩慢な流れで昇っていく。 後を追うシチーのトレーナーの目が行き着く先は、古びた暗い天井と寒々しい蛍光灯の白い輝き。 トレーナー寮のロビーには今日もうら寂しさが漂っている。 シチトレはため息と共に肺から残りの煙を吐き出した。 「よっ、お疲れさん」 と、そこにやってきたのはマチタンのトレーナー。 テーブルを挟んだ対面のソファーに座り、彼もまたタバコを胸ポケットから取り出す。 「そっちも仕事はひと段落ついたか?」 「いや、まだ途中」 「あ?じゃあこんなとこで油売ってる場合じゃないだろ」 「続ける気分じゃないんだよ…………雨漏りでさ」 「──ああ……」 それを聞いてマチタントレも納得の表情になった。

1 22/04/25(月)21:34:41 No.920802879

「酷いのか?」 「よりにもよって机直撃でね。洗面器が占領しちゃってるよ」 「学園側に知らせは?」 「したよ、三ヶ月も前に。対応してくれると思うか?」 「……だよな」 マチタントレが苦笑いで共感してるところに、また一人男性トレーナーがやってくる。 「お疲れ様でーす」 「おう。えーと……」 「やだなあ、ライスの担当ですよ」 覚えてくれてないんですか、とおどけ調子で言ってライストレもソファーに座った。 「一本いるか?」 「や、ボクは吸わないんで。それで二人して何を話してたんです?」 「我らが寮のボロさには参るねって話」 「ああ……」 ライストレもまた、納得したように神妙に頷いた。

2 22/04/25(月)21:34:57 No.920803012

「どうにかなりませんかね、相当老朽化してるのにほったらかしで」 「理事長様があれじゃあね……」 シチートレは短くなったタバコを、鬱憤をぶつけるようにグリグリ灰皿に押し付ける。 「対外的な受けをよくするために注目が集まる校舎やウマ娘寮の方には金かけるけど、  俺達トレーナーに関してはつぎ込むどころか削り落としてきてるからな」 その言葉に呼応するかのように、家鳴りが起きる。 寮内で頻繁に起こるそれは、建物の耐久性が下がってきている証拠である。 「名門校といっても、実態はこんなもんかねえ……」 「雨の日は雨漏りに結露、冬場には隙間風……」 「トイレだって全部和式ですよ。しかもボットン便所!」 不満点を挙げるほどに自らの境遇が憐れに思えてきて、三人は同時にため息をつく。 「給料だけは地方よりずっと上だけどな。だからって──」 「ちょ、マチタントレさん!?タバコ!タバコッッ!!」 「え?──うわっ!!」

3 22/04/25(月)21:35:12 No.920803139

いつの間にか咥えていたタバコはほとんどが灰となり、垂れ下がっていた。 慌てて口から離そうとするが、その焦った動きが仇となり灰はポロリと落ちてしまう。 「あちゃーー、クソッマジかよ!ソファーに焼け穴が!」 「あ~あ、弁償させられるぞ」 「いや、大丈夫です」 「え?」 「その穴、前から空いてますから」 「………………」 しばらく沈黙が続いた後、 「そういや、シチーは最近どうなんだ?」 マチタントレが唐突に話題を変える。 これ以上、自分達の住居の欠点を見つけるのは不毛だと判断して。

4 22/04/25(月)21:35:28 No.920803266

「伸び悩んでるよ。それもこれも、モデルと二足の草鞋を履いたりしてるからだ」 眉をひそませながら二本目のタバコを出すシチートレ。 口に咥えたそれが上下に揺れ動く様からも、苛立ちが見て取れる。 「とっくに人気も下火になって仕事も減ってるのに、まだしがみついてやがる。  俺としてはアスリートとして魅せてほしいんだけどね」 そして、「そっちは?」とマチタントレに目で訊き返してきた。 「こっちも行き詰まってる感じだな。何をやらせても普通、って感じで。  もっとこう、大切な何かをかなぐり捨ててでも勝つ!って執念がほしいんだがな」 マチタントレはそうぼやいて、視線のトスをライストレに向ける。 「そっちは天皇賞で5着だって?たいしたもんだ」 「いやあ……」 照れ臭そうに頭を掻くライストレだが、やはり浮かない顔になる。 「僕もよくやったと思ってるんですけどね。当人が自分はなんてダメなんだって泣いてばかりで。  ああもネガティブだとこっちの支える気持ちも減退しちゃいますよ……」

5 22/04/25(月)21:35:41 No.920803362

またしても、三人揃ってのため息。 「なんかなあ……仕事も、生活も、こんなもんなのかな」 「もっと胸が熱くなるような、そして煌びやかなものを期待してたんだけどな」 「現実って味気ないですよね……」 窓の外は夜の雨。しとしとと寂しげな音だけが胸に沁みていく。 「この先も、ずっとこうなのかね」 「さあな。違ってくれればありがたいがね」 「とりあえず前には進みましょう。多少はマシになるはずです。僕らも、担当の子も」

6 22/04/25(月)21:35:54 No.920803449

「……──なんて時代もありましたなあ」 「あったあった」 「いやあ、懐かしい」 学園内カフェの隅の席で、定年間近の年配トレーナー三人がコーヒーを飲んでいる。 彼らが眺めるのは生徒やトレーナーであふれ、活気に満ちた練習後のティータイムの光景。 「先代、そして秋川理事長の尽力でここも変わった」 「見てくれだけでなく、中身も名門に相応しい格式高さを持つようになりましたな」 「建物はもちろん、生徒やトレーナーに関しても、ね」 最先端でオシャレなカフェ。上質な飲み物とスイーツ。 テーブルではトレーナーとウマ娘が向き合い、目を輝かせながら今後の方針を話し合っている。

7 22/04/25(月)21:36:13 No.920803627

「私らが新人だった頃とは眩しさが違う」 「いやはや、年月の流れとは恐ろしいもの」 「昭和は遠くなりにけり」 かつてマッドネスシチー・マチナカタングラム・フウライスピアという どうにもパッとしないまま終わったウマ娘をそれぞれ担当した三人。 煌びやかな施設の中で溌剌とする若者達を見守るその微笑みには、喜びと羨みが混在しているのであった。

8 <a href="mailto:s">22/04/25(月)21:36:28</a> [s] No.920803788

なんか思いついたので書いてみた。 ……二次創作なのに公式キャラが一人もいねえ!

9 22/04/25(月)21:41:04 No.920805884

誰このおっさんら…

10 22/04/25(月)21:46:48 No.920808693

やよいちゃんのおかげで施設はかなり充実したはず

11 22/04/25(月)22:00:36 No.920815343

実際昭和の頃と今とじゃ全然違うよな

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