22/04/23(土)00:02:06 泥の花金SS のスレッド詳細
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画像ファイル名:1650639726294.jpg 22/04/23(土)00:02:06 No.919710967
泥の花金SS
1 22/04/23(土)00:05:35 No.919712287
フランは限界だった。あまりにも多くのことが起こりすぎた。 ロドルフォは怪物だった。あのホムンクルスが暴れだし、鎮めた。 アレッサンドロに裏切られ命を狙われた。ヴィオラとウィリアムに助けられた。ヴィオラを“竜”で救った。 ヴィオラが担架で運ばれていくのを呆然と見送ったフランは鎧の鳴る音が近づいてくるのを耳にした。 「マスター。ああ、ご無事で…」 ───『ご無事で』?振り向き、目の当たりにした騎士の様子を見てかちんとくる。 満身創痍とはこのことではないか。全身の鎧は砕け、血潮は垂れ流し、片目は塞がって脚だって引きずっている。 お陰で自分には傷一つないけれど。その分の怪我を全て肩代わりしたような、そんなランサーの悲惨な有様だった。 文句を言おうとした。いつもみたいに皮肉混じりに騎士を責めようとして、出たのはしゃっくりだった。ぱきりと何かが折れる音がした。 「あ、ああ」 「マスター?どうかなさったのですか、マスター…」 「ああああああああああ…」 ふらふら歩み寄って血まみれのその細い腰に抱きついた。涙の堰が決壊して止まらなくなった。 フランは泣いた。生まれて初めて、子供のように泣きじゃくった。
2 22/04/23(土)00:09:56 No.919714090
目の前でライダー始めとした色んなの食われたの見たらそりゃそうなるわ…
3 22/04/23(土)00:12:28 No.919715165
確かロドルフォおじさんにガレスが立ち向かってるSSあったよね あれ再放送してほしい
4 22/04/23(土)00:14:49 No.919716075
霊体化!霊体化解除!すらできないのはだいぶ重傷だな
5 22/04/23(土)00:17:57 No.919717180
>確かロドルフォおじさんにガレスが立ち向かってるSSあったよね >あれ再放送してほしい はい
6 22/04/23(土)00:18:13 No.919717304
それは萎えきった心から漏れた、フランの切なる願いだった。 もう残酷を見たくないという諦観に満ちた祈りだった。 「いや…ランサー…もうやめて…やめてよぉ…」 見ろ。ロドルフォだったものは今やあんな怪物となってしまっている。 フォスキーアの構成員たちやフランの愛すべき竜が為す術なく大勢食われていくのを目の当たりにした。 男も女も老いも若きも一切の区別はなかった。怪物によって煮溶かされ、苦悶に満ちた生物として最悪の死に方を遂げた。 あの強壮だったライダーすら飲み込んでしまったのだ。 ロドルフォがサーヴァントすら超えたどうしようもないものになってしまっていることくらいフランにも理解できる。 だってライダーみたいにたくさんの刀剣を矢のように降り注がせるところをフランは見た。 信じられない。あのロドルフォだったものは自分のサーヴァントをそっくりそのまま取り込んでしまったのだ。 勝てっこない。どうにかなるわけがない。私も彼らと同じようにどろどろに溶かされてしまうのだ。 どうにかなるわけがない、のに。 なのに、あの薄気味悪い血の塊とは違う、灼熱の血潮を全身から流しながらランサーは振り返って微笑んだ。
7 22/04/23(土)00:18:29 No.919717403
「大丈夫ですマスター。円卓の騎士は決して挫けません。挫けないのです」 そう元気づけるように明るく言った。 馬鹿なことを言う。あの黄の装飾が美しい鎧だって無残に砕けているじゃないか。 自分の目の前でロドルフォだったものの爪が身体に突き立っていたじゃないか。 邪魔された怒りと共に飛んできたたくさんの刀剣のうち何本かが身体に突き立っているじゃないか。 後ろにいた私が頭から浴びるくらい全身から血が吹き出ているじゃないか。 たった一瞬で満身創痍じゃないか。勝てる気配なんて微塵もないじゃないか。 そんな状態で私のことを気にかける余裕なんて普通に考えればあるはずがないじゃないか。 なのに、その死地にあって穏やかな微笑みを見た瞬間フランは恐慌状態にあった自分の心がいくらか和らぐのを感じた。 「必ずお守りします。このランサーにお任せください。決して離れないで。 騎士は約束を破りません。騎士の誓いは絶対なのです。───死ぬなと命令されれば死ねないほどに」 どうしてそんな顔が出来るの。どうしてそんなに安らかでいられるの。 理解不能だった。ただ自分が喚び出した騎士が絶対に自分を裏切らないことだけ確信した。
8 22/04/23(土)00:18:40 No.919717476
ランサーが目の前に向き直る。ロドルフォだったものはあくまでフランに執心らしい。 他の構成員たちには目もくれず、フランとフランを守る騎士に対してその毒牙が再び伸びてくる。 その瞬間、フランはランサーの背中が何倍にも大きく膨れ上がったと錯覚した。 「───ぉおおおおおおおおぉぉッッッ!」 ───それは叫びであったが、獣のそれでは無かった。 ランサーのあの嫋やかな喉から出たとは思えぬほど裂帛の咆哮だった。 人間がその尊厳を、誇りを、信念を、根こそぎ燃やし尽くして力に変える時の音。薪たちが轟々と燃え盛る音に聞こえた。 ランサーの突撃槍が巨大な爪と真っ向から鍔迫り合いを起こした。鋼が軋む金切り音が辺りを震わせた。 噛み合った瞬間全身の傷口から血が吹き出たが、ランサーはそれに構う素振りは一切見せない。 その場からたった1歩さえ退かないその重厚。知らず知らずのうちにフランはランサーのその背に触れていた。 「ランサー…!」 「はいっ!この通り、我が身未だ意気軒昂!マスター、ご安心ください…ご安心ください!」 触れたのは砕けた鎧だったのに、フランの冷えた心を一瞬で温めるほどその背は温もりに満ちていた。
9 22/04/23(土)00:20:37 No.919718247
そうこれこれ いいよね…
10 22/04/23(土)00:25:26 No.919720122
いい戦闘描写だ…
11 22/04/23(土)00:36:11 No.919723746
「それにしても、ねぇ。円卓の騎士。それも音鳴りのトリスタン卿か」 「はい。私が何か?」 刑場へ向かう階段を降りる最中。マスター同士の言葉が交わし終わった段階で、不意にセイバーが言った。 「応さ。余が相見えなかったアーサー王が騎士。その中で最も強き騎士のひとりと謳われた者。 余は常々思っていた。円卓の騎士。ひとりひとりが一騎当千。なんと雄々しい。 そして───叶うならば我が物にしたい。騎士王から奪い取り、我が配下に加えたいと」 それは戦いの前の些細な軽口だった。少なくともマスター2人とセイバーにとっては。 だが残る1人にとってはそうではなかったらしい。 「───あり得ない」 ついアーチャーを凝視してしまった。クリスも自分のサーヴァントを見つめた。勿論セイバーも。 「その可能性は断じて無い。私にとって真なる王はただひとり。此度のマスターも然り。 失礼ながら皇帝陛下。あなたのその淫蕩は我が剣を捧げるに値しない」 表情は静かだった。けれどそれはアーチャーが初めて見せた静かな激情だった。 セイバーはそれを受けて、獰猛に笑った。 「ああ、そうとも。それでこそ。これを見て俺は欲しいと思ったのだ」
12 22/04/23(土)00:42:09 No.919725759
どうしたの今日は 「」るるるるにとって各種企画振り返りSS祭なの
13 22/04/23(土)00:48:46 No.919727866
>どうしたの今日は >「」るるるるにとって各種企画振り返りSS祭なの お酒飲んだので勢いで書いてる 勢いがなくなったらやめる
14 22/04/23(土)00:51:00 No.919728588
お酒飲んで日本語書けるのずるい