22/04/18(月)00:18:09 「トレ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1650208689462.jpg 22/04/18(月)00:18:09 No.918086700
「トレーナーさん、ちょっといいですか?」 午後八時近くなり、そろそろデスクワークも切り上げようか…… トレーナーがそう思っていたところに入室してきたのは、彼の担当ウマ娘であるニシノフラワーだった。 「どうかした?明日のトレーニングのことかな」 ちゃんと話を聞こうと姿勢を整えるトレーナーに、 「あ、そうじゃないんです」 フラワーは慌てたように開いた手を振って否定する。 「その、全然大した用じゃないんですけど。トレーナーさんにも見てもらいたくて…… ごめんなさい、まだお仕事中なのに」 申し訳なく思っているのか、フラワーはドア前に立ったままだ。 「いやいや、全然かまわないよ」 トレーナーは笑いながら近くに来るよう手招きする。 その言葉に安堵を顔に浮かべ、フラワーはそそくさと走り寄ってきた。 「あれ……っ?」 目の前に来たのを見てトレーナーは驚きの声をあげる。
1 22/04/18(月)00:18:26 No.918086812
フラワーの目元に、頬に、唇に。いつもとは違う色が乗っていた。 「それ、メイクしたのかい?」 「あっ……気付いてもらえた!」 トレーナーがすぐ反応したことがかなりうれしかったようで、 フラワーはいつになくトーンを高めて声を弾ませる。 「さっきジョーダンさんがしてくれたんです。お試しだよ~って。 ふふ、ちょっとだけお姉さん達に近付けたみたい」 うれしそうに説明するフラワーだったが、はたと気付いたようにその笑みを消す。 「あ、あの。変でしょうか……?」 一転して不安そうに揺れる、上目遣いの瞳。 「いや、全然変じゃないよ」 トレーナーは首を横に振る。
2 22/04/18(月)00:18:41 No.918086903
悪ノリでなく、ジョーダンは本心でフラワーを飾り立てようとしてくれたのだろう。 目元はあくまで陰影を演出し特徴的である大きな瞳を目立たせるために。 頬はうっすらと赤みを含ませ女性の華やかさを引き出して。 濃い色で上書きはせず、フラワー自身の魅力を基調とした繊細なメイク。 唯一唇だけが鮮やかな紅色に塗られ、大人への憧れをワンポイントとして表現させている。 とても美しく、そして微笑ましさもある仕上がりだ。 「似合ってるよ。とても綺麗だと思う」 「あ…………」 フラワーの頬に熱が加わり、一層赤みが増す。
3 22/04/18(月)00:18:55 No.918086986
「よかったです……。子供のくせにって言われたらどうしようって……。 小学校では、こっそりメイクポーチを持ち込んでたクラスメイトがお説教されたから。 まだ小さいんだから、そんなもの使わない方がいいんだって」 「確かに、まだ年齢的にメイクに頼る必要はないかもだけど……」 トレーナーはフラワーの気持ちを尊重し慎重に言葉を選びつつ、考えを述べる。 「前に教えてくれた、スイフヨウ……だっけ?朝から夕方にかけて色を変える花。 そんなふうにいろんな色彩を見せるのも素敵だと思うよ」 「──!!トレーナーさん……!」 屈託のない満面の笑顔がパッと花開く。 そう。その心からの微笑みも、キミを飾るメイクなんだよ──。 言葉にはせずそんな思いを乗せて見つめるトレーナーに、 「あの、トレーナーさん」 フラワーも視線を返してきた。
4 22/04/18(月)00:19:14 No.918087087
「お花を飾りたいんです。もらってくれますか?」 「え?──うん、もちろん喜んで」 唐突な提案に少々面食らいつつも、トレーナーは頷く。 「じゃあ、ちょっとの間だけ目をつむってください」 「……?うん」 続くお願いにまた戸惑いながらも言われるままに目をつむる。 ────と。 チュッ。 軽やかに、しかしハッキリとした音を立てて頬に柔らかな何かが触れた。 「……え…………」 呆気に取られつつ目を開けると、フラワーはコンパクトミラーをこちらに向けている。 そこには頬に紅いキスマークのついた自分の顔が映っていた。
5 22/04/18(月)00:19:30 No.918087183
「……えへへっ。ちゃんと咲きました」 あどけなさを潜ませ、代わりに艶やかさを滲ませる目を細めたフラワーの微笑み。 出会ってからの日々で垣間見える程度だったそれが、今は瞳の潤みとメイクに彩られ大きく花開いていた。
6 22/04/18(月)00:19:42 No.918087248
4月○日 (水) 晴れ 今日はトレーナーさんに花を贈りました。 小さな小さな、赤い花。 すごく喜んでもらえたので、お花畑ができるくらいにプレゼントして。 私もとってもうれしかったです……♪ これからも同じ花を時々お届けしますね、トレーナーさん。
7 <a href="mailto:s">22/04/18(月)00:20:16</a> [s] No.918087481
おしまい。 メイクは大人の階段を上る後押しをしてくれるもの。