22/04/17(日)02:18:55 愛知県... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1650129535468.jpg 22/04/17(日)02:18:55 No.917713375
愛知県名古屋市。某所。オーシャンステークス、翌日、月曜日。午前9時頃。 ナランフレグとそのトレーナーは、フランチャイズチェーンの喫茶店に腰を落ち着けていた。 本来は今日は平日のため授業がある。しかし、彼女はレース明け。疲労が溜まっていることや、移動を考慮し、事前に休日申請を行っていた彼女である。 そのため、本日は名実ともにオフ。しかし、ナランフレグの顔はどこか冷ややかなものだった。 そんな最中、店員が注文を取りに、二人の席を訪れる。 「ご注文は何にしますか?」 という問いかけに 「あ、アイスコーヒー・・・モーニングもつけて」 とトレーナーは返す。 「かしこまりました。甘味とポーションはどうしますか?」 「あ、つけてください。お願いします」 「トーストはどうしますか?」 「あ・・・小倉でお願いします」
1 22/04/17(日)02:19:11 No.917713426
「かしこまりました。・・・そちらのお客様は・・・」 と店員の顔がナランフレグの方に向く。 「あ、アタシ・・・ミルクで。」 「かしこまりました。甘味を入れてもよろしいでしょうか」 ミルクに甘味。少し彼女の眉が歪むが 「なしで」 と彼女は返す。 「かしこまりました。トーストは・・・」 「バターでお願いします」 「かしこまりました」 店員は一礼すると二人の席から離れていった。 ふと僅かな沈黙が漂った後に 「助かるよね」 と、トレーナーが誰に話しかける訳でもなく、言葉を発した。
2 22/04/17(日)02:19:31 No.917713511
「何がよ」 とナランフレグが返すと 「モーニング無料だもん」 とトレーナーは微笑み返す。しかし、トレーナーの視線はどこか宙を漂っていた。 そんな態度に 「・・・あのさ」 ナランフレグが切り出した。 「何?」 どこか白々しいその態度。それにわざとため息をつくと 「高松宮記念」 と彼女は切り出す。 「高松宮記念って、いつやるの?」 短い問い。それにしばらくトレーナーは視線を泳がせるが 「答えて」 強いナランフレグの語気が追い込みをかける。
3 22/04/17(日)02:19:50 No.917713586
それに観念したように頬杖をつくと 「・・・3週間後」 と観念したかのようにトレーナーは答える。 そう、ナランフレグは確かに前走で二着に入り、高松宮記念への出走条件を満たした。しかし、時間がなさ過ぎるのだ。 まずオーシャンステークスの疲労を取るため、この1週間はまともなトレーニングはできない。 実質残ったのは二週間ほど。しかしそれでは負荷の重いトレーニングは見込めない。実質、今の調子を維持し、少しの上積みをするのが精々の時間的余裕しか、二人には残されていないのだ。 「折角の・・・G1レースだし。僕は出た方がいいと思うんだけど・・・」 少し遠慮がちにトレーナーは言葉を発する。 それに腕組みをし、鼻をならすナランフレグ。 しかし、彼女も少しだけ、いやかなり心が躍っていた。 何せこれで、現役5年目にして、初めてのG1レースに出場する機会を得たのだ。ジュニアの時も、クラシックの時も。そしてシニアに入っても、一切出られなかった大舞台。そこへ挑戦する権利を手にしているという事実。 だが 「もう、今日決めないと時間がないんだよ」 続けざまに出たトレーナーの言葉が、もう時間的余裕がないことを示している。
4 22/04/17(日)02:20:09 No.917713655
何せ勝負服すら彼女は持っていない。諸手続への手間やスケジュールを考えると、判断は速ければ速いほどいいのだ。 しばらくナランフレグは考えていた。 (3週間後に・・・G1レース) それを想像するにあたって、出てくるのは誰だろう、と彼女は思う。 真っ先に思いついたのはレシステンシアの顔だった。スプリンターズステークスでは2着。前走の香港スプリントでも2着。短距離・マイル路線で活躍する彼女からすれば、高松宮記念に出てくるのは容易に想像がつく。 そして (勝てる・・・かしら) という疑念。 自分の脚を疑っている訳ではない。しかし思い出すのは約半年前のセントウルステークス。そこで彼女はレシステンシアに完敗した。その記憶だけは鮮明に思い出せる。 しかし 「出るわ」 「・・・えっ?」 その言葉に思わずトレーナーの目が点になる。 「出るって言っているの、高松宮記念」 その言葉には芯が通っている。強い意志に裏付けされた、闘志の宿る瞳。それを真っ直ぐに見据えて
5 22/04/17(日)02:20:26 No.917713698
「ありがと、フレグ」 とトレーナーは微笑んでみせた。 「別に・・・アンタのためじゃないし」 いつもの調子に戻ったナランフレグがそっぽをむく。 そんな彼女の様子を無視し 「それで、勝負服のデザインだけど・・・」 と言い、鞄からデザイン案を取り出し始めた。 それを見て (何よ・・・出場する事ばっかり考えてたんじゃない・・・) と彼女は心の中で微笑むのだった。
6 22/04/17(日)02:20:47 No.917713795
2週間後、都内の仕立屋にて。 勝負服を受け取るため、トレーナーとナランフレグはその場所を訪れていた。 そんな最中 「うわーお・・・!」 どうやら先客がいたようだ。受け取った勝負服を手に取って、嬉しそうにするウマ娘の姿があった。 「頑張れよ、キルロード」 「うん!頑張るね、あたし!」 歯を見せて笑うウマ娘。それに頷くトレーナー。 キルロードと呼ばれたウマ娘に、ナランフレグは心当たりがあった。 オーシャンステークスで一緒に走ったウマ娘。そしてナランフレグより年上である。 そんな最中 「あ!」 キルロードがナランフレグに気づき 「ども・・・」 ナランフレグも頭を下げる。
7 22/04/17(日)02:21:13 No.917713913
「フレグも受け取りに来たの?勝負服!」 「あ、はい。先輩もなんですね」 「そ!・・・あ・・・ってことは・・・!」 「はい・・・!」 二人は察した。次走が同じということを。高松宮記念でぶつかりあうことになると言うことを。 しかし 「お互い頑張ろうぜ!」 爽やかにキルロードは歯を見せて、それぞれの健闘を称えてみせる。 それに 「はい!」 力強くナランフレグは応えて見せた。 それに何度も頷くと 「それじゃ。お先~~」 「失礼するよ」 キルロードとそのトレーナーは、彼女たちとすれ違いで店を去って行った。
8 22/04/17(日)02:21:44 No.917714026
そして 「じゃ、俺たちも受け取ろうか」 とナランフレグのトレーナーが声をかけ 「ん」 ナランフレグがそれに頷く。どこかその瞳には、将来への希望に溢れていたトレセン学園の門をくぐった時のように、きらめく光に輝いていた。 トレセン学園、トレーナー室にて。 「入っていいかー?」 トレーナーは自分の部屋の外に出て、ドア越しに話しかける。 「いいよー!」 部屋の中からはナランフレグの声。その言葉にトレーナーは頷くと、ドアをノックして、ゆっくりとそれを開けた。 そこにあったのは教え子の姿。白色と青色の勝負服。頭には2本の羽根飾りのついたファー付の帽子。どこか鎧を思わせるようなデザイン。それをしっかりと纏って、ナランフレグはそこにいた。 「どう・・・かな・・・」 しかしその顔には照れが俄に漂っている。何せ初めて袖を通した勝負服だ。色々と思う所があるのだろう。
9 22/04/17(日)02:22:29 No.917714196
そんな彼女の意識など一切気にかけることなく 「似合ってる!」 間髪入れずトレーナーは彼女に言い放った。 「ちょ・・・アンタ・・・!」 それに頬を赤らめ、目をつり上げるナランフレグ。 しかし 「うん!すっごい似合ってるよ、フレグ!」 全くその様子を介さず、トレーナーは彼女に歩み寄ってくる。 そして 「バッチリだよ!『蒼き狼と白き鹿』って感じ!」 と言葉を続ける。 それはナランフレグの名前の由来となった国の神話の一説だった。『上天より命ありて生まれたる蒼き狼(ボルテ・チノ)ありき。その妻なる惨白き牝鹿(コアイ・マラル)ありき』。その言葉を聞いた瞬間、少しだけナランフレグの瞳に平静の色が戻る。
10 22/04/17(日)02:22:48 No.917714264
(蒼き狼って・・・本当は灰色なんだけど・・・) そう彼女は脳内で訂正する。青鷺という鳥が薄い灰色の羽根を持つように、この場合の蒼は想像される色合いではない。 しかし (そんな事言うのも・・・ヤボよね) と思い、 「ありがと」 とトレーナーに微笑んで見せたのだった。 高松宮記念、4日前。 トレセン学園、ウッドチップコース。 二人のウマ娘が肩を並べて走る。一人はナランフレグ。そしてもう一人は身体の大きな芦毛のウマ娘。 ただ二人ともそんなに飛ばしていない。軽く身体を整えるような、そんな走り方である。 芦毛のウマ娘が大跳びでぐんぐんと直線を先行し、それに併せるようにナランフレグが彼女の後ろを追っていく。
11 22/04/17(日)02:23:12 No.917714336
そして 「はい、おしまい!」 トレーナーの声が響き渡ると同時に、二人のウマ娘がゴール板を駆け抜けた。 そのまま流すように、二人は併走し、身体をクールダウンさせていく。 「ありがとうございます、ゴールドシップさん」 ナランフレグがそう芦毛のウマ娘に話しかけた。 「何だ何だぁ~~!?アタシも走りたかったから別にいいんだよッ!」 それにおどけた調子で応じるゴールドシップ。 それは偶然だった。偶々ナランフレグとゴールドシップが同じタイミングでウッドチップコースを使う予定を立てていたのだ。そこで急遽併せをやることになった二人である。 片や中長距離を走るウマ娘、肩やスプリンター。全く違う二人であるが、特にすれ違いも起こらなかったようである。 「いや~~。いい汗流せたぜ」 そう胸を張り、満足そうに笑うゴールドシップ。 それにナランフレグも頷いて見せ、二人の視線が重なり合う。そんな最中だった
12 22/04/17(日)02:23:39 No.917714425
「お・・・?」 と、何かにゴールドシップが気づいた素振りを見せ、コースの外を見た。 途端 「あ、アタシ用事思い出したわ!!!」 と言い、 「じゃあな~~~」 と手を振り、明後日の方にゴールドシップは走り去っていった。 「あ!はい!ありがとうございました!!!」 それにナランフレグは応じる反面 (何だったのかしら・・・急に) と少し不思議に思う彼女である。 そんなナランフレグをコースの外から捉える鋭い視線が一つ。 「何なのよ、あの人・・・」 眉間に皺を依らせ、不機嫌そうに呟く、濃い鹿毛色のウマ娘がいる。
13 22/04/17(日)02:24:02 No.917714503
「ゴルシ様と・・・あんなに楽しそうに・・・!」 そして漲らせるのは嫉妬の炎。 彼女の名はロータスランド。主な勝ち鞍はG3・京都ウマ娘ステークス。そしてゴールドシップにお熱なウマ娘。どうもナランフレグがゴールドシップと一緒に練習していたことが気にくわなかったようだ。 (高松宮記念では・・・絶対負かす・・・!) 彼女は強い信念を胸に宿す。次走でぶつかり合うことになるウマ娘に、強いライバル心を持たれているとは、ナランフレグはこのとき気づかずにいた。 同日、別の場所では。 (絶対に一着を取るんだから!) レシステンシアが気合いに満ちた瞳で筋トレに励んでいた。 また、都内の病院にて。 「エールちゃん、頑張ってきてね!」 「はい!!!!!!」 香港スプリントで骨折したピクシーナイトに激励を受け、メイケイエールが気合い十分に返事をしていた。
14 22/04/17(日)02:25:37 No.917714832
さらに、長野県某所にて。 「トレーナーサーン!良い景色デスネー!」 ジャンダルムは笑顔で登山にいそしんでいた。てっぺんを取るという験担ぎのために。 各々がそれぞれに、想いを重ねていく。 高松宮記念が、もうすぐ始まる。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があっていないのでこれにて失礼する いままでのやつ fu982960.txt 明日終われるといいな もう少しお付き合いくださいますようお願い致します
15 22/04/17(日)02:34:55 No.917716339
遂に終わりか…
16 22/04/17(日)02:52:10 No.917718573
どんな風に終わるのか明日を楽しみにしてるよ
17 22/04/17(日)03:39:35 No.917722970
すごい良い話なのにスレ画のせいで途中までリアル馬のまま情景浮かべててごめん…
18 22/04/17(日)03:55:28 No.917724293
ロータスちゃんまで拾ってきたか…
19 22/04/17(日)04:36:10 No.917727229
全員の物語が収束し終結したとき勝利を獲られるのはしかしただ一人 厳しいからこそ美しいのだなあ
20 22/04/17(日)04:50:22 No.917728328
きたか…
21 22/04/17(日)04:55:06 No.917728658
短距離G1のメンツって本当に色々だな… ジャンダルムの年齢見て驚いたし
22 22/04/17(日)05:01:59 No.917729142
ロータスちゃんはそのうちモブでゲームにそれっぽいの出そうだよね ゴルシの衣装換えとかそのへんで