虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 22/04/16(土)23:50:04 No.917669348

「ふぅ、しかしこんなに人が集まるとは思ってなかったデスヨ……」 祝いの言葉に揉みくちゃにされていたネイチャがキラキラした円錐の帽子を被り「アンタが主役！」と書かれたタスキを下げながら友人達の群れから抜け出して部屋の隅にいた俺の所へ寄ってくる。 「それもこれもネイチャの人徳の成せる技だよ。愛されウマ娘ってやつだな」 そう言いながら使い捨てのプラコップにジュースを注いで渡してやる。 今頃いつもの商店街では「ナイスネイチャお誕生日おめでとうセール」が開催されているだろう。小倉の商店街からは既にお祝いの品が届いているし、俺が管理しているウマッターのアカウントにはファンからのお祝いの言葉が軒を連ねている。 我が愛バながら誇らしい限りである。 「そんなもんかねぇ……」 横目でこちらを見つつちびりとジュースに口をつけてネイチャが呟く。

2 22/04/16(土)23:51:11 No.917669809

「そうだよ」 「ん……アンタが言うならそうなんだね」 自信を持って頷いてやると、それを見たネイチャも微かに笑う。 「あー！ネイチャなんでそんな隅っこいるのー！？」 「ありゃ、見つかっちゃった」 どうしましょ、とばかりにこちらを窺う彼女の背をぽん、と軽く押してやる。 「いっておいで主役さん、今日はそれが君の役目だ。精々揉みくちゃにされて来な」

3 22/04/16(土)23:51:33 No.917669987

一瞬キョトンとした彼女の表情は、何それという言葉とともに困り笑いへと変化を遂げてそのまま友人達へと向かっていった。 「これからイクノのとこに突撃するぞ！ターボについてこーい！！」 「おー！って、今日の主役はアタシじゃなかったんかい！」 「イクノも誕生日だからツイン主役だぁー！！」 「あっちの準備はマックイーンが『やりますわ！』って張り切ってたﾓﾝﾆ」 「はいはい、まあアタシもイクノのお祝いしたいし行くとしますか」

4 22/04/16(土)23:52:28 No.917670319

夕方、あれからイクノのパーティとも合流して騒ぎに騒いだ誕生日会も夢の跡。 寮に戻る皆と別れてトレーナー室の扉を静かに開けると、オレンジに照らされる部屋で一人片付けに勤しむ誰かさんが居た。 「あれ、ネイチャ。もう揉みくちゃは終わったのかい？」 「お陰様で、もう一年分は揉みくちゃにされて来ましたよーっと」 両手を上に向けてやれやれと首を振るアタシに対して、それは困るとしかめ面を見せる彼。 「まだまだネイチャには一年間主役として揉みくちゃになって貰う。例えば天皇賞とか宝塚とか有馬とか、もっと沢山の舞台で」 「ちょいちょいちょい、何言ってんの。ネイチャさんだよ？またこの人は本当に……」 まったく冗談ばっかり、と呆れながらも彼を見遣れば、眩い夕陽の中で此方を見据える二つの目だけが殊更輝いて見えた。

5 22/04/16(土)23:52:58 No.917670497

「俺は本気だよ、いつでも。ネイチャを信じてるから」 彼はゴミを片付ける手を止めてそうハッキリと告げて、そのまま片付けに戻る。 「……あのさ、トレーナーさん」 「なんだい？」 「……なんでもない」 いつになったら彼の言葉を額面通りに受け止められるようになるのかなんて考えながら、頬に感じる熱を隠すように俯いて、アタシは床に散らばってくしゃくしゃになったテープを集め始めた。

6 22/04/16(土)23:53:30 No.917670723

トレーナー室が元の様相をあらかた取り戻した頃には頬の熱も引き終わって、外の様子も微睡色からすっかり星が瞬く夜空へ様変わり。 「日が伸びて暖かくなって来たとはいえ春本番にはもう少しだな」 「コタツは片付けちゃったからこういう時少し恋しいね。カムバックコタツぅー、ってな感じ？」 彼の部屋のコタツに潜り込むのもまた暫く先の事になりそうだ。 「どうせ今度はエアコンに扇風機目当てで来るんだろうに」 「あ、バレた？」 「わからいでか」 どちらともなく漏れる笑い声。 二人で笑い合えるこの時間がなによりの誕生日プレゼントだ、なんて柄にもなく思ってしまう。 願わくばこの先も二人で、ずっと……。 いやいや何考えてんのアタシちょっと今日掛かり過ぎじゃん！

7 22/04/16(土)23:53:58 No.917670909

「ネイチャ？」 「はい！？」 気付けば黙り込んでいたアタシの目前には心配そうな彼の顔。 「うわちょ！近い！？」 「ああ悪い、いや俺からのプレゼント、まだ渡してなかっただろう？」 ゴホン、と咳払いがトレーナー室に響く。 「ナイスネイチャ、誕生日おめでとう」 手渡されたのは細長い高級感のある手触りの箱。 どうみてもお高い何かが入っている事間違い無しだ。

8 22/04/16(土)23:54:38 No.917671216

「あのあのトレーナーさん、これって……」 「開けてみて」 促されるままに震える手で箱を開けるアタシはどこまでも庶民だなあとどこか冷静な自分が呟く。 カコ、という小さな音とともに開いた蓋の下には、細いシルバーのチェーンと煌めく粒。 いくら庶民だといったってこれぐらいアタシにもわかる、ダイヤモンドのネックレスだ。 「あのあのあのあの」 「大丈夫、言いたいことはわかる。でも申し訳ないけどそれはそんなに高いものじゃ無いんだよ。グレーダイヤモンドって言ってね、普通の透明なダイヤモンドと比べると大分お手頃なのさ」 言われてみると透明だと思っていた石は、薄く灰色に色づいている。

9 22/04/16(土)23:55:50 [ｵﾜﾘ] No.917671678

「4月の誕生石はダイヤモンドだけど、ネイチャの瞳の色に似てるなーって思ったのと、グレーダイヤにはありのままの姿で自信をつけるって意味があるんだって」 「だからまあ、その、今年のネイチャの誕生日には自信をプレゼントー……なんちゃって」 どこまでも締まらない彼の姿に、いつもなら漏れそうな笑い声も今日は喉が詰まってしまって出てこない。 胸がいっぱいで、お礼の言葉も、茶化すような冗談も、嬉し涙だって渋滞中。 ただ身体の奥からじんわりと広がる何かが、コタツなんかよりもずっとずっとアタシを暖めてくれる。 「あ、あの……ネイチャ、気に入らなかった？」 人には自信を持て、なんて言ったくせにオロオロと自信なさげにアタシを覗き込む不安げな顔。 なんて返せば良いか少しだけ迷ってから閃いた。ちょうどいい、今貰ったばかりの自信を少しだけ使わせてもらおう。 「ねぇ、着けてくれる？」 今宵、アタシの胸元に一つ流れ星が降りて来た。

10 22/04/16(土)23:56:08 No.917671785

良いねぇ…

11 22/04/16(土)23:56:54 No.917672068

フジトレみたいなことしやがって…

12 22/04/16(土)23:57:01 [ｵﾏｹ] No.917672100

「ネイチャ、あの後はどうだったのさ」 「あの後？」 「パーティ終わった後にわざわざトレーナー室に戻って行ったじゃない」 「ああ、片付け手伝いに行っただけですよー」 「その口許の弛みでは何かあったって言ってるようなものですわよ？」 「……テイオー、今年のアタシは負けるつもりないから、ヨロシク」 「ナニナニ？ボクに宣戦布告なんてネイチャにしては珍しいことするねー！」 「ふふ、今年のアタシは一味違うってこと」ﾁｬﾘ

13 22/04/16(土)23:57:37 [s] No.917672338

ネイチャに自信を持たせるためのキザなプレゼントをしたい人生でした

14 22/04/16(土)23:58:06 No.917672506

いい…

15 22/04/17(日)00:01:07 No.917673674

指輪はいつプレゼントするの？

16 22/04/17(日)00:08:46 No.917676532

ネイチャとトレーナーさんの醸し出す柔らかくて心地よい暖かな空気と距離感がなんだかすごく良い…好き…

17 22/04/17(日)00:13:11 No.917678117

よきSSでした…

18 22/04/17(日)00:14:56 No.917678701

結婚式が見たいわ！ この2人の結婚式をみせてちょうだい！

19 22/04/17(日)00:26:08 No.917682910

トレーナーにここまでされちゃ自信も付くってもんよ

20 22/04/17(日)00:26:22 No.917683009

さてはコタツネイチャの「」だなあの頃は毎日のようにありがとう

21 22/04/17(日)00:32:05 [s] No.917685061

気付いてもらえてめっちゃ嬉しいです バレンタインとかコタツ片付ける話とか書こうと思ってたけどリアルでコタツ片付けてたらギックリ腰やってそのままでした またそのうち書きます

22 22/04/17(日)00:33:39 No.917685658

こういうのでいいんだよこういうので…

23 22/04/17(日)00:34:54 No.917686133

ところでネイチャさんに3000円入れようとしてるんだけどクレカ登録のページに飛べねえ

24 22/04/17(日)00:37:07 No.917687030

ネイチャバースデーだからURAでゆっくり育成してみたけど このぐらいの甲斐性見せてほしいよなトレーナーにはさぁ！