虹裏img歴史資料館

1 22/04/12(火)00:20:01 No.916008803

ぱしぃん、とタマモクロスの小気味良いツッコミが、タマモクロスの背後から現れたオグリキャップの腹元めがけて繰り広げられる。 「オグリがジャパンカップの後にトレーニング体制秘密にしとるから、どないなっとんのかウチに聞きに来ただけや！大体自分大丈夫なんか？　ジャパンカップの後、めっきり食欲落ちとるやんか！前はトレセン学園の食材食い尽くす勢いで食ってたんが、今はスペの嬢ちゃんにも食欲で負けてて、体力保つんか？」 嵐のようなタマモクロスの指摘に、さしものオグリキャップも口ごもる。 「む…それなら大丈夫だ。トレーナーともレシーバーとバイタルウォッチで常時健康状態をやり取りしている。トレーナーは私の事を分かってくれているからな」 「ほうか…まあ二人が承知してんねんならまあええわ、そもそもオグリの体調管理はウチが口挟む問題でもあらへん…ほんで乙名史はん、何ぞオグリに聞きたい事はあるやろか？」

2 22/04/12(火)00:20:17 No.916008899

「……はい、年末の有馬記念に向けて、意気込みと、よろしければ作戦などを…」 「全力で走って、勝つ。それだけだ。乙名史記者、申し訳ないが次のトレーニングがあるので、これで失礼する」 つかつかと足早にオグリキャップが立ち去るのを見て、乙名史記者が安堵の溜め息をつく。 トレーナーについての質問をしようとした時の、オグリキャップの眼光は、尋常ではなかった。まるで、番（つがい）を奪いに来た敵を見る猛獣のような── 「乙名史はん、これから本社戻るんやろ。府中インターチェンジから都心まで中央道で戻ったとして、経費で落ちるか？」 「…お願いします。自腹でだって、構いません」

3 22/04/12(火)00:20:35 No.916009022

中央道にタクシーで乗り込み、オグリキャップに割り込まれる事がなさそうな事を確認して、タマモクロスが口を開く。 「時間もあらへん、簡潔に話すで。オグリキャップのトレーナーはんは、ジャパンカップの直前に急にウマ娘に変わった。そんだけなら最近は稀によくあるちゅー話なんやが…オグリが、トレーナーはんを他人に見せたがるのを嫌がっとんねん。あの呑気を絵に描いたようなオグリがやで？」 「…ええ。URAの発表ではオグリキャップのトレーナーはウマ娘化し、症状安定までは面会禁止であると聞いています。ですが何か違和感を覚えてしまって…」 「ただでさえオグリがあない神経質になるのは見た事あらへんけど、男の記者はもちろんの事、ウチみたいな一部のウマ娘が近付くのも嫌がってなあ…ティアラ路線の子ならええけど、みたいな状態やねん。容姿についても箝口令を敷いとる。何しろあの地獄耳や、見たやろ」 「…ナーバスになったウマ娘の事例も知らない訳ではないのですが、これは少し常軌を逸しています」

4 22/04/12(火)00:21:00 No.916009154

乙名史記者の頭の中を、トレーナー不在について記者に尋ねられたオグリキャップが、選手生活で初めて記者会見を打ち切り、控室に戻っていった姿がリフレインしていた。 「オグリの奴が何を考えとんのか全く分からへん。ただな、現状をあまり記事で書き立てたり取材で深堀りとかはせえへん方がええんちゃうか。本社の前にオグリが立っとってな、『何を話していたんだ』なんて出てきよったら夢に見るやろ。あっはっはっは…」 タマモクロスの小粋なジョークに、乙名史記者も緊張のほぐれた顔で頬をほころばせるのであった。 「月刊トゥインクル」編集部の入っているビルに着き、タマモクロスと乙名史記者は挨拶を交わし、タマモクロスは電車で府中へ戻ろうとした。そのとき。 目の前の国道のウマ娘専用レーンに、遠くから凄まじい勢いで二人に迫りくる白い影が、遠目からも見て取れた。

5 22/04/12(火)00:21:15 No.916009251

「タマ、奇遇だな。たまには都心までロングランしてみようと思ったらこんな所で出会うとは。──乙名史記者？」 「どっちが奇遇やねん！！　大体なんで急にこないなトコ来んねや！？」 小気味良いツッコミは相変わらず冴え、しかし。 「うーん…坂路トレーニング中に、急に都心まで走った方が鍛えられる気がしてきたんだ…それと何か嫌な予感がして…」 「自分がニュッと出てくる方が嫌な予感ちゅーかホラーやわ！見てみい乙名史記者を！オグリが二回も飛び出してきたから怯えとるやんけ！都市伝説のジェットウマ娘か何かかい！」 「それで乙名史記者…何か探ろうとしているのか」 「やめーやっちゅーねん！なあ！オグリ！！」 ツッコミにも怖じず、一歩、二歩、乙名史記者にオグリキャップが進み寄る。その視線は…（番を奪いに来た者に相対する、猛獣の、ようで…！）

6 22/04/12(火)00:21:35 No.916009345

『オグリ、やめてくれ』 男性口調の、優しげな女性の声がオグリキャップの装着しているヘッドインカムから響くと、オグリキャップは歩みを止めた。 『疲労が溜まっているから府中へは何か乗り物を使って戻るんだ。だいぶ無理をさせてしまって済まないね』 「私は走れるが、トレーナーがそういうならそうしよう」 そのまま踵を返し、オグリキャップは駅へと向かっていった。アイドルウマ娘の彼女が一般交通機関を使えばファンが殺到する筈である。しかし、その異様な殺気を前にして、近付こうとする乗客は居なかった。

7 22/04/12(火)00:22:07 No.916009497

時は過ぎて12月上旬、深夜のグラウンド。特にお願いしてナイター環境を用意してもらった芝のコースで、2400mの模擬レースが行われようとしていた。 一人は、マイルCSとジャパンカップの覇者、オグリキャップ。 一人は、左耳に飾りを付けた、芦毛の見知らぬウマ娘。 始まったレースは、今年のジャパンカップと同じく、極めてハイペースな展開となった。芦毛のウマ娘がやや先行し、後ろにオグリキャップが控える。ラスト400mで二人は加速し──ほぼ同時にゴール板を踏んだ。タイムは…2分22秒2。 「…やっぱり、トレーナーは凄いぞ。もう二度と、私は手放したくないんだ」 無邪気な子供のように抱きつくオグリキャップを、芦毛のウマ娘──オグリキャップのトレーナーは、静かに頭を撫でてやる事しかできなかった。 「なあ、俺の姿を見られるのは、そんなに嫌か？トメさんにもか？」 「……いや、トメさんにならいいが…取られそうな相手には、誰であれ、見せたくないんだ……」ぐりぐりと、頭をトレーナーの胸に押し付けて甘えるオグリキャップ。

8 22/04/12(火)00:22:21 No.916009595

「それに、こんなに速く走れるなら、きっとレースにも出ろと言われたり、もしかするとお見合いの話も来たりするかも知れないだろう？だから、見せたくない」 オグリキャップ人生最大の我儘に、トレーナーは可能な限り答える事を約束し、二人はトレーナー寮へと戻っていった。

9 <a href="mailto:s">22/04/12(火)00:22:49</a> [s] No.916009741

ホーリックスが奇跡的に実装されるまでに書いておきたかった

10 22/04/12(火)00:32:59 No.916013056

独占力

11 22/04/12(火)00:36:14 No.916014022

びっくりするぐらい独占欲あるオグリだった....

12 22/04/12(火)00:38:01 No.916014512

トレーナーだったのに走者としての才能が開花してしまうというのも複雑だな…

13 22/04/12(火)00:39:55 No.916015018

あぁそうかこれシンデレラ時空走り馬鹿のオグリの感じなんだ 一回抜いたらあとはその剣を鞘に仕舞いたく無いみたいなギラギラしてる

14 22/04/12(火)01:01:00 No.916020848

ヤンデレオグリ…

15 22/04/12(火)01:02:41 No.916021284

誰にも渡さないってTSトレーナーのおっぱい吸ってるオグリが浮かんだ

16 22/04/12(火)01:16:42 No.916024705

>ホーリックスが奇跡的に実装されるまでに書いておきたかった ホーリックスか…ちょっとまってこのトレーナーえらいウマになったな…