虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    22/04/03(日)22:15:06 No.913217594

    「もおぉ~~!!トレーナーちゃんってば、今日が何の日か分かってるー!?」 放課後のトレーナー室。デスクワークに励むトレーナーをよそに ソファーでくつろいでいたように見えたマヤノトップガンが、突然痺れを切らしたように立ち上がり叫んだ。 「ホワイトデーだよ、ホワイトデー!お返し何かなってずっと待ってるのに、  トレーナーちゃんてば仕事ばっかり!見てよ窓の外ーーっ!!!」 四月中旬並みと温かな日が続き、日も長くなりすっかりと春の様相である。 とはいえ実際はまだ三月。夜の帳が下り始めるとそこからは早い。 窓ガラス越しに移る外はすっかり黒一色に染まっていた。 「あと15分待ってほしかったなあ……」 苦笑しながらトレーナーは仕事を切り上げ、隠してあった上質の紙バッグを差し出す。 その洒落た形状とプリントにピンときたように、マヤノは目を輝かせた。 「これ、服!?マヤに服を買ってくれたの?」 「残念ながら貸衣装。外に出てるから着替えてみて」 「え?う、うん……」

    1 22/04/03(日)22:15:20 No.913217685

    しばらくの間トレーナーが廊下で佇んでいると、ドアが遠慮がちに開いた。 僅かな隙間からマヤノが顔だけを覗かせる。  「ト、トレーナーちゃん、これ……」 トレーナーが目で促すと、戸惑いの表情のまま廊下に出てきた。 「おっ、似合うじゃないか」 「────……っ」 ほんのりと頬を赤らめるマヤノは、春物のパーティードレス姿になっていた。 ほとんど装飾は施されていないシンプルな純白のドレス。 飾り立てて魅せるのではなく、着る人間自身の持つものを引き立てる──そんなデザイン。 それは女性としての魅力を携えた、『レディ』のための衣装だった。 「じゃあ行こうか」 「ふえっ?」 マヤノの手をそっと持ち上げ、トレーナーは歩き出す。 困惑の色をますます強めながらマヤノはそれに従うしかなかった。

    2 22/04/03(日)22:15:34 No.913217784

    遅くまで残っていた生徒と時折すれ違い視線を投げかけられながら、 二人は校内をどんどん進み──駐車場に停めてあるトレーナーの車の前に来た。 マヤノが躊躇いつつ助手席のドアハンドルに手を伸ばしかけると、トレーナーの手がそれを遮る。 そして代わりにドアを開け、「どうぞ」と招く。 「あ、ありがと……」 エスコートされるままに席に着くと、ドアが優しく閉められた。 車内は新車のようにピカピカで、整然としている。 小物や日用品の類も見当たらず──ただ、助手席の前に花の入った小さなガラスケースが置かれているだけで。 マヤノがそれに見とれているうちにトレーナーは回り込み運転席に座る。 エンジンがかかり車が発進すると、ゆったりとしたジャズが流れだした。 力強くも優しさのある外国人女性の歌声。それが車内の暗さを落ち着きのあるものに作り変えていく。 車は街中を抜け、少しずつ郊外へと向かう。

    3 22/04/03(日)22:15:48 No.913217881

    「どこへ行くの……?」 「あれ?分かっちゃったりしない?」 「え、えっと……。……わかんないよ」 マヤノのその言葉に、トレーナーはクスッと笑いだけを返した。 辺りの風景は集落に変わり、さらにそこも通り越して峠道に入っていく。 何かしらお偉方の思惑が絡んだものなのか、辺鄙な場所なのに道路は場違いに幅広く立派だ。 整備もしっかりとなされていて上り道でも車の動きは軽やかである。 そのままスムーズに中腹まで進むと、これまたとってつけたような展望台が造られていた。 「ここ?」 「うん」 停車させトランクから何やらクーラーボックスを取り出すと、 トレーナーは乗せた時のように助手席のドアを開けてマヤノをエスコートする。 また手を取り展望台先端までの少しの距離を進むと、両側を山に遮られた視界が段々と開けてくる。 「──う、わあ……!」 そして柵まで辿り着くと、マヤノの感嘆の声が上がった。

    4 22/04/03(日)22:16:01 No.913217970

    満天の星空がパノラマとして広がり、地平には自分達が住む街の高層ビルがそびえきらめいている。 その下には街明かりが満ちていて、こちらに近付くにつれまばらに散っていき…… 天からの光の連なりは、まるで星が滝のように落ちて広がる河の流れに見えた。 「すごい……」 「だろ?」 圧倒されるマヤノに満足げな様子を見せながら、トレーナーは設置されている木のテーブルに 小ぶりのキャンドルをいくつも並べて火を点ける。 橙色のほのかで柔らかな灯がテーブル周辺を照らし出した。 「さあ、座って」 「あ、うん──」 マヤノが座ると、トレーナーも反対の椅子に座り向かい合う。 「この峠道、こんな立派だけどほとんど使われてないんだ。特に夜には。  だからこんな夜景が見られるなんて誰も知らない……俺だけの秘密の景色ってわけ」 そこで一旦言葉を切り、マヤノにしっかりと視線を合わせる。 「けど、これからは二人だけの秘密だな」

    5 22/04/03(日)22:16:15 No.913218080

    「マヤと、トレーナーちゃんだけの……」 ぼんやりとした声でマヤノがくり返してる間に、トレーナーは今度はウッドプレートを中央に置く。 そこにクラッカーを並べて予め手を加えておいた食材を手早く乗せると、 まるでケーキのように華やかでカラフルなカナッペが出来上がった。 「わ、ふわわわ……っっ!」 マヤノが目を丸くしている間に、今度は瓶に入った飲料がクリスタルグラスに注がれる。 カットされたリンゴやオレンジが混じった真紅のドリンク。 「あ、これ……前に雑誌で見たことある!確か──サングリア?」 「当たり。ま、正確にはそれ風のジュース」 さすがにアルコールはな、と苦笑しながらグラスの片方をマヤノに手渡した。 「──乾杯」 「あ……──乾杯」 グラス同士が軽く接触し、透明感のある音を鳴らす。

    6 22/04/03(日)22:16:29 No.913218190

    「──!わ、これ美味し……!」 ドリンクに口をつけたマヤノは驚きの声を洩らし、さらにコクコクと飲み進める。 そして続けるようにカナッペにも手を伸ばした。 「こっちも!」 二つ、三つと口に運ぶマヤノを、トレーナーはジッと見つめる。 「どうかな、こういうのは」 「うん!とーーーっ、て……も……」 いつものように「キラキラ!」と言いかけた口が止まる。 もっとこの場にふさわしい言葉を探るように。 少しの時間思いを巡らせる素振りを見せた後、マヤノは姿勢を正した。 「……素敵…………」 胸の奥から湧き出たような、うっとりと熱のこもったただ一言がこぼれる。 はしゃぐわけでなくその場の情感をしっかりと受け止めたその穏やかな微笑みは、 子供ではけっして持ちえない美しさを放っていた。

    7 22/04/03(日)22:16:43 No.913218304

    「マヤノ…………」 「トレーナーちゃん……。マヤは……、マヤはね……」 静寂に包まれた夜の闇の中、キャンドルの灯りに包まれた二人きりの空間が作られていく。 「──って、ああぁぁーーーーっっ!?!?」 しかしその空気は、素っ頓狂なマヤノの叫び声で粉砕された。 「ここに来るまでに一時間はかかってるよねっ?」 「え、ああ……そんなもんかな」 「やっぱりーー!もう出発しなきゃ門限過ぎてフジ先輩に心配されちゃうーーっ!!」  トレーナちゃん急いで片付けて!アイ・コピー!?」 「…………………………」

    8 22/04/03(日)22:16:57 No.913218403

    行きよりも幾分速度を上げての帰り道。 二人の間に会話はなく、相変わらずゆったりと流れるジャズが車内を優しく包んでいる。 「……マヤノ、あのさ」 半分ほどの距離を過ぎて、ようやくトレーナーが口を開いた。 しかしマヤノからは何も反応が返ってこない。 「マヤノ……マヤノ?」 横目で確認すると、 「うぅ~~ん…………ふにゅ……」 マヤノはシートにすっかり体を預けて眠りこけていた。 緊張から解き放たれ、安心しきってるのがポーズ自体から伝わってくる。 「トレーナーちゃぁん……ちょっと、大人の時間すぎるよぉ……  マヤには……まだ早いかもぉ~…………」

    9 22/04/03(日)22:17:10 No.913218490

    「──ハハッ」 その寝言にトレーナーは思わず吹き出す。 「そっか、そうだよな。やっぱり少し早すぎたよな」 うんうん、と納得するように頷いて、 「…………ハアアァァーー~~……」 しかし大仰にため息をつきガックリと肩を落とした。 「俺にしちゃ、相当頑張ったんだけどなあ……」 そっと手を入れる上着のポケット。 とうとう渡すことのできなかった指輪ケースの感触が切なかった。

    10 22/04/03(日)22:17:28 [s] No.913218663

    遅れに遅れたホワイトデーネタを今更投下。 新モードのホワイトデーイベントでトレーナーが完全に蚊帳の外で あんまりだったので書いてみました。

    11 22/04/03(日)22:18:26 No.913219123

    背伸びした中学生に指輪送ろうとしちゃダメだよ!

    12 22/04/03(日)22:18:27 No.913219134

    まぁTSのイベントは担当以外のトレーナーの影が無いからね… それはそれとして結構なお点前

    13 22/04/03(日)22:19:19 No.913219541

    !かかり

    14 22/04/03(日)22:19:59 No.913219874

    いい…とてもいい…

    15 22/04/03(日)22:21:20 No.913220527

    JC相手にちょっとイケメンムーブしすぎだこのトレーナー

    16 22/04/03(日)22:21:42 No.913220696

    中学生に対する態度か…これが…?

    17 22/04/03(日)22:40:34 No.913230123

    フジキセキもびっくりの攻めっぷり