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    22/03/30(水)02:08:31 No.911589680

    1月上旬、正月明け。トレセン学園、トレーナー室にて。 トレーナーとナランフレグは新年の挨拶もそこそこに、次走に向けた打合せを行おうとしていた。 クラシッククラスでオープンクラスまでたどり着いた彼女。ここからはオープンレースでどこまで成績を伸ばせるかが問われてくる。 当然回りのウマ娘達も、同じく3勝クラスまで勝ち上がってきたウマ娘達ばかり。だからここからのレースは一層ハイレベルなものになることは、誰の目にも明らかだった。 しかし二人にはどこか明るさがあった。芝1200mのレースに限定はするものの、成果を出し、結果を明らかにしてきたのだから。 「次のレースなんだけど・・・これ、どうかな」 少しトレーナーは緊張気味に、出走登録の用紙を彼女に差し出した。 その用紙を受け取り、あからさまにナランフレグは顔をしかめた。 「シルクロード・・・ステークス」 そしてそこに書かれたレース名を読み上げる。

    1 22/03/30(水)02:08:53 No.911589727

    2月上旬、京都レース場、芝1200m。G3レース、シルクロードステークス。 オープンクラスに上がっていきなりのG3レース。少し挑戦的な内容に思えるが、それよりも、レースの格付けよりも、ナランフレグの心を不安にさせるものがあった。 それは 「右回りじゃない」 そう、京都レース場は右回り。彼女が苦手なコース取りなのである。 そして彼女は今までのキャリアで一度も京都レース場を走ったことがない。 その二つの要素が、露骨に彼女の顔色をしかめさせた。 「分かってるよ、フレグの思うことは。でも、折角ファン数も足りてるし・・・一回挑戦してみるのも・・・いいんじゃないか、って・・・」 トレーナーはどこか遠慮がちにそう言った。 その言葉には嘘はない。だが言葉に出していない本心はある。

    2 22/03/30(水)02:09:14 No.911589790

    それは、彼女のレースへの選択肢を広げたいという一心だった。 走れるのは1200mだけ。左回りと中京レース場は得意だが、条件がずれるとすぐに歯車が狂う。 いつまでもそれでは走れるレースが限られてしまう。活躍できる場所が限定されてしまう。 煮詰まった世界は、いつしか袋小路となり、どこにも出口を見付けることができなくなってしまう。 それを恐れての、ある種の親心だった。 当然、それを彼女には告げない。不器用な性格をしているナランフレグである。直接にしろ間接にしろ、それを告げられた時点で彼女の心は大きく動揺する。そう彼は考えたのだ。 だから 「頼むっ!!!」 目の前で拝むように手を合わせ、頭を下げて。 「今回だけでいいから!一回で良いから!」 下手に出て頼むより、彼には、彼女を説得する方法を持てていなかった。

    3 22/03/30(水)02:09:31 No.911589841

    その態度にすこしため息をつく彼女。そして宙に視線を漂わせると 「あー・・・」 と困ったように声を出し 「別に・・・いいけど」 とトレーナーに視線を合わせることなく、ぽつりとそう言った。 「本当か?!」 「ホントだって」 「ありがと!ありがとな!フレグ!!!」 「あーもう・・・うっさい。さっさとアンタ、登録してきなさいよ」 満面の笑みで彼女に礼を言うトレーナー。その子どものようなはしゃぎようを見て、ナランフレグは呆れていた。 (何よ・・・子どもみたいじゃない・・・) 目の前の人なつっこそうな若い男性。しかし確実に彼女よりは何周も年上、 にも拘わらず、そんな愚痴を脳内でつぶやくと同時に、少しだけナランフレグの瞳が優しい瞳を帯びているのに、彼女自身、気づいていなかった。

    4 22/03/30(水)02:09:53 No.911589895

    そして2月上旬。 京都レース場、芝1200m。G3レース、シルクロードステークス。 天気は晴れ、バ場は良。 最終局面。淀の名物、第四コーナーの下り坂を過ぎ、ホームストレッチ。 『先頭はモズスーパーフレア!そして追いかけるはセイウンコウセイ!』 逃げ先行のウマ娘2人が完全に抜け出し、最後の平坦な直線を駆けていく。 このまま突き放しにかかるかと思いきや、 『中からはアウィルアウェイが伸びてくる!!!』 差しウマの脚も一気に迫り 『そして外からはナランフレグ!!!』 大外を回ってナランフレグの末脚も光る。

    5 22/03/30(水)02:10:25 No.911589988

    見惚れるような剛脚を繰り出し、なんと最後方から一気に先頭へ駆け抜けるナランフレグ。 『前はモズスーパーフレア!セイウンコウセイ!』 しかし先頭二人は最後まで粘ろうとする。 だが (脚色が鈍い・・・ッ!!!) 一気に追い込んでくるナランフレグにその脚色が輝いているとは思えなかった。 だが (前にまだ一人・・・!!!) 彼女が見ているのはアウィルアウェイ。差しウマの彼女の脚も止まっていない。 彼女を差しきらないと一着になれない、そんな本能がざわめく最中 『さらにエイティーンガールも追い詰める!!!』 根性を絞り出すように、もう一人の差しウマの脚も伸びてきた。

    6 22/03/30(水)02:10:42 No.911590044

    (っくっ・・・・そぉ!!!!) 必死に脚を伸ばすナランフレグ。生まれて初めてのG3レース。ここで絶対に勝つと彼女の脚に思いが宿る。 そのまま一気に差しきろうと脚の回転を高めようとした、その瞬間 『アウィルアウェイ!!!一着でゴールイン!!!』 既に彼女はゴール板を駆け抜けていた。 『アウィルアウェイ!!!見事な差し足でした!!!二着にエイティーンガール!!!そして三着はナランフレグといった所でしょうか!?』 実況の声がレース場に響き歓声があがる。その声を聞き (あっ・・・・・・) 途端、我に返ったように脚色を緩め、ナランフレグはゆっくりと減速し始めた。 「終わったんだ・・・」 ぽつりとこぼれたその言葉。無我夢中になっていた彼女自身。ようやく我に返ってみれば、淀に漂う木枯らしの冷たい風が、火照った彼女の身体を包み込む。 こうして、彼女のシルクロードステークスは三着で終わったのである。一着との差はおよそアタマ差だった。

    7 22/03/30(水)02:11:10 No.911590122

    控え室にて。 「すげーよ!!!フレグ!!!」 そこに戻ってきた彼女を迎えたのは、トレーナーの興奮した声だった。 「は?」 いきなりの大声に途惑いの色を出す彼女。しかし 「初めてのG3で、右回りで!三着ってよくやったよ!!!」 とトレーナーの熱は止まらない。 「えっ・・・あ・・・」 言われてみればそうだ、と彼女も思った。 苦手とする右回り。初めての京都レース場。そしてG3レース。 ステップアップにしては少し高めの舞台だったにも拘わらず、好成績を確かに修めた。

    8 22/03/30(水)02:12:59 No.911590404

    そんな最中 「あ!」 思い出したようにトレーナーが声を張り上げる。 「え・・・何よ・・・」 今度はなんだ、と言わんばかりの視線で、途惑いの声を上げる彼女に 「お前、三着だったから、ウイニングライブ出られるぞ!!!」 そんな態度、一切お構いなしの口調でトレーナーは尚も続ける。 「あ・・・」 何かそんなのあったな、と、ようやく彼女は思い出す。 それからはあまり彼女の記憶も定かでは無い。 トレーナーに急かされてウイニングライブに行って。バックダンサーとはいえ観客の前で輝いてみせて。 あっという間に一日が終わり、気づけばホテルのベッドで横になっていた。 ただ、少しだけ彼女に残っている事があった。 それはトレーナーと取った夕食でのこと。

    9 22/03/30(水)02:13:18 No.911590462

    「初めてのG3レースで三着になれるんなら、G3タイトルを取るのも案外、近かったりするかもな!」 そう彼は彼女に言ったのだ。いつも通りの満面の笑みを浮かべて。 それを述懐し、暗闇の中、彼女は布団に入り天井を眺める。 「G3・・・タイトル・・・か」 その言葉を口にして、どこか舞い上がる心地になるナランフレグ。 「ふふっ・・・」 頭に浮かべるは、ウイニングライブでセンターを務める自分の姿。 脚は確かに疲れている。身体中に気だるい倦怠感が漂うのは、今日のレースを全力で走った証。 しかしそれを持ってしてもなお、これから、シニアクラスに上がって一回目のレースで好成績を出したことによる達成感の方が勝り、彼女は穏やかに、夢の中へと沈んでいった。

    10 22/03/30(水)02:13:41 No.911590523

    時は流れ、10月中旬。 新潟レース場、芝1400m、リステッド競走、信越ステークス。 天候は晴。バ場は良。 『勝ったのはジャンダルムーーー!!!!』 「YES!!!!!」 レースが終わり、ガッツポーズをするウマ娘。黒鹿毛のウマ娘、ジャンダルムは先行策を取り、逃げウマを抜き去り1・1/4バ身差で優勝を飾った。 そして 「くっ・・・・・・」 悔しそうに奥歯を噛みしめるウマ娘、ナランフレグの姿がそこにあった。 彼女は七着。上がり3ハロン33.7というこのレース随一の末脚を繰り出したが、先頭勢を捉えることが一切出来なかった。 掲示板にすら入らない結果。それは今日に限った事ではない。

    11 22/03/30(水)02:14:08 No.911590591

    4月、中山レース場、芝1400m。リステッド競走、春雷ステークス。ここで彼女は六着だった。 5月、新潟レース場、芝1200m。オープン戦、韋駄天ステークス。ここでは五着。 7月、新潟レース場、芝1000m。G3レース、アイビスサマーダッシュは九着。 8月、新潟レース場、芝1400m。リステッド競走、朱鷺ステークス。七着。 シルクロードステークス以来、彼女は韋駄天ステークスでどうにか掲示板に入るのが精一杯だった。 いずれも戦法は後方からの追い込み。そして上がり3ハロンは常に上位3人に入る好タイム。 だが、どのレースも先団を捉えることができず、結果に結びつくことはなかった。 1勝クラスと2勝クラスをトントン拍子で上り詰めた、新潟レース場にて集中登録を行ったにも拘わらず、である。

    12 22/03/30(水)02:15:37 No.911590834

    そして、このレースを最後に、彼女のトレーナーは今年の出走登録を行わなかった。 G3タイトルがすぐに手に入ると考えていた。そんな年初の甘い観測など、二人の心にはもう微塵も残っていない。 何の結果も出せず、1勝も上げることができぬまま、1年目のシニアクラスを、ナランフレグは終えたのだった。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があっていないのでこれにて失礼する いままでのやつ fu928671.txt

    13 22/03/30(水)02:16:30 No.911590988

    今日もありがてえ…

    14 22/03/30(水)02:23:47 No.911592226

    最後まで書いてくれるのか!?

    15 22/03/30(水)02:24:49 No.911592426

    ありがたい…

    16 22/03/30(水)02:40:27 No.911594833

    https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=201412 丁度この記事見てた所だったわ

    17 22/03/30(水)02:42:44 No.911595121

    ホントに高松宮までいっちゃうか

    18 22/03/30(水)02:54:29 No.911596603

    続きが来るとは思わなかった ありがとうございます

    19 22/03/30(水)03:19:08 No.911599368

    ウマ娘だとここまでは絡めづらいですよねえ https://news.yahoo.co.jp/articles/13fcb7d5f29faf233859b493cf6bbd387c16a64a

    20 22/03/30(水)04:55:46 No.911605877

    このまま上がり調子でキラッキラなアイドルウマ娘メイケイエールの登場とシルクロードが見たい… そして高松宮記念で…

    21 22/03/30(水)04:57:05 No.911605945

    スレ「」の話面白いのに深夜2時過ぎはキツいって!

    22 22/03/30(水)05:02:39 No.911606219

    アプリとか原作で話題の子とか見てると麻痺してくるけどG3取るだけでも果てしなく長いよね…

    23 22/03/30(水)05:04:13 No.911606291

    >アプリとか原作で話題の子とか見てると麻痺してくるけどG3取るだけでも果てしなく長いよね… ステイゴールドみたいに常に重賞に顔出す子なんて上積みで ナランフレグのようにもっと下で涙流してる子の方が圧倒的に多いんだよね…

    24 22/03/30(水)05:04:42 No.911606312

    実馬の画像でクソみたいなスレ立てんなよ

    25 22/03/30(水)05:47:37 No.911608642

    高松宮なら先輩としてキングやマチタンをアドバイザーとしてだせそう

    26 22/03/30(水)05:58:56 No.911609353

    大きなタイトル取ったことない中堅トレーナーなんだろうな