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22/03/28(月)12:23:42 No.911035628
『夕光の なかにまぶしく 花みちて しだれ桜 輝きを垂る』 今日授業でそんな詩が出てきた。よく分からなくてもう忘れちゃったケド。 でもテストに出るだろうし、トレーナーにもいつも『分からないことは訊くように』って言われてっから、トレーニング前にきいてみることにした。 何かそう……『知らぬは一升瓶』だっけ。 「でさ、この詩の意味がよく分かんねーってなって、『知らぬは一升瓶』だから教えてくれっかなーって」 「はは。『聞くは一時の恥。知らぬは一生の恥』だね。分からない時、他人に訊くというのは確かに恥ずかしいことだろう。でも、そこで分からないのを放置したまま、大人になっていった時に皆当たり前に知っている事を訊くのはもっと恥ずかしい思いをすることになる。『君はそんな事も知らないのか』ってね。それを表したのがその言葉さ」 「へぇー」 「さて、本題だね。この詩のどこが分からなかった?」 どこって言われてもなー。
1 22/03/28(月)12:24:27 No.911035848
「全部」 「ふむ……今は夕焼けも綺麗な時間だし……ちょっとトレーニングは後回しにして外に行こうか。実際に目にした方が分かりやすいだろう」 「? よく分かんないけど、おけおけ~。あ、なんか持ってった方が良い?」 「特に要らないかな。あ、スマホは持ってて欲しい」 「りょ~」
2 22/03/28(月)12:24:43 No.911035930
夕日で皆オレンジに染まってる中、あたしとトレーナーは学園の外へ。 どこ行くのなんて話ながら、何分か歩いていった所に、桜が咲いていた。 大きなしだれ桜。 「わぁ。メッチャキレイで上がる~。ウマトックに上げちゃお。『しだれ桜 マジ映え』っと」 「喜んでもらえて何より。実はさっきの詩はこれが近いと思うんだ。『夕光の』これは丁度今、夕日の光の事を指している。読み方は『ゆふかげ』。『しだれ桜 輝きを垂る』これはその夕日の光を浴びて眩しく光ってる様に見えるしだれ桜が枝を垂らしている様子を表しているんだ。この詩を読んだ佐藤佐太郎はこう言った植物や物に限定した詩が多いのも特徴なんだ」 「へぇー。でもトレーナーはなんで詩に『枝』って書いてないのに枝を垂らしているって分かるん?」 「それはこの詩がわざわざ枝と書かなくても、聞いたときに枝を想像できるように出来ているからさ。ほら、しだれ桜の枝は垂れてるだろ?」
3 22/03/28(月)12:25:09 No.911036075
トレーナーが手頃な枝を「ほら、垂れてるー」なんて言いながら触る。 時々子供っぽいというか、変にあたしに合わせようとしてるのか空ぶる時もあるけど、説明は分かりやすいんだよなーなんて思いながらあたしも枝に触る。 ──その瞬間、尻尾の毛が全部逆立って凄い寒気があたしを襲った。 「ジョーダン! 伏せろ!」 「ぇ、きゃあ!」 トレーナーに頭を無理矢理捕まれて地面に伏せさせられる。 その瞬間、あたしの頭があった場所に今まで柔らかそうに垂れていた筈のしだれ桜の枝が、鋭く伸びてきていた。 「な、なんなの……」 「間違いない……ウマ娘イーターだ!」
4 22/03/28(月)12:25:29 No.911036191
──ウマ娘イーター。 有史以来、ウマ娘の存在と共に有ってきたウマ娘の天敵。 植物の筈のそれらは、ウマ娘の保有するスキルを無力化し、圧倒的な力と生命力でウマ娘を補食する。 「くそっ……まさかしだれ桜に擬態するタイプが居たとは……。さては花見客を狙って……? ジョーダン怪我は無いか!?」 「だ、大丈夫だけど、そのウマ娘イーターって何なの!? そんなの知らないんだけど!?」 「そんな事は後回しだ! ジョーダンは今すぐ逃げて学園に連絡を! 可能ならAランク以上のトレーナーを連れてきてくれ! コイツは……並のトレーナーでは勝てない!」 はぁ!? はぁぁぁっ!? ちょっと、全然意味分からないんだけど!? なんで桜を見てたら変な生き物出てくるわけ!? しかもトレーナー当たり前のように戦おうとしてるし! それにAランク以上のトレーナーって何!? あたし変な夢でも見てるの……!?
5 22/03/28(月)12:25:54 No.911036309
「早く逃げろ! 俺なら足止めくらい1人で可能だ! 頼むジョーダン!」 「…………わ、分かったし! ごめん嘘! 何も分かんないけど、誰か呼んでくる!」 急に色んな情報で頭殴られたみたいになったけど、これだけは分かった。 あの元しだれ桜はあたしの本能みたいな部分でヤだってなる。少しでもアレに近付こうとすると、怖くて倒れちゃいそうな。 だったらあたしのやることは決まってる。バカみたいに言われたことをやるだけだっての!
6 22/03/28(月)12:26:18 No.911036434
「ぐあっ! ……ナメるなぁ!」 ジョーダンを逃がしてから5分位経っただろうか。 しだれ桜型ウマ娘イーターは厄介な相手だった。 先ず、奴の武器である垂れた枝はその強靭さと強度で鞭のようにしなりつつも、槍のように鋭く突いてくる。そしてその武器が100や200はあるのだ。 こちらが攻めようにも、奴はその枝を平織りのように絡めて盾とし、こちらが引けば弾丸のごとき速度の枝が追撃してくる。 俺の固有スキル……ウマソウルを指先へ集中させ、強力な鉤爪にして鋼すら容易に切り裂く力も奴の圧倒的な数の枝の前では対して役に立っていない。 今も攻撃されて体を貫かれていないのは、防御に回したウマソウルのお陰だ。しかしこのままでは…… 「ギィェエエエエエエエッ!!」 「ぐ……ッ! しまった、畏縮の咆哮ッ!?」
7 22/03/28(月)12:26:41 No.911036548
いくら対ウマ娘イーターに特化したトレーナーでも、生物のDNAに刻まれた絶対的な恐怖からは逃げられない。 このウマ娘イーターはトレーナーのみならず、恐らく地球上の生命体であれば誰しもが恐怖による畏縮で動けなくなる音で咆哮した。 普通のウマ娘イーターはこの技を使い始めるまでにおよそ100年は掛かると言う。つまりコイツは今まで1度も倒されることなく、生き延びてきた強力な個体! 駄目だ! 防御が間に合わない! 「だらしないぞジョートレ。さては最近気を抜いてるな?」 「!?」 空から声が降り、俺に迫っていた枝を弾くようにピンクの光が空から降り注いで壁となった。 ピンクの壁に弾かれた枝は生命力を吸われたのか、枯れ木となり、パキパキと音を立てながら崩壊していく。
8 22/03/28(月)12:27:09 No.911036674
「カワカミトレーナー! 来てくれたのか!」 「あぁ。よく耐えたな」 俺の目の前に降り立ってくる小柄な女の子。 ピンクの衣装に身を包み、降り立つ地面はその子から発せられる強力なウマソウルにより瞬く間に凹んでいく。 その子こそ、カワカミプリンセスのトレーナーその人。 彼はウマソウルにより『変身』をし、並のトレーナーの何倍もの強さを誇るプリンセスとなるのだ! まさに、『お姫様は女の子だけの特権じゃないぜ!』をその身で体現する男!! 「ギィェエエエエエエエッ!!」 「ふん、無駄だ。プリンセス・手刀!!」 「ギエッ!?」 カワカミトレーナーの手刀が迫り来るウマ娘イーターの枝を文字通り粉砕する。たったの一撃でだ。
9 22/03/28(月)12:27:57 No.911036887
「プリンセス・拳圧!! プリンセス・拳圧!!」 ボッ! と言う僅かな破裂音と共にウマ娘イーターの幹が抉られていく。俺の時のように平織り状にした枝の盾も、その拳圧の前では無意味。一切の減力を許さずその身を破壊されていく。 流石はフィジカル最強と謳われるカワカミトレーナー。これ程までに研ぎ澄まされたウマソウルの使い方とは……。 「トドメだ。──シュッ!」 カワカミトレーナーが腰を落とし、姿が掻き消える。 次に現れた時、カワカミトレーナーは既に敵の懐に入り込んでいた。 「プリンセス・正拳突き!!!」 その瞬間、カワカミトレーナーの正拳突きを食らったウマ娘イーターはその破壊力に成す統べなく爆散した。 初めて目の当たりにした、圧倒的なウマソウルによる破壊力。 凄まじい戦いであったが、やられたウマ娘イーターから散った桜の花弁が夕日に照らされながら舞う様はとても美しかった。
10 22/03/28(月)12:28:21 No.911037019
「……『夕光の なかにまぶしく 花ちりて』って所か」 「流石ですわトレーナーさん! 特にあの最後の突き。極限まで高められたプリンセスパワーで光り輝いて……あぁ、バチクソに盛り上がりましたわ~!」 「トレーナー無事!? 何かウマ娘イーターって叫びながら学園いったらこのトレーナーが助けてくれたんだけど……」 「あぁ。大丈夫だよジョーダン。それよりほら、散った桜が綺麗じゃないか?」 風に流される桜の花弁を指差す。 凶悪なウマ娘イーターであったが、その身に咲かせていた桜の美しさは本物だ。寧ろ、あの強さだからこそ、ここまで美しい桜の花を咲かせることが出来たのかもしれない。 もしかすると佐藤佐太郎もこのウマ娘イーターを見てあの詩を思い付いたのかも知れないな。 「ごめん。あたし、バカだからいつもなら理解できるように頑張りたいけど、今回の事は分かりたくないかな……」
11 22/03/28(月)12:29:54 No.911037481
しまったウマ娘イーターだった
12 22/03/28(月)12:30:30 No.911037635
何だかんだ3作目 ホームでジョーダンツンツンしてた時に桜の話をしていて、桜の詩でも使って書いてみようかと思ってたら出来上がってました 戦闘描写書いてる方が楽しかったので、これにて御免
13 22/03/28(月)12:30:42 No.911037693
油断してた
14 22/03/28(月)12:32:53 No.911038292
ノーガードだった
15 22/03/28(月)12:33:18 No.911038408
>『お姫様は女の子だけの特権じゃないぜ!』をその身で体現する男!! ……なんて?
16 22/03/28(月)12:33:56 No.911038601
お昼のウマ娘イーターたすかる ジョーダンのトレーナーはもう少し修行しなくてはな…
17 22/03/28(月)12:34:44 No.911038831
お?しっとりしたジョーダンの話かな?と思ったら…くっウマ娘イーターか!ってなった
18 22/03/28(月)12:35:12 No.911038960
>「さて、本題だね。この詩のどこが分からなかった?」 >どこって言われてもなー。 これ何が分からないのかが分からない典型的なダメ学生感があって自分を思い出して泣きたくなった
19 22/03/28(月)12:35:20 No.911039004
ジャンルごと擬態してきやがって!
20 22/03/28(月)12:36:12 No.911039257
プリンセスパワーとは…
21 22/03/28(月)12:37:23 No.911039611
しっとりした話だと思ったのに!!
22 22/03/28(月)12:38:07 No.911039806
目線立ってるから余計に不意打ちでウマ娘イーターがキマる…
23 22/03/28(月)12:40:52 No.911040588
お願いだから我々を置いてけぼりにしたままにしないで?
24 22/03/28(月)12:43:25 No.911041276
ステキなジョートレ怪文書だと思ったのに!
25 22/03/28(月)12:45:39 No.911041845
ジャンル擬態までするとは許せねえよウマ娘イーター!
26 22/03/28(月)12:46:59 No.911042189
>「ごめん。あたし、バカだからいつもなら理解できるように頑張りたいけど、今回の事は分かりたくないかな……」 そうだね…
27 22/03/28(月)12:47:12 No.911042248
ウマ娘イーターが浸透…いや侵食するにつれ 我々人類はしっとりした話で植物が出てきたら警戒せねばならない
28 22/03/28(月)12:47:13 No.911042251
まあカワカミトレーナーが格好良かったからいいか… >ピンクの衣装に身を包み、降り立つ地面はその子から発せられる強力なウマソウルにより瞬く間に凹んでいく。 ここ界王拳みたいで好き
29 22/03/28(月)12:51:01 No.911043262
王子様じゃなくてプリンセスなのかよカワカミトレ!
30 22/03/28(月)12:52:39 No.911043684
>王子様じゃなくてプリンセスなのかよカワカミトレ! >お姫様は女の子だけの特権じゃないぜ!
31 22/03/28(月)12:53:14 No.911043837
王子様がプリンセスになってもいいだろ!?
32 22/03/28(月)12:55:25 No.911044410
プリンセスってのは気高く美しく諦めない精神の体現であって性差は関係ないことは周知の通りだな?
33 22/03/28(月)13:18:05 No.911050085
>プリンセスってのは気高く美しく諦めない精神の体現であって性差は関係ないことは周知の通りだな? あ あ
34 22/03/28(月)13:20:21 No.911050600
>王子様じゃなくてプリンセスなのかよカワカミトレ! だが…カワトレにとっては…
35 22/03/28(月)13:20:45 No.911050689
>王子様じゃなくてプリンセスなのかよカワカミトレ! (プリファイをご存知ないのですね…)
36 22/03/28(月)13:24:45 No.911051582
ウマ娘イーターはなんなの ホラーか何かなの?
37 22/03/28(月)13:28:52 No.911052476
>ウマ娘イーターはなんなの >ホラーか何かなの? >──ウマ娘イーター。 >有史以来、ウマ娘の存在と共に有ってきたウマ娘の天敵。 >植物の筈のそれらは、ウマ娘の保有するスキルを無力化し、圧倒的な力と生命力でウマ娘を補食する。