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22/03/28(月)01:57:22 No.910965586
深夜、唐代の椀に水を張る 灯篭に照らされた部屋で机に椀を置き口訣(呪文)を唱える葦毛の少女 外見は初等部程度のウマ娘。だが千歳の年月を生きるウマ仙人である やがて水面に一人の青年の姿が映し出された 「おや…まだ起きていたのかい、弟子よ」 彼女の仙洞がある蓬莱から遥か離れた先、日本のトレセン学園 そのトレーナー寮で僅か二週間ばかりの短い間ではあったが 共に過ごしたカレンチャンのトレーナーは何やら業務に打ち込んでいた かつて彼女の作り出した「究極のカワイイお菓子」 それをホワイトデー教え子に贈りたいと訪ねて来た彼をウマ仙人は受け入れた 何しろ蓬莱は秘境。客人すら珍しい 故に修行中も多くの仙人、道士が彼女の仙洞を訪れたし 下界の話を聞きアイドルウマ娘にハマった連中も少なくは無い (カレンチャン、か) 短距離走を得意とするスプリンター。成程容姿も悪くない
1 22/03/28(月)01:57:34 No.910965637
散々弟子である所のトレーナーからも魅力は聞いている かつて彼女自身も別のウマ仙人の元を訪れたというから 恐らくは揃って求める物については妥協しない主義なのであろう 「……」 頬杖をつきながらじいっ、とウマ仙人はトレーナーの作業風景を覗き見る まるで玩具に憧れる少女の様に。とっくにそんな時期は失って 家族を作る事もせず、生命の輪廻からも外れた仙女が定命の若造に見入る (――或いは) 或いは彼女の見た目であればただのウマ娘として 入学し弟子の元へ押しかける事も出来るだろう 習得した術の中にはターフを瞬く間に走り抜けるものもあるし 千年の月日の間に身に着けた膂力は通常のウマ娘のそれも凌駕する …そこまで考えて、苦笑し首を振る 「野暮だな」 野暮である。それは、それらは彼や彼女の研鑽をないがしろにしかねない
2 22/03/28(月)01:57:48 No.910965681
何より弟子とカレンチャンの日々の生活 覗き見ているそれはウマ仙人が忘れていた感情を思い出させ そして胸を締め付けるには十二分過ぎるものであった (到底、間近で見るのには耐えられまい) だから今日も、今夜も彼女は遠く蓬莱からトレーナーの姿を見る 暫くの間の戯れだ。千年生きて来た事を考えれば百年程好きに使うのもいい そのうち自身が飽きるだろうから だがその時の事を考えると身震いしてしまうのだった 人は何らかを得た時よりもそれを失う瞬間にこそ強く感情が揺さぶられる と、水面に映るトレーナーが欠伸をした。漸くにして眠るらしい (熱心な事だが、またカレンチャンに笑われるぞ) 今度疲労の回復する仙丹でも送ってやろうか そんな事を考えながら彼女もまた眠る事にした だがその前に…と自らの懐からスマホを取り出す