ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/03/26(土)02:27:34 No.910191862
「スイーピー? こんな時間にどうしたん?」 「こっちのセリフよ。アンタまだやってたの?」 深夜のトレーナー室に入るとアイツは資料の山と映像を睨めっこしていた。 サブトレーナーとしての仕事を終え家でゆっくりしていたアタシは何となく胸騒ぎを覚えてトレセンに戻ってきたらこの有様だ。 コイツのトレーナーになってそれなりの時間が経つがその付き合いの長さだからこそ感じた胸騒ぎだったんだろう。 「……なんかまだ見落としていることがあるんじゃないかって不安になって」 「それ、昨日も聞いたわよ。おんなじ資料を何回見返してるのよ!」 「わかってるんやけど……」 「はいはいもう終わりにするわよ。当日になって体壊したとか絶対イヤだからね!」 憎まれ口を叩きながら散らばった資料をまとめる。 不安なのはわかる。 素質は十分だがメンタル面に課題を抱えるエールのことが不安で仕方ないんだろう。
1 22/03/26(土)02:28:58 No.910192069
「……ゴメンな、スイーピー」 「謝る暇があるならさっさと片付けなさいよ。アタシも帰って寝たいんだから」 そういうとアイツも苦笑しながら資料を片付け始めた。 集めた資料は膨大だ。 エールにかけてきた情熱はサブトレーナーとして接していたアタシが一番わかっている。 「やっぱり、不安?」 「……せやな。エールの前では言えんけど」 「いろんなところに頭下げたもんね、アンタ」 普段はとても礼儀正しくまじめな子なのだがレースになると頭に血が上り暴走する悪癖。 それが自分だけで完結するのであればいいのだが、ほかのウマ娘に衝突したり斜行騒動を起こすから問題だった。 被害を受けたウマ娘のトレーナーに辞めさせろと怒鳴られたのは1度や2度ではない。 無理もない、相手からすれば選手生命に関わるのだから。
2 22/03/26(土)02:30:09 No.910192245
「気難しい子とはたくさん接してたから最初は大丈夫って思っとたんやけど」 ちらりとアタシを見てくる。 腹が立つけど言いたいことはわかる。 気性に難がある子が集まるチームだけど、ここまで他所に物理的な迷惑をかけた子はあまりいなかった。 「想像以上だったわね。あのオルフェが引くぐらいだから」 「あぁ。それに……同僚から叩かれるのはしんどいわ」 あまり見せてなかったが批判の目に晒されるこの状況は思いのほかダメージを与えていたようだ。 こうやって弱気な姿を見るのはサブトレーナーであるアタシの前だけ。 チームメンバーに見せるおちゃらけた姿ではなく弱っただ一人の男性としての姿。 本当は嫌だけど、不承不承だけど、慰めてやるのもアタシの仕事だった。
3 22/03/26(土)02:30:56 No.910192376
「大丈夫よ。シルクロードSでは立派なものだったじゃない」 「あぁ」 「大外枠引いたから何? 大外枠が過去のデータで勝率が著しく低いから何?」 「……」 「あの子がそんな常識に収まる子じゃないのはわかってるでしょ?」 「……あぁ」 「今日までデュランダルやカレンチャンからみっちり鍛えられて……2人が信じられない?」 「そんなことは」 「ないでしょ? トレーナーのアンタが信じてあげなくてどうすんのよ」 資料一式をキャビネットにしまい込んで立ち上がった。 アタシが現役の時と比べて少し老けたアイツの顔を覗き込む。 「だから、いつも通りヘラヘラ笑ってなさいよ。俺ってすごい、俺は天才って嘯いてなさい」 「絶対、大丈夫だから」
4 22/03/26(土)02:31:34 No.910192478
そこまで言うとアイツは顔を伏せ、顔に手をやった。 もしかしたら泣いているのかもしれないけど、しょうがないから見て見ぬふりをしてあげる。 あーヤダヤダ。 いつまで経っても手間がかかるんだから。 「ごめんな、スイーピー」 「知らないわよ。ほら、さっさと帰るわよ」 それでもアイツは顔を上げない。 まったく、手間がかかるヤツ。 アタシはしょうがなく、本当にしぶしぶアイツに近づいて 「……特別だからね」 軽く頭をなでた。
5 22/03/26(土)02:32:45 No.910192642
現役時代に何度かなでられたことがあったっけ。 なでててほしいと暗にねだって実際になでられると照れくさくて振り払ったのはいつの時だっけ。 あれから10年以上経ってまさか立場が逆転するとは思わなかった。 「弱気な姿はここだけにしておきなさいよ」 「あぁ」 「エールにフォローするのヤダからね?」 「わかってる」 「そ、ならいいわ」 白髪が混ざり、少し髪が薄くなったアイツの頭。 すっかりおじさんになった姿で泣いてる姿は客観的に見るとみっともないのだろう。 だけど、ずっとそばにいたアタシはわかる。 たくさんのプレッシャーに耐えながら戦い続けてたくさんの苦渋も味わってきた。 だからせめて、アタシだけはコイツの支えになってあげよう。
6 22/03/26(土)02:33:33 No.910192763
ほんとはイヤだけどね。 まぁ、でも、サブトレーナだし? しょうがないけど、本当にしょうがないけど仕事だしね。 あーあ、メンドクサイこと引き受けちゃったなぁ。 そんなことを思いながらアタシは頭をなで続けた。
7 22/03/26(土)02:34:13 No.910192864
終わり 実在の人物には一切関係ありません いよいよ日曜日は高松宮記念ですね エールちゃん応援しています
8 22/03/26(土)02:37:47 No.910193414
尊さを我々に与える素晴らしい怪文書でした エールちゃん頑張ってほしいですね
9 22/03/26(土)02:37:55 No.910193442
なにいちゃついてるんスかね
10 22/03/26(土)02:41:13 No.910193973
>なにいちゃついてるんスかね お前はそんなスタンスだから頼られねぇんだぞ愚妹…
11 22/03/26(土)02:43:20 No.910194280
サブトレスイーピー概念大好き
12 22/03/26(土)02:44:40 No.910194457
やっぱり由緒正しきikスイよ
13 22/03/26(土)02:47:14 No.910194823
サブトレーナーとして苦楽を共にしたいっそ母性させ感じさせるスイーピーの所帯染みたデレはその尊さを我々に与える
14 22/03/26(土)02:47:27 No.910194869
現実のとおり年を取っているとスイープ21歳か… いい年ごろだな…
15 22/03/26(土)02:48:52 No.910195104
ただの観客である我々がちゃんと走ってくれるかこれだけ不安なのだから調教師やジョッキーはもっと不安だろうな…
16 22/03/26(土)02:50:21 No.910195317
大人スイーピーは酸いも甘いも噛み分けたいい女房役が似合う
17 22/03/26(土)02:54:52 No.910195932
なでろ さわんな いいよね…
18 22/03/26(土)02:58:49 No.910196491
カタ威圧的なメンポ ネオサイタマ・アトモスフィアを感じたが勘違いだったようだ ニンジャでないならば去ろう カラダニキヲツケテネ!
19 22/03/26(土)03:08:27 No.910197559
やはりikスイが答えだった
20 22/03/26(土)03:10:41 No.910197784
>カタ威圧的なメンポ >ネオサイタマ・アトモスフィアを感じたが勘違いだったようだ >ニンジャでないならば去ろう >カラダニキヲツケテネ! ニンジャはやさしいな…
21 22/03/26(土)03:15:50 No.910198261
このチーム元G1エリートウマ娘が何人もサブトレーナーになってんな