22/03/24(木)23:26:07 「じゃ... のスレッド詳細
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22/03/24(木)23:26:07 No.909831442
「じゃあな、スカイ」 「嫌だ!トレーナーさん!一緒にトゥインクルシリーズで走るって約束したじゃん!何で…!何で!!トレーナーさぁぁぁん!!!」 セイウンスカイの叫びも意に介さず、トレーナーは彼女を勢いよく突き飛ばす。彼女が吹っ飛ばされた先にあるのは荒れ狂う大河。激しい荒波が、彼女の姿を隠し、運が良ければ彼女を敵の目から隠し、逃してくれるかもしれない。だが、運に任せてばかりではいられない。彼女の生存率を少しでも高めるため、追っ手を食い止める殿としてトレーナーは敢えてその場に留まった。 ここは戦場。銃声飛び交う無法の殺し場。セイウンスカイとトレーナーはとある部隊のエースとしてこの戦いの場に赴いていた。が、今回の戦いは分が悪かった。次第に防戦を強いられるセイウンスカイ達の部隊。既に多くの犠牲を出し、部隊は実質上の壊滅状態。生き残った兵士達は散り散りに逃げ出した。
1 22/03/24(木)23:26:50 No.909831674
更に、その逃亡の最中、新たな犠牲を出した。親友のキングヘイローはセイウンスカイを庇い、無惨にも爆裂四散した。それを皮切りにグラスワンダーが、エルコンドルパサーが、スペシャルウィークが、一緒に逃げていた仲間達が一人、また一人と倒れていった。残ったのはセイウンスカイとトレーナーのみ。 しかし、トレーナーに想いを寄せていたセイウンスカイは不謹慎ながらも、この死地での蜜月を密かに楽しんでいた。いつ死ぬかも分からない身。これくらいの楽しみがあっても罰は当たらないだろうとタカを括っていた。ところが、その罰は最悪の形で当たることとなる。 自分とトレーナーを隔てるこの激流が憎い。グングンと流され、トレーナーの影はどんどん小さくなっていく。戦の神は戦場に不似合いな腑抜けた恋心には想い人を奪うという形で断罪を降した。 「どうして…どうしてなのトレーナーさん…!!」 ここ数日、二人きりで過ごした記憶が蘇る。
2 22/03/24(木)23:27:35 No.909831954
(私って実は競走ウマ娘を目指してたんですよー。ステイヤーの) (そうなのか?) (はい。こんなご時世ですから、ウマ手足りないし徴兵されちゃったけどね。ま、夢を応援してくれてたのは爺ちゃんくらいしかいなかったから、元から無理な夢だったかもしれません) (……なら、ここから生きて戻ったら俺と一緒にその夢を叶えないか?) (はい?) (実は俺もな、ウマ娘のトレーナーを目指してたんだ。君と同じで徴兵されてしまったけど、まだ諦めたわけじゃない。ここから生きて帰ったら、また一から目指そうと思っているんだ。その時は君の担当をさせてほしい。一緒にトゥインクルシリーズを走らないか?) (……もう、そんな風に言われたら断れないじゃないですか。私で良ければ、喜んで) (本当か!?三冠路線で行くか?それともティアラ路線?天皇賞を目標として走るのもいいな!) (もう!気が早いですって。ふふっ、じゃあこれからは呼び方もトレーナーさんってことで) (そっちの方が気が早くないか!?)
3 22/03/24(木)23:28:38 No.909832315
心が強い人だと、セイウンスカイは尊敬した。こんな絶望的な状況でも、自分の夢を諦めないトレーナー。もう一度、走りたいと思わせてくれたトレーナー。そんな彼が待つゴールへ冠を届ける自分の姿を何度も夢想するようになった。 「だって言うのに……!何で諦めちゃうんですかトレーナーさん……!」 トレーナーがいなければ既に夢を諦めていた自分は死んでも構わない。だが、こんな状況でも前向きだったトレーナーに夢を諦め、自分なんかのために死を選んでほしくはなかった。否、それだけではない。ただ単純に、愛する人には生きていてほしかった。 しかしそれは、トレーナーも同じで。 「ごめんなぁ、スカイ」 すっかりセイウンスカイの姿が見えなくなった大河を横目に、トレーナーは独り言ちる。別に夢を諦めたわけではない。既に眼前には敵が押し寄せてるというのに、未だウマ娘のトレーナーを夢想している自分がいる。しかし、その夢想された自分の隣には、セイウンスカイがいた。
4 22/03/24(木)23:29:29 No.909832630
彼女を担当し、彼女と共に勝つ。それが、彼女が自身をトレーナーと呼んでくれたあの時から、彼の新たな夢となっていた。 ほんの一言の口約束で何を、と思われるかもしれない。だが、いつ死ぬかも分からない身に、彼女との口約束は救いであった。セイウンスカイが思うほど、彼は心の強い人間ではなかったのだ。それでも最期に、愛しい人と二人の夢を守るために。 「君のいない夢なんてありえない……!スカイ、俺達の夢と共に生きてくれ……!」 消え入りそうな呟きと共に、彼は敵の群れへと消えていった。
5 22/03/24(木)23:30:21 No.909832957
※※ 「トレーナーさん……トレーナーさん……」 先程までセイウンスカイとトレーナーがいた地から離れた場所。息も絶え絶えに川岸へと這い上がる芦毛のウマ娘。彼女は逃げ切り、生き延びていた。だが…… 「トレーナーさん……」 据わった目で、川上を見つめる。トレーナーは一つ、見落としていた。君のいない夢なんてありえない、彼はそう言った。だが、それはセイウンスカイも同じ。トレーナーのいない競走ウマ娘の夢になど、端から興味はなかったのだ。 セイウンスカイは武器を取る。この先には敵の大軍が待ち受けているであろう。間違いなく自分は死ぬ。それだけではない。かなりの距離を流されてきた。戻るまでにどれだけ走るかも分からない。しかし、それらの問題も今の彼女には些末なものだった。 「ステイヤー志望でしたし、体力には自信あるんですよね……それに、ただで殺されてやるつもりもありません。大暴れして最期には、貴方の隣で……」 ふぅ、と深呼吸をする。一息、雄叫びを上げて彼女は愛しい人が待つゴールへと駆け出した。
6 22/03/24(木)23:32:46 No.909833839
※※ 「……う、ここは?」 セイウンスカイが目を覚ますと、真っ白な見慣れぬ場所にいた。 「私は……死んだはずじゃ……?」 敵の大軍を相手に大暴れしていた記憶がある。刺され、斬られ、撃たれ、それでも諦めず愛する人のいる場所目掛けて走ったはず。最後は彼の死体を見つけ、安堵のまま倒れ込んだ。だが、自分は生きている。最初は天国かと勘違いしたがどうやら違う。白い壁に糊の利いたシーツ。ここは病室らしい。 「あら、気が付いたようね」 不意に声をかけられ、思わず飛びずさる。腐っても兵士。即座に戦闘の構えを取った。 「そんなに警戒にしなくてもいいわよ。ここには敵もいないわ。安心なさいな」 「貴方は……?」 声の主はよくぞ聞いてくれたというように名乗りを上げた。 「私は通りすがりの一流ドクターKよ!今はこの辺りで傷付いた兵士を助けているの!もちろん、所属は問わないわ。傷付いていれば皆が私の患者よ」 「私、結構大怪我してたと思うんですけど?」 「えぇ、大変だったわ。でも大丈夫。一流に不可能は無いの。痕も残らないように頑張って治したから!」
7 22/03/24(木)23:33:26 No.909834089
キング!?死んだはずでは…!
8 22/03/24(木)23:33:41 No.909834160
「そう、ですか……」 「あら、そんなに残念そうな顔をして。死にたかったのかしら?」 「大切な人と一緒にいられないなら、死んだ方が良かったです……」 「そう……」 結局自分だけが生き延びてしまった。この先一人で生きていくには、彼の存在が大きすぎた。 「ちょっとー!?患者さんまだ安静にしてないとダメデース!」 「止まりなさい!傷口が開きますよー!」 「あわわ、走っちゃダメだべー!」 「スカイッ!!!」 セイウンスカイは驚いた。騒がしく駆け込んできたのは、今しがた思い浮かべていた大切な人だったのだから。 「貴方の言ってた大切な人って近くで倒れてた彼のことかしら?頑張ったら治せたわよ」 Kの説明もそっちのけで熱い抱擁を交わす二人。Kは満足そうに頷いた。 「せっかく拾った命、今度はお互いのために使えるといいわね」
9 22/03/24(木)23:33:45 No.909834184
爆発四散したはずでは!?
10 22/03/24(木)23:34:14 No.909834344
流石はドクターKだ…
11 22/03/24(木)23:34:20 No.909834372
「……こうして、セイウンスカイとトレーナーは戦場から足を洗い、競走ウマ娘とそのトレーナーとしての道を歩んだ。いくつもの重賞を勝ち、皆に称えられながら素晴らしい一生を過ごしたとさ。……何コレ」 「あら、何を読んでいるのかしらスカイさん?」 「キングってさ、二人いるの?」 「はぁ?何バカなこと言ってるのよ?」
12 <a href="mailto:sage">22/03/24(木)23:34:40</a> [sage] No.909834479
終わりです ちゃんと殺しました
13 22/03/24(木)23:34:49 No.909834520
キングじゃなくてドクターKだからな…
14 22/03/24(木)23:35:10 No.909834625
>頑張ったら治せたわよ これは一流
15 22/03/24(木)23:36:24 No.909835059
一流のハッピーエンド
16 22/03/24(木)23:36:29 No.909835102
固定タグ:キン確殺
17 22/03/24(木)23:36:36 No.909835137
ドクターKは痛みをコントロールする呼吸でノー麻酔手術ができるからな 爆発資産程度どうにでもなる
18 22/03/24(木)23:37:10 No.909835381
キングちゃん…?と聞かれたらその子はもう死んだのよ私は一流のドクターであるドクターKなのよ…と返すんだ…
19 22/03/24(木)23:37:25 No.909835460
いつも素敵な文章ありがとうございます。 キングヘイローは殺してください。 キングヘイローは生き返らせないでください。
20 22/03/24(木)23:38:01 No.909835653
>いつも素敵な文章ありがとうございます。 >キングヘイローは殺してください。 >キングヘイローは生き返らせないでください。 >キングじゃなくてドクターKだからな…
21 22/03/24(木)23:38:10 No.909835721
ドクターKだからセーフでしょ
22 22/03/24(木)23:38:49 No.909835959
別世界線に飛んでない?
23 22/03/24(木)23:39:23 No.909836141
よく見たら生き返ってる?中にもキング居ないのか なら依頼通りだな!
24 22/03/24(木)23:39:28 No.909836183
同期のみんなっぽいだけの一般通過スーパードクターだからな…
25 22/03/24(木)23:40:20 No.909836478
メジロドーベルにバッドエンドを描かせる事は無理なんだ 諦めてその依頼費用でトレーナーに何か買ってやれ
26 22/03/24(木)23:40:35 No.909836551
物語の中でも一緒に走りたいって思ってくれるなんて俺は嬉しいよスカイ
27 22/03/24(木)23:40:38 No.909836565
キングが死んで! 2人は謎の凄腕医師Kの手で助かって! 万々歳じゃないの!
28 22/03/24(木)23:41:04 No.909836698
いつも素敵な文章をありがとうございます 次はキングヘイローは出さないでください ドクターKも出さないでください お願いします
29 22/03/24(木)23:41:09 No.909836724
割と真面目に戦場の悲恋をやってると思ったら何かエントリーしてきた
30 22/03/24(木)23:42:23 No.909837170
>いつも素敵な文章をありがとうございます >次はキングヘイローは出さないでください >ドクターKも出さないでください >お願いします 謎のKシリーズが現れるようになるんだ…
31 22/03/24(木)23:42:50 No.909837343
>いつも素敵な文章をありがとうございます >次はキングヘイローは出さないでください >ドクターKも出さないでください >お願いします どうせブラック・キングとスペ子が出てくる
32 22/03/24(木)23:43:05 No.909837418
かつて戦場で負った傷は生涯尾を引くと言われていた… でも現代では違うわ(ギュッ)
33 22/03/24(木)23:43:49 No.909837656
>>いつも素敵な文章をありがとうございます >>次はキングヘイローは出さないでください >>ドクターKも出さないでください >>お願いします >謎のKシリーズが現れるようになるんだ… ロボット刑事K…
34 22/03/24(木)23:44:13 No.909837792
>>>いつも素敵な文章をありがとうございます >>>次はキングヘイローは出さないでください >>>ドクターKも出さないでください >>>お願いします >>謎のKシリーズが現れるようになるんだ… >ロボット刑事K… メタルK…
35 22/03/24(木)23:44:38 No.909837945
私はドクターKの意志を継いだものですわ~! バッドエンドなんてこの拳で粉砕!ですわよ~!
36 22/03/24(木)23:45:09 No.909838103
ドクターQは治す前に敵を殺しそう
37 22/03/24(木)23:45:13 No.909838119
一流生まれのKさん
38 22/03/24(木)23:46:11 No.909838447
サプライズ・キング理論
39 22/03/24(木)23:46:41 No.909838592
K2まで出てきた…
40 22/03/24(木)23:46:49 No.909838646
セイちゃんとトレーナーさんを二人だけの世界に連れていってください 誰も介入がなく緩やかに滅びる感じでお願いします