虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

22/03/22(火)01:36:57 数奇な... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

22/03/22(火)01:36:57 No.908953395

数奇な運命は存在する、などと断言したとき笑われないことは多分ない。汚い二重否定になってしまったが、本当にそうだから困る。第一に現実にはあり得ないこと、起きちゃいましたー。だなんてお気楽ぶっこいて口にしても、たちの悪い冗談にしか思われないのが普通なのだ。この世に魔法なんて存在しない。奇跡なんてものは自分の努力が実を結んだ結果だ。オカルトを信奉する人々を腐したりはしないが、俺自身は世界の全ては基本明確な理論を立てて説明できるものと信じていた。 『さあ、あなたはウマ娘になるのです……』  夢で謎の託宣を受け、疑問符を浮かべながら朝に目覚め。 『これを機にもっと仲を深めなさい……』  白目多めの寝ぼけ眼で、鏡に映る己が姿を見るまでは。 「え、は、あ……? う、うわああああああああああああああ――!!!」

1 22/03/22(火)01:37:30 No.908953494

「――それで、だ。多分心当たり、あるだろ。なあフク」 「……いやあ~……まだにわかには信じられませんねえ……」  スズメウキウキ囀りまくる朝も六時の俺の部屋。俺は朝練の準備で起きているだろうことを見越して、この自分の居城へと担当であるフクキタルを呼び出していた。目覚め、五時。驚いて腰抜かしたのが五時と二十。慌てふためきながらウマインで電話してやれば、おおよそ十分後にはドアの方から轟音が響いた。栗東寮とトレーナー寮はウマ娘的にはニアバイ。その後の顛末は……ぎゃああああ、大大凶! てなもんで、まあ詳しく説明せずとも分かってもらえるだろう。 「まさか、トレーナーさんがウマ娘に! ……だなんて。まったく、どういうことなんでしょう?」 「俺が一番びっくりだよ、ほんとにどういうことなのこれ」  俺の口から流れるのは聞き覚えのない可愛らしいソプラノ。バスよりのテナーだったはずなのに、その過去の面影は一つとして存在しない。 「お部屋入ったときはほんとにびっくりしましたよお、泡噴いて気絶するかと……」 「だから俺が一番びっくりしてるんだって、譲らんぞ」

2 22/03/22(火)01:38:07 No.908953599

 男の髪型としてありがちな黒のショートヘアは、変化したときに伸びたのかなんか女優っぽい茶のセミショートに早変わり。なんで? 「いやあ、でも。トレーナーさん、なーんかかわいいですねえ」 「……うるさいよ」  それなりの高さを持っていたはずの背丈はぢゅんと縮み、いまやフクよりちょっと、そう、ちょっとだけ小さくなってしまった。 「アッ、照れてますね?! むふふふふ、分かりますよ~! 普段言われないこと言われると不思議な気持ちになりますよねえ~」 「うるさいって、マジで、やめろ照れてねえ! というか心当たり! ないのか?!」  鏡で見た俺の顔は、朝にありがちな生気を失った瞳もなく、生まれつきの乾燥肌がもたらすぱさついた頬もなく、そも男性ですらなく、当然のように生えかけの髭もない、間違えようもなくティーンエイジャーな女の子の顔だった。ビビるわ。しかもなんかかわいい。やけにかわいい。自覚持てるレベルでかわいい。方向性としては、女優とかモデルとかの端正な顔立ちではなく、素朴で落ち着きのある美少女って感じ。花で例えるとしたらバラじゃなくスミレ。いや、スイセンとかツユクサとかそっち方向かも知れない。

3 22/03/22(火)01:38:49 No.908953720

「怒っちゃかわいい顔が台無しですよ?」 「ああああ! 話を噛み合わせる努力をしろよ、もう!」  ついでそれにプラスしてウマミミ。あとなんで気付かなかったのか知らんけど、ケツの根元にふさふさの尻尾。フクが言うにはそれは繊細で綺麗なうっとりするほどの栗毛らしいが、正直それどころではないのがリアルな話だ。だって胸に俺の知らない小振りな膨らみがあって、もうわけがわからないんだ。  フツーの男がある日突然ウマ娘になってしまう話なんて、ノンフィクションはおろか童話的なヤツですら聞いたことが無い。そも夢で語りかけてきた良く分からん上位存在的なヤツもどっかおかしいだろう。仲良くなれとか抜かしておきながら同性にするってどういうことなんだ。いや、仲良くの定義を誰に当てはめるのか知らんし、というかそういう対象じゃないけども。 「うーん……」 「…………ねえフク、マジでどうしよ」 「ん~……ほんとにどうしましょうねえ……」  話はずっと平行線。なもんでぢつと手のひらを見てみる。ごつく骨ばった指先は、ちっちゃくもたおやかでふくらかなゆびさきに変わっている。すんすん、鼻を使えば前よりも良くにおいが分かる。

4 22/03/22(火)01:39:14 No.908953785

ああ、男だった時分には釈然としていなかったけれど、男臭いってのはこういうことを指すのか、と理解できてしまう自分が恨めしい。 「は……くしゅん!」 「あっ、すみませんトレーナーさん! とりあえずいくつか服持ってきたので、ささっと着替えちゃいましょう!」  俺のしたくしゃみに呼応して、ずい、とフクが一歩距離を詰めてくる。同性になってしまったからと言って、自分の在り方をすぐさま変えられるわけもなく。 「わ、渡してくれたら着替えるから……」 「だめです、トレーナーさんのことですからどうせ着方わかんないよ~ってなるに決まってます! 誰のお導きでもなくこれはまっこと確実に訪れることなので、ちゃあんとお手伝い致しますよ!」 「や、大丈夫、大乗仏教だから……いいから、いいんだって……」  ぐいぐいと胸元やら鼻先やらに持ってきたという服を押し付けられる。む、フレグランス。フクの服はいいにおい。はあ? 変態かよ俺は。いやまて落ち着け、こういうのを俗にウマっ気とか言うらしいけど、これは単純に俺の感想であって決してやましい想いはないはず―― 「もしや、喜んでますね?」

5 22/03/22(火)01:40:00 No.908953923

――やましい想いなどないので、喜んでるなどとにやにき宣うフクの横腹にチョップを叩き込む。打撃によってもたらされた、なんか言語化できないような叫びが俺の部屋にこだまする。呻きながら体を丸めるフクには目もくれずに俺は、心の淵から込み上げる多種多様な熱いものをこらえつつ、だいぶ弱った握りこぶしから押し売り染みた善意を受け取った。 「おほっ、ごほっ、いたたたた……相変わらず素直じゃないんですから……あーっ、二回目は、二回目は断固拒否しますう! とりあえずキャミとブラウスとスカートと、あと一応、そのパンツも持ってきてますので!」 「待っ、パンツは、色々ありがたいけどパンツは……あ、と、キャンセルで」 「ノーパンは流石に破廉恥ですよ! ご安心ください、新品ですから!」 「あっ、そうなんだ、そっか……」 「ええっ……!? あのぉ~……トレーナーさん、がっかりされるのはちょっと……」 「違う、ふざけんな、そういうことじゃねえわ、ぶっ飛ばすぞ」  にべもない否定をぶん投げてからショーツの封を開け、キャミソールを着て、ブラウスに袖を通し、慣れないスカートを身に着ける。

6 22/03/22(火)01:40:30 No.908954024

フクの服を着ること自体にはそりゃ抵抗はあるが、状況が状況だから背に腹は変えられない。大体この時間だとどんな店も開いてはいないし、だからといって時間を見て買ってきて貰うのも気が引ける。多分これが正解なんだと自分に言い聞かせ、着る、着た、着ました、着たんだけど。 「うわぁ~! なかなかお似合いですよっ!」 「あ、ども……というかフクの服さあ……」 「んん? ダジャレですか?」 「違うわ、いや貸してもらってほんとにありがたいんだけどさ、俺が着ても良かったのかなって……」 「もーそれくらい気にしませんって、どうしても気になるなら前に服借りたお返しとでも思っておいてくださいな」  本心からの言葉にホッとしたのも束の間。聞き捨てならない発言があったのを俺はきき 「この前?! この前ってなんだよ!?」 「あっ、やぶへび……いえっ、なんでもありませんよ~……?」 「嘘つけや、めちゃめちゃ目泳いでるじゃねえか!!!」 「あわわわわわトレーナーさあああああん揺らさないでくださいいいいい!!」  肩口を掴んでかんがんと揺らし、出てきた蛇を解剖しようとした。  が、しかし。

7 22/03/22(火)01:40:53 No.908954094

「はあ、はあ、はあ、はあ……」 「あわ、わあ、あわわ、あうぅ……」  揺らされているフクは当然喋れないし、俺もそれなりに力を入れて揺さ振ったら疲弊したし、結局ただの無駄足になった。全身で息をしながら俺は、ウマ娘になってしまった自分を顧みてみる。  正直な話、ウマ娘になってしまった件にはそこまで悲壮感は覚えていない。意味は不明だが、俺が俺として生きているという事実は変化しない上に、普段通りのフクの様子からSFにありがちな世界線の変更だとかもなさそうだ。なので俺が心配なのは『俺』のことではない。どちらかと言うと―― 「ひぃ、ひぃ、ぐえぇ……」 「あー……ごめんフク、俺も猛ったわ」 「殺す気ですかもお……」 「ホントごめんって、それで逸れまくってる本題に戻ろうと思うんだけど……」 「うーん、何かありましたかねえ~……んー……ん~~~……」 「なんか分かりそう?」 「こう……おひつの隅っこに残ったお米をちょいちょいっと突っつく感じで頭の中をがさごそ探してるんですが、そのですね……」 「例えがピンとこないけど……その、ありすぎるとか言うなよ、言ったらキレて泣き寝入りする」

8 22/03/22(火)01:41:19 No.908954146

「いやいやいや、言いませんよ! ただですね、私そんなお願いごとはしなかったんですよ。福が来そうなおまじないは沢山してますが、姿かたちが変化するなんてそんなおまじない、やった覚えありませんもん」 「そっかあ」 「そうですっ」 「だったらなんだろうな、これ」 「うーん……あとでシラオキ様に聞いてみます?」 「そんな気軽に聞けるもんなの?!」 「ハイッ! トレーナーさんのことでしたら!」  きらきらと目を輝かせるフクだが、対照的に俺のまなこは死んでいく、多分。絶妙に恐ろしい特別扱いを聞いた気もするが、それは気のせい森の精ということにして、次の問題へと移行しよう。俺には鏡と相対したときからずっと、わりとずっと胸のうちでわだかまり続けている疑問がある。それを吐露するため、俺は一つ咳払いをした。 「さっきから一個聞きたかったんだけどさ」 「はい、なんでしょ」 「なんか俺、フクよりだいぶ歳下っぽくない?」 「歳下っぽいというより実際肉体年齢は歳下なんじゃないですか?」 「……身長も顔つきもなんか小学生っぽいし?」 「そうですねぇ……ちょっと発育の良い小学生の子って感じですね」

9 22/03/22(火)01:42:11 No.908954277

 だって袖もかなりまくって、スカートもだいぶ絞ってるでしょう?  フクの言葉に俺は静かに瞑目した、せざるを得なかった。  即座に俺たちの間へ僅かばかりだが静寂が走る。  そのしじまはすぐに消え去り、場を満たすものは溜め息と苦笑いへとすり替わる。  ああ。なんてことだ。俺はマジかよと嘆息した。  ふふ。面白いですね。フクは無言でじっとりにやついた。 「はあ……なんかつらい……」 「はあーっ!? なんでですか別に構わないでしょおーっ?!」 「てか面白くないし……」 「それじゃ、面白くなるようにかわいがっちゃっても良いですか?!」 「うるっせえ……! 何がそれじゃだよ、やめろや! てかどけ、くすぐんなって、やめっ……ひゃっ!」 「あらっ、ひゃっですって! トレーナーさん、実はまんざらでもないんじゃないですか~?」 「いや、それは……えと、そんなわけないだろうが!」 「またまた~、言い淀んでるのが何よりの証拠ですよお!」 「ああああ違うんだって! ていうかそもそも困るだろ、ヒトとウマ娘で組んで相乗効果なのに、こうなったらフクがさあ!」

10 22/03/22(火)01:42:54 No.908954405

 そう叫ぶと突然俺の部屋に再びの静寂が訪れた。まさか、何か言ってはいけないポイントを突いてしまったのだろうか。 「フ、フク……?」  俺の問いかけにも反応はなく、フクは呆気にとられたように、目を丸くしぽかんと口を開けていた。それから真顔になって十数秒後、何故か急に瞳を潤ませはじめた。 「トレーナーざぁん!!! うわぁ~ん!!! うれじいでずぅ~!!!」 「だああああ!!! なんで泣くんだよ、というか引っ付くなや朝から!!!」 「だってぇ、私のことを考えてくれててえ……! たとえ姿は変わっても魂はつながってますからねえ~!!!」  あとですね、フクは袖口で涙を拭き、居住まいを整えてから花咲くように笑った。 「そうだトレーナーさん、もひとつ安心してください! トレーナーさんがウマ娘になっても、私の運命の人なのも変わりませんからね!」  満面の笑みで面と向かっていま、そんなことを言われたら。 「えっ、どうしたんですかトレーナーさん?! どこか痛むとか、胸が苦しいとか……?!」 「違う、違うんだ」 「じゃあ、嬉しくて?」 「そう……じゃないけど!」

11 22/03/22(火)01:43:22 No.908954482

「またまた、強がらなくていいんですよ。準備が整ったら理由を探しに行きましょ!」  俺は知らず不安に駆られていたのかも知れない。ただまあ、分からないからってしくしく泣いたところで事態が好転することなど無いのだし、少なくとも五体満足で自由に動く健脚と考える頭はあるのだ。なら自分に出来る範囲で理由を探り、無用の奇跡を理解できるように努めていくのが状況的にベターだろう。  というか多方面へ真面目にお話しでもしたら、病院通り越して研究機関とかに放り込まれそうだ。事象に対して思考は追いついていないが、絶望するのもまだ早いだろう。とりあえず個人レベルで調べられる範疇に関しては自分で調べるべきだ。幸か不幸か、過去と今を繋げられる要因を知るのはここにいるフクだけ。なら―― 「ああ、ありがとう……」  ぐしぐしと手の甲で目を擦って、いくつかみっともなく鼻をすすってから。 「とりあえず!」 「……ハイッ、準備するために服でも買いに行きましょうか!」 「まだ早いしその前に!」 「朝ごはんにしましょおーっ!」

12 <a href="mailto:おわり">22/03/22(火)01:43:56</a> [おわり] No.908954588

 腰掛けていたベットから立ち上がり、リビングの食卓へと向かう。そうだ、あの意味深長な夢を信じたならば。この変化には必ず意味があり、かつ不可逆ではないはずだ。あとのことを考えるのはそう、あとにして。分からないものを理解するために、まずは食事を済ませて前を向こう。心強い味方、いや唯一無二の担当とともに。 「……どわっ! なんでスカートが?!」 「あ、ちゃんとホック閉めれてないですね、あらら」  ……まあ色々と、前途多難ではあるが。

13 <a href="mailto:s">22/03/22(火)01:45:39</a> [s] No.908954858

書いたはいいけどいつもとノリが一緒になってしまった TS要素薄くて申し訳…

14 22/03/22(火)01:46:53 No.908955071

TS物の冒頭って感じでいい...ここからだんだん女の子になっちゃうんだって考えたらにやにやが止まらぬ

15 22/03/22(火)01:47:19 No.908955160

シラオキ様ははさぁ…

16 22/03/22(火)01:50:59 No.908955760

いや…助かる 今後の展開を夢想するだけでうまだっちした

17 22/03/22(火)01:52:27 No.908956018

女の子としてフクを攻めるのもいいし立場逆転して牝バ堕ちしてくれてもいい

18 22/03/22(火)01:53:48 No.908956220

書いてみようと思っても次々良質なTSが出てくるので別にいいか!ありがたい……

19 22/03/22(火)01:57:16 No.908956763

>書いてみようと思っても次々良質なTSが出てくるので別にいいか!ありがたい…… お前も書くんだ

20 22/03/22(火)01:58:22 No.908956927

この二人は最初はいつも通りなイメージあるから解釈一致だ ありがたい…

21 22/03/22(火)02:01:20 No.908957384

書き込みをした人によって削除されました

22 22/03/22(火)02:01:39 No.908957436

>TS物の冒頭って感じでいい...ここからだんだん女の子になっちゃうんだって考えたらにやにやが止まらぬ 素朴な疑問だけどやっぱりTSネタにするならそういう方向にした方がいいもんなの?

23 <a href="mailto:s">22/03/22(火)02:01:50</a> [s] No.908957460

ハチャメチャに脱字が多い!すまねえ! あと一応湿っぽいオチなしイフストーリーも書いちゃったからオマケでぶん投げとくね

24 22/03/22(火)02:02:14 No.908957530

>素朴な疑問だけどやっぱりTSネタにするならそういう方向にした方がいいもんなの? いや全然方向性の一つでしかない

25 22/03/22(火)02:05:19 No.908958021

違和感でもやもやしながらもなんとかやっていくのもいいものだよね…

26 22/03/22(火)02:05:41 No.908958091

湿っぽくないのもいいね

27 <a href="mailto:9レス目中間くらいから1/2">22/03/22(火)02:09:10</a> [9レス目中間くらいから1/2] No.908958649

~~~ 「はあーっ!? なんでですか別に構わないでしょおーっ?!」 「てか面白くないし……」 「それじゃ、面白くなるようにかわいがっちゃっても良いですか?!」 「うるっせえ……! 何がそれじゃだよ、やめろや!」  ふんす、ふんすなんて荒い鼻息が、俺の首元に吹きかかる。フクが何かに執着するときは大抵の場合理由がある。おねえちゃん。微かに聞こえた涙声。呼びかけに呼応するかのように、心が揺さぶられる感覚があって。いや、しかし。仮に見えたとしても俺は俺だ。俺に何を重ねているかは知らないが、流石にされるがままは色々とまずい。しかし、跳ね除けようにも力負けしてしまっており、結局なす術もなく椅子代わりにしていたベッドへと押し倒された。  肩に手を当てられたまま、フクはじっと俺の顔を見つめ続ける。あいつのきらめく十字星はいま、郷愁と哀惜に満ちていた。そのまま時間が経つ、時間が経ち続ける。一を超え、五を刻み、七を数えてようやく、ああ、とだけ。熱を帯びた溜め息が零れ落ちた。 「おまじないが叶うなんて、嘘みたい……」 「フク、おい、フク……?」

28 22/03/22(火)02:12:22 No.908959124

「シラオキ様、出会いをくれてありがとう、ございます……」  ぱたり、閉じ切られた瞳の端から、透明なしずくが滴り落ちる。無色で構成される生きた証は、俺の頬で王冠をつくり掛け布団の奥へ染みていく。 「……なあ、俺はそんなに似てるのか?」  俺の問いかけにフクは答えない。だが、無言ほど雄弁に物を語ることもないだろう。俺に与えられた今が、姉の姿を借りているのならば、どれだけ酷であろうと俺にはひとつの義務がある。 「……フク。俺は、違う。いくら似ていても俺は俺だ。残酷なようだが俺は君の姉じゃない」 「……そう、ですよね。違いますもんね。分かってはいるんです、でも重ねてしまうんです、すみませんトレーナーさん、すみません……」 「謝るなよ、フク」  おいでとは言えない。既に見えないものを模倣することは出来ない。知らないものを真似るのは冒涜だ。だからこそ、俺に出来たのは。フクの身体をくっと引き寄せ、ゆっくりと頭を撫でれば。堪え続けてきたものを解き放ち、静かに涙を流すフクを努めて優しく抱き締めながら俺は。 「神様ってのは俺とフクに何をさせたいんだ、一体」  託宣が与えた運命の因果に思いを馳せるのだった。

29 <a href="mailto:s">22/03/22(火)02:17:48</a> [s] No.908959923

方向性は全然違うけど書いておきたかった 読んでいただき感謝…

30 22/03/22(火)02:18:47 No.908960048

しっとりフクキタル…

31 22/03/22(火)02:20:14 No.908960261

しっとりもギャグも似合うからいい…

32 22/03/22(火)02:22:10 No.908960523

急に潤ってきたな…いいぞ…

33 22/03/22(火)02:22:24 No.908960554

方向性が全然違うけどこれも好き

34 22/03/22(火)02:29:36 No.908961583

フクキタルは加湿と除湿両方の性質を持つ

35 22/03/22(火)02:36:40 No.908962438

どっちもしゅきぃ…

↑Top