22/03/19(土)00:59:31 トレセ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1647619171988.jpg 22/03/19(土)00:59:31 No.907877005
トレセン学園には寮が存在し、栗東と美浦の二つの寮に基本的に全ての生徒が住むことになっている。そして寮は二人部屋である。 同室の相手とは場合によっては中等部・高等部と６年間寝食を共にすることになるため、関係の悪化は良い結果をもたらさない。 とはいえどうしても人付き合いの苦手なタイプというのは存在するため、同室でのトラブルは毎年のように起きている。 アタシの同室はシオンことウインバリアシオンだ。同学年でジュニア路線でも一緒だった上に、口下手なアタシにも丁寧に話に付き合ってくれるのでとてもありがたい。その点では同室トラブルとは無縁と言えるだろう。 「そりゃそいつが優しいだけじゃねーか」 姉貴の言い方はムカつくが正しい。別にアタシが努力してるわけでもなく合わせてくれているのだから。 「良き友は宝ですよ、オルフェーヴル」 「そういう先輩はどうなんスか同室は」 デュランダル先輩はフッ、と笑みを浮かべる。 「問題ありません…今は一人ですから」 「ボッチじゃないッスか」
1 22/03/19(土)00:59:46 No.907877093
自慢気な先輩に思わず呆れる。結構気難しい先輩のことだから問題でも起こしたのだろうか。 「何も問題などありませんよ」 「オルフェちゃんとは違うからね☆」 カレンの姐御の追い討ち。同室はダービー勝者のアドマイヤベガ先輩だったか。女の自分が言うのもなんだが、いい匂いのしそうな部屋だ。 「実は彼女は…先月中退したのです」 それを聞いてその場の全員があぁ、と納得した。 トレセン学園の生徒たちは皆アスリートだが、全員が強い意志と実力を持つわけではない。途中離脱する者も必ずいる。 成績不振でレースを引退した場合、在学し続けること自体は可能だがほとんどは耐えきれず自ら学園を去る。 ウチらプレハブの面々だって引退していった同級生や顔見知りの一人や二人、いやもっといる。幸運と才能に恵まれて勝ち続けられたからこそ、その寂しさがわかる。
2 22/03/19(土)01:00:10 No.907877224
ちょっとしんみりした雰囲気をブチ壊すようにドアが開いた。 「ただいまー！カレンチャンいるかい？」 ロードカナロア。こいつも「勝ち続けた側」だ。そういえば陰キャでコミュ障のこいつの同室とは誰なのだろう。 「なーにがただいまッスか」 「なんだよお前本ッ当に空気読めねえな…」 「何急にひどくない！？あっカレンチャンいるじゃん！カレンチャ～ン！」 「カナロア。帰って。」 いつものようにすげなく扱われているが、これでも親しい方である。他の人間とこいつが話しているところを見た記憶があまりない。 「カナロアってルームメイトは誰なんスか？」 言われたカナロアは急にまごついた。 「え？同室の…確か先週引退して実家に帰ったって言ってたなあ」 「カナロアもそうなんスね…あれ？今は一人っスか？」 そう言ったところで、戸口に立ったままのカナロアの後ろにいる人影に気付いた。 ゆっくり回りながら近づいているのは、後輩でカナロアの自称ライバルのハクサンムーンだった。
3 22/03/19(土)01:00:31 No.907877329
妙にカナロアに懐いているようで、よく絡んではカナロアにすげなく追い返されたりしているらしい。 たぶん後ろから驚かすつもりなのだろう。 アタシはもちろんプレハブの面々は全員その手のイタズラを止めるほど真面目でも野暮でもない。あずかり知らぬはカナロア一人だ。 「ああ…そうなんだけど部屋割りが変わってさあ…今は」 「カナロアーー！！！」 こちらが耳栓をしたくなるほどの大声。背後から完璧に決まった。さぞかしカナロアも驚いただろう… と、カナロアはびっくりしたもののすぐ後ろに向き直った。そしてハクサンムーンをがっしりと抱きしめたのだ。 「ムーン♥」 甘えた声。今まで一度も聞いたことのない声だった。 それは一瞬の出来事だった。カナロアはややあって慌てたように腕をほどき、赤面しながらわざとらしいうんざりした顔を作ろうとしていた。
4 22/03/19(土)01:00:55 No.907877453
「…ってなっなんだハクサンか！僕にずっ、ずっとくっつくのはやめろよ！」 収拾できるはずもなかった。ハクサンムーンは見たこともないほど真っ赤な顔で、なにやらうわ言を呟いている。 「カナロア…そんないきなり…だいたん…」 「………カナロアちゃん？」 姐御の顔が心なしか黒い影がかかって見える。 「ちがうんだよカレンチャン！これは…その…間違えたの！カレンチャンと…その…」 「か”な”ろ”あ”ぁ”…」 今度はハクサンムーンが涙声だ。今にも泣きだす５秒前。 「ぐすっ…わだしのこと…ぎらいになったの…？」 「そっそんなわけないだろ？僕は…とっとにかく！今日はこれで！じゃ！」 ぐずり出したハクサンムーンを抱えるようにして行ってしまった。しばらく皆で唖然としていると、閉じられたドアが丁寧にノックされた。 「すまない、ちょっといいかな？」 入ってきたのは…会長だった。今日は青筋を立てているわけでもゲーミング発光しているわけでもない。問題ごとではなさそうだ。
5 22/03/19(土)01:01:15 No.907877541
「いや、近くを通ったのでついでにね。ところでさっきここを飛び出していったのはロードカナロアとハクサンムーンかい？」 少し雲行きが怪しくなってきた。 「初めに言っとくがウチは無関係だぞ。あいつらが勝手に来て居着いてんだ」 「そうか、それなら良かった。さっきハクサンムーンが泣きながら出ていったのを見たんだ…もしかすると、があっては困るからね」 会長は眉間に手をやりため息をついた。こう見えて色々大変なのだろう。 「あの二人はルームメイト同士だからな…せっかく替わったのに問題が起きたとなるとこちらも対処を考えなければならないし」 ん？今なんて言った？ 「…ルームメイトはいないってさっきカナロアちゃんは言ってましたけど」 姐御のさりげない言い方に会長が応じる。 「二人のルームメイトがちょうど同時に引退して空きができたんだ。そこで二人が同意したので同室に割り振ってもらったんだよ」 つまり二人がこれから帰っていくのは… 「同じ部屋…かァ」 姉貴が得心したようにつぶやいた。 「同じ短距離バだしな。短距離『どうし』『どうし』つ、という訳だ」 アタシはそのとき初めて、空気が凍り付く音を聞いた。
6 <a href="mailto:エピローグ">22/03/19(土)01:01:42</a> [エピローグ] No.907877662
校舎の陰の目立たない一角、壁に沿って立っている二つの影。 「かなろあぁ…わたし…」 「よしよし…泣かないで…大丈夫…」 「うれしかったんだよ？みんなの前でだきしめてくれて…」 「つい舞い上がっちゃったんだ…ごめん」 「…じゃあ手つなご？」 顔を上げたハクサンムーン、その表情は明るかった。 「…人に見られないところまでね」 満更でもない様子で応え、二人は寮の方向で歩き出した。つないだ手を軽く振りながら。
7 <a href="mailto:おまけ：ウインバリアシオン">22/03/19(土)01:02:05</a> [おまけ：ウインバリアシオン] No.907877767
オルフェーヴルがプレハブの掃除を終えて帰る支度を始めたころ、彼女の部屋にはウインバリアシオンがいた。 ベッドに横たわっている。ただし自分のものではなく、隣のオルフェーヴルのベッドに。 「ああ…オルフェちゃんのにおい…ここで毎日寝てるんだ…」 やや息を荒くしながら、寝がえりを打ってオルフェーヴルの枕に顔を沈める。 (だめだ…わたし本当にヘンタイになっちゃう…ダメだこんなこと…) もごもごと枕に独白を押しつける。 ウインバリアシオン。彼女はオルフェーヴルに恋をしていた。 レースでの圧倒的な強さ。荒々しい見た目とは対照的な気弱で繊細な内面。時間が経てば経つほど思慕の念は増すばかりで、しかし彼女は告白することはできなかった。 嫌われるのが怖くて本人不在の間に身の周りのものに浸るのが精一杯だった。 そのとき、シオンはくしゃくしゃになった塊に気づく。 壁とベッドの間に挟まったそれを開いてみると、いつもオルフェーヴルがつけているマスクだった。 (これ…オルフェちゃんがつけてる…オルフェちゃんの…くちびる…)
8 <a href="mailto:おまけ：おわり">22/03/19(土)01:02:28</a> [おまけ：おわり] No.907877895
震える手でマスクを取り、口元に持っていったその時、ドアが出し抜けに開いた。 「ただいまーっス」 「うひゃあああああああ！？」 慌ててベッドから飛びのき自分のベッドに乗っかると、なんでもないふうに装おうとする。 「あっおかえりオルフェちゃん！！今日は遅かったね！？」 「そうそうプレハブの掃除で遅れちゃって…ぷはぁ」 荷物をベッドに投げ出し、マスクを引っ張った。蒸れた口許がよく見える。 「それじゃあ風呂入ってくるッス」 お風呂セットを手に取るとそのまま部屋を出ていった。 ドアが閉まると同時に、シオンはその場にへたりこんだ。 「はへぇ～っ…びっくりしたぁ…ばれちゃうかと思った…」 ふと手元を見ると、必死に握り込んでさらに皺だらけになったマスクがあった。 「………ちょっとくらい…いいよね♥」 マスクを丁寧に開き、顔に付けた。そのまますうぅーっと、息を吸い込む。 呼吸の音だけが、大きく聞こえていた。
9 <a href="mailto:ｓ">22/03/19(土)01:05:13</a> [ｓ] No.907878610
同室じゃないカナハクも同室で気兼ねなくイチャイチャするカナハクもいいなあと思いました
10 22/03/19(土)01:07:00 No.907879062
会長。
11 22/03/19(土)01:08:11 No.907879356
ゲーミング発光ｶｲﾁｮｰネタ久々に見た
12 22/03/19(土)01:10:08 No.907879802
いいね…マスク付けるの
13 22/03/19(土)01:11:55 No.907880216
まるで普段は会長がゲーミング発光してるみたいだな…
14 画像ファイル名:1647620235587.png <a href="mailto:ｓ">22/03/19(土)01:17:15</a> [ｓ] No.907881407
カナロアが慌てたのは同室になってイチャイチャしてるときのテンションのままハグしてしまったからです
15 画像ファイル名:1647620430383.png <a href="mailto:ｓ">22/03/19(土)01:20:30</a> [ｓ] No.907882139
>No.907881407
16 22/03/19(土)01:26:08 No.907883412
おっぱいの話じゃない龍王久しぶりに見た
17 22/03/19(土)01:36:26 No.907885739
うわ可愛い…
18 22/03/19(土)01:43:07 No.907887142
書き込みをした人によって削除されました
19 22/03/19(土)01:45:54 No.907887682
同じ描き方なのに興奮時の目と照れ顔の目に感じる違いは何だろう
20 画像ファイル名:1647621957878.png 22/03/19(土)01:45:57 No.907887692
>オルフェはシオンの想いに全く気付いてません 修正
21 22/03/19(土)01:47:42 No.907888078
>オルフェはシオンの想いに全く気付いてません 愚妹よぉ…
22 22/03/19(土)01:59:17 No.907890369
>1647620235587.png >1647620430383.png おかわいい… >1647621957878.png やべー眼してる
23 22/03/19(土)02:01:25 No.907890744
最近シオンの目が怖い気がするっス 多分気のせいっスね
24 <a href="mailto:ｓ">22/03/19(土)02:03:09</a> [ｓ] No.907891051
このお話も入ってるカナハク全まとめです fu896484.txt
25 22/03/19(土)02:04:25 No.907891269
シオンちゃんは原作的にもオルフェに特別な感情ありそうでわくわくします
26 22/03/19(土)02:05:05 No.907891389
>このお話も入ってるカナハク全まとめです >fu896484.txt 物量がすげえ！
27 22/03/19(土)02:15:14 No.907893103
ありがたい…
28 22/03/19(土)02:29:54 No.907895424
スレッドを立てた人によって削除されました ウマムスマーdel
29 22/03/19(土)02:32:43 No.907895823
スレッドを立てた人によって削除されました >ウマムスマーdel すごいなぁ こんな絵がウマ娘に見えるんだ