虹裏img歴史資料館

1 22/03/17(木)00:54:25 No.907254478

僕にとっての光は、いつも彼女だった。 太陽のように笑って、明るい方へこの手を引いてくれたたった1人の姉。 僕が彼女を翳らせた。 大好きだったピアノをやめて、大好きだった友達と遊ぶのもやめて、時の止まった僕をどこかへ連れて行こうと……彼女は僕と一緒に、時の中に留まり続けようとした。 そんなのは許されない。彼女には彼女の時がある。だから逃げた。逃げて逃げて、もう誰も探し出せないように、自分が誰かを捨て去って、逃げたのに。 「なーがれ！早く早く！」 どうして彼女は僕を見つけ出すのだろう。僕の罪は赦されないのだろうか。 日差しの中で脚が止まる。逃げたい。じりじりと身を焼く光が、前へ行くことを拒むようで。 3つの人影も、此方を待つように立ち止まる。 光に耐えられなくて俯く。口から漏れる息を止められない。 「もう、運動不足なんじゃないですか？」 「ならばここらで休息にしようか。少し行った先にいい店があると聞いてね。あと少しばかり、歩けるかい？」 身体を覆う2人分の影が、僕の顔を上げさせた。 だからもう少しだけ、影の中から……光を目指して歩いてみる事にした。