22/03/05(土)18:03:39 日に日... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1646471019672.jpg 22/03/05(土)18:03:39 No.903556778
日に日に寒さが和らぎ、公園では梅の花が見頃を迎える3月 いつもの様にトレーナー寮へやって来ていたニシノフラワーは トレーナーのデスクに、見慣れないパンフレットが並んでいるのに気付いた 「これは…大学のパンフレット?」 フラワーが手にとって、その様々な表紙だけをまじまじを眺めているところへ 遅れてやって来たのは彼女のトレーナーだ。ニシノフラワーも来月になれば高等部の3年 それが一般入試であれ、トレセン学園へ入学してきた時のように飛び級で編入するであれ 天才児の彼女が大学へ進学するのは当然の流れであり、トレーナーも気を利かせたつもりで パンフレットを集めていたのだった。しかし、それらを抱えたフラワーが トレーナーへ向けた表情は、彼の思いとは裏腹に、困惑に包まれていた
1 22/03/05(土)18:03:54 No.903556833
ニシノフラワーの顔をひと目見た瞬間、トレーナーは自身の行動が 彼女の考えに沿わない事であったと悟った。まだ、その理由までは分からなかったが――― 「すまない。最近、フラワーは理事長とも進路についてよく話しているようだし せめてもの助けになるかと思って、少しづつ用意してたんだ…」 「トレーナーさんは悪くありません。ですから、謝らないで下さい」 フラワーは寂しそうに視線を逸らし、パンフレットをデスクの上に戻す 「これはまだ、あくまで私だけの想いなんです。学園の皆さんに聞かれても ずっとはぐらかして来ました。だけど、だけど…」 彼女はそう言いながら、まるで縋るように、トレーナーの上着をぎゅっと力強く握りしめ 胸元へ顔を埋めるなり肩をふるふると小さく震わせ、そのまま黙り込んでしまった 「フラワー…」 フラワーは声を押し殺して泣いている。トレーナーは、その涙の理由を未だ察せない自身に対して 不甲斐なさを感じながら、彼女が落ち着くまで優しく頭を撫でることしかできなかった
2 22/03/05(土)18:04:15 No.903556943
何分も経過して、ようやく落ち着きを取り戻したフラワーは、まだ瞳に涙を溜めながら 間近で、しかも上目遣いというずるすぎるシチュエーションで問いかけてきた 「トレーナーさんは。トレーナーさんは…このまま私が大学に行ってしまっていいんですか?」 「いや、それはとても辛い。本当ならずっと一緒にいたい」 思わず即答で本音を零してしまった。6年間もお嬢様学校で温室育ちの美少女ウマ娘が突然 共学の大学に放り込まれようものなら、四六時中言い寄ってくる男に囲まれると断言できる 中学生から大学生にかけての男子は性欲マックスハートなのだ かくいう自分自身もそうだったから間違いない。不安で不安でしょうがない 言葉でも表情でもフラワーに吐露してしまったこちらの想い。それはどうやらフラワーにとって 百点満点の回答だったようで、彼女は先ほどまでと打って変わって満面の笑みを見せた 「トレーナーさんなら、そう言ってくれるって信じてました!」 涙でぐしょぐしょに湿った上着の胸元に、今度は嬉しそうに頬ずりをしてくる 嗚呼、いけないよフラワー。それ以上されると理性のタガが外れてしまう
3 22/03/05(土)18:04:33 No.903557032
「トレーナーさんも、覚えてますよね?フジ寮長さんのこと」 言われずとも。卒業と同時に入籍し、今は左手の薬指に指輪を嵌めて大学へと通う フジキセキの逸話は、インパクトが強すぎて数年経った今でも語り草だ ああやって繋ぎ留めでもしなければ、すぐに悪い狼の餌食になってしまっただろう、とは 彼女の元トレーナー――現彼女のパートナー――の談だ 今の自分も、フラワーに対して全く同じ不安を抱いている。そして、同じ方法を採ってしまおうかと いう邪な考えが何度脳裏をよぎったことか。だが、フラワーは 「……私は、あれくらいでは全然満足しませんよ?」 あれ、気のせいかな。今ハードルが棒高跳びくらいまで一気に引き上げられたような 虚を突かれ、こちらの頭の中が一瞬真っ白になったところで フラワーは背伸びをし、こちらの首に手を回すと、更なる追撃を耳元で囁いてくる
4 22/03/05(土)18:05:17 No.903557224
「大切な人をたくさんの異性の中に置いてきぼりにして不安なのは、私だって同じなんですよ?」 思わずはっとする。担当ウマ娘と意中になったトレーナーの離職率は高い 言われてみれば、自分やフジトレが掛かり過ぎだっただけで、普通はそちらを気にするのか 「トレーナーさん、私には早々とお手つきしたのに、チームを組んだ後輩の皆さんにはとても紳士的でした」 私だけを特別な目で見てくれている。それを改めて確認できて、とても安心しました。でも…」 すぅっと、息をゆっくりと吸って。ニシノフラワーはついに、彼女の真の思いの丈をぶつけてきた 「私、来年に卒業したらすぐにでも。尊くてかけがえのない存在を、トレーナーさんと育みたいんです 大学に入るのはその後で。私なら全然問題なくこなせます。だから、この願い、一緒に叶えてくれますか」 「…もちろんだ。フラワーが望むなら、たとえどんな道だって、喜んで一緒に進んでいくよ」 トレーナーはそう返すと、そっと、強く抱きしめ返した。二人は唇を交わしながら長くもつれ合ったのち そのままベッドへと連れ立っていった
5 22/03/05(土)18:05:33 No.903557305
4月、新学期。トレーナーは、二人にとって思い出深い桜花賞の開催日を選んで 高等部3年になったばかりのニシノフラワーへプロポーズした まだ彼女は学生生活を1年続けるし、何より結婚できる年齢にも達していない 明らかにアクセルベタ踏みなくらい掛かり過ぎた行為だったが それでもフラワーは、心の底から喜んで、婚約指輪を受け取ってくれた 公の場では流石に付ける訳にはいかない、しかし何とかして見せつけたい そんなフラワーが思い付いたとんちは、メンコに耳飾りとして指輪を取り付けるというアイディアだった 無論、即日で露呈。トレーナーとニシノフラワーは仲良く理事長室に呼び出されたが バレてしまっては仕方ないとばかりに、開き直った二人は、顔を赤らめながらそのまま婚約報告を開始した 禁断のバカップルを眼前でまざまざと見せつけられた理事長とたづな秘書は、さながら ギャグマンガ日和のうさみちゃんのような表情でフリーズしたという