22/03/04(金)23:30:25 「お前... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1646404225580.png 22/03/04(金)23:30:25 No.903341187
「お前だって俺の事「先輩」って呼んでただろ?」 「テルさんだって!」 といった具合の問答が続いていたが、お互いに「後輩とは同姓同名の別人である」という事を察した二人はお互いの後輩を確認していた。 「……という事になって、私が回避を教える事になって……」 「それ俺も!」 鏡合わせのように会話は進んでいき、物理的な距離も近づいていた。 「それで……」 「……」 お互いに会話を重ねるうちにそのテンションは段々と低くなっていった。 後輩に対し嫉妬や甘えがあったのを自覚してしまったのだ。 瞬間、二人の脳裏に不安が生じた。 (元の世界に帰っても大丈夫なのか。) (もしまた別れる事になったら……)
1 22/03/04(金)23:31:11 No.903341471
ここで二人はまた別に嫌な予感がした。 時計の文字盤は8時ちょうどを指していた。 『遅刻だぁ~!』 二人共飛び出すように出勤していったものの、テルの方は脚の力が弱っていたのか力が入らずベッドから身を乗り出すだけだった。 ー 本部に顔を見せる時間帯になっても来ない事に不信感を覚えたシマボシは窓を覗いていた。 門番の相棒が苦手なむしタイプポケモンであるが故の苦肉の策だったが、慌ただしく走ってくるショウの姿を見て椅子に座り直した。 「……遅れてごめんなさーい!」 任務の前から汗をだらだらと垂らすショウを見て、シマボシは叱るように咳き込んだ。 「……汗を拭け。」 「はいっ!」 言われたとおりにショウは汗を拭いて、シマボシが任務を伝える気になったかを確認した。 「よろしい……では任務を伝える。」
2 22/03/04(金)23:31:48 No.903341670
あいつが出勤して大体30分くらいか、とテルは思っていた。 元の世界に帰るには「後輩」 「ただいまー!」 「ええ……?」 何故か帰ってきたショウにテルは困惑した。 「隊長はテルさんがまだ私の後輩の方だと思いこんでいて……リハビリの手伝いを任されたんです。」 「説明がややこしいし、しばらくはそういう事にするか……」 「じゃ、松葉杖を取って!」
3 22/03/04(金)23:32:08 No.903341779
「……恥ずかしい……」 テルは長屋の前でショウに肩を貸してもらっていた。 「大丈夫!しっかり支えますから!」 ショウの笑顔に照れてしまったのもあるが、とにかく恥ずかしさで赤くなった顔をテルは帽子を目深に被って隠した。 「じゃ!行きますよ!」 そのまま二人は二人三脚の要領で歩き始めた。 「……ところで組んでる腕怪我した方なんだけど。」 「あっ」
4 22/03/04(金)23:32:29 No.903341908
また次の日。 「意外と大丈夫そうで良かったです!」 改めて包帯を外し、ギブスを取って松葉杖無しの二本足でテルは歩いていた。 ショウと共にフィールドワークを行っているのだが、病床にいる時の足の不自由さは感じていなかった。 「そうだ!確かこの辺りに……」 ポジェットからテルが取り出したのはモンスターボールだった。 そこから出たのは、 「びがぁ」 テルの相棒、ピカチュウである。 「お前も中で窮屈だっただろ?」 主人の事など気にせず、ピカチュウは尻尾を振り回し駆け出していった。 「私もピカチュウ持ってるんですよ!」 ショウが駆け寄って来ると、彼女は自分のボールを見せた。
5 22/03/04(金)23:32:48 No.903342018
うっすら天面が透けており、彼女のピカチュウが入っていたのだが、テルはある違和感に気づいた。 「尻尾……変じゃないか?」 はっとなったショウが「後輩」が帰還する前に完成させた図鑑を確認すると、テルの方のピカチュウは尾がハートマークのような形状なのに気づいた。 「まさか女の子……って事は無いですよね……?」 「そういや雄雌なんて気にした事無かったな……」 ショウは引くような目で遠ざかっていった。 「別に便所に行く時誘ったりなんてしなかったからな!」
6 22/03/04(金)23:33:14 No.903342155
主目的だった調査も終わり、二人は帰路に就こうとしていた。 「腹減っちゃったな~昨日は病食しか食わせてもら……」 テルの涙袋に血が付いた。 脳の理解が追いつかず、棒立ちのまま辺りを見回すと吠えるリングマに、右肩の辺りに掌底を喰らい、爪が引っかかったのか血を流して倒れるショウの姿があった。 「……!?!?」 無我夢中でテルはショウを脇に担いで近くの林に隠れた。 「ふぅ……ふぅ……落ち着け……落ち着くんだ俺……」 ショウから三角巾を取り上げ止血の為右肩に巻き付けたところで、テルはようやく息が落ち着いた。
7 22/03/04(金)23:33:35 No.903342280
「お前を……必ず助けるからな……」 かつて「後輩」が追放されて去るのを見ているだけだったテルは「今の自分は違う」ということを証明するつもりでいた。 「いくぞ……」 ボールに戻しておいたピカチュウを再び展開して、リングマの腹の中央へと狙いを定めた。 「びがびがぁ!」 後の世で「ボルテッカー」と呼ばれる事になる技を思わせる体当たりを放った。 クリーンヒットしたリングマは泡を吐く程のダメージを受け倒れてしまった。 「……やったな!」 「びがぁ!」
8 22/03/04(金)23:33:55 No.903342397
ー 「いたた……」 応急処置が早くに終わりなおかつ丁寧だった為、ショウの傷はいずれ消える程度の物になっていた。 「……ごめんな……」 テルは先程まで自分が寝ていた病床にショウが入る事になったのを悔やんでいた。 「いいんで……いた……」 ショウは得意のガッツポーズのような姿勢を取ろうとしたが、ついつい肩を忘れて痛みを己の身体に走らせてしまった。 「ここにいたのか。」 テルの後ろから声をかけたのはシマボシだった。
9 22/03/04(金)23:34:13 No.903342494
『隊長……?』 「テル、病み上がりで悪いが、ショウが復帰するまでお前が代理を務めてくれ。」 「……ええっ!?」 「大丈夫ですよテルさん!あんな凄いことしたんですから!」 「…………」 照れ隠しか、テルは帽子を目深に被り直した。 「……忘れてくれるかなぁ。」 ショウはそんなテルを見てあることを思い出していた。 テルをリングマから庇った時に「危ない!」と発したのだが、倒れ込んだ時に好きな男を庇えた誇らしさと、その男の気を引けた喜びから微笑んでしまっていたのだ。
10 <a href="mailto:s">22/03/04(金)23:35:01</a> [s] No.903342774
龍神様…言われた通り2/23の怪文書の続き書いて来ました…どうかこの「」めと絆を…
11 <a href="mailto:s">22/03/04(金)23:40:06</a> [s] No.903344450
今回も聞きたいんですけどフーパ出しても世界観壊れないですかね?
12 22/03/04(金)23:44:56 No.903345898
>テルの方のピカチュウは尾がハートマークのような形状なのに気づいた。 相棒も雄雌ペアいいよね…
13 22/03/04(金)23:51:05 No.903347606
傷を残さなかったのは次回に繋げる予定です
14 <a href="mailto:s">22/03/04(金)23:57:51</a> [s] No.903349435
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