「やっ... のスレッド詳細
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22/02/28(月)20:42:08 No.902106173
「やっぱりウチこんなの歌うのムリっスよ!」 「ちょ、ちょっとオル……。こんなのって言わないの」 ぽすんと音を立ててソファに倒れ込んだオル。 今日は久々に二人とも休みが重なって、二人きりでカラオケに来ていました。 同室なので顔を合わせることは当たり前になっているけれど、外でこうやって二人で過ごす時間は久しぶりです。 いつもは各々のチームで過ごすことが多いのだから、本当に久しぶり。 「こんな可愛い曲はそもそもウチのキャラじゃないんス! そもそもうまぴょいってなんなんスか! ウチはもっとカッコいい曲を歌いたいっスよー!」 「そんなこと言わないで……オルは可愛い声してるんだから可愛い曲だって似合うわよ」 「うぅ~……」
1 22/02/28(月)20:42:21 No.902106250
納得いかないという表情を浮かべながら、ソファをゴロゴロと転がるオル。 その姿はとても可愛らしいもので、思わず笑みがこぼれてしまいます。 レースでの姿しか知らない人たちは、きっと想像すらできないでしょうね。 「ウイニングライブで歌うかもしれないんだから、練習しないわけにもいかないでしょう?」 「それはそうかもしれないけど……勝負に絶対はないっスよ。会長じゃないんだから……」 「そんなことないわ。あなたはあの会長達と同じように、天性のものを持っているもの」 そう、この子には、あの”皇帝”や”英雄”に並ぶ才があって、それをこれまでのレースで委細なく発揮しているのです。 本当は、私とこうしている暇なんてないくらいに、この子と私には隔たりがある。
2 22/02/28(月)20:42:44 No.902106375
「……こんなもん持ってても重いだけだよ……」 ボソリと履き捨てるように呟くオル。 上に立った者には、立った者なりの悩みがあるのでしょう。 ──それでも。 その才は、ターフに立つものにとって焦がれるほどに渇望するものであって。 あなたの後ろで、幾度も感じてきた感情が細波立つ。 「次のレースはシオンもいないし……」 ちらりと私の脚に視線を移すオル。 包帯を巻かれた左脚を見て、不安そうな顔をしていました。
3 22/02/28(月)20:42:54 No.902106435
「本当に、壊れやすくて嫌になるわね。私の脚は」 「……」 自虐気味に笑ってみせるけれど、どうしようもない事実で。 レースに出るたびに私は脚を壊しがちで、また走れるようになるまで時間がかかってしまう。 オルの眼が私に向けられているのを感じる。 この子の感情が私に向けられて、それを嬉しいと思ってしまう自分がいるのが、少し嫌になる。 「次のレースは無理だけれど、その次にはきっとオルと一緒のレースで走れるように頑張るわ」 「……うん」
4 22/02/28(月)20:43:07 No.902106516
ぽす、と私の怪我をしていない方の太ももに頭を乗せてくるオル。 お手入れをあんまりしていない、ぼさぼさの栗色の髪が肌に触れてくすぐったい。 こうして甘えてくれる姿を見ると、どうしても愛おしく思ってしまう。 オルのこんな姿、私以外の人に見せたくありません。 私だけのあなたでいて欲しい……なんて、心の中で独占欲を抱いてしまったり。 髪の毛に触れて梳かしてあげると、気持ちよさそうに目を閉じてまるで猫みたい。 「あなたの応援には必ず行くわ。この前限定のあなたのグッズをいっぱい手に入れたから、それも持っていくわね」 「……」 「あら? どうかしたかしら?」 返事がありません。眠ってしまったのでしょうか。
5 22/02/28(月)20:43:26 No.902106602
「……応援してくれるのは嬉しいけど、シオンの居場所はそこじゃないだろ?」 「……え」 いつも付けてるマスクがポロリと落ちて、彼女の素顔が現れる。 瞳孔が細まって、凶悪なまでにつり上がった目つきは見る者を萎縮させて。 性格も口調も荒々しいものに変わる。 レース中に出てくる、もう1人のあなたの顔。私の大嫌いな、もう1人のあなた。 それが、レースでもないのに、今、目の前にいる。 のそりとソファから起き上がって、私を見下ろして、紫の瞳が真っ直ぐに私を射抜いてくる。
6 22/02/28(月)20:43:41 No.902106679
「シオンの居場所は、観客席なんかじゃなくて、ターフの上だろうが」 「それは、分かってるけれど、怪我が……」 「怪我が治ったら、本当にオレと走れるのか?」 心臓が大きく跳ね上がる。 何度も思い詰めていた悩みを突き付けられて、言葉が出なくなる。 さっきは簡単に言えた言葉を、再び口にすることが出来ない。 ──あなたと一緒に走る度に、その鮮烈な黄金の輝きに目が潰れて。 ──あなたに追いつこうとする度に、私の身体は悲鳴を上げる。 ──一体何のために走るのかさえも、ボロボロになった私の頭では、もう考えられなかった。
7 22/02/28(月)20:43:57 No.902106779
なにか、何か言わないと行けないのに、何も言葉が出てこない。 「……何も言わないんだ。さっきの言葉はウソだったの?」 「……」 オルは最初から分かっていて、今日この場を設けてくれたのでしょう。 もう私の心は折れていて、これ以上走ることなんて出来ないって。 ちゃんと、あなたに、言葉にして伝えないと。 「オル、私ね──」 「嫌だ」 「きゃっ!?」 反転する視界。オルに覆い被さられていて、ソファに倒されたのだとそこで気付く。 鋭い視線が私を貫いている。でも、どこかその顔は必死で……。 やめてほしい。私なんかに、そんな顔しないでほしい。 あなたは、こんな事に構っている暇なんてないのに。
8 22/02/28(月)20:44:14 No.902106871
「走るのをやめるなんて、絶対に言わせないから」 私に、強い怒りの感情を向けている。 この子からこんなにも激しい感情をぶつけられたことが初めてで、私は怖くなる。 「……どうして、そこまでして、私に走ってほしいと思うの?」 あなたの隣にいる資格なんて、私にはなんにもないのに。 泣き出しそうな顔で、あなたは。 「お前が! 始めたんだろうが! オレにしつこく絡んできて! 勝手に勝負を仕掛けて! ずっとオレの側を纏わりついてきやがって!」 怒声が部屋に響く。その全てが、私だけに向けられた激情。 「全部お前が始めたんだ! なのに勝手に辞めるだと!? ふざけるんじゃねえよ!!」 胸倉を掴まれて、引き寄せられる。
9 22/02/28(月)20:44:27 No.902106946
私の事を思って、あなたがこんなにも苦しんでいる。 その事実が、場違いな感情だけれど、とても嬉しい。 私は、あなたの特別になれていたんだって、そう思えるから。 「……何とか言えよ」 「ごめんなさい」 「謝れって言ってんじゃねえ」 「オル、ごめんなさい」 「だから……ッ」 私の胸倉を掴む手の力が強くなる。 痛いぐらいの握力で、このままだと制服が破れてしまうかもしれません。 けれど、そんなこと、今はどうだっていい。
10 22/02/28(月)20:44:39 No.902107011
「このまま終わるとか、絶対に許さない……!」 不意に視界から消えるあなたの顔。 そして首筋に走る、鋭い痛み。 「いっ……!」 噛み付かれたのだと理解したのは数秒経ってから。 あなたが離れると、唇からは血が滲んでいて。 それを指先で拭うと、まるで真っ赤なルージュの口紅のように、私の体液があなたを汚していく。 「お前は、オレのだ。お前が勝手に決めるんじゃねえ。オレが決めるんだ」 いつの間にか、私はあなたのものになっていたようでした。 金色の暴君さまは、どこまでも自分勝手で横暴で傲慢で。 私の意思なんてお構いなしだと言うのです。 それが、涙が溢れてしまうほどに、嬉しくて。
11 22/02/28(月)20:44:51 No.902107088
「……オル、私ね」 「……うん」 「あなたと一緒にいるとね、苦しいの」 「知ってる」 「私が今まで積み上げてきたものが、全て無駄になるような気がして」 「……」 「もう、走るのが怖いの」 「……」 「でも、それ以上に、あなたと離れるのはもっと嫌なの」 「知ってる。お前、オレのこと大好きだもんな」
12 22/02/28(月)20:45:06 No.902107167
私の、一世一代の告白さえも、この暴君さまにはあっさりと返されて。 じっと見つめてくる紫の瞳に耐えきれなくなって、顔を背けてしまう。 きっと鏡を見たら、私の顔は真っ赤になっているでしょう。 こんなの、全然私らしくないのに。 「どれだけ怖かろうが苦しかろうがそんなことオレは知らないし、関係ない。オレが走る限り、お前もずっと走り続けろ。いいな?」 本当に、酷い人。 あなたは、自分がそうしたいからというだけの理由で、私を縛り付けると言うのです。 ぐちゅり、と音を立てて、傷口にあなたの舌が触れる。 痛みよりも別の何かが溢れて、背筋を駆け抜けて、体がびくりと震える。 そのまま、あなたの舌が首を這って、耳元まで登ってくる。 ぞくりと肌が粟立って、息が荒くなっていく。
13 22/02/28(月)20:45:23 No.902107275
「返事は?」 耳に吹き込まれるように囁かれて、体に甘い痺れを感じてしまう。 じくじくと疼くように痛む傷と一緒に、狂おしいほどの熱を灯される。 これは、私にとっての毒。 一度味わってしまったら最後、私はあなたの事しか考えられなくなってしまう。 いいえ、いいえ、もうとっくの昔に私は──……。 「は、ぃ……」 喘いでしまいそうに掠れた声で、なんとか答えを返す。 その返答に満足したのか、また私の傷跡を舐め始める暴君さま。 私の身体を壊れそうなほどに抱き締めるその細い腕は、微かに震えていて。 小さな背中に手を回して、そっと撫でてあげる。 本当は怖がりで、寂しがり屋で、泣き虫なのに、誰よりも強くあろうとするあなた。 そんなあなたが、愛おしくて、大好きで。 あなたが望むのなら、私は、何度だって立ち上がりましょう。
14 22/02/28(月)20:45:39 No.902107355
胸の中に火が灯る。 走る理由は、今、見つかりました。 私に残された、最後の意地。 あなたに敵わなくても。 あなたに追いつけなくても。 ──あなただけを写す景色は、他の誰にも奪われたくはないのです。
15 <a href="mailto:s">22/02/28(月)20:46:27</a> [s] No.902107656
お終い 謎のマスクド三冠ウマ娘とその背中を追い続けたウマ娘のお話でした 最近幻覚でいっぱい殴られたので自分も幻覚で殴りたくなりました
16 22/02/28(月)20:47:10 No.902107918
思ったより濃かった
17 <a href="mailto:s">22/02/28(月)20:47:25</a> [s] No.902108014
シオンが舎弟に劇重なのは皆さんご存知の通りだと思いますが舎弟も舎弟で独占欲強めだといいなと思います あと舎弟が豹変している時はドリジャ姉貴のエミュを頑張ってしていると考えたら可愛いなと思いました
18 22/02/28(月)20:47:42 No.902108122
一人称オレのマスクド三冠馬はちょっと強すぎる
19 22/02/28(月)20:49:09 No.902108675
>あと舎弟が豹変している時はドリジャ姉貴のエミュを頑張ってしていると考えたら可愛いなと思いました 自分が成長して強くなっても心の中にあるのは小さい頃に助けてくれた姉の背中なのいいよね…
20 22/02/28(月)20:49:40 No.902108880
>一人称オレのマスクド三冠馬はちょっと強すぎる 姉はオレって言ってそうだし妹も言っててもおかしくない
21 22/02/28(月)20:51:00 No.902109298
お互いが全部お前のせいだって思ってる関係良いよね
22 22/02/28(月)20:51:48 No.902109551
ちょ…ちょっとダメだろ愚妹こういう…えっ…エッチなのはダメだ…! よくないだろ…!
23 22/02/28(月)20:55:46 No.902111015
>ちょ…ちょっとダメだろ愚妹こういう…えっ…エッチなのはダメだ…! >よくないだろ…! なんスかこいつは…
24 22/02/28(月)20:59:26 No.902112284
この後掛かったオルフェがカラオケの個室でうまぴょいするんだよね…
25 22/02/28(月)20:59:55 No.902112490
カラオケの個室にはカメラ付いてるんじゃ…
26 22/02/28(月)20:59:56 No.902112492
性的な事にはウブな姉貴…?
27 <a href="mailto:s">22/02/28(月)21:01:26</a> [s] No.902113030
なんかこう…読み返してみると…別れを切り出されたDV男がまたDVして寄りを戻すDV被害者みたいな感じに…
28 22/02/28(月)21:02:06 No.902113271
姉貴うまぴょいヘタクソだもんな…
29 <a href="mailto:カメラチェック店員">22/02/28(月)21:02:49</a> [カメラチェック店員] No.902113567
>この後掛かったオルフェがカラオケの個室でうまぴょいするんだよね… >カラオケの個室にはカメラ付いてるんじゃ… こ 三 見
30 22/02/28(月)21:03:24 No.902113771
互いの同意込みのマーキング行為だから!暴力じゃないから!
31 22/02/28(月)21:04:33 No.902114196
この後の怪我明けで2013有馬なのが美しいよね…
32 22/02/28(月)21:05:52 No.902114670
追って来い!追いつけ!噛みついて来い!って思ってるオルフェいいよね
33 22/02/28(月)21:05:58 No.902114706
>最近幻覚でいっぱい殴られたので自分も幻覚で殴りたくなりました あの狂人また狂人を増やしてる…
34 22/02/28(月)21:09:41 No.902116196
バリアシオンはとにかく怪我多かったよね…
35 <a href="mailto:s">22/02/28(月)21:12:38</a> [s] No.902117357
あとシオンと舎弟は頭一個分くらい身長違うと思うのでうまぴょいするときはシオンがいっぱいフォローしてあげると思います
36 22/02/28(月)21:14:07 No.902117976
おねロリかよ…!
37 22/02/28(月)21:17:39 No.902119384
シオンが原作からして競走馬中ぶっちぎりの高身長だからね…学園でも特に背高い方になるからね…
38 22/02/28(月)21:19:29 No.902120088
こども体型の舎弟と完全に対になってそうよね
39 22/02/28(月)21:37:40 No.902127322
>こども体型の舎弟と完全に対になってそうよね ウチはモデル体型っスけど?