ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/02/27(日)01:17:06 No.901513699
国境のトンネルを抜けるとそこは雪国、という有名な小説の冒頭のとおり GWも過ぎたというのにまだ山の上に残雪の残る上越を新幹線で抜け、そこから小一時間もすると 終点の新潟駅に辿り着いた。今回は我が担当ウマ娘の1人が重賞レースに挑むので ドリームトロフィーシリーズに移籍したニシノフラワーも含め チーム一丸となって、付き添い兼応援のため前日から現地入りに来ているのである 駅前で待っていた直行バスに皆で乗り込み、着いた先は新潟レース場…に併設された レース関係者御用達のホテル「ウマムズ」通称Us。蹄鉄を模したロゴマークが目印である レース場とコンサート会場以外、周りには何もないので小ぢんまりとはしているが プライバシー保護やマスコミ対策が万全で、ロイヤルスイートからコンフォート未満まで 内装も1つ1つ異なる多種多様な部屋が用意されているため、利用者の評判はすこぶる良い
1 22/02/27(日)01:17:47 No.901513903
レース前もレース後もしっかりと寛げるよう、ウマ娘の皆にはチーム向けのスイートルームに 一緒に泊まって貰い、トレーナーの自分だけ別フロアにある安価な和室部屋に泊まる事にした 六畳一間のクラシックな内装ながら、あくまでクラシック「風」なので年季の入った汚れもなく テレビはブラウン管テレビを模した四角い箱に収まっているだけの液晶だし、wi-fiだってちゃんと繋がる 出走するウマ娘も多々泊まるホテルだけあって、身だしなみを整えるための大きな三面鏡や 尻尾用ブラシも充実しているのは特徴の一つだろう 部屋の真ん中に置かれたちゃぶ台に、時代の雰囲気に不釣り合いな自前のノートパソコンをでんと置く これから行うのは出走する担当ウマ娘のためのレースプランニングやインタビュー原稿の最終チェックだ さあ!やるぞ! 「……ふぅ、ようやく今のうちにできる準備は済ませられたかな」 データを保存し終えたパソコンを閉じ、ぐっと伸びをしながら時計を見ると、いつの間にか0時を過ぎている ちゃぶ台を壁に立て、押し入れから自分で布団を出して敷いている最中 スマートフォンが点滅しているのに気付いた
2 22/02/27(日)01:18:18 No.901514071
グループメールにはおやすみなさいの連絡が、約1時間前のタイムラインで入っていた フラワーには、皆が修学旅行気分でうっかり夜更ししてしまわないよう 先輩として率先して早寝早起きに誘導してあげてくれ、とお願いをしておいたが、上手くやってくれたようだ と。コン、コン、コン、と一定間隔で部屋の入口の戸を叩く音。これはフラワーとの遠征時 互いの部屋に入るため決め合った符号である。あれ?先ほど彼女も皆と共に寝付いたのではなかったか 和室なので、引き戸の錠前を外してガラリと開くと、そこにはやはりニシノフラワーが立っていた 寝間着を纏い、胸には彼女の運動着やスポーツシューズの収まったバッグを抱えている なにか問題でもあったのだろうか?部屋に招き入れ、鍵を掛け直すやいなや 背後にいたフラワーにぎゅっ。と抱きしめられた 「トレーナーさん。あの子たちはもう、ぐっすりと寝付いてくれましたよ。ですから、せっかくですし これからは2人だけの時間にしましょう?」 自分の肩よりもずっと低い位置から、耳元に向けて魅惑の囁きが静かに、そして甘く響いてくる
3 22/02/27(日)01:18:55 No.901514252
背中にあたる慎ましやかな膨らみの高さから察するに、フラワーはつま先立ちで背伸びをしているようだ 「レース前の雑務は丁度終えたところだから、自分は大丈夫だけど フラワーは皆が起きる前に戻らないと。流石に朝、もぬけの殻だとまずいんじゃあないか?」 彼女とは1年目に専属契約を交わした直後から、深い付き合いを続けているが その仲は学園関係者やご両親は勿論のこと、チームメンバーに対しても隠したままである フラワーは飛び級児なので、彼女が高等部となった今でも色々とデリケートなのだ 「みんなには、『私は、日課の朝練をするために早起きしますね』と言っておきましたから」 部屋の畳の上に置かれたバッグを、視界の端でちらりと見る なるほど、あれはアリバイ確保のために持ってきていたのか フラワーが抱きしめてくる力は一層強まり、その左手は、こちらの寝間着の帯に伸びようとしている 彼女の深い乱れた呼吸音も、自身のハロン棒も徐々に大きくなりつつあった
4 22/02/27(日)01:19:27 No.901514385
「…しかし、夜中に彼女たちの誰か一人でも起きてしまったら、フラワーが居ない事は 直ぐに気付かれてしまうよ。どう考えても弁解できそうにない」 脳裏によぎる不安を彼女に漏らしてみるが、フラワーはくすくすと小さく笑うばかり。そして 「大丈夫ですよ。トレーナーさん直伝の、ぐっすり入眠法を実践してあげてますから 効果だって、寮でお泊り会をした時にも確認済みですし」 えっなにそれすごい。素直に驚きながらも、そんな技を教えた事なんてあっただろうか、と浮かぶ疑問符 適度なマッサージは確かに眠気を誘いこそすれ、効果は長くても数時間 それこそ気絶させるほどの強力な…?いや、流石にそれはフラワーが大切な後輩達に対して絶対にしない行為だ 無論、自分だってフラワー以外にするつもりはないが。だとすれば、穏当な手段…日常通りの…あっ 「もしかして、みんなで寝る前にホットミルクを飲んだ?」 「…はい❤トレーナーさん。大正解ですよ」 背後にいるので表情は見えないが、フラワーが満面の笑みで答えているのが確信できるほどの良い声で 彼女から正解を言い渡されると同時に、はらりと帯が床に落ちていった
5 22/02/27(日)01:19:47 No.901514456
寝る前のストレッチやマッサージは入眠効果が高いが、もう一つ、フラワーがデビューしたての頃 レース前に緊張で眠れないと相談を受けた時に教えたのがホットミルクであった 体が芯からじんわりと温まり、あっという間に意識は夢の世界へ飛び立っていく 目覚まし時計が引き戻してくれるまでグッスリ快眠。これによりフラワーは緊張から解き放たれ 万全のコンディションを保ったまま翌日のレースに臨めたのだ 本当なら、チームメンバーのウマ娘達にも聞かれずとも教えておくべき秘訣であったのに あの頃のフラワーと違って、決して皆幼くはない年齢なのですっかり脳から抜け落ちてしまっていた 「レースに出る子もそうでない子も、後輩の皆さんはテンションを上げて緊張を和らげようとしていましたので それとなく買ってきておいた牛乳をレンジで温めて、談笑しながら飲んだんです。…ふふ、あっという間でしたよ」 「…ありがとうフラワー。君が居なかったら、明日のレース、彼女は一睡もできず迎えていたかも知れない」 自分はフラワーを抱きしめ返して感謝の気持ちを示したいところであったが、身体の自由はとっくに無い
6 22/02/27(日)01:21:15 No.901514928
うまだっちは根本からニシノフラワーの右手に握りしめられてしまっているし、寝間着は今ほど布団に放り投げられ 二人の間を遮る布地も失われた。すっかり夜も更けて参りましたのでヤル事は一つである 「あの子は絶対に大丈夫ですから、ね。トレーナーさんも緊張しているのは分かっているんですから 彼女を心の底から信じて、今は―――きゃっ❤そうそう、そうやっていつもの調子で…ああっ❤」 そして翌日のレース。チームのウマ娘達はホットミルク効果で良く眠れたようで、全員が元気いっぱいで 中でもニシノフラワーはお肌ツヤツヤテカテカ。一方、トレーナーだけは逆にやつれ気味という状態であった レースに臨んだ我がチームのウマ娘も、無事に全力を出し切って彼女初の重賞勝利を咲かせたのだ スタンドの関係者用エリアから応援していた我々は、彼女がゴールを通過した瞬間 全員で肩を抱き寄せ合って大いに盛り上がったし、フラワーは更に 凱旋を果たし戻ってきた、自分より背の高い後輩を優しく抱きしめると、頑張ったね、本当におめでとうと まるで小さな母親のように、全身を使って喜びを分かち合ったのである
7 22/02/27(日)01:24:49 [s] No.901515983
深夜25時なのでギリギリ土曜投稿です 新潟名物ホテル競馬場Usの新築ボロアパート風部屋は207号室となります fu842373.jpg fu842376.jpg
8 22/02/27(日)01:25:59 No.901516262
実在してんのかよ!
9 22/02/27(日)01:30:57 No.901517514
ウワーッ…
10 22/02/27(日)01:31:06 No.901517554
ウソでしょ…
11 22/02/27(日)01:36:37 No.901519050
ちょっと行ってみたい
12 22/02/27(日)01:39:25 No.901519774
あそこそんな愉快な場所だったのか… まあそりゃそうか