虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    22/02/19(土)22:52:32 No.899022622

    足を踏み外さないよう、ヘッドライトの灯をしっかりと見据えて一歩一歩確かに山肌を踏みしめる まだ朝とも言えないような時間帯の山の中は暗く、寒く、異様なまでに静かで。時々聞こえる物音がどれほど小さなものでもよくわかってしまう 幸いにして風はないしニット帽含め防寒着はしっかりとしてきたが、それでもやはり寒い ある程度の余裕は残してあるがこれは時間との勝負だ。あまり長引かせるわけには行かない 手に持ったスコップを突き刺すべき場所。そこを、慎重に、丁寧に見定めていく 「おい愚妹、時間がねえぞ」 後ろで同じようにニット帽をかぶってヘッドライトを照らし、スコップを肩に担いだ姉貴の声 口元まで上げられたネックウォーマーの上、その隙間から覗く鋭い目がさっさとしろと急かしてくる 「わかってるッス…このあたりがいいッスかね」

    1 22/02/19(土)22:52:48 No.899022743

    見定めた場所は、適度に開けてしかしある程度の密度で生い茂り、急な勾配にもなっていない いいだろう、このあたりが適当といったところだ。土も固まっていない。障害物もない 誰もいない中でとはいえ、気を抜いて失敗すれば面倒なことになる。足場はしっかりと確かめておかねばならない 「じゃあ掘るッスよ。姉貴はそっちを」 「おう、下手こくんじゃねえぞ」 月の明かりが差し込む中で、スコップを握る手に力が入る さあ、素早くやらなくては。そして、ふぅっと一つ息をついてから、狙いを定めて その鋭利な先端を、土へと突き刺した

    2 22/02/19(土)22:53:13 No.899022933

    ● 「つーわけで、これが採ってきたタケノコッス」 「回想についてのツッコミは後回しにされる感じプイ?」 うわぁ、というような顔をするプイ先輩とカレンの姐御 若干眠気が出てきてしまった目を軽く擦りながら、プレハブ小屋の室内で新聞紙を広げた上に転がるそれらを見せつける それは丸々として、変色や変形もなく綺麗な形をしたタケノコだった まだ日も昇る気配もない早朝に、防寒支度をきっちり調えて山へと入り、姉貴と一緒になって採ってきたばかりのもの。鮮度は保証済みだ 何故か怪訝な目をして話を聞いていたプイ先輩が物珍しそうにしながらタケノコを指でつつく なお、姉貴はプレハブについて即爆睡。部屋の隅で、どこぞの連中がPRでと置いていったクッションに頭を突っ込んでさっきからずっと夢の中だ 「ねえねえ、タケノコってこんな時期に採れたっけ?もう少し先じゃなかった?…ていうか、勝手に山に入ってよかったの?」

    3 22/02/19(土)22:53:32 No.899023081

    姐御の疑問はもっともだ そう、タケノコなどの山菜などは仮に生えているからといって勝手に採っていいものでは無い 山には所有者がいて、そこはその所有者の私有地なのだから。勝手に入れば不法侵入、勝手に採ればそれは窃盗だ しかし、今回はその点は全く問題は無い 「ああ、姐御はレースで出てたから話いってなかったッスか。実はこれ、姉貴のおかげ…みたいな感じなんスよ」 「語らねばならないプイ。あの惨劇を…」 遡ること、二日ほど前 とある商店街近くの通りで、高齢女性の鞄を狙ったひったくり事件が発生したのだ バイクに二人乗りで待ち伏せし、確実に奪えそうな相手を待ち構えての卑劣極まりない犯行。その被害に遭ったおばあちゃんは転倒し怪我をしてしまったという 下劣な犯人達はそのままその場を走り去ろうとしたのだが……奴らに致命的に運がなかったといえる点があったとすれば、だ その現場を目撃していて、なおかつ進行方向に立っていたのが 某ナカヤマとのギャンブルで負けて絶賛不機嫌の姉貴、ちびっこ怪獣ドリジャノドンだったことだろう

    4 22/02/19(土)22:54:15 No.899023401

    「…バイクは原形留めてなかったらしいッス」 「うわぁ。うわぁ」 「連絡受けたトレーナーさん、シワシワになってたプイね…」 「それで、そのおばあちゃんの様子見に行ったんスけど…」 現場でも凄まじいくらいにお礼を言われたそうだが、その後自分も付き添いでお見舞いに行ったら姉貴が若干あたふたするくらいに手を取って改めてお礼を言われてた 怪我はそんなに酷いものではないので少しすれば治るとのことだったが、それを聞いたおばあちゃんはとかく困り果ててしまったそうだ そこで聞いたのが、そのおばあちゃんが所有している山でのタケノコのことだった なんでも、山の竹林で毎年タケノコを沢山採っているそうなのだが今回のこの怪我でそれができないという 少し前に旦那さんも体を壊してしまったということで、すっかり参ってしまったらしい

    5 22/02/19(土)22:54:43 No.899023616

    「この場合のタケノコ採りって山の管理の意味もあったらしいんスよ。余計な若竹の発生を減らして、タケノコ目当てで来るイノシシとかの防止とか。なんで割と深刻な問題だったらしいんス」 「あー、タケノコって成長早いっていうもんね」 「でも一日二日でそこまで延びるプイ?」 「一度調べてみるといいッス。1日で数十センチ以上とかメートル近くとか平気で行くッスよ」 「プキュッ!?」 そう、山をしっかり管理している人たちにとっては本気で死活問題なのだ そこで、レースなどの予定もなく少し空きができていた自分達二人で手伝おうと申し出たのだ 姉貴としても乗りかかった船というのもあったのか、それに目の前で怪我した高齢者の困り事を放置することは気が咎めたか 最初は遠慮されたが、ウマ娘のパワーなら早く済むしと二人でやってみると言って手伝いを決めた いくつかのポイントや注意点を聞いて、プレハブの物置に眠っていたアレコレを引っ張り出して、スコップとクワとカゴを担いで深夜早朝の山へ繰り出した、というわけだ

    6 22/02/19(土)22:55:13 No.899023837

    「それで採ったタケノコをおばあちゃんの家に送り届けてきたんスよ。で、手伝うって決まった時に『本当に沢山採れるから、いっぱい採って友達とかと食べてね』と言われまして。ありがたくいただいたって訳ッスね」 「最初はマッドでマックスな感じだったけど普通にいい話だったね…」 いや、天然の国産タケノコをこんなにいただけるなんて本当にありがたい話だ。この規格の朝採れタケノコなんて店で買ったらいくらすることか なんだか逆に申し訳ないくらいだったが、あそこまで喜んでもらえたしよかったとしよう ついでに内緒だが、お届けしたその場でおばあちゃんがタケノコを切ってタケノコの刺身なるものをご馳走してくれた。…あれは、本当にすごかった。機会があればまた食べてみたい  「つーわけで。今から皮剝いていくんで手伝いよろしくッス」 「これ全部やるプイ?果てしなく人手足りてない気がするプイ」 「もうそろエールちゃん達も来るから大丈夫ッス。鮮度命ッスからね」

    7 22/02/19(土)22:55:48 No.899024129

    言いながら新聞紙の上でタケノコの皮を剝いていく。とりあえず一個綺麗に剝いて、大体こんくらいでオッケーッスと見本にすることに とはいっても全部は剝かない。一番上の1枚か2枚、分厚くて浮いてるような部分だけを剝いて後はアク抜きで茹でる時までそのままだ。そこに切れ込みを入れていくのも忘れてはいけない 最初は二人とも慣れない作業に戸惑っていたが、途中途中写真を撮りながら進めていた姐御は割と早く慣れたのかパッパと捌いていったのは流石だと思う プイ先輩はまだ若干手元が危ういが、なんか随分楽しそうに鼻歌歌いながらやってるし問題なさそうだ 「そういえばさっきの話ッスけど。なんでこの時期にタケノコ採れたのかって聞いてたッスね」 「そうそう。時期ってもう少し先でしょ?なのにどれもこれも立派だし、品種とかの違いなのかなーって」 「いやー、実はそれは裏技っていうか、そういう農法をやってたんスよ。話を聞いて調べてみて納得したッス」

    8 22/02/19(土)22:56:20 No.899024386

    竹チップ農法とか言われる物らしい。間引きのために伐採した竹を専用の機械で細かく砕いてチップにして、それを腐葉土だか山の土だかと混ぜ合わせて竹林の根元に敷き詰めていくものだそうだ しっかり空気を含んだ混合チップが地面を冷やさず、微生物の働きで発酵する際に僅かなれど熱を出して保温してくれる これによって、ある程度時期が違っていてもコンスタントにタケノコを生やすことができて収穫量を増やすことができるそうだ アホみたいに処理に困る竹を有効活用できるだけではなく、上質なタケノコを沢山栽培できる あと、タケノコは頭を出して日に当たった瞬間からえぐみを出してしまうので、柔らかいチップの布団を被せることでそれを遅らせつつ大きくすることもできるそうだ。多少日が出ても収穫できるものもあったりするくらいらしい 「農業ってすごいねー。旬じゃなくてもこんなに大きいのが収穫できる方法作っちゃうんだ」 姐御の言うとおりだ。先人の知恵とはかくも偉大なものだ。感謝を忘れてはいけない

    9 22/02/19(土)22:56:41 No.899024526

    「ん、おお……もう始めてんのか」 「あ、おねーちゃん起きたプイ」 「流石に眠すぎたわ。寒かったし部屋入った瞬間電池切れちまった」 「おはよッス。じゃあそこのグループ剝いてってくださいッス」 おーぅ。なんてまだ寝ぼけてるのか間延びした声。それでも素直にやるのは、自分が苦労して採ってきたものだからか 数時間経ってしまったから一応アク抜きは必要だろうが、新鮮だし少しで大丈夫そうだ 頭の中でいくつかのメニューを組み立てていく。せっかくの素材だししっかり活かしておきたいが… 「お疲れ様でええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええす!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「お疲れ様です。え、わ、想像以上に沢山!?」 ああ、きたきた。人手はもう十分すぎるだろう 全員準備ができ次第皮むきに入ってもらって、その間に鍋とかの準備を始めるとしようか

    10 22/02/19(土)22:57:04 No.899024707

    ● 「プイイィィィィ~!!!シャクシャクしてていい香りで美味しいプイー!!」 タケノコの炊き込みご飯で作った大きなおにぎりをモッキュモッキュプッキュと頬張るプイ先輩はもう大満足と言った感じだ ぬかと赤唐辛子とを入れて大鍋でアクを抜いたタケノコは、新鮮なのもあって最高の香りと食感を両立していた。試しにジェネリックタケノコ刺身として茹でただけのものに梅醤油を付けて食べてみたが、これだけでもいくらだって食べられるご馳走に早変わりしていた 他の面々も、夢中になってタケノコ尽くしに食らいついている 「ん、この土佐煮って好きかも。ご飯が欲しくなるね♪」 「焼きタケノコ最高でえええええええええええええええええええええええええええす!!!!!!!!!!!!!!!」 「タケノコご飯の焼きおにぎりってこんなに香ばしいんですか…あ、こら一人で食べ尽くすなよメイケイエール!!」 みんな我先にと目の前のタケノコ料理をつまんでいく 作った料理は始めからわけておいて、トレーナーと今日いない組用でしっかり置いてある。というか、それくらいの量ができてしまった

    11 22/02/19(土)22:57:28 No.899024901

    「あ、これ美味しいプイ。なんて料理プイ?」 「適当なアレンジッス。梅醤油が合ったんで、タケノコに切れ目入れて紫蘇と練り梅挟んだだけッスよ」 「あれ、まだ何か作ってるの?」 「天ぷらッス。おばあちゃんが美味しいから作ってみてっておすすめしてたんで」 「まだ沢山食べられますね!!!!!」 「塩!!塩で食べたいプイ!!!!」 ついでに少し用意しておいた他の山菜も併せて天ぷらにしていく こればっかりは揚げたてに限るので、トレーナー達には来てから用意することになるが ……と、ふと視線を移すと 「…ん。うめぇ」 炊き込みご飯のおにぎりと焼きタケノコを、夢中というか集中して食べてる姉貴の姿 やけに静かだと思ったが、自分で苦労した山の幸をしっかり味わっていただけの様子。タケノコ汁を合間合間に飲みつつ、箸を止めることなく食べ続けている

    12 22/02/19(土)22:57:54 No.899025098

    「姉貴、そんなにタケノコ好きでしたっけ?」 「んー、まぁ普通には。あと愚妹、タッパーとパックあったか?」 「ん?あるッスけど、寮に持って帰るッスか?」 んー、と。視線を宙に漂わせて、料理に視線を戻して 「……握り飯、普通のと焼き。それとこの梅紫蘇挟んだやつ、二人分くらい詰めとけ」 「あいよッス。……ん?二人分?」 「おう、普通の人間感覚で二人分」 トレーナーと魔女っ娘と聖剣先輩の分はとってあるし、それにしては少なすぎる 夜食にでもするつもりだろうか。それか誰か… あぁ、なるほど、と

    13 22/02/19(土)22:58:14 No.899025242

    「…お年寄りですし、少し小さめに握っておくッスか」 「……そーしとけ」 多分、この後出かけるんだろうけどついていかない方がいいだろう ついでに、保温ボトルにタケノコ汁も入れておこう。寒い日が続く。体が温まるものは療養にも大事だ 「ウチの分も、お礼お願いするッス」 「……ん」 小さな怪獣の、恩返しというわけだ 「ほいほい、天ぷら揚がったッスよ。油使ったついでに春巻きでも作りますか」 「ねえ、どれだけ材料用意してあるの?ちょっと用意周到すぎて怖いなって☆」 「いただきまあああああ熱ううううううううううううううううううううううううい!!!!!!!!!!」 「うわぁ!!!!!なにやってるんだメイケイエール!!!ほら、水だ水!!!」

    14 22/02/19(土)22:58:52 No.899025541

    相も変わらず騒がしいこの場所は、少し早い山の幸の喜びに満たされていた また時間が空いたときにも手伝いに行こうか。その時は他のメンツも一緒に。お礼のお菓子か何か持って 「ほら、プイ先輩。ほっぺたに米粒ついてるッスよ。じっとして」 「ンプィ~、おいひくへほははらいプイ」 「ちゃんと飲み込んでから喋るッス」 プイ先輩の口元をぐりぐり拭きながらため息一つ

    15 22/02/19(土)22:59:16 No.899025682

    「ねえ、青椒肉絲はどうかな?今いない組にさ♪」 「え?そりゃできるッスけど……ああ、いいッスね。肉食いたきゃ野菜も一緒に食えってことで。ピーマンマシマシッス」 「外道のやり口プイ」 「いつまでも野菜ヤダヤダする方が悪いッス。おかげでこっちはどこぞの三冠バのお姉さんと対策会議したりしてるんスから」 「おい、まだ握り飯あんのか愚妹」 「あるッスよちょっと待つッス。あ、どうせなら醤油塗って焼きます?」 「それ食べたいプイ!!!!!!!!!!」 グリンと高速でこっちを向かないで欲しい怖いから じゃあ春巻き作る前におにぎり追加して…しかし、本当にこの巨大釜は大活躍だなと すると横に立つ二人の影 「せっかくだし、自分でも握ってみたいプーイ」 「……おう。水、貸せ愚妹」

    16 22/02/19(土)22:59:35 No.899025833

    好奇心オバケのプイ先輩はともかく、なんともまぁ まあ、お年寄り向けの小さめおにぎりなら姉貴の手で握る方が丁度いいだろう。言わないけど。暴れるから 手に水を付けて、火傷しないようにしてご飯をよそって握り始める 「あ?なんだ綺麗にならねーぞ愚妹」 「手の形ッスよ。こうして…」 「あっプーーーーーーイ!!!!!!!!!」 「どんな悲鳴ッスか。ほら、冷やして冷やして」

    17 22/02/19(土)22:59:51 No.899025947

    少しばかり時季外れの山の幸 寒さを堪えて山に登った苦労を吹き飛ぶその味を、今こうしてみんなが味わっている 姉貴はそれをしっかり語るのだろうか。あの優しいお年寄りに あなたの山で採れたあなたが育てた成果が、トレセン学園でも最高峰のウマ娘すらも魅了し、こんな溶けた顔にしてしまったと 集まった仲間達全員が、我先にと飛びつくほどに夢中になったと 「あれ?なんか変な形になったプイ」 「どーやったらおにぎりが三角錐になるんスか?」 怪獣の怒りから始まったお話しは、なんとも美味しい結末を迎えた、というところだろうか

    18 22/02/19(土)23:00:54 No.899026399

    以上。酒とZONE飲んだので舎弟した

    19 22/02/19(土)23:02:13 No.899026979

    ありがとう… ZONEももっと飲め…

    20 22/02/19(土)23:02:19 No.899027028

    やけに彩度が低いたけのこ掘りだな…

    21 22/02/19(土)23:02:31 No.899027114

    酒とZONE同時飲みは危ないですよ!

    22 22/02/19(土)23:02:59 No.899027308

    よかった…山に埋められるトレーナーはいなかったんだ…

    23 22/02/19(土)23:04:22 No.899027929

    >「プキュッ!?」 あざとい…可愛い…

    24 22/02/19(土)23:05:07 No.899028247

    最近また舎弟しだしたな 良いことだ

    25 22/02/19(土)23:09:50 No.899030212

    無関係な一般ディープインパクトが馴染みすぎてる…

    26 22/02/19(土)23:10:04 No.899030320

    キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

    27 22/02/19(土)23:10:07 No.899030339

    >>「プキュッ!?」 >あざとい…可愛い… こういうところが人気の秘訣プイ

    28 22/02/19(土)23:10:08 No.899030341

    バイク破壊…