虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    22/02/18(金)19:48:13 No.898589208

    商店街の初売りセールにトレーナーとやってきた。 お正月をどう過ごすか聞いたら、家で寝てると返ってきたのでボクが誘った形になるんだけどね。 おせちも食べないのかって聞いたら、学食がしまってる間はなんと栄養定食を食べて過ごすつもりだったらしい。 あんなのご飯とも呼べない。ただの養分補給用の物体だ。他に食べられるものがない人か、お腹に収まればなんでもいい人しか食べない。 そんなもの食べてるなんて知られたら、ボクなら結構、いやかなり恥ずかしいと思う。 それをまさか身内が食べてるだなんて思わなかった!そういうわけでテイオー様が手料理を振る舞ってあげるために材料を買いに来たんだ トレーナーと一緒に出かけるのは久々だけど、相変わらず無愛想というかなんと言うか。 でも今日はちょっと様子がヘン、いつもより進むのが早いし、なんだかキョロキョロしてる。 「ねえ、何か気になることでもあるの?」 こういう時、気になるって顔しててもトレーナーは気づいてくれない。気づいてくれるような人だったらボクもカイチョーも苦労してないだろうなあ。

    1 22/02/18(金)19:48:43 No.898589383

    「顔に出ていたか?」 「思いっきり。」 まあ付き合いの長いボクじゃないとわからないだろうけどね。 「………。」 きまりが悪いのか、立ち止まって空を見上げるトレーナー。 「隠し事はなし、だったな……。」 「言いたくなかったら別に言わなくても。」 「いや、約束した。」 トレーナーは約束となるとすごく頑固だ。約束を盾にトレーナーから聞き出そうとしてるみたいでちょっと居心地が悪い。 隠し事はなしっていうのも、トレーナーが勝手なことしないようにっていうつもりだったのに。 「実は、初めて見るんだ。」 ボクの悩みをよそにトレーナーはとんでもないことを言い出した。

    2 22/02/18(金)19:49:00 No.898589471

    「へ?」 「初売り、と言ったか。初めて見る。」 「毎年お正月にやってるのに?」 「家を出てからはずっと健康維持栄養食品群……お前達は栄養定食って言うのか、それで過ごしてたからな。年に一回まとめ買いしていた。」 栄養定食……とんでもなく安くて生きるのに必要な栄養が入ってるけど、満腹感とか食感とか味とかは一切考えられてない食べ物のこと。 それ以外食べられないぐらい追い詰められた人、すごく貧乏だったり災害に巻き込まれたりした人じゃなきゃ食べないようなものだ。 あれを毎日食べ続ける生活、ちょっと想像がつかない。一回だけ好奇心から食べてみたけど、ほんのり甘いスポンジや塩辛い土みたいなのばっかりですぐリタイアしちゃった、もう二度とゴメンだ。 何年続けてたか知らないけれど、壊滅的な生活だ……。涙が出てきそう。 「えーっと、じゃあ何か食べたいものある?」 話題を変えようと質問する。建設的な話題にしないと、新年からこれ以上どんよりした気分になりたくない。

    3 22/02/18(金)19:49:20 No.898589597

    「そうだな……。」 考えが頭をめぐるのに連動するみたいに、トレーナーの手が車輪を回し始める、器用に人混みを避けながら進んでいく。 ボクは隣を歩く、喧騒が遠くなったみたいに小さくなる。蹄鉄が道路を叩く音、車輪の回る音。 トレーナーの言葉を待っている間、単調に繰り返される音に、なんだか落ち着いた気持ちになる。 どれほど経っただろうか、ずっと考え込んでいたトレーナーが口を開いた。 「筑前煮、作れるか。」 「ちくぜんに……って、レンコンとかニンジンの煮物だよね。レシピ見ながらになると思うけど、それでいいの?もっと豪華なやつでもいいよ?」 「好きなんだよ。おせちでも選んで食べてた。」 「なんていうかさ、トレーナーって、実は結構年とってたりする?」 カイチョーとそんなに離れてないと思うけど、好みが渋すぎるし、ヨステビトって感じがする。 あ、ムッとした。

    4 22/02/18(金)19:49:51 No.898589796

    「年齢固定措置は受けてない。」 「そんな風に見えるってこと。アスリートだもんね、体弄ってないのは知ってるよ。ヨーバディ、筑前煮を作りたいんだけど。」 スマホに声をかけると『筑前煮の材料と販売リストを表示します。』と凛としたカイチョーに似た声(ボクが頑張って設定した)のAIバディが応えてくれる。 初売り中だけあってそこかしこで野菜や鶏肉が売っているので、確認するのはちょっと面倒くさい。 「適当に買っといて、届け先はトレーナーの部屋で。」 『かしこまりました。』 「ちゃんと値段を見て買え、その年から浪費癖がついていたら金が保たんぞ。」 「まーまー、お正月だから気にしない気にしない。ニシシ♪」 渋い顔したトレーナーの、シワの寄った眉間をツンツンしていると、スマホが何か読み上げる。