22/02/14(月)02:08:15 空き教... のスレッド詳細
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22/02/14(月)02:08:15 No.897064742
空き教室に向かう途中、たまたま廊下でトレーナーさんを見かけました。身体の向きからすると、彼も空き教室へと向かっているようです。 私の手元には、今日のために準備した一つの箱。燃え尽きることのない想いを載せて、この日、アナタに届けるために。 それをそっと懐に隠して一緒に空き教室へ向かおうと、トレーナーさんに歩み寄ろうとしました。 『あ、いたいた! トレーナーさん!』 そのとき、明るく楽しそうな声が廊下に響きました。その姿は見覚えがあります。以前、トレーナーさんが通りすがりにアドバイスして以来、時折話を聞きに来ていたウマ娘の少女。 「ああ、きみか。どうしたんだい、何か相談でも?」 『いえ、あの……今日って何の日だか分かりますか!?』 「うーんと……ああ!」 『はいっ! というわけで……じゃーん! チョコレートです!』 「はは、嬉しいなあ。トレーナー業は頭を使うから、糖分補給にありがたいよ」 『もう、バレンタインの女の子にそんな事務的な対応したらモテませんよ!』
1 22/02/14(月)02:08:36 No.897064822
「悪い悪い、冗談だ。本当に嬉しいよ、ありがとう」 『いえいえ! お世話になってますから!』 そんな、義理チョコか友チョコでも渡すかのような少女の声色。トレーナーさんは贈り物に対して、素直に嬉しそうな笑みを浮かべています。 そしていくらか言葉を交わしてから、別れの挨拶をして駆け出した少女は。私と気付かなかったのか、横を走り抜けるときに。 『渡しちゃった……渡しちゃった渡しちゃった!』 その表情は間違いなく、恋する乙女のそれで。嬉しそうに、恥ずかしそうに、顔を朱に染め、そのまま去っていきました。 再びトレーナーさんを見ると、貰った箱を眺めながら穏やかな笑みを浮かべていて。鞄か何かにしまうためなのか、身体の向きを変えてトレーナー室の方へと向かっていきました。 私は、呆然と立ち尽くして。 声をかけることも、追いかけることもできなくて。 隠し損ねた手元の可愛らしい箱は握り潰され、人様にはとてもお見せできないくらい、歪んでしまっていました。
2 22/02/14(月)02:09:13 No.897064964
****************** 私は一人、空き教室へと入ります。 今日はタキオンさんも誰もいません。私だけが一人きり。時折使うカセットコンロを取り出して。小鍋に水を張り、さらにボウルを水に浮かせて、火を点けて。 握り締め、歪んでしまった箱から、手作りのチョコレートを取り出します。 「……徹夜で、頑張って作ったんだけどな……」 先日、トレーナーさんから匂わせ気味に言われた、二月十四日に甘いものが食べたい、という言葉。流石にすぐ意図を察して、どんなものをあげるか、何日も悩んで形にしたけれど。 そんな想いの結晶……ハートや星、黒猫の形に可愛らしくアレンジされたチョコレートたちは、箱の中で粉々に砕けていました。 一瞬だけ躊躇いましたが、私はそれらをボウルに入れて。お湯の温度が上がるとともに、徐々に徐々にチョコレートたちが溶けていきます。 「粉々になってるから、砕く必要がなくて楽だね」
3 22/02/14(月)02:09:53 No.897065123
一人呟く私。砕かれたのはきっと、チョコレートだけではなく。 みるみる溶けていく私の想い。そこに、少しの生クリームを加えて。 「……あとは――」 粗熱を冷まして。私は、待つだけ。 ****************** 暫くすると、空き教室のドアが開きました。 「や、お疲れさま、カフェ」 「……お疲れさまです、トレーナーさん……」 暇な時間を空き教室で過ごす、いつもの二人のルーティーン。今日もトレーナーさんは疲れたような表情をしつつも、この時間を待っていた、とでも言うかのような子犬の顔をしています。
4 22/02/14(月)02:10:25 No.897065252
いつもならそんなトレーナーさんが愛おしくて、すぐに駆け寄ってしまうのですが。今日はソファーに座ったまま、見つめていました。 「隣、いいかい?」 「どうぞ……」 答えて、私は少し横にずれます。何やら訝しげな面持ちで、トレーナーさんは隣に腰掛けました。 「どうしたのカフェ、怒ってる?」 「……さぁ……どうなんでしょう……」 「俺、何かしちゃったかな……許してくれないか」 そう言いながらトレーナーさんは、私との距離を少し詰めます。 触れ合う肩。不安そうなトレーナーさん。 そのまま私の手を握ろうとしましたが、軽く手の甲を叩き、私は拒絶しました。
5 22/02/14(月)02:11:14 No.897065437
「あ……」 そんな私の態度に、トレーナーさんは確信したようです。何かしら、私の機嫌を損ねたことに。 「悪い……本当にごめん、カフェ……」 「何が悪いと思っているんですか?」 「いや、あの……それは……」 トレーナーさんの視線が目まぐるしく動きます。私が何を見て聞いたのか、理解が追いついていないようです。あるいはあの出来事が、大したことがないとでも思っているのか。 まぁ、その気持ちもわからないではありません。何せトレーナーさんは、彼女の去り際の言葉を聞いていないのですから。 私がソファーから立ち上がると、トレーナーさんは寂しそうな声を出しました。 「待ってくれ、カフェ」 「ちょっとそこに座っててください」
6 22/02/14(月)02:11:44 No.897065537
「う、うん」 私がそのまま空き教室を後にしようとしているわけではないのを察し、少しは安心したようです。 ですがまだ、困惑の表情を浮かべていて。 私は、冷ましていたボウルを手に取って。 トレーナーさんの元へ引き返すと、ボウルを横のテーブルに置き、そのままトレーナーさんを力任せに押し倒しました。 「か、カフェ!?」 突然の荒っぽい行動に、トレーナーさんは動揺して目を白黒させます。 私は、ボウルの中で柔らかく固まりつつあるチョコレートに指先を浸すと、押さえつけたトレーナーさんの口の中へ、その指を押し込みました。 「ん!?」 「ほら、お望みのチョコレートですよ! 丁寧に舐めてください……!!」
7 22/02/14(月)02:12:17 No.897065646
「う、ぐ……ん……!」 チョコレートを纏った指で、トレーナーさんの口内を蹂躙します。トレーナーさんは戸惑い、苦しそうな表情を浮かべましたが、次第に賢明に私の指へ舌を這わせ始めました。 「そう……そうです……いいですね……いいですよ、トレーナーさん……!」 粗方舐め取られたのを感じ、一度口から指を出します。ようやく呼吸の自由を得たトレーナーさんは、荒く深呼吸をしながら。 「い、いきなりどうしたんだ、カフェ……!?」 ですが私は待ちません。再び指をチョコレートに浸し、再びトレーナーさんの口へと押し込みます。 「ぐっ……?」 「どうした、ですって……? 他の子から、嬉しそうにチョコレートを貰っておいて……!」
8 22/02/14(月)02:12:52 No.897065775
その言葉に、トレーナーさんの目が見開かれます。 「知ってますか……あれ、本命ですよ……随分と人気者ですね、トレーナーさん……!」 いつもこの部屋で、私と寄り添って過ごしておきながら。 二度と離れられないくらい、私の心を切なく縛っておきながら。 もう幾度となく、私の身も心も、アナタの色で染め上げておきながら――。 「彼女を責めるつもりはありません。想いは自由ですから。チョコレートも美味しく食べてあげてください」 トレーナーさんの口から、指を抜き取って。 「でも、アナタは、私のモノなんです……」 息を整えながら私を見上げるトレーナーさんへ、顔を近付けて。
9 22/02/14(月)02:14:26 No.897066083
「もっとご自身がどう見られているか自覚してください……誰が憧れようとも、アナタは誰にも渡さない……私の、トレーナーさん……」 トレーナーさんの瞳が揺れるのを見ながら私は、そのまま彼の唇に己の衝動を強引に重ねました。 唾液で濡れた感触。 甘いチョコレートの風味。 次第に自らも私を求め始めるトレーナーさん。 数分の後、私から唇を離して。 「まさか……さっきの本命チョコ、まだ食べてないですよね……?」 「当たり前だよ……本命だろうが義理だろうが、カフェのチョコより先に食べるなんて……」 そう熱っぽく告げるトレーナーさんは、物欲しそうな目で私を見ていました。その瞳を見て、私は嘘はついていない、と安心できたんです。 「なら……バレンタインの、私からの本当の本命チョコ……味わってみますか……?」
10 22/02/14(月)02:15:22 No.897066288
私は、今度は自分の舌をボウルのチョコレートに浸して。甘い黒に塗れた舌を、べっとトレーナーさんに見せつけました。 一滴、黒がスカートに垂れて、染み込みます。 「カフェっ……!」 そんな様子を見たトレーナーさんは、勢いよく起き上がると、馬乗りになっていた私を逆に押し倒して。 理性も何も吹き飛んでしまったかのように、思いのままに私の唇を奪い、舌を滑り込ませてきました。 「ん……む……」 私も恍惚となりながら、必死にトレーナーさんの舌に絡めます。 私たちはチョコレートのように溶け合い、味わい合い、ひたすらに甘い甘い味を求めて。 とっくに舌に纏わせたチョコレートは舐め取られていましたが、私たちの交錯は終わらなくて。
11 <a href="mailto:おしまい">22/02/14(月)02:15:59</a> [おしまい] No.897066422
時を忘れた頃にようやくトレーナーさんが唇を離します。はぁ、はぁ、とお互いの乱れた吐息が漏れて。 「……チョコ、まだ足りませんか?」 「そうだね……もう少し、食べたいな」 「でしたら……」 私は制服の前をはだけさせて。 首、鎖骨、おへそ、膝……。 ボウルに残ったチョコレートを、身体中の各所にゆっくりと塗ります。 最後に、自分の唇にもリップのように薄く塗って。 「さぁ……甘い甘い勝負服のフォンデュは、如何ですか……?」 そう言って両手を拡げると。 トレーナーさんが最初に口を付けたのは、つい先程味わったばかりの、唇でした。
12 <a href="mailto:s">22/02/14(月)02:16:21</a> [s] No.897066500
カフェはやっぱり重い想いを抱いていてほしい なんかチョコレートの黒を見てたらもうカフェにしか見えなかったんですぼくは