22/02/12(土)22:34:12 「……久... のスレッド詳細
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22/02/12(土)22:34:12 No.896546939
「……久々にやらかしたッスね」 すでに連絡は入れたが、それからもう一度計ってみた体温の数値にゲンナリする 38.5度。文句なし、問答無用の風邪だ ここ最近冷えてきてたし、寒暖差には気を付けていたつもりだったがなるときはなる。昨晩から若干の寒気は自覚していたが、まさかここまで派手にやらかすとは 「……頭、いたい………」 倦怠感でベッドから起き上がることもままならない。ここまで酷い症状は、いつぶりだろうか さっき、朝練前のトレーナーが連絡してきて様子を聞いてきた。まったく、なんて情けない声出してるんだか それでも……ああ。なんか、涙が出そうになったのは、やはり体調が崩れた時は気が弱くなるというものか 誰もいない暗い室内。その横に置かれたミニテーブルに、スポーツドリンクとゼリー飲料、ビスケット さっき、姐御が持ってきてくれたものだ。練習に行く前、トレーナー達に連絡してから様子見ついでに持ってきてくれた 本当にありがたい。風邪の時、水分は特にいくらとっても足りないくらいだ
1 22/02/12(土)22:34:40 No.896547141
「……大丈夫ッスかね……鍵は、トレーナーか聖剣先輩……ああ洗濯も………」 どんどん不安な事が浮かんでくる。ここ最近体をがっつり崩すこともなかったから、こんなに気が弱ってしまうのも久しぶりだ さっさと治さないと、と思ったとしても限界がある。市販薬だってそこまで万能じゃないし、飲まずに大人しくしてた方がいい場面もある とにかく、今自分にできることは寝ることだ。寝て、とにかく体力を温存し戻し、出来るだけ早期に戻らねばならない そう思って、痛む頭を恨めしく思いつつ目を閉じて…… 目を閉じる心地よさに、身を任せた
2 22/02/12(土)22:35:30 No.896547495
● 「………んが」 目を開ける。今は一体何時だ。それすらも、暗くした部屋ではすぐにはわからない まだ昼前だと時計が教えてくる。そんなに経ってはいなかった。病気の時の眠りの感覚はわからない しかし、額のこの冷たさはなんだろう。心地いい。余計に熱をもった頭を冷やしてくれる 「あ!!!目が覚め………ましたか」 「声が大きいぞメイケイエール。すみません、起こしてしまいましたか」 声を辿って視線を向ければ、そこにいたのは後輩二人の姿 コンビニかどこかのものか、ビニール袋を持ったエールちゃん。熱さましシートの箱を持ったソングラインちゃん ああ、二人とも来てくれたのか。なんだか申し訳ない
3 22/02/12(土)22:36:17 No.896547819
「先輩方に話を聞いて、時間ができた時に様子を見に行こうって話してまして!」 「まだ結構熱があるみたいだったので、シート交換させてもらいました」 「ありがたいッス……朝練、大丈夫だったッスか?」 「はい!問題ありません!」 「だから声が大きいぞメイケイエール!」 大丈夫だ、しっかり声は絞ってくれてるのわかるし のそりと上体を起こして、見てみると持っている袋の中から覗くのは缶詰。パッケージには綺麗なフルーツ それに、あれは何かのレトルトだろうか
4 22/02/12(土)22:36:51 No.896548049
「さっきカレン先輩から連絡があって、一応食べる物置いてきたけど大丈夫そうなら温かいもの用意してあげてと」 「なのでおかゆのパック買ってきました!」 「今食べられそうですか?」 「あー………大丈夫そうッス。なんか、すまないッスね」 「いえいえ。すぐに準備できますので横になっててください」 しかしここでどうやって………と思ったが。なるほど、共用のレンジを借りてくるのか。ソングラインちゃんが一度その場を離れる 少し眠ったからか、熱はまだあるものの意識自体ははっきりしてる。ただやはり倦怠感が酷いのは確かだ。お言葉に甘えて、横になっておくことにする すると、横から聞こえてくる水音。コップに何かが注がれる音 いつもハイテンション爆裂娘のエールちゃんは、今この時はただ静かに。静かに、スポーツドリンクをグラスに注ぐことに集中していた ああ、本当に気を遣わせてしまったなぁ…と。完治したら、みんなにお礼をしなければ 「今飲みますか?それとも置いておきますか?」 「や、少し貰うッス…随分、喉乾いちゃったんで」 「はい、どうぞ!」
5 22/02/12(土)22:37:30 No.896548332
適度に冷えていて、熱っぽい体には今とてもありがたい。ただでさえ大汗かいて水分が奪われているから余計にだ エールちゃんはこっちの様子を気にしながら買ってきたものを冷蔵庫に入れたりと忙しなく動いてくれている ……少しくらい起きても大丈夫かと思ったが。若干目がかすむような感覚 脱水症状とかではないだろうけど、単純に熱が高すぎるか。さっきより上がったのかもしれない 一度、解熱剤を飲んでおくことにしよう。念のためにテーブルの上には出してある 「エールちゃん、テーブルの上に解熱剤あるんで…ちょっと、もらっていいッスか」 「はい!えと、これ…ですかね」 「ああ、そうッス。どうも…」 錠剤を取り出していると、すかさずせかせかと水を用意してくれる。なんかもう、ほんとうにありがたい さて、この解熱剤でどこまで楽になってくれるか… 咳は出ないが、熱と寒気が酷いタイプの風邪。正直、辛さでいえば個人的には一番最悪なのをひいた気がする 普段あんまりひかないが、こうして一度体調を崩した時が本当に酷い。今までのツケが全部襲ってきてるように感じてしまう
6 22/02/12(土)22:38:07 No.896548590
「飲物ここに置いておきますね!……やっぱり、相当キツイですか?」 いつも元気に見開かれている目が、不安の色を帯びつつ覗き込んでくる そんな目をさせてしまう程度には自分は今弱って見えてしまっているということだ 重いが、布団から手を出してエールちゃんの頭に手を伸ばす。綺麗な髪を痛めないように、そっと撫でて 「ありがとうッス。大丈夫……すぐに、よくなるッスから」 そういってなんとか笑みを形作ると、少しほっとしたような、仕方ないなぁとでも言いたそうな色を僅かに含んだ微笑みを浮かべるエールちゃん 思えば彼女にここまで情けない姿を見せるのは初めてかも知れない。なら、少しくらい強がっておかないと立つ瀬がないだろう 「…ゆっくり休んで、早くよくなってくださいね」 その優しい言葉と表情は、まるでどっちが先輩なのかわからなくなりそうで
7 22/02/12(土)22:38:58 No.896548918
「……ッス」 「先輩、おかゆ温めました。食べられますか?」 ソングラインちゃんが湯気をたてるおかゆをお盆にのせて持ってきてくれる 今の自分の、主に胃の調子を自己診断するが…大丈夫だろう。むしろ、それすら食べられなければすでに救急搬送の域だ 「ありがとうッス。…いただきます」 「あ、メイケイエール。飲み物は…なんだ、もう用意してたのか」 「さっき解熱剤飲んだので、すでにちょっと水分はとってますよ!」 「え、何も食べずに飲んで大丈夫ですか?」 「大丈夫なやつ、用意してもらってたんで…」 温かい卵粥を口に運ぶと、鈍くなってしまった味覚でも優しい香りが多少なりともわかる
8 22/02/12(土)22:39:23 No.896549098
ああ、これ多分ソングラインちゃんが一手間何か加えてくれたやつだ。消化に影響しない程度の少量のニラか、ともかく病気の時でも多少味がはっきりわかるようにしてくれたのは間違い無いだろう 本当にいい後輩をもってしまった。少しでも食べて栄養をとって、少しでも早く復帰して何かお礼しなければ 久々に何かお菓子でも作るか…なんて考えていたら、いつの間にか気持ち少量だったとはいえお粥は食べてしまえたようだ 「よかった、しっかり食べられましたね。器下げます」 「足りますか?ゼリーとか大丈夫ですか?ヨーグルトとかも買ってきましたよ!」 「ありがとうッス…今はもうお腹いっぱいッスね。おかげで体もいい感じであったまったッス…」 「少し寝ておきますか?片付けはしておきますので」 「鍵はお借りしましたので!帰りにかけていきますね!」
9 22/02/12(土)22:39:44 No.896549231
お言葉に甘えて横になる。本当に心配をかけてしまった。飲み物を一口飲んで、布団をかぶる 内側から暖まったおかげか、満腹感のせいか。ふわりと、頭の奥から包まれるような柔らかい眠気が湧き出てくる 全部任せっきりなのは正直本気で申し訳ないが、今立ち上がったところで足手まといもいいところだ 抗うことをやめ、目を閉じれば… 夢の中に意識が沈み込むのに、3分とかからなかったかもしれない
10 22/02/12(土)22:40:18 No.896549461
● 今自分が見ているのは、夢なのか。それとも朦朧としているだけで現実なのか それはわからないし、何か曖昧な感覚と熱が自分を包み込んでいることだけしか判断できない ひやり、と。額の当たりが突然冷たくなる 誰か来ているのか。シートを交換してくれたのか 夢うつつの中で必死に目を開けて焦点を合わせようとする 「起きんな」 その目を、強引に塞がれる 朦朧とした意識では誰の声かはわからないが、誰かが来てくれているのは間違いないはずだ せめて、誰なのかくらいは。そう思っても、一度閉じさせられた目はなかなか開いてくれない カチャカチャいってるこの音はコップか何かを片付けているのか ああ、もう。せめてもう少し言うことを聞け体。さっき食べて一眠りしたら惰眠の味を覚えたか
11 22/02/12(土)22:40:36 No.896549613
「もぞもぞ動くなや。ったく、じっとしてろ」 ぶっきらぼうな言葉。乱れていた掛け布団が直される感覚 「…汗は後で拭いてもらえ。眠いなら今は大人しく寝てろ」 再び夢の中に沈みかけてもう開けられそうにない瞼だが、声だけはまだなんとか聞き取れる 誰かが立ち上がる音。だんだん、音も遠ざかる もう一眠りしたら、きっとしっかり起きれるはずだから。だから、もう少し もう少しだけ、そこに 「……周りがうるせーんだ。さっさと治せ」
12 22/02/12(土)22:40:56 No.896549743
もう少しだけ、 「…愚妹」 一緒に。
13 22/02/12(土)22:41:25 No.896549959
● 温かい。どこか、夢見心地な感覚はそのままに それでも、今までよりは頭もしっかりしているし倦怠感も寒気も多少はマシになったはずだ 電気は消してある部屋だが、今その中は差し込む夕日で茜色に染まっている。本当に一日寝てしまった感じか そしてその中で、ふと気がついた誰かの気配。ベッドの横に座って、こっちを見ている 「…おはよープイ」 夕日の逆光で見えづらいが、その顔は確かに優しく微笑んでいた なんだ、今日は忙しかったんじゃなかったのか。まったく、また上から怒られても知らないぞ 「ちょっとよくなったプイ?」 「…みんなのおかげッスね。だいぶ、マシッス」
14 22/02/12(土)22:41:57 No.896550183
そっか。そう言ってクスクス笑うこの人は、どこかいつもと様子が違って見えて もしかして、だが。病人相手ということで、少しは気遣ってくれてたりするのか 「起きてよくなってても明日一日は休んで養生しろって伝言プイ」 「誰からッスか?」 「みーんなプイ」 …明日調子が良ければ朝イチで、とか企んでたのは丸わかりということか まぁここまでお世話になってぶり返しましたはちょっと格好がつかない。大事をとって、しっかり休ませてもらう方が良さそうだ ここしばらくこんなに休んだことなんてなかった。少し、体を休ませて体力を戻しておかないといけないかもしれない 「早くよくなってもらわないと困るプイ」 「何が困るんスか」 「お茶もお菓子も走るのも、いないとなんか寂しいプイ」
15 22/02/12(土)22:42:39 No.896550452
…あー顔が熱い。まだ熱がありそうだ。うん、もっとしっかり休養が必要だな 「…もう少し、寝るッス」 「うん、そうした方がいいプイ。飲み物は大丈夫プイ?」 「ん、今は平気ッス」 言いながらささっと布団を被り直して目を閉じる 普段ならもっと上手く切り返せてたと思う。だけど、それができないのはきっと、熱のせいだから 「今はゆっくり休んで…」
16 22/02/12(土)22:42:54 No.896550547
そっと、額にその手が添えられる 浮かべた笑みは柔らかく、慈しむかのようで ああ、もう……今回一番の不覚だ まさか、この人にそんな顔させてしまうような状況になるなんて まさか、まさかだ 「また、一緒に楽しこと、たくさんするプイ」 綺麗だとか、思ってしまうなんて 「おやすみ。…いい、夢を」
17 22/02/12(土)22:43:13 No.896550681
…語尾はどうしたんだ、と それだけ言おうと思ったが、その手の触れた場所がとても心地よくて その安心感の中、また明日、と。それだけ呟けたかどうかというところで 今日だけで幾度目かの、深い眠りの中に沈み込んでいった
18 22/02/12(土)22:44:10 No.896551050
以上。少し飲む時間が取れたのでガッツリ酒飲んで舎弟した
19 22/02/12(土)22:44:24 No.896551146
いいわ…
20 22/02/12(土)22:45:26 No.896551582
姉貴が姉貴してる…
21 22/02/12(土)22:47:23 No.896552415
舎弟もみんなに大事にされてる…