虹裏img歴史資料館

1 22/02/12(土)14:44:54 No.896364982

「水遣いさん、勇者呼びはやめて欲しいって言ったじゃないですか」 「ですが、勇者様は勇者様ですし…それに、余り馴れ馴れしいのもどうかと思いまして」 「良いじゃないですか、馴れ馴れしくても。仲間との繋がりはとても大事なんですから」 少年が年不相応に大人びた笑みを浮かべると、それを見た水遣いと呼ばれた少女は思わず顔を赤くしてしまう。ドキドキと高鳴る胸の鼓動をなんとか誤魔化すように、彼女は口を開いた。 「で、でしたらその…アウラム様っ！勇者に相応しい戦いぶり、流石でしたっ！」

2 22/02/12(土)14:45:09 No.896365075

その晩、聖殿の水遣いは自分が勇者と呼ぶ少年に思いを馳せていた。 この世界を救う為、異世界から自分が召喚した勇者である彼。初めは唐突に自分が置かれた状況に困惑していた様子だったが、彼女が事情を説明すると「分かりました。力不足かもしれませんが、俺…いや、僕で良ければ全力を尽くしましょう」と言ってくれた。 水遣いの勇者様という呼び方には何か思う所があるようで、それだけは何故か毎回訂正させようとしてくるが…旅の仲間である魔鉱戦士やグリフォンライダー、それに毎回何故かこちらを手助けしつつ敵に回る外法の騎士とまでも絆を深めている。無論、召喚した張本人である自分は言うまでもない。

3 22/02/12(土)14:45:34 No.896365228

そして彼は未だ少年と呼ぶべき見た目の幼さとは裏腹に、巧みに剣を使い戦う優れた剣士であり、どうやら旅にも慣れているらしかった。勇者のサポート役として彼を手助けしなければならないのに、旅の最中彼に助けられる事の方が多く感じる程だ。 力だけで言えば、本来想定していた勇者の力には少し及ばないようにも感じたのだが…それを差し引いても期待以上とも呼ぶべき仲間との連携の上手さ、そして戦い慣れ。歴戦の戦士と呼ぶに相応しいその振る舞い、人当たりの良さ、そして…自分へと向けてくれる、あの優しい笑み。 それを思い出すだけで、水遣いはまた胸の高まりが抑えきれなくなってしまいそうだった。 だが、しかし…たまにふとした瞬間に彼が見せる、どこか遠くを見るような…思いを馳せているような仕草。「元の世界に未練は…うん、無い事もないけど、帰ろうとは思わないかな。心配しなくて良いですよ、水遣いさん」と言ってはいたが、水遣いはそれだけが胸の奥に残ったままだった。

4 22/02/12(土)14:46:03 No.896365371

『グォォォオオオ！！！』 深い森の奥、その更に深奥とも呼べる場所。そこにいた魔獣は、水遣いたちの力ではあと一歩敵わないと感じる程強大だった。 「くぅっ…アウラム様、ここは一旦引きましょう！勇者様にしか抜けないという伝説の聖剣を手に入れて、からもう一度挑むべきです！」 「…いや、これくらいなら大丈夫だ」 「でもっ…え？勇者様、何を…？」 魔獣によって傷を負って動きが鈍くなっていたアウラムが、立ち尽くすように動きを止めた。そして剣を空に掲げると、彼の元にどこからか光が集まりだす。 「───蒼穹の騎士よ、我が戦友たちよ。今こそ我が身に、もう一度その力を───」 アウラムの身体と剣が光に飲み込まれ見えなくなったかと思うと、閃光のように光が瞬いた。余りの眩しさに目を閉じてしまった水遣いが開くと、そこには成長したアウラム…いや、アウラムが成長しただけとは思えない程の力を放つ男が立っていた。 思わず言葉を失い、その姿を呆然と見つめる勇者の仲間たち。魔獣さえも息一つもらさない程の静寂を保った空間で、水遣いの口から言葉がぽつりと零れ落ちた。 「星明かりの、勇者…」

5 22/02/12(土)14:46:18 No.896365455

そして、森の魔獣を瞬く間にアウラム…いや、アストラムが打ち倒し、勇者一行は近隣の街で英雄と呼ばれ歓待を受けていた。 街全体が大盛り上がりで宴会をしているような有様で、特に勇者としての力に覚醒し成長した姿で街に凱旋した───当人に全くそのつもりは無かったが───アストラムは、苦笑いしながら手を振るだけで街中が黄色い声援に包まれる程だった。 そして夜も更け、住民たちはもう目的も忘れ騒ぎ続けていた頃。水遣いは、勇者がこっそりと宴会を抜け出す姿を見かけた。その後ろを追いかけると、彼は街の高台へ向かっているようだった。おそらく彼も水遣いが後ろにいる事に気がついているはずだが、二人とも言葉を交わさず歩いていく。

6 22/02/12(土)14:46:36 No.896365550

「勇者様」 夜空を見上げるアストラムに、水遣いは恐る恐ると声をかけた。何となくだが、彼女は彼がここからいなくなってしまうような気がしていた。 「…星は」 「えっ？」 「星空は、いつも綺麗なままだ。この世界でも、俺が産まれた世界でも」 自分の事も見ず、口調が変わって丸で別人となったようなアストラムに水遣いはゆっくりと近づく。そして目の前に立ち、頭を下げてこう言った。 「勇者様。私に、勇者様がいた世界の事を教えてください」

7 22/02/12(土)14:46:52 No.896365616

しばらくして顔を上げると、アストラムは少し驚いたような顔を浮かべていた。そして、今はもう年相応になった大人びた笑みを…少し悲しそうで寂しげな笑みを浮かべると、ゆっくりと話し始めた。 「聞いてくれるか、水遣いさん。これは、そうだな…勇者でも、天才でも無かったただの村人が、必死にただ足掻いて駆けずり回って…結局、身勝手な自己満足だけ果たして終わるつまらない男の話だ」 水遣いは、その物語をただ聞いていた。 かつて紡がれた、星遺物の導く物語の果てを。 そして…自分の胸の中の抱いていた仄かな気持ちに蓋をして、口を開いた。 「あなたはきっと、本物の勇者様ですよ」

8 22/02/12(土)14:47:28 No.896365818

寝取られやんけー！

9 22/02/12(土)14:48:17 No.896366045

>寝取られやんけー！ お前も早く合流しろ

10 22/02/12(土)14:48:36 No.896366134

数日前のアルバス君を召喚した水遣いさんや色んなモンスターを勇者様として召喚する水遣いさんを見て書きたくなった 散々頑張ったんだからアウラム君はこれくらい救われても良いよね…元の世界に帰るとかは絶対無いけど…アストラムマジで強くてカッコ良くて好き…

11 22/02/12(土)15:02:06 No.896370088

ところでこれニーサンを召喚してたらどうなってたんです？

12 22/02/12(土)15:02:57 No.896370369

>ところでこれニーサンを召喚してたらどうなってたんです？ わざわざ変身しないで魔獣ぶっ倒す

13 22/02/12(土)15:03:17 No.896370479

アウラム…イヴをほったらかして何をしている…

14 <a href="mailto:IPマスカレーナ">22/02/12(土)15:04:09</a> [IPマスカレーナ] No.896370751

>寝取られやんけー！

15 22/02/12(土)15:07:16 No.896371703

>ところでこれニーサンを召喚してたらどうなってたんです？ ロボ作る とりあえず問題解決はする 帰還施設作って帰る

16 22/02/12(土)15:19:17 No.896375306

ニーサンは約束通りガラテアちゃんとイヴ見守ってなさい

17 <a href="mailto:神樹のパラディオン">22/02/12(土)15:20:21</a> [神樹のパラディオン] No.896375622

>寝取られやんけー！

18 22/02/12(土)15:21:21 No.896375903

アルバスくん呼んだ時の負けヒロインな水遣いちゃんは可哀想だったから こっちでくらいいい思いしてもいいと思う

19 22/02/12(土)15:25:37 No.896377193

OCG文書がおおくてありがたい

20 22/02/12(土)15:25:39 No.896377205

ちょっと涙出た 個人的にはイヴとニーサンも来てわちゃわちゃして欲しい

21 22/02/12(土)15:25:52 No.896377270

ニーサンは呼んだ時期によってある程度行動変わりそう 敵瞬殺は共通だろうけど

22 22/02/12(土)15:28:15 No.896377962

ニーサン召喚後にイヴ呼べば解決

23 22/02/12(土)15:29:16 No.896378288

>それに毎回何故かこちらを手助けしつつ敵に回る外法の騎士 そうだね

24 22/02/12(土)15:31:44 No.896378995

>ちょっと涙出た >個人的にはイヴとニーサンも来てわちゃわちゃして欲しい たぶんイヴは来ないんだろうなというのは分かる

25 22/02/12(土)15:37:06 No.896380585

異世界召喚したなら最終的に元の世界に戻れよな！