虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    22/02/10(木)01:37:44 No.895525751

    まだ空気が冷たい時期。研究の合間に空き教室でこくりこくりと居眠りをしていたのだが、肌寒くて、疲れもろくに取れないうちに目が覚めてしまった。 連日の研究・実験で自身の管理を疎かにしていた私は、お察しの通り気怠く、万全とは言えない体調だった。 「アナタはもう少し、自分を顧みたほうがいいのでは?」 「……そういう理屈は分かるがねぇ」 居眠りをしている間にやってきたのか、いつの間にかカフェがソファーで珈琲を啜っていた。私の疲れ切った様子を見て、大方の状況を察したらしい。 「私はこと、自分を労るということが苦手なんだよ」 「前から知ってますよ、そんなこと」 そう言うとカフェはソファーから立ち、湯気の立ち昇る液体の入ったマグカップを私に差し出した。あまり嗅いだことのない匂い……何だったかな、これは。 正体不明の液体を前に、私は僅かばかりの不信感を覚えた。 「良かったらどうぞ……お疲れでしょう、すっきりしますよ」

    1 22/02/10(木)01:38:01 No.895525784

    「……珈琲味の何かではないだろうね?」 「まさか。単なる好意からのお気持ちですよ……」 カフェは、ふふ、と小さく笑う。こういうときのカフェの心は読み辛い。本当に好意からのこともあるし、時折お友だちとやらに感化されたかのような悪戯心からのこともある。 差し出されたマグカップを前に悩んでいると。 「……まぁ、飲まなくてもいいんじゃないですか、それなら私が頂きますし……研究者は少し臆病なくらいが丁度いい」 カフェの、挑発するような笑み。それを見ては流石の私も、だんまりを決め込むわけにはいかなかった。 「寄越したまえよ。そこまで言われて引っ込むわけにもいかないねぇ」 「酷い言い草ですね……アナタの為を思ってだというのに」 クスクスと笑いながら、カフェが改めてマグカップを差し出してくる。私は不信感を一度忘れ去り、そのマグカップを手に取った。 カフェの瞳が、微かに光る。

    2 22/02/10(木)01:38:17 No.895525836

    「どうぞ」 「あぁ……」 受け取ったマグカップに注がれた液体を一口、こくり。熱すぎず、温すぎず、ほどほどの熱を持った液体が喉を通り過ぎる。 冷えた身体には心地よい温度を感じて、私は続けて、一気にそれを飲み干す。 すると暫くして、身体が徐々に、仄かに、熱を持ち始めた。 研究者としての警戒心が告げる。これは、良くない気がする。 「う……これ、は……?」 頭の中で持ち得る情報を賢明に巡らせる。寝起きで回らない頭が検索するのは、すぐに頭を過ぎった研究者としての実験結果たち。 そして私は一つ、嫌な想像に思い当たった。 薬剤たちの棚に目を向ける。すると案の定、私が警戒した薬物の箇所は空白となっており、何も置かれていなかった。

    3 22/02/10(木)01:38:33 No.895525877

    そこにあったはずのものは、いつぞやに掛かり気味のウマ娘に頼まれたものの、実験の結果から世に出すことを止めた、心を乱し欲望に忠実な人格へと変えてしまう劇薬――。 「カフェ……この飲料は、まさか……」 「……さぁ、なんでしょうね……?」 意識して、息が荒くなる。身体は尚も熱くなり、目の前に佇む漆黒の少女を見る自身の心のタガが、少しずつ外れていくのを感じる。 「一言だけヒントを出すなら……アナタの身と心を熱くする、素晴らしいものですよ……」 そう言いながら、カフェはゆらりと私に迫る。 私が唯一心を奪われた、細くも妖艶な、私の心を底無し沼へと引き摺り込んでしまいそうな姿がにこりとしながら、『素直になれ』と一歩一歩、近づいてくる。 「やめてくれ、やめて、カフェ……」 「どうしたんですか? 私はただ、空になったマグカップを受け取ろうとしているだけですが……」

    4 22/02/10(木)01:38:59 No.895525950

    そんなわけはない。カフェの表情は明らかに、私が彼女の計略にまんまと嵌ってしまったことを喜ぶものだ。普段の彼女からは想像できない、釣り上がった口角が全てを物語っている。 私は自らの発明品の恐ろしさを理解して、無駄な抵抗と知りつつも顔を背ける。こんな造られた邪な感情を、彼女にだけは決して向けたくなかった。 「どうして目を背けるんですか、タキオンさん……」 そんな私の気持ちを知っているくせに、カフェは背後から私を抱き竦める。 抱き締め返したら砕けてしまうのではないかとも思える華奢な肢体。だがその細さ故に、彼女の全身が余す所なく私を包み込む。 鼻をくすぐる、珈琲の香り。 背中越しに、カフェの鼓動が伝わる。 耳元に顔を寄せられ、甘い囁きが小さく届く。 「随分と熱い吐息が聞こえてきますが……」 「駄目だ、今だけは……離れてくれ、カフェ……!」

    5 22/02/10(木)01:39:31 No.895526023

    今ばかりは、自身の研究を恨む。 もしこのまま薬に踊らされ、カフェを滅茶苦茶にするようなことがあっては。カフェが笑ったとしても、私はもう、彼女を暖かい眼差しで見ることはできなくなってしまうだろう。 そんな必死な思いで自らを律そうと藻掻いていた私の耳元で。 悪戯が上手くいった子どもの如き、跳ねるような笑い声が聞こえた。 「冗談ですよ……アナタが飲んだのはただの生姜湯です」 「……へ?」 一瞬、頭の中で沸騰していた情欲が消し飛んだ。唐突なカフェの告白に、私はぽけーっとした間抜けな表情で、彼女の方へ振り返る。 「ふふふ……いつもいつも飲まされ、謀られてばかりだったので。たまにはこんな逆転もいいでしょう?」 モルモットさんは生姜をあまり使われないみたいですね、とカフェは笑った。言われてみれば、確かにあの香りは随分前、実家では何度か嗅いだこと、味わったことがあったかもしれない。 昔からそこまで飲食に執着がなかったからか、記憶が非常に薄かったのだろう。

    6 22/02/10(木)01:39:53 No.895526076

    「……してやられたよ、カフェ……!」 私が憎々しげに睨みつけると。 「でも……だとすると」 カフェは顎に指をやり、視線を逸らしてわざとらしく考え込むように呟いた。 そして暫く秒間を置いて、再び私に目を向けて。 「先程までの、辛そうなお顔……あれは、タキオンさん自身の想いが……?」 その時のカフェの表情は。 まるで彼女に飢えた私の心を見透かすような、その上で抑えた心を掘り起こし、手招きするような。 そんなカフェの誘惑に、自らの欲情による熱だったのだと気付いてしまった私は、もう何も止めることはできなかった。

    7 22/02/10(木)01:40:13 No.895526137

    「もう、黙りたまえよ、カフェ……!」 研究者としての矜持も理性もかなぐり捨てて。私は本能のままに、カフェをその場に押し倒した。 痛みがないか、と一瞬頭を過ぎったが、幸いにもカーペットが敷かれていて。私に組み敷かれたカフェもこの状況を予測していたのか驚く様子もなく、熱っぽい色で頬を染め上げ、満月のような瞳で私を見ていた。 「黙ってほしいなら、黙りましょう……アナタが、それで耐えられるのなら……」 彼女の瞳が、私を狂わせていくのを感じる。 我々ウマ娘は、ヒトに非常に近い生物だ。 この獣のような耳を見る限り、本来はヒトが主たる生物で、ウマ娘はそこに何らかの獣の因子が混ざっているのかもしれない。西洋で言うところのワーウルフであったり、そういうものにも近いのかもしれないな。 だからこそ、きっと私は、今。 カフェの両眼に瞬く黄色い真円に、獣の心を狂わされているのかもしれないね。

    8 22/02/10(木)01:40:31 No.895526194

    「……カフェがその気なら、黙っていられても詰まらない」 乱れた制服に、そっと手を伸ばす。カフェは逃れるような素振りは一切見せず、ただただ笑みを湛え、何かを期待するように私を見続けていた。 「珍しいですね……アナタがそんなに想いに忠実なのは」 「私はいつでも自身の欲求に忠実なつもりだよ」 きっかけがなければ、ここまで熱せられないだけでね。心の中ではいつもきみの姿が離れたことはないよ、カフェ。 「まぁ、互いに色々と思うところもあるだろうが……」 廊下に誰かの気配はない。そもそもこの時間は、トレーニングに必死な生徒たちが殆どだろう。 たまたまのトレーニング休みの日。何の因果か、恐らく校舎内に誰かは、ほぼいない。

    9 22/02/10(木)01:40:47 [おしまい] No.895526242

    「きみがどこまでその余裕そうな顔を維持できるか……実験開始といこうか、カフェ……?」 「……そういうアナタは、既に余裕がなさそうですね……?」 まともな会話が成り立ったのは、それが最後だった。 暫くの間、互いの息と衣擦れの音だけが耳に響いて。 夜、自室に戻って思い返した時に脳裏を過ぎったのは、カフェが蕩けながらも切なく、ごめんなさい、ごめんなさい……、と縋ってくる声だけだった。

    10 22/02/10(木)01:41:12 [s] No.895526306

    最近穏やかなのばかりだったけどたまには重いのもよきかな タキオンは普段は軽いのに何かきっかけがあると滅茶苦茶重い概念を提唱していく 論文ご査収よろしく

    11 22/02/10(木)01:43:43 No.895526697

    これは悪戯に焚き付けてきたカフェが悪いな…

    12 22/02/10(木)01:48:19 No.895527396

    いいねえ…

    13 22/02/10(木)01:49:06 No.895527530

    いいねえ……

    14 22/02/10(木)01:49:29 No.895527582

    ウワーッ!?

    15 22/02/10(木)01:54:10 No.895528294

    ここでカフェが負けてるのがエッチすぎる

    16 22/02/10(木)02:04:30 [s] No.895529862

    >ここでカフェが負けてるのがエッチすぎる いつもカフェが勝ってるのが多いけど受けカフェもとてもえっちだと思ってつい…

    17 22/02/10(木)02:05:19 No.895530021

    プラシーボ効果だねぇ

    18 22/02/10(木)02:11:16 No.895530914

    カフェとタキオンは常に攻受が入れ替わっているのがずるい どっちも好きになってしまう

    19 22/02/10(木)02:24:35 No.895532727

    こんなにカフェに欲しがられたらそりゃタキオンも掛かるよ

    20 22/02/10(木)02:31:29 No.895533526

    キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

    21 22/02/10(木)02:35:28 [s] No.895533975

    >1644427889414.png 生姜湯に翻弄されるタキオンがイケメンすぎる… 垣間見えるカフェの期待する表情…ありがとね…

    22 22/02/10(木)02:41:02 No.895534581

    >>1644427889414.png >生姜湯に翻弄されるタキオンがイケメンすぎる… >垣間見えるカフェの期待する表情…ありがとね… こちらこそよいタキカフェをありがとう…おかげで目覚めたよ……

    23 22/02/10(木)02:44:36 No.895534971

    >カフェが蕩けながらも切なく、ごめんなさい、ごめんなさい……、と縋ってくる声だけだった。 いい…

    24 22/02/10(木)02:46:12 No.895535149

    生姜湯ってすげー…

    25 22/02/10(木)03:34:45 No.895539072

    つよタキよわカフェ概念もいい…

    26 22/02/10(木)03:37:24 No.895539233

    同室のデジタルは尊みを察知して死んだ

    27 22/02/10(木)03:50:00 No.895539942

    リーディングサイアータキオンに誘い受けカフェはえっちすぎない?

    28 22/02/10(木)04:22:43 No.895541446

    ウマエロチキンレースいいよね…もっとギリギリ攻めてほしい…