22/02/06(日)19:13:06 「私の... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1644142386285.png 22/02/06(日)19:13:06 No.894418892
「私の地元だとさ、これをぜんざいって言うんだよね」 「ああ、粒餡と漉餡を分けて呼ぶという」 「そうそう」 正月気分もすっかり去り、しかして未だ寒い待春の時期。 学園から幾分離れた駅の近くで開業する和菓子屋の一角で汁粉をすすりながら、地元の話をする彼女の声を聞いて、一口、餅を噛む。 小さな和菓子屋の片隅で供されるその椀の中身は、メニューの上では「おしるこ」で、しかして彼女の言うように、粒餡を用いたもの。 昆布の佃煮と一緒に盆に乗って現れたこれを見て、彼女はすぐさま、これはぜんざいだと思ってしまったのだろう。 そんな事を考えていると、なんとなく笑みがこぼれそうになる。 日頃自分を語ろうとしない彼女のことが、トレーナーになる前の彼女のことが知れたからだろうか?なんだかその笑顔がはしたない気がして、また一口、餅を噛む。
1 22/02/06(日)19:13:23 No.894419037
そんな事をしていると、椀から口を離した彼女が、ぽつりと口を開く。 「ぜんざいってさ、なんて書くか知ってる?」 「……いいえ、知りませんわ」 急な上に難解な問いに、面食らいながらぼんやりと答えてしまう。 おしるこは汁粉なのだから、大した言葉ではあるまいと考えていると、 「善き哉って書いて善哉(ぜんざい)って読むんだけどさ、仏教用語なんだって」 そんな解答に、ますます面食らう。 知らない事をひとつ知った事よりも、手中にある椀の中身になかなか仰々しい名前が付いていた事のショックが大きい。 なにを考えてこれを語ったのか、皆目見当もつかないが────と、思案していると、
2 22/02/06(日)19:13:44 No.894419190
「いや、まぁ、素晴らしいって意味なんだけどさ。そのせいか、大晦日になると、地元のお寺がぜんざい配るんだよ。鐘つきに来た人にね」 などと、過去の話を交えながら足し補って、笑いかける。 「へぇ、羨ましいですわね」 「でしょ。毎年町の人が集まって、餅がひとつ入ったぜんざい目当てに鐘つきに来んの。また寺の坊主が口達者でさ────」 汁粉の中に、酒でも入っていただろうか。普段よりも饒舌な彼女の笑顔が、随分明るく映る。 ただでさえ、彼女の笑顔を見るたびにキュッと胸が締め付けられる思いであるのに、これほど見てしまうと、ああ、これほど浴びせられてしまうと、
3 22/02/06(日)19:14:02 No.894419310
「坊さんがさ、大阪には夫婦善哉っていうのがある、って言うんだよ。昔はそれに憧れてたんだけど────」 彼女の言葉に、はたと現実に引き戻された。 いくら好きと言おうと、いくら想おうとも、叶わぬものもたくさんある。分かっていた事だ。 勝手に浮つく自分の心を戒めながら、冷めつつある椀の中身を一口すすった時、 「────今はさ、そのうちで良いから、マックイーンと食べに行きたいんだよね。夫婦善哉」 「っ、な、あ」 なにより甘い笑顔が、私の全てを奪い去る。 その笑顔のせいで、汁粉の味など、とっくにわからなくなっている事に気付いた。
4 <a href="mailto:s">22/02/06(日)19:14:55</a> [s] No.894419663
病み上がりで本調子じゃないせいかこのようなもちゃっとした夢を見ました
5 22/02/06(日)19:15:26 No.894419901
なんだこのキザなトレーナーは
6 22/02/06(日)19:18:36 No.894421547
もう一度寝込んで夢見ろ
7 22/02/06(日)19:22:55 No.894423338
キザったらしい男だな…
8 22/02/06(日)19:24:29 No.894424011
>キザったらしい男だな… 女性だよぉ!
9 22/02/06(日)19:33:08 No.894427464
お互いベタ惚れ過ぎる