22/02/03(木)23:40:44 「さて... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1643899244186.png 22/02/03(木)23:40:44 No.893479266
「さて、これでよしッス」 「相変わらずエグい飾りプイ」 「まぁ伝統的なもんッスから」 ヒイラギの枝にイワシの頭。確かに言われてよく見てみればなかなかエグいデザインかも知れない その飾りをプレハブにつけて、とりあえず準備は完了だ。豆自体はもう用意してある 「それで、誰にぶつければいいプイ?」 「落ち着くッスよこのイタズラ三冠バ」
1 22/02/03(木)23:40:54 No.893479327
2月3日。この国の古くからの伝統行事、すなわち節分の日が今年もやってきた 節分。まぁ細かい由来とか諸々は置いておいて。この国ではおおよそ、2月のこの日に行う魔除けと招福の行事として広く知られている ちょっと気になって調べてみたら神社だ地方だで割と細かく違いがあるそうだが…その辺突き詰めていくと酷く面倒なのでカットする 料理にしろ行事にしろ、地域差というものは時に容易に戦争を引き起こすから… 大体共通して広く知られている部分だけでも、しっかりやって験を担いでおくとする 「とりあえず、まずはプレハブの外。その後室内に豆撒いていくッスよ。もちろん全員来てからッス」 「全員来るプイ?」 「いやまぁ来れる面子だけッス。ウチらと、エールちゃんとソングラインちゃん。それと姉貴ッスね」
2 22/02/03(木)23:41:05 No.893479401
姐御はこの間のレースの関係でイベントに参加するため不在。イベント会場で観客席に豆まきするらしい 魔女っ娘はレースに参加するため遠征中。聖剣先輩はトレーナーが参加する地方トレセンとの交流会議の付き添い 魔女っ娘一人で大丈夫かと不安にもあるが…まぁ、流石に大丈夫だと思いたい プレハブに一度入って、出入り口に用意してあった豆を手に取る まずはマス一つ分。それを二人とも一つずつ持つ 「………お腹空いてきたプイ」 「いい匂いなのはそうッスけどね。まずは撒くッス。その後歳の分だけ食べたら好きにしていいッスよ」 「……プイ」 「エールちゃん達もすぐ………何スかじっとこっち見て」 何故か豆を手に持ったままこっちをじっと見つめてくるプイ先輩 その視線はなんかこう、怪訝と言うか
3 22/02/03(木)23:41:15 No.893479458
「………意外とこういうの拘る、ていうか気にするタイププイ?」 「いや、やるとしたらちゃんとやらないといけないッスから」 「なんかお婆ちゃん染みてたプイ」 ペシッと。一つまみの豆がプイ先輩のおでこに当たってプキュゥと変な声を漏らす 女子学生に向かって。言うに事欠いて。お婆ちゃん臭いだと ペシッペシッペシッと追撃の大豆。まずはその軽口の鬼から祓ってくれようか。このっ 「やめるプイ!!無言で投げるのやめるプイ!!!プィ!!プィ!!プキュィ!!!」 頭を抱えて丸まって身を守るプイ先輩。あれか、下段ガードってやつか とりあえずあと数発くらいなげ……… 「お疲れさまでえええええええええええええええええす!!!!!!!!もう始めてるんですかああああああ!!!!!」
4 22/02/03(木)23:41:26 No.893479530
背後から轟く聞きなれた咆哮、いや挨拶 「混ぜてくださあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!!!!!!!!!!」 「こ、こらメイケイエール!!!待て………!!!」 振り返った時に見えたのは。待ってた二人の後輩の姿 エールちゃんが、全力で一握りの豆をこちらにむかって振りかぶっているというその光景 果たして、その言葉は言い切れたかどうか覚えてない 「やっべ」 ターンッというかバァーンッというか まるで、映画で見た鉄砲の炸裂音のようだったと のちに、それなりに離れた場所にいたという芦毛マニアから聞くことになった
5 22/02/03(木)23:41:40 No.893479618
● 「鬼はー外ー」 被弾したあちこちがまだ痛むが、とりあえずプレハブ周囲に豆を撒いていく 確か地域によっては殻のついたままの落花生を撒いたりするんだったか。それはそれですごく賑やかそうで一度くらいはやってみたいかもしれない 乾いたパラパラという音が人気のないプレハブの裏に静かに響く 「鬼はー外プーイ」 「鬼はー外ー」 「鬼はああああああああああああああああああああああああああ外おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」 遠くに飛ばしたいのか、上向き気味にペイッペイッと豆を投げるプイ先輩に、みんなが撒いてない場所にしっかり撒いていくソングラインちゃん そしてエールちゃんの絶叫と散弾のように正面にすっ飛んでいく豆。暴漢の鎮圧位ならこれでできそうでもある
6 22/02/03(木)23:41:58 No.893479708
「おねーちゃんは待たなくていいプイ?」 「もうすぐ着くから始めてろって言ってたッス。他のもの頼んであったんで」 「あ、そういえばまだ用意してませんでしたね」 「鬼はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ外おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」 「うるさいぞメイケイエール!!!!あと全力で投げすぎだ!!」 ………まぁ、これならとてもじゃないが鬼も近寄れないだろう。顔出した瞬間にアニメで見るような穴開きチーズに変えられるのが関の山だ よく怪奇現象染みたことが多発するトレセン学園だ。多少派手に威勢よくやった方がしっかり厄も払えるかもしれないし 普段から居付いてて練習の拠点になってる場所だ。こういうゲンはしっかり担いでおくにこしたことはない
7 22/02/03(木)23:42:08 No.893479768
「さて、そろそろ室内やるプイ?」 「そッスね。エールちゃん、室内では威力抑えてくださいッス」 「わかりました!!!!!!!!!!!」 「不安です。凄く不安です」 ソングラインちゃん、大丈夫。言えばちゃんと抑えてくれるから。頭抱えないで 室内は昨日一応しっかり片付けたのであとで豆を回収するのも楽なはずだ。生モノじゃないとはいえ、カビが生えたりしたら厄介だし 外も大事なら普段から長い時間過ごしてるこの室内の厄払いもまた大事。しっかり福を招いておくとしよう せめて面倒な事件が起きないように せめて、生徒会からお説教されるような事態ができるだけ起きないように 「なんか疲れた顔してるプイ」 「気のせいッス。これからしっかりやれば大丈夫だと思うことにしてるッス」 というわけで、あまり隙間に入らないようにしつつ撒いていくことにする
8 22/02/03(木)23:42:20 No.893479842
「福はー内ー」 「福は内プーイ」 「福はーうちー」 「福は内!!!!!!!!!!!!」 「いた!!!!跳ねてるぞメイケイエール!!!もっと加減しろ!!!」 なんかかんしゃく玉みたいな光景が見えた気がするが気にしないことにする ここに初めてきてから随分経ったが、本当に色々なことがあったものだと思い返す 思い返すたびに、よししっかり厄払いしておこうと決意する。うん、本当に丁寧にやっておこう いつ何が起きてもおかしくないというか起き続けてるその怪奇現象はここで打ち止めにしておきたい 「さて、あと数回やったら室内は終わりに」 そうしてみんなに声をかけようとした瞬間だった
9 22/02/03(木)23:42:42 No.893479953
「鬼は外」 「ぐぉば!!!!!?」 突然エリを後ろに引っ張られたかと思うと、背中に流れ込む何かの感触 あ、これ豆だ。大豆をめっちゃ背中に流し込まれてる。粒粒の感触が背中中で蠢いててめっちゃ気持ち悪い 「んなぁ、なにしやがるッスか姉貴!!!!」 「ほら鬼が出た。鬼は外」 「いったぁ!!!」 でこに直撃する鋭い威力の豆。帰ってきてた姉貴の奇襲攻撃で、文句を言う暇も与えられずに豆まみれにされてしまう これだけは言わせてくれ。頼むから
10 22/02/03(木)23:42:52 No.893480016
「アンタが鬼ッスよ!!!」 「鬼は外。鬼は外。鬼は外。鬼は外」 「あだだだだだだだだだ!!!!」 ビスッビスッと少数ながら確実に当ててくる豆の狙撃。普通に痛い。さっきのエールちゃんの全力よりマシだけど おいこら、そこでプキュキュキュキュキュキュキュキュとか指さして腹抱えて笑い転げてる三冠バ。あんたも鬼か 「頼まれもん持ってきたんだよ。運び込むの手伝えや愚妹」 「せめて豆取るまで待てッス!!!」 「ああ、先輩髪に絡まってます!!」 「荷物持つの手伝いまああああああああああす!!!!」 「おう頼むわ」 服をバッサバッサやりながら豆を除去していくのをソングラインちゃんに手伝ってもらいながら四苦八苦 そして何がツボだったのか、とうとう横になって腹抱えて痙攣してる人がいる。マジで鬼か
11 22/02/03(木)23:43:10 No.893480118
「プキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ………!!!!」 「ええい、この妖怪め。ソングラインちゃん、ありがとうッス」 「あ、はい。うわぁ、相当やられましたね」 「マジで鬼ッスあの姉は」 ………まぁ、ひとまずは 手近な鬼は、払っておいた方がいいだろう。服の中から出てきた豆を両手を皿のようにして掬い上げて、無言でその場に立つ 「あ、先輩。その、それは、流石に」 「大丈夫大丈夫。ただの節分ッスから」
12 22/02/03(木)23:43:23 No.893480175
真下には、捧腹絶倒して丸まってる変な三冠バ 鬼はしっかり払っておかねばならない。だから、仕方ない仕方ない 「プキュキュキュキュ………プィ?」 ようやく気配に気づいてこっちを見上げたが、もう遅い。むしろ顔を向けてくれてありがとう さあ、受け取れ鬼め 「鬼は外」 「プ゛ギュァア!!??」 ザララーっと。重力に任せて投下された豆の滝が 人の苦労を笑ってた鬼の顔面に降り注いだ
13 22/02/03(木)23:43:35 No.893480237
● 「………………………」 「………………………」 「………………………」 「………………………」 「………………………ッ!!!!」 数分前と打って変わって静かな時間 知らない者が見れば異様な光景だろう。ウマ娘が五人。電柱の雀のようにして並んで同じ方向を見て黙っているのだから ただその疑問は手に持って、そして口にしているものを見れば一目瞭然だろう 「………………………」
14 22/02/03(木)23:43:51 No.893480314
黒い海苔に巻かれた、太巻き。そう、恵方巻と言う奴だ 元々は関西の一部地域での風習だったとかそれ以前は色町のあれこれだったとか、コンビニの全国展開による商法が云々とか、色々言われることも多い節分の大事な風習 この時期になるとどこのスーパーもコンビニもとにかくこれを前面に押し出して、何が何でも予約を取れという雰囲気が強くなってしまっている。これぞ鬼じゃないかってくらい 要するにまぁ、恵方……その年の縁起のいい方角を向いたままにしてその恵方巻を食べるというやつだ そして、食べ終わるまでは無言で。包丁で切ることはしないで 「………………………」
15 22/02/03(木)23:44:03 No.893480384
今回のこれは、トレセン学園の食堂やスーパーやコンビニのものではない 前に行った商店街で予約を受け付けているのを見て、評判がいいそうなのでお願いしておいたのだ 確かにこれは美味しい。海産物が多めで、エビなどの甘さと程よい巻き方が太いそれを食べるのを苦にさせない 具材はなんだかんだ指定されてる事もあるが、結局は美味しく食べられるのが一番だろう プイ先輩も横で耳がピコピコ動いてるのがわかるし、ソングラインちゃんの方からは尻尾の揺れる気配。どうやらきにいったようでよかった 「………………ッ!!!!!!!」 …そして、エールちゃん。なんだろう、恵方向いてるので直接は見えないけどなんとなくわかる 早送りのハムスターもしくは電動鉛筆削り。そんな感じで、凄い勢いで恵方巻が吸い込まれてる気配がする やめなさいエールちゃん、そういうのは日本総大将とか芦毛の怪物とかに任せなさい じゃないと大食いチャレンジの店を悉く出禁にされる組の仲間入りとされてしまうかもしれない
16 22/02/03(木)23:44:13 No.893480451
「………ごちそうさまでしたあああああああああああああああああああああ!!!!!!これすっごく美味しいですね!!!!!!!!!!!!」 ほら、案の定一番乗りだ。ま、気に入ったようでなにより ウマ娘サイズのものだが、もとより食欲旺盛な子が多いウマ娘。自分たちも、そうかからずに全員食べきった うん、満足だ。これは予想以上。あの店は今後も懇意にしよう 「プイー、凄く美味しかったし食べごたえあったプイ」 「おい愚妹、今度あの店で他のもんも買ってこいや」 「わかってるッスよ。その時は誰か一緒にお願いッス」 「お手伝いします!!!!!!!!!!!!!!」 「うるさいぞメイケイエール!!!!ふぅ、ご馳走様でした」 全員、用意しておいたお茶で一息 ついでに豆をポリポリと。まず自分の歳の数だけ食べるというノルマをクリアしてしまおう
17 22/02/03(木)23:44:24 No.893480514
「すっごく美味しいってわけじゃないのになんか止まらないプイ」 「食べ過ぎると腹の中で膨れてあとがキツイッスよ」 「でも確かに、つい食べちゃいますねこれ」 経験ないだろうか。そこまで凄く美味しいと言う訳じゃないけど、ついつい口に運んでしまう。そんな食べ物 口寂しい時につい手に取ってしまうというか、テレビとか見ながらだと気づいたらポリポリ齧ってしまうというか 「この山は何プイ?」 「さっきそこの鬼がウチに流し込んだやつッス」 「ああ、さっき鬼に顔に落とされたやつプイね」 「ひでえやつもいたもんだ」 「あんまりこういう事言いたくないんですけど。酷い会話じゃないですか?」
18 22/02/03(木)23:44:39 No.893480595
ソングラインちゃんが若干引いてる。ごめんね。でもこれが自分たちのいつもの流れと言うか 「とりあえず、適当に外に撒いちまうか。鬼退治はやりすぎるに越したことはねえだろ?もっと財宝出せや飛んでみろやって」 「んなガラの悪い桃太郎は現代に伝えちゃいけないッス」 「でもあれ歌怖いプイ」 「容赦ないですよね!!!!!!!!」 ………確かに、あれ途中から嬉々として鬼ヶ島攻め落としてるんだよなぁ 勧善懲悪ものの昔話って時々そういうのある気がする なんというか、悪は徹底的に容赦なく殲滅しろみたいな、そういうノリ 「じゃ、適当に投げちまうわ」
19 22/02/03(木)23:44:56 No.893480682
さっき床に落ちた豆を纏めて手に持ち、姉貴が外に向かう。そして、ドアを開けて振りかぶる 「鬼は」 「やっほー☆ただいまー!」 あ。 「外ぉ!!!!!!!!!」 スパーンッと。地面じゃない、何かに豆が当たった音 それはきっと、終わりの始まりを告げる鐘だったのか 「………あ」 「………………」
20 22/02/03(木)23:45:27 No.893480834
早めに終わったのか。お土産らしきものを手にして帰ってきたカレンの姐御 開いたドアから顔を出した瞬間に、姉貴渾身の豆の投擲を受けることになってしまった 微動だにしない。体も、笑顔も 「逃げます!!!!!!!!!!!!!!」 「あ、こらメイケイエール!!!!ズルいぞ!!!!!!!」 「総員、ヘルメットか何か持って退避ッス」 「凄いプイ。逃げ切れる気がしないプイ」 陰のある諦念に満ちた笑みを浮かべるプイ先輩。わかってるじゃないか 無駄なのはわかってる。でも、一縷の望みに賭けたいじゃないか 姉貴はもう動けない。蛇に睨まれた蛙に許されるのは、せめて一瞬で終わる事を願うことだけなのか
21 22/02/03(木)23:45:56 No.893480980
「………誰が鬼?☆」 「………あ、か、カレン。その」 「ドリームジャーニー。」 笑顔のままのその言葉が、何より怖い ああ、たぶんこれ自分達にもくるッスよね………なんて そして、一番思うことは。くだらないことだけど、本当にこれだけなのだ 「お話。」 厄払い、できてないじゃんか。っと プレハブのある学園の僻地に響く悲鳴は、いつものことかとスルーされたかもしれない だけど、後で聞かれたのは一様にして「花火でもやってたのか?」ということ 違うんです、と
22 22/02/03(木)23:46:08 No.893481042
それ、姉貴に叩きつけられた豆の音なんです、と 絶対信じてもらえないとわかっていても、そう説明する以外にできることなんてなかったのだ
23 22/02/03(木)23:46:44 No.893481196
以上。やっと酒が飲めたので舎弟した 遅くなったし問題あれば明日にまた投げます
24 22/02/03(木)23:47:03 No.893481302
いいね
25 22/02/03(木)23:47:23 No.893481399
いいぞもっと飲め
26 22/02/03(木)23:49:48 No.893482197
アスリートはゲン担ぎ大事だからね あとトレーナーに鬼は外って連呼しながらバシバシ当てて厄払ってあげた方がいいかも
27 22/02/03(木)23:52:54 No.893483153
>「ドリームジャーニー。」 怖… マジで怖…
28 22/02/03(木)23:53:48 No.893483453
大変です芦毛の鬼が出たんですよ
29 22/02/03(木)23:55:20 No.893483945
>大変です芦毛の鬼が出たんですよ 銀髪鬼プレストウコウのことかな…
30 22/02/03(木)23:55:45 No.893484054
>大変です芦毛の鬼が出たんですよ えっ、どこですか!?(龍王氏)