ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/02/02(水)22:24:59 No.893162847
「どうしよう……」 「うぅ……どうしよぉぉ~~!」 昼なお薄暗い森の中、二人のウマ娘が身を寄せ合い嘆いている。 二人とも半月前に入学したばかりの新入生。 憧れの学園に入れたということもあり、暇を見つけては敷地内を片っ端から探検していた。 そしてとうとう今日は森に足を踏み入れることになった。 寮長から無闇に立ち入らぬよう注意を受けてるけど、大丈夫。 所詮は学園の敷地内。頻繁に足を運んでる先輩だって何人か知ってるし、 ──しかしその考えは甘く、間違っていた。 名義上では敷地となっているが学園ができる前からそこにあった広大な原生林であり、 テリトリーにしてる先輩ウマ娘も時間をかけて行動範囲を広げてきたのだ。 そんな認識がまるでなかった二人は最初から奥へ奥へと突き進んでしまい、見事に遭難してしまったのである。
1 22/02/02(水)22:25:14 No.893162915
スマホで時刻を確認すると、午後三時半。 昼食後すぐに森に入ったので、既に二時間は迷い続けてることになる。 「このまま日が暮れたら……」 「ちょ、やめてよー!」 想像して一緒に身を震わすが、動こうにも何の指針もない。 いい加減に泣き出しそうになった、その時。 木々をさざめかせながら、柔らかな、しかし勢いのある風が吹き抜けた。 「……!?ねえ、ちょっとあれ!」 長い黒髪の方が風に乱された髪を手で抑えていると、栗色のショートカットの方が肩を叩く。 指をさす先には、大きな岩。 そこに絡んでいた蔓がゆらゆら揺れ動いている。 そしてポップコーンが弾けるように、ポンッ!と勢いよく花が咲いた。 「へ!?な、なに?今のどうなったの!?」 「あ、あっちでも!」 目を見張る黒髪に、栗毛がまた肩を叩いて教える。
2 22/02/02(水)22:25:29 No.893162998
今度は木の根元の草から泡立つようにピンクの小さな花が連続で開花する。 目で追うと、その先でも、さらにその先でも次々と花が咲き始めていた。 「これって……」 「わかんない。わかんないけど──……!」 「──うん!」 予感めいたものに突き動かされ、二人は花の咲く流れを追って走り出す。
3 22/02/02(水)22:25:45 No.893163082
…………べ……ス…… 「何か聴こえない!?」 「え!?」 鋭敏なウマ娘の耳に、遠くから微かに届く声。 ……マ……ラー………… …………ベラ―…… 弾け咲く花とその声が二人を導いていく。 マー……ラーーース……… 樹々の密度が薄くなり、木漏れ日の当たる部分が増えていく。 走る先にある空間は光で真白に輝き、そこを抜けると──……
4 22/02/02(水)22:26:00 No.893163193
「マーベラーーーーースッッ!!!」 唐突に視界が開け、二人は学園裏の花壇に飛び出していた。 マーベラス マーベラス ママママーベラス 早く咲いてねマーベラス 綺麗に咲いてねマーベラス 色とりどりに咲き乱れ 辺り一面彩れば 世界はきっとマーベラス! マーベラスサンデーが高らかに歌い、踊るような仕草でじょうろを傾け水やりをしている。 「いいですよマーベラスさん!そうやってお花に話しかけるのが大切なんです」 ニシノフラワーがそれを見て嬉しそうに微笑む。 「なんだかお花の色もいつもより艶やかで……すごく喜んでるように思えます」 「ホント!?なら、もっともっとやっちゃうね~~!!」
5 22/02/02(水)22:26:15 No.893163266
そう言ってじょうろを頭上に掲げたマーベラスに、 「「あ゛りがどうございま゛ずううぅうーーーーーーっっ!!!」」 二人は鼻声で叫びながら抱き着いていた。 「きゃはん!?なになになにっっ!?!?」 突然のことに目を白黒とさせるマーベラス。突然の乱入者にフラワーも唖然としている。 「せ、先輩のおかげでわたし達助かりましたぁぁ~~!!」 「よかった……グスッ。本当によかったよぉぉ……」 「……ん~~、なんだか分からないけど……」 マーベラスはじょうろを置いて、二人の手を取り強く握った。 「一緒に歌お!そしたらきっと、あなたもアタシもマーーベラーーースっ♪♪」 「「はいっ!!!」」
6 22/02/02(水)22:26:37 No.893163390
マーベラス マーベラス ママママーベラス 早く咲いてねマーベラス 綺麗に咲いてねマーベラス 色とりどりに咲き乱れ 辺り一面彩れば 世界はきっとマーベラス! マーベラス マーベラス ママママーベラス ずっと咲いててマーベラス 枯れたりしないでマーベラス うれしい時も悲しい時も そこに咲いててくれたなら 世界はきっとマーベラス! 三人の歌声は日没まで絶え間なく響き渡るのだった。
7 22/02/02(水)22:26:52 No.893163472
「──これが、新たに発見された日記帳に記されていた『マーベラス花咲き唱歌』です」 スクリーンに映し出されたそれを見て、民俗学者達は感嘆の声をあげる。 「では、やはり……?」 「はい。世界のあちこちに点在する『マーベラス信仰』…… その発祥が国際ウマ娘トレーニングセンター東京本校の前身、五百年前に存在した トレセン学園を中心とする地域一帯にあるという説がこれでまた補強されました」 「この信仰が生まれたとされる当時、マーベラスサンデーというウマ娘がいたようだが……」 「はい、それは確かです。当然彼女と結び付ける話もあるにはありますが、 各地に残る弘法大師の伝説のように、元からあった伝承に当時の有名人を組み込んだ創作でしょう」 そう答えて、レポート発表者の学者ウマ娘は笑う。 「仮に真実だったなら、面白いんですけどね」
8 22/02/02(水)22:27:32 [s] No.893163688
おしまい。 マーベラスはウマ娘として以外でも歴史に名を残しそう。
9 22/02/02(水)22:28:28 No.893164006
何の何の何
10 22/02/02(水)22:29:02 No.893164188
一瞬SCPの唄う草原案件かと思った
11 22/02/02(水)22:29:20 No.893164290
>三人の歌声は日没まで絶え間なく響き渡るのだった。 >「──これが、新たに発見された日記帳に記されていた『マーベラス花咲き唱歌』です」 この間で風景がセピア色になって場面変わってそう
12 22/02/02(水)22:30:04 No.893164532
なんかお寒い
13 22/02/02(水)22:30:07 No.893164551
本来の意味で怪文書すぎない?
14 22/02/02(水)22:31:05 No.893164874
マーベラス大放尿かと思ってた
15 22/02/02(水)22:42:25 No.893168685
イーターかと思ったけど同じくらいの怪異だった
16 22/02/02(水)22:48:45 No.893170831
世界に広がるマーベラスは時すらも越えるのか…
17 22/02/02(水)22:58:49 No.893174202
歌のシーンがうすた漫画みたいで好き
18 22/02/02(水)22:59:37 No.893174477
フラワーはどんな感情で眺めてるんだろう…