虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    22/01/31(月)22:18:45 No.892557320

    夕方にもなれば一段と冷えだす空気。夕焼けの赤に染まるプレハブ小屋 静かな時間だ。遠くでウマ娘達の声こそ聞こえるものの、片隅のこの場所は自分たちがいなければ何一つ声を上げる者もいない 「はいプイ」 突然その静寂を破って声をかけて、ついでに何か目の前に突き出してきたプイ先輩 手には、ペットボトル。何の変哲もない、普通のお茶のそれ 夕焼けに照らされその表情は、ニヤニヤ笑いながらもどこかからかう様な感じで 「そろそろ涙止まったかと思ったプイ」 「泣いてねーッス」 「温かいお茶でも飲んで落ち着かないとこの後大変プイよ?」 「泣いてねーッス」

    1 22/01/31(月)22:19:01 No.892557436

    泣いてねーッス 目が何故か知らないけど痒かったので数回こすって、お礼を言ってありがたくお茶をいただく 冷え切った体に染みわたる暖かいお茶。だけど、どこか体の内側が。芯が、焼けるように熱い感覚がまだ残っている 「こっちの準備はもう終わったプイ。テーブルとかも準備できたしあとはゆっくり待つだけプイ」 「お疲れ様ッス。こっちもいらんもんは外に出してきたんで」 「事前にある程度準備はしてあったけど本当に慌ただしいプイ」 「そりゃ終わってひとしきり見終わったら即ダッシュッスからね。スプリンターにこんな距離付き合わせるなって姐御に怒られたッス」

    2 22/01/31(月)22:19:24 No.892557590

    あのレースが終わって、その後のあれこれ全部見終わって あらかじめ予定していた計画の実行にGOサイン。泣きじゃくるトレーナーに数発チョップして再起動させて仔細を伝え、各自決められていたように動き始めた そこからは時間との勝負だった。こっちも全力で姐御とプイ先輩、それとソングラインちゃんと一緒に走ってきて、プレハブについて即時準備開始 部屋を少しでも広くするため余計なものは出し終えたし、その他色々細かいものも揃え終わった ソングラインちゃんと姐御の方も、おおよそ終わっているとのことだ 他の連中からもすぐに戻れると連絡あり。あとは……待つだけだ 「やったプイね」 「え。本当に、よかった」 自分の中での何かが噛みあわず、ずっと悩み苦しんでいたのを知っている だからこそ今回の結果の重みも、きっと彼女にとってかけがえのないものだろう 試行錯誤と努力の果て、ようやく見えたその光明と栄冠は人の為す格付けではきっと計れないものだから

    3 22/01/31(月)22:19:35 No.892557656

    「さ、盛大にいくッスよ」 「丁度戻ってきた子がいるみたいプイ」 その言葉の通り、校舎の方角から二人分の人影。何か両手に抱え込んで、落とさないようにしつつもできる限りの駆け足で 「おい持ってきたぞ愚妹!!!手伝えや!!!!」 「はいはい、今持ちますって。リヤカー使わなかったんスか?」 「取りに来てる時間無いわよ!!絶対間に合わないから手分けして抱えてきたの!!!」 姉貴と魔女っ娘が必死に抱えてきたのは、調達をお願いしておいた飲み物類だ それなりの量になるからなにか台車かリヤカーを使うと思っていたが……言われてみれば、時間が全く足りてない

    4 22/01/31(月)22:19:47 No.892557724

    「もう、疲れちゃった!!早く中に仕舞っちゃいましょ!!」 「じゃ、手分けして持つプイ。もう一人はどうしたプイ?」 「ああ、聖剣先輩は先にむこうと合流してもらってるッス。今回は相当周りも記者も沸いてましたし、多分対応が本人とトレーナーだけじゃ間に合わないッスから」 レース終了後の賑わいはとてもじゃないがGⅢとは思えない程だった 本当ならば、その結果を見届けた瞬間に全員で駆けつけたかった。語り尽くせぬほどの祝福の言葉をかけたかった しかし。恐らく、想像するまでも無くそれは無理だろうとわかっていた。この一戦で勝利することがあったなら、それは間違いなくファンと記者の殺到を招く、と それほどまでに注目されていたのだ。………様々な意味で そのため、我先にと押し寄せてくるであろう記者団などへの対応諸々を補佐してもらう為に聖剣先輩には残って合流してもらっておいたのだ

    5 22/01/31(月)22:20:08 No.892557846

    「ウチらが残るよりいいと思うッス」 「哀しくならないプイ?」 「外面だけは完璧なオメーとどっちがましかね」 こういう時の対応であれば、間違いなくメンバーの中で最も安全だろうから。哀しいことに とりあえず、手分けして荷物を室内に運び込むことにする。ウマ娘がいくら力持ちとはいっても、この量は流石に面倒だ 「……やったなぁ、アイツ」 ポツリ、と。姉貴の言葉

    6 22/01/31(月)22:20:18 No.892557896

    「正直、本当に潰れそうになってた時期あったッスからね。本当によかったって、心から言えるッス」 「………一時期、ほんとに見てられなかったわよ。みんなの前じゃ必死に大声出して笑ってて………」 「一人の時、見られないように泣いてたの見ちゃって本当にキツかったッス。実力はあるのに別の要因でそれを発揮できないって、ウマ娘にとっちゃ死ぬほどつらいッスから」 「つってもよ、これで終わりじゃねーだろうが。まだデカいレースはいくらだってあるし、これで燃え尽きたりしなきゃいいけどよ」 「だから、じゃないプイ?」 プレハブの隅で、すぐに用意する飲み物以外を冷蔵庫に仕舞いこんでいたプイ先輩がポテポテプキュプキュと戻ってきて、みんなに温かいお茶のペットボトルを差し出してくる 「まだまだこれで終わりじゃないから、あんなに大泣きしたんだと思うプイ」 「どーいうこった、そりゃ」 「レースの数って無限じゃないプイ。出たくても出れない子なんて、中央だけで見ても数えられない程いるプイ」 「………ああ、確かに。そういうことッスか」

    7 22/01/31(月)22:20:36 No.892557997

    そうだ。自分たちは、そんな子達の無念をずっと見てきたじゃないか そんな子達の道を………閉ざし続けてきたんじゃないか 勝って、勝って、勝って。奪ってきたんだ 『次に挑む』という、当たり前のようで誰もが死に物狂いで求める、その権利を 「勝てなきゃ、その『まだまだあるデカいレース』にだって挑戦できないプイ」 「………なるほどな。そりゃ、確かにそうだ」 「自分はまだ走り続けられる。挑み続けられる。もっと大きな舞台を目指してもいい。まだ、走ってもいいんだって………失いかけてたそれを取り戻したんスよ、彼女は」

    8 22/01/31(月)22:20:47 No.892558051

    負け続けるということは、奪われ、そして削られていくという事だ 自信を、結果を、そして権利を。それらすべてを失ってしまえば、大きな舞台で走る事すらもできなくなってしまう 彼女はずっと、怯えていただろう。怖かったはずだ。自分の居場所がひび割れるような錯覚に 夢破れ去っていった幾人もの姿がチラついたはずだ だからこそ、それを自分自身で取り戻した時に涙があふれたとしても、何一つおかしなことなどない 「ふん。あんたらは色々規格外すぎてその辺麻痺してんでしょうけどね」 「いや、オメーもそれ言えね―とは思うけど……」 「兎にも角にも、次に繋いだ大勝利プイ。盛大にお祝いするプイ」 「ところでオメーどこの所属だっけ?」 「聞こえないプーイ」 ………新入生の一部が以前プイ先輩をうちの所属だと勘違いしていたり、生徒会が素でここの所属として扱いかけた事例があったのは内緒にしておこう さて、準備を進めなければいけない。とりあえず飲み物を………

    9 22/01/31(月)22:20:59 No.892558122

    「ちょいストップッス」 「あ?あんだよ愚妹、なんかあったか?」 「これがツッコミどころじゃなくてなんなんスか?」 手に取ったのは、袋の中に入っていた大きめの瓶 栓は中々見慣れないものだ。やたらとデカいコルクの栓を、その上から針金のようなものでがっちり固定している ただ、それの正体はまぁわかる。わかってしまう。時々テレビだなんだで見たことがあるから 「なんで学生の打ち上げにシャンパン入ってるのかってことッスよ」 「んなわけねーだろ。酒なんか入ってねーよ」 「じゃーこれはどういう事ッスか」 「あ、それはこっちで頼んだプイ」 なんだと。何を考えてやがるこの英雄サマは

    10 22/01/31(月)22:21:10 No.892558185

    「それノンアルコールシャンパン、ていうかシャンパン風ぶどうジュースプイ。ラベルにちゃんと書いてあるプイ」 「………あ、ほんとッスね」 スパークリングワイン風炭酸飲料。確かに明記されてる。アルコールも含まれてない 「いやまぁ言っておいてなんだけど確かに紛らわしいわこれ。シャンメリー、だっけ?あれとは違うのか?」 「結構違うプイ。ほら、お祝い事や祝杯ってことならこういうのが映えるプイ。盛大にやるならいい小道具になると思ったから頼んでおいたプイ」 「それならそうと早く言って下さいッス。ゾッとしたッスよ」 「特別感は大事プイ。あ、結構派手に音が出るし圧も強いから気を付けるプイ」 確かにこんなものの扱いは慣れてないし、よくコルクが吹っ飛ぶシーンを見る限り下手にやったら蛍光灯を破壊しそうだ でも確かに、そういうことならいい演出になるかもしれない。あの子もきっとびっくりしてくれるはずだ ただ開ける方法も分からないし、調べておこう。それか知ってるっぽいプイ先輩に頼んでおこう

    11 22/01/31(月)22:21:29 No.892558302

    「クラッカーもたくさん用意しておいたわ!!」 「オッケー、この火薬庫みたいな量は使い切れないッスね?このアホ魔女は」 「いたたたたたたた!!!!い、いいじゃない盛大にやるっていうからあだだだだだだだだ!!!」 「うわー、バズーカ型クラッカーとか生で見たの初めてプイ」 とんでもない量のパーティー用クラッカーが詰め込まれた袋を自信満々に見せてくる魔女っ娘はグリグリの刑に処しておく 一体いくらかかったんだこれは。他にも何か余計な事をしてないか、チェックしておく必要がありそうだ 台湾の爆竹祭りでも再現するつもりかと 「おっまたせー!!みんな、できたの運ぶの手伝ってー!!!」 奥の流し、簡易キッチンから聞こえる声 姐御とソングラインちゃんが作業を終えたのか。なら、運ぶくらい手伝わなくてはならないだろう。仕込みは手伝ったが、あとは二人がフルで頑張ったんだし

    12 22/01/31(月)22:21:49 No.892558420

    「おおー、凄い………こう………なんというか………プイ」 「名古屋感すげーなおい」 「この間の激励会っていうか前夜祭でひつまぶしやったし、後はあの子の大好きな故郷の名古屋ご飯をたっくさん作ってあげたくって☆」 「飲み物の準備の段階だとクリパみたいになってたッスけど、いっきに個性特色出てきたッスね」 出来上がった品は、どれもこれもいわゆるところの名古屋めし 味噌カツに手羽先、味噌煮込み………その他沢山 姐御も妥協を許せなかったらしい。この計画が立った時点で相当下調べしていたらしいからその本気度がうかがえるというものだ そして、なによりも。これは……… 「すみません。その……これでも数を絞ったつもり、なんですけど」 皿を持って出てくる、エプロン姿のソングラインちゃん 申し訳なさそうに言ってくる彼女だが、ある意味この打ち上げについて一番熱心だったのが………まぁ、そういうことだ

    13 22/01/31(月)22:22:07 No.892558531

    「……なんかまた一歩先を行かれた感じで、おのれって言いたい気持ちもありますけど」 つんと拗ねたように口を尖らせて、でもちゃんと気持ちは口にする子だ。本人いなければだが 「それでも、今まで散々隠れて沈んでた分、これで切り替えられるでしょうし。あいつに勝つ時には、全力のあいつに勝ちたいですから」 ………本当に、いい子だなぁと 姐御が無言でにんまり笑って、その頭を撫で始める。便乗させてもらうッス 「あ、わわわわわ!!!ちょ、先輩方!!!何ですか一体!!!」 「ソングラインちゃんがいい子だからだよ☆」 「いい子ッス。本当、うちの良心ッス」 「な、なんですかそれ!!!早くは、運びましょう!!」

    14 22/01/31(月)22:22:19 No.892558603

    会場で、誰よりもその疾走に目を見開き、そして声援を張り上げていたソングラインちゃんだ 彼女が心折れることを誰より望んでいなかったソングラインちゃんだ あの子が、誰にも見られないように陰で声を押し殺して泣きじゃくっていた時に、隠れて共に泣いていたソングラインちゃんだ 誰よりも、勝ちたいと思っている友の姿を。その勝利に、声を張り上げていたんだから。恥ずかしがることなんてないのに 「ほんとあの子、いい先輩と友達に恵まれてるプイ」 「そりゃあんだけ必死にやってる姿見てればそうもなるッスよ」 「だから観戦してて嗚咽漏らして泣いてたプイ?」 「ちょい。ちょいちょい。それ言うッスか?ここで言うッスか?」 「プーキュッキュッキュッキュ」 「 k r s 」 シュバッと伸ばしたアイアンクローは予測してたのかあっさり躱される いいだろう、絶対捕まえてオシオキしてやる。逃がすものか絶対逃がさない捕まえてikzeしてやる覚悟しろ

    15 22/01/31(月)22:22:43 No.892558734

    「おいテメーらじゃれ合ってる暇ねーぞコラ!!!」 「来てる来てる!!!三人とも来ちゃってるわよ!!!」 「えぇ!?もうですか!?」 「ちょ、マジッスか」 その言葉に何とか頭が冷えて、落とさないようにしつつサササッとテーブルに料理を置いてなんとか整える それが終わった瞬間の行動は早かった ソングラインちゃんと姐御はエプロンをバッと脱ぎ捨てて、全員出入り口に殺到。途中でプイ先輩が壁に挟まれてプギュァッとか変な声漏らしてたけど無視する 雑に靴を履いて、一斉に外に出る。夕焼けの残照が景色を赤く染め上げる中、並んだ自分たちの視線の先 微笑みを浮かべた聖剣先輩 そして、まだ涙を浮かべてるのか目を軽く擦っているトレーナー そして………彼女の、姿

    16 22/01/31(月)22:22:54 No.892558798

    「………皆さん!!!!!!!!!」 聞きなれた、大きな声。そして駆け寄ってくる姿 少し離れた、しかし声も顔もしっかりわかる距離。そこで止まって、笑みを浮かべる 誰もが言葉を発しない。赤い日差しに照らされた彼女は、満面の笑みで でも、なかなか次の言葉は出てこない。口を開こうとして、肩が震えだす。小さく息を吸い込んで 「………ち、まし………た」 ポロポロと、零れる雫。満面の笑みのまま雫を落としながらも続けようとして、それは叶わなかった 「わ、たし………り、ました」

    17 22/01/31(月)22:23:06 No.892558879

    止めどなく溢れる大粒の涙。その笑みは、段々と崩れていく 耐えろ、耐えろと自身に命じても。その涙は止まらない。止めることができない 耐えて耐えて、もうダメだとわかったんだろう その笑みは崩れ去り、感情の爆発に飲み込まれ、クシャクシャの泣き顔に 何より綺麗な、歓喜の泣き顔へと姿を変えて。今。 今。一番叫びたかったその言葉が、炸裂した

    18 22/01/31(月)22:23:23 No.892558978

    「………勝ち、ましたあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 走り出したのは誰もが同時。我慢などできるわけがない 邪魔になったマスクをはぎとり、そのまま走り出す。頬を、暖かい何かが伝う そして全員で彼女を メイケイエールを、抱きしめた 「………おめでとう、ッス」 これから先の、更なる勝負の舞台に立つために。今日という最高の勝利を勝ち取った後輩の涙を、全力で受け止める 一瞬ためらっていたのはプイ先輩だ。何を今さら遠慮してるんだ。早く来い、と視線に乗せる ガバッと、プイ先輩も飛びついてくる。そうだ、ずっとここに居ついてるんだ。エールちゃんを見てたんだ。何を遠慮することがある

    19 22/01/31(月)22:23:35 No.892559044

    「勝ちました!!!!!!勝ちました!!!!!!勝ちまし、たああああああああああ!!!!!!」 涙と共にやまぬ絶叫。その全てが、今までずっと溜めこんでいた無念と後悔の発露 だったら今全力で吐き出してしまえ。この後は笑顔の祝賀会なんだ。その涙は、今ここで全て流してしまえ おめでとう、ウチらの後輩 おめでとう、エールちゃん おめでとう、メイケイエール さあ、また走ろう 今日という日を越える更なる大舞台を目指すために 更なる栄光を勝ち取るために また、何度でも。 勝利の涙と笑顔を得るために。

    20 22/01/31(月)22:24:21 No.892559316

    以上。本当は昨日出したかったけどできなかったので沢山酒飲んで舎弟した。あとエールちゃんした おめでとう本当におめでとう

    21 22/01/31(月)22:25:23 No.892559651

    もっといっぱい酒を飲め

    22 22/01/31(月)22:26:34 No.892560063

    おめでとう ありがとう 自分はikze賭けると負ける呪いあるから見てたよ…

    23 22/01/31(月)22:27:22 No.892560360

    プレハブは我々に尊さを与える。

    24 22/01/31(月)22:27:40 No.892560484

    画面見ながらガッツポーズして叫んだのは久々だった

    25 22/01/31(月)22:28:16 No.892560696

    >プレハブは我々に尊さを与える。 岡部君?

    26 22/01/31(月)22:29:35 No.892561208

    >岡部君? ルドルフはこういう時は素直に褒めると思う それこそ彼女がウマ娘幸せを願っているならば。

    27 22/01/31(月)22:30:32 No.892561546

    マスクド三冠バの後輩がサングラスウマ娘に…

    28 22/01/31(月)22:32:13 No.892562126

    ソングラインちゃんと安田記念かヴィクトリアマイルでかち合って欲しいな