22/01/31(月)06:07:03 [不定期... のスレッド詳細
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22/01/31(月)06:07:03 No.892332930
[不定期] 会社から逃げて、幼女に拾われようシリーズ [成分] ・きりゆか ・コッショリ ・年上誘い受け
1 22/01/31(月)06:07:13 No.892332936
それから財布をこっそりと持って、荷物も持たずに家を出た。 暫く歩いてため息を漏らす。 ……何かに使うと決めたわけではない。 ただ遠くに行くのに、必要になるだろうから。 そう思いながら、泥濘んだ道を歩く。 ……私は一体何をしていたんだろうか。 そんな事を思いながら歩きつづける。 彼女の意図を読み切ったとは思っていない。 ただ、親愛の情のようなものは分かる。 それは素晴らしいものだ。 他人と自分で分かち合い、理解し合う。 そして何より、人間社会で一番貴重な感情の一つだろう。 人と人が繋がり、互いに歩んでいく。
2 22/01/31(月)06:07:28 No.892332948
それが友愛であれ、親愛であれどれも素晴らしいものだ。 だが、それが私を礎にしているならば別だ。 ……あの子は、私を礎にするべきではない。 そう思いながら市役所の方へと歩いていく。 ……結構な距離があったと思う。 何時からか、バスから見た風景にその場所はあった。 だからただそこへと歩いていくだけだ。 「……楽しかったな」 そんな事をぼんやりと呟く。 起きて暫くの間は、体さえ動かすのは大変だったが少女が世話をしてくれていた。 味も感じないお粥だったが、久しぶりに他人と食べた料理は暖かった。 ……あの子がそういう感情を抱いていたのはその時からだろうか? それとも、もっと後?
3 22/01/31(月)06:07:42 No.892332963
兎に角、少女は献身的に私に尽くしてくれていた。 彼女自身も寄る辺が無い身だろうに、少ない資産を私に使って世話をしてくれていたのだろう。 ……それを裏切るのかと思うと心苦しい。 そんなことを思いながら空を見上げると、晴れやかな空の気色が目に映る。 外は大分暖かくなった。 だがそれでも、時折吹き付ける風は温かいとは言いづらい。 「はぁ……」 そうして小さく漏らした吐息は白くはならない。 もうすぐ本格的に春の陽光になっていくのだろう。 なぜだか後ろ髪を引かれたような気がして背後を振り返るが、誰かが追ってきている気配はない。 ……これなら、安心か。 そう思いながら、役場への道を歩いていく。 ……それで、あの子の申請を終えたら全部終わりだ。
4 22/01/31(月)06:07:57 No.892332971
─── 「それで……東北さんの生活保護申請をしたいと」 「はい」 私はそう言って、役場の女性を眺める。 彼女は少しだけ歳を召している、品のいい笑みを浮かべている人だった。 そんな彼女は私からの言葉に暫く困ったような顔をしていたが、意を決したようにこちらを見つめ返す。 「いえ、それは分かりますし、あの子の家庭に関して近隣住民からお願いが来ているのも知っています」 そうして彼女の口から出てきた言葉は、以外な言葉だった。 私は少し呆気に取られたような気がしつつ、口を開く。 「……何か別の事情でもあるのですか」
5 22/01/31(月)06:08:13 No.892332984
私がそう言うと、彼女は何かを躊躇うかのようにゆっくりと口を開く。 「えっと……あの子自身が、書類を捨ててしまっているようで、何時までも返送書類が届かないのです」 「……そうなんですか」 私はそう言って、少しだけ悩む。 ……何となく少女の気持ちはわかる。 社会の厄介者になりたくないとか、お荷物になりたくないとか、そういった類だろう。 「……では、ゆかりという人が彼女の生活保護申請をお願いしたと、電話して頂けますか」 「え、あの貴女は?」 そう言ってこちらを見る目に、私は静かに首を横に振る。
6 22/01/31(月)06:08:33 No.892333003
「……私はただ彼女の世話になったものです、ですから……お願いします」 私はそう言って彼女を見つめる。 少しの間があった後に暫く私を見つめ返していた彼女は、一つため息を漏らした。 「本当は、本人以外のお願いはあまり良くないのですけど……」 「……どうか、よろしくお願いいたしますね」 私はそう言うと、席を立って出口へと歩いていく。 簡素な作りの役場は、余り資金状況が良いようには思えない。 それでも、彼らは精一杯仕事をしているのだろう。 市民からのお願いや、依頼、申請処理。 その他諸々の作業を含めて、彼らは日夜頑張っている。 ……私のお願いを聞いてくれたのは、ただの気まぐれかもしれない。
7 22/01/31(月)06:08:45 No.892333014
そんな事を考えながら、暫く舗装されている道を歩く。 窓の外では春が近く、段々と日々の温度が暖かくなっていく最中。 まだ枯れた草木や、生き物気配を感じない土塊もいずれは生き生きとした緑を実らせて周囲を歩く人々や、動植物に憩いをもたらすだろう。 でも、私には関係がない。 そう思いながら、ふらふらと歩いていく。 ……何だか違和感がある。 そう思いながら、立ったまま靴を脱ぐと足の皮が裂けていた。 滲んだ赤い血の色を見ながら、ため息を漏らす。 痛みが薄いと言っても、気にはなる。 生来に根付いた感覚というのが失せたとしても、獲得してきた経験則はそうでもないらしい。 ……少し近くの停留所で休むか。 そう思いながら歩いていく。 ……それから暫く、歩く度に足の裏の感覚に苛まれる。 家を出なければ良いのではないか。 そんな事をぼんやりと思いもするが、一度決めたのだからと目を閉じる。
8 22/01/31(月)06:09:05 No.892333031
「……あの子には、私は必要ない」 そう誰にでもなく呟きながら、歩いていく。 始末を決める日は何時だって唐突だ。 鞄の中身も投げ捨て去ったのにそれでも何時までも、悔いのような感覚は体に染み付いて離れないらしい。 そんな事を考えながら道を歩く。 空の太陽が真上に来ているから、そろそろお昼頃だろうか。 ……あの子は、まだあの家で私を待っているだろうか。 それとも、家事をしている頃だろうか。 ……まあいい、もう私には関係ないのだ。 全ては託したのだから。 そうして道を暫く歩いた後、小さな木でできたバス停小屋に入って椅子に腰掛けた。 暫く呆然と空を眺めていたが、足の裏が染みるような感覚がする。
9 22/01/31(月)06:09:18 No.892333034
我に返った私は靴を脱いで内側についた血の跡を見て、思わずため息を漏らした。 暫く歩きっぱなしだったからか、気がつけば息も上がっている。 生憎、バスが来るまではまだ暫く時間がある。 そんな事を考えながら、暫くぼぅっとバス小屋の天井を眺めた。 特に言葉にするほどでもない、木のささくれが目立つ。 隅の方には雀が巣を作っていたのか、使い古された鳥の巣があった。 中にはなにもない。 外を見ると、収穫された後の乾いた田んぼが一面に広がっており。 少し湿ったような土が、もうじき何かを植えられるのだろうと感じられる。 いずれはなにかの植物を植えて、誰かがそれを収穫して……。 そして何処かへと運ばれていくのだろう。 「……」
10 22/01/31(月)06:09:40 No.892333047
でも、これも私には関係がないことだ。 そんな事を思いながら、靴を脱いで暫く長椅子に腰掛けたまま空を見上げる。 ……いい天気だ。 そんな事を思いながら目を瞑る。 「……いい子だったな」 そんなことを呟いて、暫し微睡む。 遠くに響く鳥の鳴き声と、風に揺れる草木の音を聞いてただ小屋のなかで息を潜めていた。 ……今になって思い出すのは、会社のことではなく少女との出来事ばかり。 もう少し、愛想よくしていればよかったのだろうか。 でもどうせ、未練が積もるだけだ。 そうして何度か思い出を反芻しては、苦笑いを零した。
11 22/01/31(月)06:11:14 No.892333115
今日はここまで fu762135.txt 早く次回作のきりたんに産卵させるゆかり姉妹書きたい
12 22/01/31(月)07:22:24 No.892337120
産卵!?
13 22/01/31(月)07:55:54 No.892340104
>早く次回作のきりたんに産卵させるゆかり姉妹書きたい 何を言ってるんだお前は…?
14 <a href="mailto:s">22/01/31(月)08:33:18</a> [s] No.892345591
ラブパワーでパンケーキ™(人由来)作ろうぜ!
15 22/01/31(月)08:37:53 No.892346172
これはゆかりさんの身体がきりたんのものだと教え込まれちゃいますねぇ